農基法の登場からいわゆる “'70年代の総合農政”へと,日本の農業は国際化への歩みを急速にたどっている.ここで予期される展望は,国際競争力を備えた農業と農民だけが,自立経営として生き残れるということである.この事態が実現された場合,日本の農業はどうなるかという問題はさておき,この際すでに実質的には価格政策を放棄され,国際化の波に直接さらされてきた農業,つまり普通畑作農業のたどった道を確認しておくことは決して無益なことではないだろう.それは少なくとも東北地方北部に関する限り,農政が期待するような規模の生産性を追求する方向はほとんど認められず,圧倒的多数の農民は兼業化への道を歩み,土地利用の粗放化が著しく進展するにとどまった.そして専業として農村に留まる少数の農民の経営基盤は,畑地の転換によって拡充しえた米作部門であったのである.現在の農業問題とそれの地域的展開を考察する場合,この事実を避けることはできないであろう.
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