秋田県北部の米代川流域(花輪盆地~能代平野)に分布する第四紀の火山砕屑物の層序は露頭での上下関係,鉱物組成(とくに角閃石の有無),岩相などによって下から次のように区分される. (1) 長土路凝灰岩層, (2) 小坂軽石質火山灰層, (3) 小ケ田石質火山灰層, (4) 高市軽石質火山灰層, (5) 鳥越軽石質火山灰層, (6) 申ヶ野軽石質火山灰層, (7) 大湯軽石質火山礫層, (8) 毛馬内軽石質火山灰層. (7) は降下火砕堆積物, (1)(4)(5) は火砕流堆積物である.他は層相から火砕流堆積物と思われるが,確証を欠く.相馬の十和田湖での調査結果と比較すると, (7) (8) は十和田火山の第2期(中ノ海火山)の, (6) から下は第1期(十和田カルデラ以前)あるいはそれより古い堆積物と思われる.
これらの火山砕屑物とその二次堆積物の多くは段丘地形と密接なつながりをもっており,なかでも高市,鳥越,毛馬内軽石質火山灰層はその堆積面を段丘面として残している.鳥越軽石質火山灰層は花輪,大館両盆地において盆地内の起伏を埋めて堆積面を最も広く残しているが,その高度分布を見ると,両盆地内とも中央部で低く縁辺部に高くなり,沖積地とほぼ一様な比高を保っている.したがって堆積面の高さは噴出口から離れるほど低くなるとはかぎらず,原地形にかなり強く支配されているといえる.
鳥越,高市両軽石質火山灰層は鷹巣盆地において既存の段丘面を薄くほぼ一様な厚さで覆っているが,山蔭のようなところでは認めていない,火砕流として流下した際には,堆積物よりはるかに密度の小さい状態で雲のようにある高さまで覆って流れたためそのような分布を示すものと思われる.
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