Geographical review of Japan, Series B
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57 巻 , 1 号
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  • 位相地理学への試み
    水津 一朗
    1984 年 57 巻 1 号 p. 1-21
    発行日: 1984/04/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    景観の各レベルの分節には,〈素材∈形態素⊂構成要素〉,〈構成要素⊂景観の部分〉の関係がみられる.「地域」とは,かかる関係をもつ景観の各分節を地と図とするとともに,各分節を改変し,再編成する身体的行動の軌跡が,重層する場所のまとまりと考えられる.そこでまず,景観を生地とする「地域」にひそむ言語との構造的対応が明らかにされる.
    さて日本には古来,一種の時空連続体としての「間」の考え方があった.「間」は,空間と時間とともに,さらにそこにおかれた事物相互の間柄をも含む流動的な概念である.さまざまな行動が,具象的な形をとって「間」の中に現実化すると考えられた.したがって,日本に特有の形態素群で構成された景観の各分節を地と図とする行動 (parole) を規定してきた伝統的なコード(langue) の中には,「間」に独特の構造を付与するものがあると推定される.
    本稿の目的は,日本における歴史地理学研究の成果を踏まえて,そのコードの存在を検証し,かつそれらの特性を比較地理学的に解明するとともに,それらがユークリッド空間を包む位相空間と対応する側面のあることを探り,さらに具体的に,景観の形態発生を位相数学の分岐理論に即して説明することである.あわせて,「地域」一般のトポロジカルな深層構造の一端をも明らかにしたい.
  • 田辺 裕
    1984 年 57 巻 1 号 p. 22-42
    発行日: 1984/04/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    日本における市町村の境界は,近代的市町村制度が成立する以前から存在していたことを前提としている.したがって,いわゆる境界紛争は既存の境界が不分明になっているから起ることとなり,その解決は原則として確認行為によって求められるのであって,創設行為によることはない.しかし現実には,特に近年における工業化にともなう埋立地の拡大によって,既存の境界自体の確認はきわめて困難になってきている.本稿では,大牟田市と荒尾市との埋立地における紛争を,先行境界・追認境界・上置境界の三つの観点から双方の主張を分析することによって,解決する糸口を見出すとともに,日本の行政領域や境界の考え方の特質を明かにすることを試みた.先行境界については,武家諸法度にさかのぼって漁業法にも規定された漁場の占有権の水上境界が,三井砿山などの埋立によって消滅しながらも,なお現在に残っていることを,歴史的にあとずけ,また両市の主張の根拠ともなっている地図類を推計学的に考察し,追認境界については,現地調査によって実質的な両市の支配圏をもとめて,現実に存在する境界と両市の主張線とを対比した.上置境界については,水上境界の一般形態である等距離線(向い線)の特殊形態である地上境界の末端としての海岸線における垂線(隣り線)を幾何学的に求めて,これと両主張線とを比較した.このようにして得た地理学的境界は大牟田市に有利なものとなったが,そのことによって,むしろ両市の妥協を見ることが出来た.両市の理事者の政治的判断を評価するとともに,地理学の一つの応用事例としても,興味深い結論となった.
  • 阿部 和俊
    1984 年 57 巻 1 号 p. 43-67
    発行日: 1984/04/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    本稿の目的はわが国の主要都市における本社,支所機能について,歴史的経緯をふまえつつ現況を中心に述べることにある.考察した結果は,以下の通りである.
    まず第一に,都市におけるこの機能の集積をみると, 1907年にはかつての6大都市(東京,大阪,名古屋,横浜,京都,神戸)に多くの集積がみられ,さらに地方の都市にも相当数の本社の存在が認められた.しかし,次第に地方都市の本社は減少し,かわって大都市,とくに東京の本社が増加し続ける.この傾向は基本的に現在も変わっていない.
    横浜,京都,神戸における集積は1935年以降,とくに戦後になってあまり伸びず,逆に1935年に成長の兆しをみせ始めていた地方の中心的な都市での集積が急激に伸長し, 1960年以後完全に逆転した.また,新潟,静岡,千葉,金沢,富山,岡山といった地方都市での増加も著しい.第1表からみてもこの傾向は今後続くであろう.しかし,東京,大阪,名古屋では1980年においては,対象企業数が増加しなかったためか,その集積は停滞気味であった。地方の中心的な都市がわずかとはいえ増加していることと対照的で,今後これがどのように推移するかを注目したい.
    これら本社,支所の業種を検討すると,初期においては鉄鋼諸機械,化学・ゴム・窯業部門は少なかったが, 1935年を境にこの部門は増加する.とくに, 1960年以後はこの傾向が一層強まる.とりわけ鉄鋼諸機械の支所は1935年から増加し始め,第二次大戦後は最も重要な業種となった.その集積は当初,東京,大阪,名古屋の三大都市に多くみられたが,次第に地方の中心的な都市においても増加してきている.建設業の本社,支所が戦後に増加するのも注目しておきたい.もっとも,支所の延べ数においては,金融・保険がその性格上圧倒的に多い.横浜,京都,神戸と上述の新潟以下の諸都市では,これら機能の集積が多い割に鉄鋼諸機械などの支所が少ないことも重要である.
    戦後を対象に本社機能の動向をみると,東京の重要性がますます高くなっていることが指摘できる.とりわけ大阪系企業においては,商社にみられるように発祥の地である大阪よりも東京の機能を強化するようになってきており,この点における大阪の衰退傾向が感じられる.大阪が西日本の中心的地位を保ち続けうるか,あるいはもう一ランク下位階層の広域中心的性格の方をより強めていくのかが,今後大いに注目されるところである.
  • 白坂 蕃
    1984 年 57 巻 1 号 p. 68-86
    発行日: 1984/04/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    わが国の山地集落では,1950年代後半から著しい人口減少がみられた.一方,経済の高度成長によって,山地に対するレクリエーション需要が増大してきた.そしてレクリエーション活動の地域的展開に伴い,既存集落の変貌や新しい観光集落の形成がみられた.特にスキー場の開発による集落の変貌と,新しい集落の形成はその典型である.
    筆者は,スキー場がその集落の形成・発展において重要な役割を演じ,スキー場と集落がひとつの複合体として機能する場合を,「スキー集落」と規定した.そして,スキー場の地域的分布の条件を考えるために,日本におけるスキー場の開発過程とスキー・場の地理的分布を明らかにした.さらにスキー集落をその起源により類型化し,スキー集落形成の諸条件を明らかにした.
    わが国のスキー場の地理的分布をみると,年最深積雪量50cm以上の地域で,しかも滑走可能期間が110日以上の地域に著しい集中がみられる.これらの自然条件に加えて,スキーヤーの発源地が基本的には大都市であるために,スキー場の立地には交通条件が大きく関与している.また,一般に日本のスキー集落の形成にあたっては,温泉の存在がその発展に大きな条件になっている.さらにスキー場の開発には広大な土地が必要であるため,スキー集落の形成においては,スキー場適地の土地所有形態が重要な要因で,これには共有地の存在が有利な条件となる.
    わが国におけるスキー集落は多種多様であるが,筆者は,それぞれの集落の起源や変貌の過程によって日本のスキー集落は基本的に二つに類型化できることを明らかにした.すなわち,第1は,既存の集落がスキー場の開発によって,従来の集落を著しく変貌させた「既存集落移行型スキー集落」である.第2は,スキー場が開発され,地元民の移住などにより,従来の非居住空間に新しい集落が形成された「新集落発生型スキー集落」である.
  • 小野 有五
    1984 年 57 巻 1 号 p. 87-100
    発行日: 1984/04/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    氷河・周氷河地形にもとついて最終氷期の日本列島の古気候の復元を行なった.日本列島の山岳氷河の消長を支配しているのは夏の気温と冬の降水(降雪量)である.海水準変化にともなう日本海の古環境の変化により,最終氷期の降雪量は大きく変動した.日本の山岳氷河は,対馬暖流が日本海に流入していた:最終氷期前半の亜氷期(約60,000~40,000年B. P.) に最も拡大した.これに対して後半の亜氷期(約30,000~10,000年B. P.) には,対馬暖流の流入が海面低下によって阻止されたために降雪量が著しく減少し,氷河の拡がりは小さかった.夏の気温低下量は,現在と氷期の雪線高度の違いから推定した.夏の降水:量が大きく減少したことは,中部日本から北海道にかけて顕著な谷の埋積が生じたことによって証拠づけられる.夏の降水量の減少,夏の気温低下は,ともにポーラー・7ロントの南下を示している.最終氷期の2つの亜氷期におけるポーラー・フロントの位置,永久凍土の分布,海氷の南限,風系などを図示した.冬の気温,年平均気温については化石周氷河現象から復元を行なった.日本海側山地と太平洋側山地での降雪量の違いについては,経線方向にとった雪線高度の分布図から,最終氷期を通じて両地域に降雪量の大きな差があったことを論じた.
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