蔵王火山およびその周辺の土壌母材を構成している火山灰を大別すると,褐色火山灰(土色はおもに10 YR 4/6) と黒色火山灰(土色はおもに 10 YR 2/2)とになる,褐色火山灰は火山およびその周辺に広く分布しているが,黒色火山灰は局地的分布をなし,火口湖「御釜」を中心として半円弧を描くように,東麓の七日原以北から川崎町,さらに北麓方面笹谷峠付近まで分布し,褐色火山灰をおおっているが,中には褐色火山灰層中に夾層となっている地域もある,
黒色火山灰の土色は,紫蘇輝石・普通輝石・磁鉄鉱・黒色ガラスなどに由来するもので,腐植によるものではない,また斜長石を多く含み,このためCa分に富み,土壌酸性度ば中性に近い(おおむねpH 6,0以上).無施肥料下における黒色火山灰地区の植物成長は,褐色火山灰地区のものに比し割合に良好である,
一般に日本の火山灰は,風化・溶脱の進捗が早くせき薄といわれているが,この黒色火山灰は,おもに有史以後の火山活動の結果,噴出堆積した比較的新しい火山灰であり溶脱があまり進んでいない,黒色火山灰は,長期間に鉱物中の成分が溶脱され,更に鉄分の酸化とともに,褐色火山灰に移行するものと考えられる.
風化・溶脱の進捗程度は,火山灰粒径の大小および外界因子としての降水量・気温・また火山灰の降灰年代などと密接な関係があるため,地域によって差異を生ずる.気温高く降水量多い地域では風化・溶脱の進捗が早く,これに反する地域では遅いものと推定される.
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