東京の周辺は,第2次大戦中から次第にその地域構造が変容してきたが,特に戦後の変化は著しいものがある.そこで地域構造研究グループは,川崎,江東3区に引き続いて第3報として周辺地域を調査した.すなわち,東京駅を中心として半径40km圏内の各市町村を研究対象地域とした(ただし23区を除いた).そして大都市周辺の地域構造をあらわすであろうと判断される16の指標(面積,時間距離,通勤率,歳入率,従業者率,工業生産率,商店販売率,耕地面積率,人口増加率,第1次産業人口率,第2次産業人口率,第3次産業人口率,管理職率,雇用者率,電話普及率)をとりあげた.研究方法は,これらの各統計数値を対数変換して規準化した後,重因子分析法の統計手法を使用して,電子計算機の力を借りて計算した.そして,算出された数値を研究対象地域に投影した.次に計算過程において求められた表によつて各因子の名称をきめた(本文第2表参照).
この地域の地域構造は,都市化を主体として住宅化,工業化の3つの因子の組合せによつて,構成されていることが明らかとなつた.それぞれの因子を研究対象地域に投影したとき,都市化は東京周辺に向つて逓減的傾斜をしているが,住宅化,工業化は必ずしもそうでなく飛地的傾向が強い.
因子を綜合すると,西部,東部,南部,北部の地域構造の高次の地区と,多摩川谷,荒川谷,江戸川谷,利根川谷,房総の低次の地区に区分される.西部が最も発達した地区であり,利根川谷が最も未発達な地域である.房総地区は東京周辺としての地域構造ではなく,独立した地域構造のように判断される.
なお,この研究方法は,日本において最初の試みであり,地域構造の解析に新しい分野を開くものと考える.
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