低位生産地の農業が一つの発展を遂げた状況を,とくに零細農の構造的変動についてミクロに分析した.
1. この砂丘地では,新国道の縦貫と灌漑の普及により,近年,急速に野菜栽培が拡がった.
2. 農家における変化は,とくに零細農に強く,粗放的な農業から,作物の商品化上昇を目指す方向に変っている.土地利用の集約化,野菜生産の増加は家族労働の強化となっている.婦人労働の激しさに加えて,農外兼業に出ている青壮年男子も農業機械の操作などで,家族の日常生活はきわめて多忙となっている.
3. 昭和43~44年にかけて,国道沿線にビニール水田が建設され,水田を持たない農民も精神的安定感を得た.ビニール水田の成績は良好である.現下の米生産調整政策により,水稲よりも畑作物の栽培が多いが,干天に強い特性を発揮している.
4. 産業の変革・前進には一握りのパイオニアが必要で,この地でも,畑作灌漑・ビニール水田・耕地整理・青果物販売等に,パイオニア達の果たした役割を見逃すことはできない.
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