地理学評論
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54 巻, 2 号
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  • 中川 清隆
    1981 年 54 巻 2 号 p. 57-71
    発行日: 1981/02/01
    公開日: 2008/12/24
    ジャーナル フリー
    土佐清水は,現在14あるわが国の直達日射量観測官署の中では周囲20km以内の人口が最小で(約2.5万人),太平洋ベルト地帯から遠隔の地でもあるので,日本のバック・グラウンド状態に近いと思われる.この土佐清水における大気透過率の第2次世界大戦終戦後の長期変動を調査する. 1945年~1979年の35年間に土佐清水で1,627回観測された大気透過率の回帰分析から,平均して10年間に約0.018の割合で大気透過率が減少する長期的傾向の存在が明らかになる.この事実は,人類の社会経済活動に起源をもつ人工のエーロゾルの増加によるバック・グラウンド大気汚染の進展を示唆している.回帰直線からの残差の調和解析によって, 35年間に1~140回振動する波を抽出する. 1年周期および半年周期の振動が卓越していることが明らかになる。また, 7~35年周期の波を合成して得られる曲線の極小期が世界の火山大噴火と良く対応することが示される.この事実は,この程度の周期の大気透過率の振動が火山灰による成層圏汚染に起因していることを示唆している.
  • 松本 秀明
    1981 年 54 巻 2 号 p. 72-85
    発行日: 1981/02/01
    公開日: 2008/12/24
    ジャーナル フリー
    仙台平野における沖積層の堆積構造を明らかにするため,野外調査・ボーリング資料解析および14C年代測定を行なった.これをもとに約1万年前以降の海岸線変化を復元し,後氷期の海水準変化との関係から仙台平野の地形発達を考察した.
    仙台平野の沖積層は堆積環境の違いをもとに8層に細分される.とくに海成層の堆積状態に注目し,海域変化を復元した結果,後氷期の急速な海水準上昇による海域の最拡大期は,阿武隈川の埋積谷においては海水準が-10mに達する7,900年前,名取川・七北田川の埋積谷においてはそれぞれ海水準が-7m, -5mに達する7,500年前, 7,200年前にあり,その後は陸側からの土砂による海底埋積速度が海水準上昇速度を相対的に上まわることにより,海水準は上昇しながらも陸域の拡大によって海域は後退し,現在に到るものと考える.
  • 野上 道男
    1981 年 54 巻 2 号 p. 86-101
    発行日: 1981/02/01
    公開日: 2008/12/24
    ジャーナル フリー
    平野(1966a)によって提案されたモデル,
    ut=auxx+bux
    を河川縦断面形の発達過程に適用し,土砂流量
    J=-(aux+bu)
    の面から検討を加えた.上の2階偏微分方程式は移流を伴う拡散過程を表わす式でもある.高度(拡散問題では濃度に相当)を構成するすべての粒子がブラウン運動を行なっているとするか,あるいは土砂流量が勾配に正比例するということを前提として認めるか,このいずれかであれば地形発達過程を(移流のない)拡散過程でアナロジーすることができる.上に凹である河川縦断面形において,上の式の拡散項が堆積を表わし,移流項が侵蝕を表わす.移流項による土砂の流れはその方向が勾配の向きとは逆であり(拡散流はもちろん順方向),移流に相当するものとして,高度に比例するような流量を生じさせるどのような強制力を想定すればよいのか,地形的あるいは物理的解釈が難しい.このように拡散相当項については大きな仮定または前提があり,移流相当項についてはその強制力が何であるか特定できないなど,モデルとしての物理的根拠が薄弱であるという欠点がこの数学モデルにはある.しかし,数学的な形式は整っておりその定常解が,河川の平衡縦断面形として最もふさわしい指数曲線,
    u=C1+C2 exp(-rx) (ただし, r=b/a; C1, C2……定数)
    になるという大きな利点がある.そこで,このモデルを多摩川の段丘発達のシミュレーションに適用してみた.段丘面の縦断面形については寿円(1965b)のデータを用い,武蔵野面のそれを初期条件とした.境界条件としては定点である上端の土砂流量で与えることが望ましいのであるが,そうすると問題が不適切となるので,定点の勾配を時間の関数として指定することにした.下端は河口にとったが,河口における勾配一定という条件のもとで,海面高度を時間の関数で指定するという方法によった(自由境界値問題).係数a, bと平衡縦断面形の形状係数rの間にはr=b/aという関係があるが, aまたはbの値は現在の平衡土砂流量の推定値から計算で求め,各時代のaまたはbの値はこの値を基準にしてシミュレーションをくりかえし,平衡土砂流量が不合理な値とならないような値を選んだ.
    シミュレーションの結果は良好で現実の河川縦断面形の発達をよく表現することができた.たとえば,最上流部のfill-strathing,更新世末の中上流部における古い面へのoverflow,下流部における海面低下に起因する谷地形の形成,後氷期の海面上昇による溺れ谷地形の形成,そして最近7,000年間の堆積の進行による河口の前進などがうまく表現されている.
  • 1981 年 54 巻 2 号 p. 102-105,110
    発行日: 1981/02/01
    公開日: 2008/12/24
    ジャーナル フリー
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