Geographical review of Japan, Series B
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64 巻, 2 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • スーザン ハンソン
    1991 年 64 巻 2 号 p. 73-78
    発行日: 1991/12/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    アメリカ地理学者協会会長スーザン ハンソン教授は,国際交流基金の招待で,夫君ペリー ハンソン博士とともに, 1991年6月7日から16日まで, 10日間にわたり日本を訪問された。この招待計画は,東京大学教養学部が推薦機関となり,京都大学文学部および筑波大学地球科学系が共同招聘機関となって実現されたものである。短い滞在期間にもかかわらず精力的に行動され,日本地理学会,一橋大学経済学部,国際交流基金,東京大学教養学部,筑波大学地球科学系,お茶の水女子大学文教育学部,慶應義塾大学環境情報学部,国際教育情報センター,京都大学文学部および教養部,国立民族学博物館を訪問された。その間一橋大学経済学部経済地理学研究室および京都大学教養部人文地理学研究室主催の歓迎会などを通じて, 100名を越える日本側地理学研究者との交流が行われた。
    本稿は,去る6月8日午後に一橋大学本館特別応接室で開かれた講演会における「アメリカ地理学界における最近の研究動向」と題する発表要旨を基に,欧文機関紙編集専門委員会委員長の依頼により,帰国後に加筆修正されて投稿されたもので, 7月13日に開かれた欧文機関紙編集専門委員会の承認を得て,ここに掲載の運びとなった。
  • 島田 周平
    1991 年 64 巻 2 号 p. 79-97
    発行日: 1991/12/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    アフリカの人口移動研究の中では,人口移動をより広い政治経済的文脈で分析しようとする傾向が強まりつつある。この研究では,人口移動を経済的政治的変化の一徴候を表すもの,あるいはその変化に対する人々の対応の一つの現れを示すものと見る。ポリティカル・エコロジー的視点は,この研究目的のために有効であり,また1970年以降前例のないほどの好況と不況を経験してきたナイジェリア経済は,調査地として適切なものである。
    家族や血縁グループのネットワークが,人々の移動に重要な役割を果たしていることが明らかになった。そしてそれが, 1970年代の経済好況期には,人々を農業から非農業労働ヘシフトさせ,農村から都市部への移動を促し,高等教育への就学を促進した。経済不況以降は,それは都市部で若年者が何らかの仕事に就くことを助けた。もっともそれは都市インフォーマル部門のそれであった。またそれは若年失業者を農村に届あ置くことにも役立った。これらのことは,人々が急激な経済変化に適応するにあたって,人口移動がどのような機能を果たしているのかを示している。
  • 問題機制の探求
    廣松 悟
    1991 年 64 巻 2 号 p. 98-113
    発行日: 1991/12/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    当論文においては,英米圏の都市地理学における都市空間概念の展望に基づいて,英米の近代都市において社会問題群が確立,制度化されるための歴史的な条件の探求に関わる作業仮説が提示される。
    注目に値するのは,都市自体は人類史を通じて重要ではあったが,特にそれが理論上重要な分析単位となったのは,地理学のみならず他の社会科学一般においても今世紀初頭になってのことに過ぎないといった事実である。この歴史的事実を説明しうる仮設の一つは,先の「都市問題」の形成は,社会空間の全域を覆う特異な政治的監視制度でもある近代国民国家の成立と密接に関連していたというものである。近代都市は,領域国家制度のもとでは,特にその社会的「監視」の観点からみた統治上の効率性の関数として規定された。従ってここに,都市地理学を含めた社会諸科学の都市に関する様々な言説と実践が登場し,先の問題群を制度化すべく,「社会と空間の連関」という特有の問題機制に従って,相異なる概念化に基づいた都市諸学の制度化を実現させることになったと考えられる。中でも,都市空間に関する一般理論は,都市問題を普遍的な既成事実として自明視するような,歴史社会上特異な「実践の閉域」の形成に大きく寄与してきた。今世紀初頭の初期シカゴ学派から最近の都市社会学や都市地理学に至る一貫した思考は,まさにこの特異な領野を構成する上で効果の大きな,都市の一般理論の構築に向けられていたのである。そこでは,この一般理論の対象となる「近代都市」の社会歴史的な存立条件自体を相対化するような,客観的な視座にはかなり欠如していた。そのため,こうした社会と空間に関する極度に.一般的な問題機制は,範域(空間)としての都市を社会として定式する観点と,個別社会を範域(空間)として把握する視点との狭間でほとんど解決不可能な不整合を生み出し,近代都市という歴史地理上特殊な空間に関して,ほとんど無秩序に形成されたかの如きパターン概念の束を生産する結果をもたらしてきた。
    現在求められているのは,近代都市という,言説・制度を含んだ歴史社会的にきわあて特殊な閉じた領域に対する一貫して分析的な視座である。中でも,近代国民国家が各々の,歴史社会上特殊な集団や社団を,その領域社会統治上の組織支配単位の一っとして変容させ,主に法人都市の形式によって法的に包摂し,引き続いて,それを永続的な「社会問題の場」として維持することを通じて監視と管理の体系である都市諸学の成立を促し,それらの総合的な作用として結果的に社会の総体的な都市化を招いてきた一連の近代都市に関わる歴史過程が,改めて実証的かっ分析的な研究課題として掲げられなければならない。
  • 菅 浩伸, 高橋 達郎, 木庭 元晴
    1991 年 64 巻 2 号 p. 114-131
    発行日: 1991/12/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,琉球列島・久米島西銘崎の完新世離水サンゴ礁で行った9本の掘削試料をもとに,完新世の各時相における礁原の形成過程の時空間関係を明らかにし,それに関わった地形形成環境を明らかにすることである。試料の解析は,礁の地形構成における掘削地点の水平的な位置関係と掘削試料の放射性炭素年代とその試料の垂直的な位置関係にとくに留意して行い,次のような結果を得た。
    7500-2000年前の期間における相対的海水準変化は,海面上昇速度から以下の3っの時相に区分される。
    1. 約7500-6500年前:約10m/1000年と急速な海水準の上昇期
    2. 6500-5000年前: 3m/1000年以下の海水準の上昇期
    3. 5000-2000年前:海面安定期現礁原にあたる部分の礁地形の形成過程は, 3つの形成段階に分けられる。
    1. 初期成長期:礁形成の開始は約7500年前である。初期成長段階における礁形成は,完新世サンゴ礁の基盤地形における波の進入方向と斜面の方向との関係と,水深の違いを反映した成長構造の差異が認められる。
    2. 礁嶺成長期: 6500-6000年前の海水準面の上昇速度の低下に対応して原地性卓状サンゴによる活発な造礁活動が認められ,礁嶺が海面に達する。この段階において礁嶺頂部がもっとも速く海面に達したのは,前段階までに形成された礁地形の深度が浅く,波の影響を強く受ける位置にあった部分である。
    3. 礁原形成期:海面上昇速度の低下とそれに続く海面安定期に対応して,約6000年前に礁原の形成が始まる。まず,礁嶺中央部が海面に達し,続いて礁嶺の外洋側と礁湖側が海面に達して礁原が形成される。礁湖側の上方成長速度にっいては礁嶺中央部の上方成長が遅く,かっ水平的な連続性が悪いところほど速い。
    完新世サンゴ礁形成に関わる諸要因については,主に海面上昇速度と波の進入方向がサンゴ礁形成過程に作用している。サンゴ礁形成の結果つくられた地形は,次の礁形成に作用する要因となっている。
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