天草島北岸地域に分布する海岸段丘の調査により,古有明海の形成時期とその後の地形発達を考察した.段丘面は高位よりH
1,H
2,M
1,M
2,A
p,Lの各面に分けられる.H
1面とH
2面はともに主として古第三紀層と前期更新世の佐伊津層を切る侵蝕面からなる.M、面は波蝕台起源の侵蝕面が主であるが,志岐トラフでは,一部で海棲貝化石を含む,厚い釜層の堆積面からなる.古有明海はM
1面を形成した時の海域をさし,それは北部有明海の諌早地峡から東へのびる湾入と南部有明海の志岐トラフを通しての湾入からなっていた.その時期は下末吉期と考えられる.これ以後は海退に転じ,M
2面はその初期に,また最終・最大海退期に近い時期にL面が形成された.L面はその末端が沖積面下に埋没するが,南部有明海に広くみられる-10~-20m面に連続すると思われる.M
2面とL面の中間の時期に阿蘇火砕流が流入しA
p面を形成した.
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