耕地整備のうち,耕地の区画整理を広島県全域にわたつて検討した結果,つぎのような事実が明らかとなつた.
1) 広島県における整理地の総計は6,203町歩になる.整理事業がもつとも進んだのは,1969年から1916年にかけてであり,地域的には県東半部の溜池地帯に多く,水田農業・地主制・土地条件などと関連して遂行された.主として山間の溜池や出水を用水源とする組合規模50町歩以下の小地域が多く,また耕作条件の不良な山間の侵蝕谷底部の湿田を対象とした場合が多い.
2) 整理施行地の地理的分布については,農地改革前後で質的な差異がある.地主制下の整理(たとえば庄原盆地)では,旧田の整理とあわせて開田が行なわれ,小作料の引き上げがなされた.農道や土地集団化の技術的な部面も地主的な性格が濃く,:農民の労働生産性については考慮の他にあつた.農地改革後の整理(たとえば西条盆地)では,国庫補助のほかの大部分は耕作者の土地投資であり,土地生産力と労働生産力との両面を考慮した農業経営の合理化への新しい変化が認められる.
3) 整理が振わない地域のうちには, a) 神:石高原・加計町付近・島嶼部などは地形や土地利用による障害がある. b) 甲山盆地のように水利慣行の強い存在が整理施要を阻害しているところもある. c) 瀬戸内海沿岸の諸都市の郊外では,集約的土地利用が行なわれ,各戸の所有面積や経営面積が零細をきわめ,整理にふみきろうとする共同意志が成立しにくいなどの理由があげられる.
抄録全体を表示