生地別人口統計,動態統計および生存率による人口移動の推計方法は,人口移動登録資料を持たない国の人口移動資料を得る主な方法である.
筆者は, 1950~55 年の日本の国内人口移動を,生存率による方法で,各県の市部,郡部別に推計した. 1950年の性・年令別人口資料が得られないため, Shortcut method による方法を採用し,補正因子を使つて,年令構成による誤差の補正を行つた.
日本の人口移動は,基本的には農業県から工業県への流出,および同一県内の農村部から都市への移動という2つの流れにより構成されているが,上述の方法による資料から,東京,大阪をはじめとする8大都府県への人口集中が最も特徴的であることがわかる.特に東京,大阪のそれは著しく,大きい人口流入量と高い移動率を持つている.また市部がマイナスの移動率を持つ県は24に及び,相当多量の市部がstationaryまたは滅少の人口状態を持つていることを示し,人口の大都市への集中が,工業化のおくれた県の市部人口の流出にも依つていることがわかる.
人口の都市集中の傾向は,各県の市部,郡部移動量を比較することにより, (1) 市部・郡部人口の遠距離移動, (2) 局地的都市集中, (3) 遠距離の人口集中,の3つの型に分類され,それぞれの県市部の持つ人口吸収力の大きさにより,各府県は上の3型のいずれかに属する.
兼業率,非農業部門への就業機会は移動率と相関々係を持ち,これらが人口移動状態を変える最も基本的な要因であると考えられる.またこれらの相関関係は,地域的な分布を持つている.
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