都市内外の屋上面における冬季夜間の長波放射収支成分の相違を示し,さらに,都市屋上面の長波放射場に及ぼす都市大気の影響(しゃへい効果)について論じる.観測は, 1969年12月下旬から1970年1月上旬に,夜間の完全快晴時を選んで,大都市東京およびその周辺の屋上面で実施された.長波放射収支量 (
RN) は風防型放射収支計で直接測定され,さらに,サーミスター温度計による屋上面温度の測定値を用いて,上向き長波放射量(
R↑)および下向き長波放射量 (
R↓) が求められた.その結果,弱風下の都市内で高温多湿汚染大気が存在する「通常の都市大気」環境下では,都市域における
R↑の平均増加率は4.2%で,
R↓のそれは6.9%もあった.したがって,
RNの平均増加率は-4.5%となり,この都市内外の
RNの相違が都市域の冷却を相対的に緩和し,ヒートアイランドを強化する因子の一つとして作用していることが判明した.このときの
R↓の都市域における増加の原因について,
R↓を算定するための理論計算スキームなどを用いて若干の考察をした結果,都市内外の温度・湿度の鉛直分布の相違のみでは説明しえず,大気汚染物質による付加放射(汚染効果)も関与していることがわかった.都市内外ともほぼ一様な清浄な大気環境下での対照的な観測例についてもあわせて示されている.
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