日本の砂浜海岸の沿岸断面測量が,1951年, 1952年の両年にわたつて,水路部により実施された.これらの調査結果から,筆者は目本の砂浜海岸を,主としてその断面形から,数種の海浜型に分類した.そしてこれらの海浜型の日本における分布を明らかにし,この分布と各海岸特性との諸関係より,これらの海浜型の形成条件について考察した.これらの結果を要約すれば次の通りである.
(1) 日本の砂浜海岸は5種の海浜型に分類される.
A. 平滑海岸 i. 急斜海岸 ii. 緩斜海岸
B.棚状海岸
C. bar海岸 i. 1段bar海岸 ii. 多段bar海岸
(2) 急斜海岸は日本海沿岸の富山湾東部,太平洋沿岸の駿河湾北部,相模湾北部に発達する.
(3) 緩斜海岸は北海道の根室海峡,太平洋沿岸の仙台湾,和歌ノ浦海岸及び瀬戸内海沿岸の中津海岸,別府湾岸に発達する.
(4) 棚状海岸は,海岸に局部的にのみ存在し,平滑海岸とbar海岸の漸移型である事を示す.
(5) 日本の主要な砂浜はbar海岸である.太平洋東岸及びオホーツク海沿岸の主要な砂浜は,1段bar海岸を示し,日本海沿岸及び太平洋南岸の大部分の砂浜は,多段bar海岸を示す.
(6) 日本における海浜型の分布は海岸の地理的位置に影響されている.即ち外洋に面する海岸は例外なしにbar海岸を示し,湾や海峡,内海等の内湾性海岸は何れも平滑海岸を示す.
(7) 海岸及び沿岸海底の勾配もまた,日本における海浜型の分布に関係をもつている.即ち1.0×10
-2~3.0×10
-2の勾配をもつ海岸はbar海岸を示すが,これよりも勾配が大きくても小さくてもbarを示さず,平滑海岸となる.
(8) 海岸及び沿岸海底の底質粒径もまた,海浜型の分布に影響する.即ち急斜海岸では例外なしに礫からなり,bar海岸は殆んど砂からなる.そして緩斜海岸は砂からなるが,局部的に泥を堆積する.
(9) 潮汐の影響は無視することは出来ないが,大潮差25m以下では各種の海浜型が存在し,海浜型の分布に直接影響しない.
(10) 波高は沿岸州の形成にとつて重要である.平滑海岸においては,平均波高0.6m以下であるが, bar海岸では一般に大きく,0.4~1.5mを示す.
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