地理学評論
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49 巻, 4 号
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  • 菅野 峰明
    1976 年 49 巻 4 号 p. 197-216
    発行日: 1976/04/01
    公開日: 2008/12/24
    ジャーナル フリー
    物資の流動パターンは地域の社会・経済活動に関係しており,地域の特徴が誘因となって物資の流動が生じ,また逆に,その流動が原因となって地域の特徴をさらに変化させる.しかし,物資の流動パターンはどのような社会・経済的特性と関連しているかについては十分に明らかになっているとはいい難い.
    本論では,アメリカ合衆国の主要な大都市地域間の物資流動パターンとそれらの地域の社会・経済構造の関係を明らかにするため, 43の社会・経済的変数と25の大都市地域間の物資流動(OD行列)にそれぞれ因子分析を適用して, 8つの社会・経済的因子, 6つの消費地域(着地域群), 7つの生産地域(発地域群)を抽出し,これらの社会・経済的因子と消費地域・生産地域との関係を正準相関分析によって考察した.
    8つの社会・経済的因子と6つの消費地域との関係の中では,統計的に3つの関係が有意であった.それらの関係はそれぞれ次のことを示唆している.すなわち,(1)アメリカ合衆国北東部メガロポリス南部への物資の供給は,人口密度・都市成長率の高い大都市地域から行なわれている.しかし,これらの供給地は消費地域自体かあるいはその周辺の大都市地域である.(2)太平洋岸の消費地域への物資の供給は,この消費地域内部で相互に行なわれており,さらに,この消費地域は失業率が比較的高いのが特徴である.(3)アメリカ合衆国北東部メガロポリス北部への物資の供給は,低所得・家族規模の小さい大都市地域から行なわれている.これは石油を供給するヒューストン地域の影響が大きい.
    8つの社会・経済的因子と7つの生産地域との関係の中では,統計的に5つの関係が有意であった.それらの関係はそれぞれ次のことを示唆している・すなわち,(1)太平洋岸生産地域からの物資は失業率の比較的低い大都市地域(アメリカ合衆国北東部)に向かう.(2)アメリカ合衆国北東部生産地域からの物資は規模の大きな大都市地域(アメリカ合衆国北東部)に向かう.(3)五大湖南部生産地域からの物資は黒人人口率が高く,その上サービス業の比較的少ない大都市地域に向かう.(4)アメリカ合衆国北東部メガロポリス南部の生産地域からの物資は居住密度の高い大都市地域に向かう.(5)サンフランシスコ・ロスアンジェルスからの物資はサービス業の多い大都市地域に向かう.
    以上のことから,消費地域・生産地域はともに近接した大都市地域から形成される傾向にあるが,ある地域の社会・経済的特性の違いによって,物資の流動パターンが形成されることもあるといえる.
  • 徳島県木頭村と愛媛県日吉村の事例
    篠原 重則
    1976 年 49 巻 4 号 p. 217-235
    発行日: 1976/04/01
    公開日: 2008/12/24
    ジャーナル フリー
    本研究は,過疎対策の一環として行なわれている集落移転の実態とその問題点を四国山地の2つの村に事例を求めて究明することを目的とした.
    事例研究地の対象とした徳島県木頭村は,西日本有数の林業地帯である.大山林地主の林業労務によって生計を維持する山間僻地の小集落の住民は,役場付近の新集落への移転には容易に応じたが,共同体的性格の稀薄さから住民意識は統一されず,脱落集落や脱落住民も出た.一方,愛媛県日吉村は,林業地帯としての発展が遅れ,共有林を媒介にした共同体的性格の濃厚な山村である.移転対象集落の住民は,役場付近の新集落への集団移住には容易に応じたが,共同体的性格の強さから新集落には融合していない.
    両村における集落移転事業は,移住者には社会生活上の便利さを,行政当局には住民への社会サービスの負担軽減をもたらしたが,移住者は移転前の山間地へ林業労務や自営通勤林業に通うものが多く,その経済活動には問題点が多い.
  • 田中 正央, 森 正樹
    1976 年 49 巻 4 号 p. 236-248
    発行日: 1976/04/01
    公開日: 2008/12/24
    ジャーナル フリー
    丹沢山地東北部の2地区,それぞれ3km2と4km2について,精確な崩壊地分布図(縮尺5千分の1)を1946年および1971年撮影の空中写真から作成した.
    既往の資料に基づき, 1つの中小規模の山崩れによる崩壊量を2m3/m2, 山崩れ後の崩壊裸地での岩屑生産速度を3×10-2m3/m2・year, 植被におおわれた崩壊地での岩屑生産速度を10-3m3/m2・year, 山崩れを生じたことのない植被地の土壌浸食速度を10-4m3/m2・yearと想定し, 1946年以後生じた山崩れの発生と崩壊地のその後の変遷を考慮して,最近25年間の調査地における浸食量を求めた.
    この山崩れは5年に1回発生しているとすれぽ,この25年間の年平均単位面積当りの浸食速度は, 103m3/km2・yearのオーダーである.こ一の値は,ダムの堆砂量から求められた日本各地の山地の浸食速度の比較的大きな値と等しい.
    調査地域の山崩れは小規模なものであるが,数年間隔で発生しているとみられる.こうした山崩れや土壌浸食等は,いわば定常的な浸食作用であり,それが累積すると量的には発生間隔の長い大規模山崩れに匹敵する効果を持つと考えられる.
  • 金田 章裕
    1976 年 49 巻 4 号 p. 249-266
    発行日: 1976/04/01
    公開日: 2008/12/24
    ジャーナル フリー
    摂津・河内・大和・山城・伊勢・尾張などでは条里地割の内部に島畑が存在している.このような島畑景観の起源は条里地割そのものの起源とは別に検討を必要とするものであり,文献史料と現地の地割形態との対比の結果,明確に確認されるのは14世紀末であり, 12世紀以前においてはまだ形成されていなかったと考えられる.律:令制下では本来畑は制度的に田と異なり,かつその評価も低かったが,11世紀以後の制度的な差異の消滅および土地利用の進展の結果,例えば15世紀初めには田畑が同一の評価を受けていた例も確認される.この頃には従つて田畑共に有効に利用する集約的な土地利用形態と結びつく島畑景観形成の経済的・社会的条件は一応満足することとなり,前述の起源とも合致する.このような島畑景観形成のプロセスは,微地形・表層地質の調査・検討の結果とも矛盾せず,むしろ検証されるものである.
  • 1976 年 49 巻 4 号 p. 267-282_2
    発行日: 1976/04/01
    公開日: 2008/12/24
    ジャーナル フリー
  • 1976 年 49 巻 4 号 p. e1
    発行日: 1976年
    公開日: 2008/12/24
    ジャーナル フリー
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