海浜における運搬・堆積の問題についてアプローチを行なうため,浅海測量・波浪・風などの資料がある浮島・三保・高知の諸海岸で・粒径・円形度・扁平度などの諸性質を調査した.熊野浦海岸も含めた礫浜における堆積物の諸性質についての研究結果をつぎのようにまとめた.
(1) 海浜堆積物の粒径は,その供給源である河川堆積物の粒径に類似する.しかし,海浜における礫被は,河川堆積物における砂の割合や波浪とは関係がなく,海底勾配やバーの存在に大きな関係がある. (2) 局地的な粒径分布は,内陸側から汀線側へ粒径が次第に小さくなる構造の礫帯の集合である.このような礫帯は,砕波帯を表わし,波の到達回数の多い前浜や後浜前部は複雑,回数の少ない後浜後部は単純な形態を示す. (3) 波浪の性質が類似した海浜では,同じ粒径の礫は,量は異なるが,河口からの最大運搬距離は類似する.これは,広く開いた太平洋岸の海浜では,波浪め性質があまり異ならず, 256mm位までの礫なら海浜全体にわたって移動することを示す.このような海岸で,運搬方向に粒径が変化するのは礫量・地形・海底勾配などが異なるためである. (4) 海浜では,チャートのような硬い礫でも,磨耗作用によって円形度が高くなる.しかし,どんな礫質でも,運搬方向への円形度の増加は著しくなく,河川から海浜へ流出した場合も著しく増加しない.円形度が急激に高くなるのは,小岬で滞溜し,岩盤を通過して,磨耗が増加する問合に限られる. (5) 海浜礫は,円形度が増大するに従い,扁平度が増大する傾向がある.しかし,粒径が小さくなるほど,この傾向は不明瞭になり,まるく球状の礫になる.これは粒径の大きな礫と,小さな礫との磨耗過程が異なるためで,粒径の大きな礫ほど定着して磨耗されることを示す. (6) 32~16mmの硬砂岩礫が,平均円形度0.60・平均扁平度0.40以上を示す堆積物は,ほぼ海浜堆積物とみなして差支えない。
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