本稿は,横浜市をはじめ.市周辺の急激な宅地開発の趨勢を見るにつけ,その実態を量的かつ図的にとらえてみようとしたものである.まず,宅地造成を土木工事とその費用から関連づけ,宅地造成面積と移動土量との関係や宅地造成地と原:地形との比較から,宅地造成の地域差は,原地形の違いよりも開発主体の組織力の違いによって現われることがわかった.つぎに,宅地造成工事に選定された地点を整理して,大きく5類型に分類した.上記の結果と合わせて活用すれぽ,この分類は今後の宅地開発に何らかの参考になろう.また,横浜市における過去5ヵ年の宅地造成の推移を区別にその面積および件数などで考察した.これらを通じて,開発に用いる地図の作製やそのとらえ方は,その時代の社会の要求に対応したものでなけれぽならないことを痛感した.最後に,上述の調査に基づき,関東地方と日本全土の宅地造成の可能地と既存の.市的居住地との割合を巨視的にとらえ,新しい宅地造成の動向を究明した.市的居住地の高密度地域や低密度地域が明らかになったと同時に,日本の宅地造成が従来の低地から台地や丘陵あるいは山麓斜面に移動していることがわかった.
人間活動と土地との結合過程を正しくとらえ,これを地域構造の中で体系づけるのは,地理学以外には少ないであろう.
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