地理学評論 Ser. A
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70 巻, 4 号
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  • 岡田 俊裕
    1997 年 70 巻 4 号 p. 193-215
    発行日: 1997/04/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    小川琢治は中国への並々ならぬ関心を終生持ち続けた.その契機は『台湾諸島誌』 (1896) の執筆にあり,その際重用した中国の古地誌・史料への興味が歴史地理研究へと向かわせた.彼は,儒家によって異端邪教視された史料を重用し,中国の地理的知識の拡大過程および古代の東アジア世界と地中海世界との地域交流などを考究した.以後,歴史地理学ないし地理学史研究が京都(帝国)大学における地理学研究の伝統となった.また彼は,情況に対応した中国経営論を展開した.その視点は植民地経営者のものであったが,研究者としての見識も示した.しかし,反日・抗日運動が活発化した蘆溝橋事件以後は一変し,中国との連携志向を失った.このような論策の背景には,自らが先鞭をつけた戦争地理学研究があった.それは当初政治学の分科ゲオポリティクとは区別されたが, 1930年代にはゲオポリティクを政治地理学の分科と規定し,同じ政治地理学の分科である戦争地理学がゲオポリティク的要素を含むことを理論づけた.それを踏まえて中国経営論も変容したと考えられる.
  • 岩間 英夫
    1997 年 70 巻 4 号 p. 216-234
    発行日: 1997/04/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    本稿は,わが国における近代鉄鉱工業の発祥地である釜石を対象に,鉄鉱工業地域社会の内部構造の発達過程を明らかにした.その際,宇部・日立の単一鉱工業地域社会における内部構造の発達過程と比較し,その類似性と相違性に留意した.
    釜石におけるマニュファクチュア段階での内部構造は,藩営時代の番所を中心に生産機能が展開する一極型であった.官営時代には役所を中心に,生産に加えて居住機能が展開する一極型となった.
    近代資本の田中製鉄所時代になると事務所を中心に生産,商業・サービス,居住の3機能からなる一極型圏構造の工業地域社会に,さらに銑鋼一貫生産体制の導入によって,一連極型圏構造の工業地域社会に発達した.生産増大に伴う生産機能地域の拡大は商業・サービス機能と居住機能を外方に押し出し,関連地域社会と重なる形で都市化を促進させ,一連極型圏構造の工業都市に成長した.
    宇部・日立が工業の一層の発展によって都市の性格を強くしたのに対し,釜石は工業の衰退に伴う跡地の都市的利用などによって都市の性格に変化した.
    単一鉱工業地域社会における内部構造の発達は,宇部・日立に典型的に見られるように,一極型から多極型へ,さらに一核心型圏構造への展開である.それに対して,釜石にあっては一極型から一連極型圏構造へと展開したが,一核心型圏構造の発達を見なかった.これは銑鋼一貫生産形態という大規模装置型生産の特性と地形による制約に起因する.
  • 藤目 節夫
    1997 年 70 巻 4 号 p. 235-254
    発行日: 1997/04/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    ある特定地域の生活の質 (quality of life, QOL) を評価する場合には,当該地域のみならず隣接する地域のQOLを構成する指標をも考慮する必要があるとの基本的認識から,近接性を考慮したQOLを評価する方法を提案し,これを愛媛県70市町村に適用し,近接性を考慮した場合と考慮しない場合のQOLを求めた.その結果,近接性を考慮した場合のQOLのパターンは,考慮しない場合のそれとはかなり異なること,とくに松山市などの中心都市の周辺地域でのQOLの評価の向上が顕著であること,などが明らかとなった.周辺地域住民が短時間で容易に中心都市を訪問できることを考えると,この結果は,近接性を考慮しない場合に比較し,各地域のQOLをより的確に評価していると考えられ, QOLを評価する対象地域が相互に隣接している場合には,近接性を考慮する必要性があることが示唆された.
  • 1997 年 70 巻 4 号 p. 255-257,261_1
    発行日: 1997/04/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
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