地理学評論
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33 巻, 10 号
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  • 服部 〓二郎, 加賀 谷一良, 稲永 幸男
    1960 年 33 巻 10 号 p. 495-514
    発行日: 1960/10/01
    公開日: 2008/12/24
    ジャーナル フリー
    東京の周辺は,第2次大戦中から次第にその地域構造が変容してきたが,特に戦後の変化は著しいものがある.そこで地域構造研究グループは,川崎,江東3区に引き続いて第3報として周辺地域を調査した.すなわち,東京駅を中心として半径40km圏内の各市町村を研究対象地域とした(ただし23区を除いた).そして大都市周辺の地域構造をあらわすであろうと判断される16の指標(面積,時間距離,通勤率,歳入率,従業者率,工業生産率,商店販売率,耕地面積率,人口増加率,第1次産業人口率,第2次産業人口率,第3次産業人口率,管理職率,雇用者率,電話普及率)をとりあげた.研究方法は,これらの各統計数値を対数変換して規準化した後,重因子分析法の統計手法を使用して,電子計算機の力を借りて計算した.そして,算出された数値を研究対象地域に投影した.次に計算過程において求められた表によつて各因子の名称をきめた(本文第2表参照).
    この地域の地域構造は,都市化を主体として住宅化,工業化の3つの因子の組合せによつて,構成されていることが明らかとなつた.それぞれの因子を研究対象地域に投影したとき,都市化は東京周辺に向つて逓減的傾斜をしているが,住宅化,工業化は必ずしもそうでなく飛地的傾向が強い.
    因子を綜合すると,西部,東部,南部,北部の地域構造の高次の地区と,多摩川谷,荒川谷,江戸川谷,利根川谷,房総の低次の地区に区分される.西部が最も発達した地区であり,利根川谷が最も未発達な地域である.房総地区は東京周辺としての地域構造ではなく,独立した地域構造のように判断される.
    なお,この研究方法は,日本において最初の試みであり,地域構造の解析に新しい分野を開くものと考える.
  • 市瀬 由自
    1960 年 33 巻 10 号 p. 515-528
    発行日: 1960/10/01
    公開日: 2008/12/24
    ジャーナル フリー
    今回の諌早水害は局地性豪雨を誘因として多良岳火山地域に発生したもので,豪雨の性質と山体を構成する地質岩石および地形性質とが関係して,山崩れの性質や土砂流出などに木きな影響を与えている.
    山崩れは多良岳の中下半部を構成する紫蘇輝石安山岩および塊泥岩よりなる地域に多く発生している.その形態は湧水点を頭とした「おたまじやくし」状をなしており,崩落土層は一般に浅くなつている.そして山崩れは山体よりの湧水による地下水型の特性を示している.山崩れと斜面形との関係をみると,一部は浅い谷状の凹地より発生していて,地下水の一部が集水するのに便利な地点より湧水があつて山崩れが起つたことを示しているが,その多くは地表の集水などの少ないと思われる平滑な斜面の一部より発生している.
    山崩れは山体を構成する紫蘇輝石安山岩と塊泥岩との水に対する物理的性質が異なることより発生したもので,成因的には4つに分類することができる.
    (1) 紫蘇輝石安山岩よりなる平坦面の侵蝕過程における山崩れこれは上部の紫蘇輝石安山岩が下部の塊泥岩に比べて相対的に降雨の滲透が速いので,滲透の相対的に遅い塊泥岩との境界附近より滲透水が湧出して山崩れを起したものである.
    (2) 塊泥岩および塊泥岩中に安山岩質熔岩流が介在する地域における山崩れこれは (i) 塊泥岩中に安山岩質熔岩流が存在し,安山岩質熔岩流の部分では一般にち密で堅いので,滲透水は塊泥岩中に滞水し,谷壁斜面より湧水するものである. (ii) は塊泥岩中の斜面より滲透水が湧出したもので,塊泥岩がその中に介在する安山岩質熔岩よりも水を含み易く,容易に滲透し易いことに基くものである.
    (3) 古い山崩れ上述した (1), (2) の原因によつて発生した古い山崩れ堆積物が再崩壊したものと,本支流の合流点附近に形成されている押出し地形とに分けられる.
    (4) 漢岸侵蝕これは急激な出水によつて斜面上の崖錐堆積物を崩落せしめている場合と,かつての洪水堆積物である低位段丘を侵蝕している場合とがある.
    山腹斜面上の崩落物質や斜面形態および河流沿いにみられる押出し地形,洪水堆積物などの諸性質より,この地域においては古い時代から同様な性質,規模の災害が繰返されて来たことが判る.そして今回の災害もまた過去における災害と同じ現象を示したものと言える.
  • 大矢 雅彦
    1960 年 33 巻 10 号 p. 528-540
    発行日: 1960/10/01
    公開日: 2008/12/24
    ジャーナル フリー
    洪水の際のたん水深の大・小,たん水期間の長・短,流速の遅・速,流動方向,侵蝕・たい積の有無など洪水の型は谷底平野,扇状地,三角洲など地形要素によつて定められてくる.したがつて,地形を分類すれば洪水の型を知ることができるはずである.この見地に立つて空中写真および現地調査によつて諌早市周辺水害地形分類図および1957年7月25目にこの地方をおそつた大洪水の洪水状況図を作成したところ,この地域の洪水型を次の6つに分けることができた. (1) 火山放射谷型山崩れ多く岩屑の供給の行なわれる型, (2) 火山山ろく囲続谷底平野型放射谷の水をうけ,侵蝕とたい積の行なわれる型, (3) 峡谷扇状地型峡谷で供給された砂れきのたい積をともない水の流れ方のもつともはげしい型, (4) 火山山ろく扇状地型僅かの侵蝕だけが見られる排水良好な型, (5) 三角洲型扇状地型若干の侵蝕とたい積の行なわれる型, (6) 三角洲型長期間にわたつてたん水する型.
  • 1960 年 33 巻 10 号 p. 541-550_1
    発行日: 1960/10/01
    公開日: 2008/12/24
    ジャーナル フリー
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