山崎断層系の中・西部に見られる断層変位地形を記載した.その特徴は次のようにまとめることができる.
1. 全長80kmに及ぶ山崎断層系は中国山地東端部の南麓に位置し,この地域の地形発達に大きな役割を果たしている.山崎断層系は3~4本の長い断層とそれに付随する数本の短い断層からなる活断層系で,北東地塊の隆起成分を伴う左横ずれ断層である.
2. 山崎断層系を構成するおのおのの断層は一部重複するように配列しているが,鮮明な断層地形から見て,現在も活発な断層運動が起きていると推定される区間は山崎断層系の一般走向の方向に重複することがなく,変位は構成する断層間で乗り移っていると考えられる.また,この変位の乗り移り部分では,長い断層と斜交する短い断層が観察される.
3. 山崎断層系の北西端では,変位は数本の断層に分散していると考えられる.
4. 数多く観察される横ずれ谷の断層線より上流部の長さ (L) とその河谷の屈曲量 (D) の間にD=aL (a;定数)の関係が成り立つ地区は少ない.
5. 横ずれ断層が存在する山地内には,さまざまな発達段階の地形が山崎断層系に沿って観察され,特に河川の争奪が頻繁に起きている.また比較的大きな河川に断層変位が認められないことは,この断層の運動様式と河川の浸食形態との相互関係によって説明可能である.
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