地理学評論
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34 巻, 11 号
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  • 河村 武
    1961 年 34 巻 11 号 p. 583-595
    発行日: 1961/11/01
    公開日: 2008/12/24
    ジャーナル フリー
    この論文の目的はW. C. Jacobsの総観気候学の研究の再考察を行なうことによつて,できるだけ小さいスケールの天気状態の説明を行なうことである.そのために資料の関係から日降水量を取り扱うことを考え,地形との対応が非常に明瞭な日降水量5mm以上となる度数の分布を季節風型天気図について850mbの傾度風向別に求めた.また低気圧による降水については,地上天気図上に表現された低気圧の中心の経路別に整理を行なつた.
    結果は本文中の第3図,第4図に表わされているが,季節風型の揚合には風向が西偏するにつれて多降水域の移動が明らかで,またそれぞれのflow patternの場合につV・てみても降水分布が地形と密接な関係があることが第2図の4OOmまたは60Omの等高線と比較するとわかる.また寒冷前線が通過する場合の降水分布には山地の背後に無降水域が現われる.季節風型の降水分布を地形性上昇流による降水強度の計算値と比較した結果,多降水域が内陸側にずれることが明らかになつた.また,一般流と異なつた局地的な気流の存在が天気の分布にいちじるしい影響があることが,石狩平野上に現われる天気分布の不連続線の例で明らかにされた.最後に総観気候学の月降水量の変動の解析への予察的な考察を行なつた.
  • 松本 繁樹
    1961 年 34 巻 11 号 p. 596-609
    発行日: 1961/11/01
    公開日: 2008/12/24
    ジャーナル フリー
    宇部市周辺の海域の200本以上におよぶ試錐資料を検討した結果,この海域の沖積統下底面の地形は次のように要約される.
    (1) 厚東川の河口からその南方にかけての海域では,沖積統下底に埋没している礫層の上限面は-20~-35.7mに認められ,沖側にむけてほぼ一定の勾配で低下している.これを沖積統基底面と考える.当時の厚東川の曲流帯は,東西両側を比高10~15mの急崖でかぎられてVいた.
    (2) 厚狭・有帆両川の河口では,沖積統基底面は-14~-17mにあり,厚東川河口部とは6m前後の深度差を示している。両河口部におけるこの深度差は,最終氷期の低位海面時における同一水系の河口からの距離と勾配を反映しているものである.(3)東方海域の宇部岬沖の沖積統下底面 (-6~-14m) は,海成段丘面と考えられる.その形成時代は沖積統基底面以前であり,陸上の海成段丘とほぼ同時かないしはそれ以後と考えられる.
    (4) Stegodon orientalis OWENを産出した堆積層は,本海域の80~160mにおよぶことのある単一な厚泥層に一致している.瀬戸内面の形成はこの泥層を堆積せしめた時代的rangeの中にあてはめるべきで,時代的にはI2に相当する.
  • 宮地 良和
    1961 年 34 巻 11 号 p. 610-626
    発行日: 1961/11/01
    公開日: 2008/12/24
    ジャーナル フリー
    このモノグラフは従来等閑視されていた地域社会の生活意識を解明することにより,その存在の主体的意義を求めることを目的としている.
    これによると利島は大島および東京を相手に,椿油その他の商業生産をもつて生計をたてて行かねばならないにもかかわらず,本土に比してかなり平等的ながら停滞的な面が意識の根底に存在し,それがごとごとに発展を阻害している様子が解つてきた.このような利島の持つ社会的性格の形成には,島峻という自然地理的存在を基礎としながらも,その上にたてられたあらゆるコミュニケーシ.ンの歴吏的条件があずかつていると考えねばならないのであるが,これらの観点からいえることは,利島の今後の主体的志向がどのようにシフトするかは,マクロ的には客観条件の変化によるとしても,ミクロ的にはこのような社会的性格の基礎をなす「島民性」を内的に変革する力の如何にかかつており,かつそれらを等閑視すべきではないということである.そしてこの考え方をさらに一般化することによつて,人文地理学における過去の心理的相対主義を超克し,人類.生態学的な生活空間~地域社会の発展傾向における多様性に,理論的統一を与えることが出来ると筆者は考える.
  • 1961 年 34 巻 11 号 p. 627-630_2
    発行日: 1961/11/01
    公開日: 2008/12/24
    ジャーナル フリー
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