地理学評論
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35 巻, 9 号
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  • タノアデルタの場合
    菊池 一雅
    1962 年 35 巻 9 号 p. 413-426
    発行日: 1962/09/01
    公開日: 2008/12/24
    ジャーナル フリー
    ベトナムが南北に分れているのは,その歴吏過程に深い相違があると考えられる.北ベトナムの場合,トンキンデルタは(広義にタノアデルを含めて)メコンデルタと異つて,古くから土地利用が進行していたところであるが,そのなかにも多くの異質的な地域性が見出される.そうした土地利用(生産方法の配置につながる)は,社会変革にともなつてもつとも著しい変化をしめすものであるが,生産方法を変える基礎的条件のごつとしての自然と,どのような関係をもつて変遷をしてゆくかを考察したいと考える.本稿は,歴史と実証を重んじたフランスの人文地理学者の調査をもととしたが,問題意識の点で私見を試みたものである.
  • 太田 勇
    1962 年 35 巻 9 号 p. 427-442
    発行日: 1962/09/01
    公開日: 2008/12/24
    ジャーナル フリー
    わが国の工業化の過程で,工業発展が地域的にいかに異なつたかを考察する一端として,富士山麓紙業地域の調査をおこなつた.一般に産業の発展段階が低ければローカルな諸条件が工業の生産力や分布を規定しやすく,産業が高度化するにつれ工業存立基盤の地域的差異は小さくなる.本稿はここに焦点を合わせた調査の報告である.
    当地域は現在わが国第一の紙業地である.今日の繁栄の基礎は,移植工業(洋紙)と土着の工業(和紙)が地元の社会的・自然的な諸条件-明治以後急速に進んだ農民の階層分化・殖産興業熱・恵まれた水利・原木の存在など-を活用して成立したときに築かれた.しかし二度の大戦を経て進行した重工業化は,もはや当地域の内部事情と深くは結びついていない.
    工業が小規模で労働力を地元農村からのみえていた時代は,工業化に伴なう都市化は顕著でなく,労働力の農工分離も明瞭でなかつた.その分離を促進したのは,第一次大戦以降の全国的な工業化の波である.
  • 大越 勝秋
    1962 年 35 巻 9 号 p. 443-451
    発行日: 1962/09/01
    公開日: 2008/12/24
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は享保12年 (1727) から明治4年 (1871) まで144年の問,和泉国における1万石大名およびその家臣の治所,陣営,居住地として典型的な伯太陣屋村について区域,規模,構造などを明らかにしようとするにある.研究の方法として陣屋趾の位置,地形,景観の観察による現地調査に基づいて陣屋村の立地条件を明らかにした.次に筆者編集の小字名を集めた和泉町地名集(未刊),筆者製作の3000分の1の和泉町地籍地割全図,伯太陣屋村小字区画などの資料により伯太陣屋区域を明らかにすることにつとめた.さらに伯太藩史料の探索につとめ伯太藩直接吏料は散逸してなかつたが,旧藩士などの所蔵の向山家文書,向山家保管文書(旧今井家文書),片山家文書,太田家文書,岸和田高校蒐:集文書などの史料により陣屋村の規模(面積と戸数の変遷),構造(陣屋村絵図の比較研究)を明らかにすることにつとめ,さらに現存している武家屋敷として向山秀二宅,安沢松治郎宅などの調査により武家屋敷の特色を明らかにする方.法をとつた.その結果今までに得られた成果として伯太陣屋村は要害景勝の地で,陣屋村全体が自然的要塞をなして立地条件のすぐれていることがわかつた.享保元年入代将軍徳川吉宗が紀州家より江戸に入城した直後に,伯太藩所領集中地域の大庭寺から伯太に陣屋村を移した歴史的事情から考えて,徳州氏が譜代大名である岸和田城主岡部氏に対して,その背後から監視と牽制につとめさせた政治的配慮を見逃せない.陣屋村の規模として面積17町3反,最大戸数162戸,陣屋村の構造として城郭はないが,藩主邸宅兼政庁,牢獄,民政所,組部屋などの支配機関があつた.職人および商人の町家はないが作事小屋はある.神社2, 寺1で寺社は少ない.道路は枡型,鈎型,屈曲が多く,武家屋敷に特殊な望楼を設けるなど城の天守閣の展望に代る役貝のものもみられ,銃座など防御に留意したあとがうかがわれる.町家がない武士団の消費生活など不明な点も将来解明しなければならない課題の1つであろう.
  • 1962 年 35 巻 9 号 p. 452-475_2
    発行日: 1962/09/01
    公開日: 2008/12/24
    ジャーナル フリー
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