堀込港湾造成を核とする工業開発は,開発減歩による著しい経営耕地の縮少,並びに相対的な労働力の余剰化と,農地代金の入手による農業資本の増大等をもって,集約経営の可能性と必要性とを農業に与える.一方,開発減歩による主業経営規模の喪失,並びに農業所得の低下と,建設,工場労務需要等の大量発生による労働力流出とは,兼業経営の必要性と可能性をも,同時にもたらすことが図式的には予測される.
その結果,土地所有態様の変化や経営組織の再編成を伴って,農産物商品化と労働力商品化とのいずれかを指向する,農業経営組織上の変化が進行することになる.この場合,いずれを指向するかは,地域農業に内在する経営条件,或いはこれをとりまく自然的,社会的条件によって規定されると考える.
以上のような考え方のもとに,標記地域における農業対応の実態と,これを規定する諸要因について,経営組織,特に作目編成の変更を視点にして,比較検討を試みた.以下これを要約すると,次のようになる.
鹿島,新潟等の砂丘畑作地域では,開発減歩に対して,資本集約的農業の成立がみられ,一方,田子浦,新湊等の水田地域では,経営組織転換の動向は弱く,深刻な労働力流出を伴う,全面的な農業の崩かいが進行している.前者では鹿島,後者では新湊において,一層顕著な現象となっている.
なお,農業対応上の地域性を規定する要因のうち,内部要因的には,各開発地域農業が内包する個別的条件,とくに自然条件と,これに規制される土地利用態様,ならびに土地所有態様を,また外部要因的には,用地取得方式や,農業対策等の行政施策差を,中枢的な要因として指摘することができる.
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