地理学評論
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39 巻, 8 号
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  • 小元 久仁夫
    1966 年 39 巻 8 号 p. 521-537
    発行日: 1966/08/01
    公開日: 2008/12/24
    ジャーナル フリー
    火山地域における旧湖盆の地形学的研究の一つとして,那須火山帯に含まれる宮城県北西部の鳴子盆地を選び,地形や堆積環境の変遷を火成活動と地殼運動とに関連させて考察し,地形発達史を明らかにしようと試みた。 1) 鳴子盆地はその成因を第三紀の地殻運動に胚胎し,第四紀初期の地殻運動との重複や火成活動などの組合せによる“火山構造性陥没地”である. 2) 鳴子盆地の原形である“旧鳴子湖盆”は,洪積世後期には脊梁山地の隆起や埋積の進行により浅くなっていた.この頃から,鳴子火山の活動が盆地中央で活発になり始めた. 3) 旧鳴子湖盆の出現前から消失後にかけて間歓的な地盤の隆起があり,数段の侵食面や河成段丘面が形成された.これらの地形面の一部は,形成中やその後の地殻運動および火山活動の影響をうけて変位している. 4) 段丘・丘陵地形に変位を与えた地殻運動の一つは傾動運動と解され,その中心軸に対し“温湯—永志田構造線”を新たに想定する. 5)この地域に分布する火山灰は,大部分鳴子火山起源のもので,大学農場面以上に広く認められ,一部は東方で沖積面下に没している。
  • とくに冬の季節風に関連して
    河村 武
    1966 年 39 巻 8 号 p. 538-554
    発行日: 1966/08/01
    公開日: 2008/12/24
    ジャーナル フリー
    中部日本における冬の地上風の詳細な分布を,気圧配置とくに季節風に伴う気流型の変化と対応づけて明らかにすることを企てた.
    そのため,全域で約600地点の区内観測資料を記入した100枚の地上風の流線図を作成して検討した結果,季節風に伴う気流型の推移に対応して,局地風系の分布にも特色のある変化が認められた.この流線図を分類すると,その主要部分は第1表中の4種類に型分けされ,気圧配置との間に明らかな対応がある.とくに重要な点は,風道と考えられる強風域,主に地形の影響と思われる弱風域,異なった風系の間に見られる不連続線などが各型により,おおよそ定まった場所に出現することである(第10図).
    以上の事実にもとづき,具体的な作業規約に従って各型別の詳細な風の分布図(第6図~第9図)を作成して,局地風の分布の特徴を明らかにした.最後にこの図に表わされた局地風系が気温あるいは場合によっては天気の分布に対して,深い関係があることを指摘した.
  • 冨田 芳郎
    1966 年 39 巻 8 号 p. 555-563
    発行日: 1966/08/01
    公開日: 2008/12/24
    ジャーナル フリー
    これまで天竜川はその中流の中部(なかっぺ)付近で豊川を截頭し,その後に天竜水系の大千瀬川が豊川の旧河谷の風隙からその空谷或は化石谷に沿って頭部侵食による分水移動を行って,現在池場の長さ500m内外,海抜321mの谷中分水で裁頭後の豊川本流の源流と対峙していると考えられている.しかしこの池場の谷の地形を見ると,豊川の截頭前の旧河谷とは考えられず,むしろ西南日本の地体構造における内帯と外帯との境界線をなす中央構造線に沿う断層谷とみるべきで,この戴頭による流路争奪の事実はこの地域の地形発達史の現段階では考えられない.すなわち,池場とその西側の上流河谷の幅は,谷中谷の上谷があるとしても,旧豊川本流河谷としては甚だ狭いし,池場の両側の谷壁は,所謂screesというべき崖錐斜面であり,谷底はU字形の盆谷 (Muldental) で,流路の跡と見るべき河床の地形ではない.また池場の谷底の堆積物は拳大栗実大の亜角礫と粘土質の軟かいmatrixから成り,土石流による無層理又は不整層理の崩れ易い堆積物から成り,裁頭前の豊川の中流性旧河床を立証するような河流堆積層は認められない.ただ池場の谷の東西両側の谷底にそれぞれ現在の小流による小段丘があるだけである.さらに池場の谷の断層は崖錐層の被覆で確認されないが,池場から松平に至る間の流紋岩や石英安山岩には鏡肌を示す節理面があって板状節理を示し,節理面の方向が屡々中央構造線の方向と一致するものがあることから,この構造線に沿う破砕帯と考えられる.
    由来断層谷といっても,多くはそこには河が流れて,河蝕が行われるが,この点では池場の谷は純粋な断層谷といえよう.しかし規模が小さいが,ここからENEの天竜川支流の水窪川の西方にあって,明かに中央構造線に沿った断層谷と見るべきものが,18km内外の長さで,佐久間から水窪まで及んでいる.1部は水窪川の支流や天竜小支流の厚地川で削られているが,その谷間では,開析段丘面のような緩斜面は崖錐の堆積面である.またこの谷には河蝕による分水峠があるが,一連の断層谷と見るべきで,池場の谷はその一小部分としての地形はよく似ているので,池場の谷を断層谷と認定して,この谷は戯頭された豊川の旧河谷ではなく,流路争奪の事実を疑うのである.
  • 1966 年 39 巻 8 号 p. 564-576_2
    発行日: 1966/08/01
    公開日: 2008/12/24
    ジャーナル フリー
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