千葉県旭市における施設園芸を事例に,近年における農作物の産地がいかに維持されるかを,個々の農家における革新技術の導入過程に注目して明らかにした.旭市においては,1960年代後半から施設型の野菜園芸が盛んになり,1980年代以降は施設園芸農家数と栽培面積がほぼ安定した状態になる.事例地区における施設園芸農家は,2世代揃う家族労働力,平均37aの施設,水稲作との複合経営を経営基盤としつつ,近年,花卉園芸に転換したり,野菜類の新品種を導入したりして,農業経営を維持してきた.花卉園芸や野菜類の新品種を先覚的に導入したのは,施設園芸2代目の男子後継者のいる農家であった.この後継者たちは,旭市外部の先覚的な生産者グループ,種苗会社,卸売市場など,広域的な範囲から情報を収集してきた.
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