木曾山脈・檜尾岳南西の線状凹地は,この山脈で広域的に分布する北東一南西性の線状凹地のうち,最大級の凹地である.本稿では,この線状凹地の成因と形成環境を,檜尾断暦Iの活動との関連で検討した.
檜尾断層1は,北東一南西性の並進断層であり,また高角度の左正移動断層でもある.この断層は,領家帯の構造線である小屋敷断層が檜尾岳~熊沢岳間の鞍部を横断する部分に相当するが,この付近では,ほぼ流理面に沿って活動し,周氷河性平滑斜面を変位させた.断層線の全長は1.6km以上に達する.実移動は最大でも17m程度,また垂直移動,走向移動はそれぞれ11~14m, 5~7mであったとみられる.断層の活動期は,晩氷期以降であった可能性が強い.線状凹地は,この断層の活動によって生じた断層変位地形である.線状凹地の形態的特徴のみによって,檜尾断層Iの垂直移動の量,断層面の傾斜角を推定すると,かなりの誤差が生じ,それぞれ18~43%, 8~35%に達する.
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