Geographical review of Japan, Series B
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65 巻 , 1 号
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  • 加賀美 雅弘
    1992 年 65 巻 1 号 p. 1-14
    発行日: 1992/06/30
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    住民の健康状態(疾病)の地域差に着目することによって地域性を把握することが本稿の目的である。健康状態を表現するデータを入手することは一般に難しく,多くは歴史的な資料に限られる。ここでは,北イタリアのアルトアディジェ州(南チロルとトレンチーノ)がかつてオーストリア帝国領であった1910年に実施された徴兵検査の結果個票を分析資料とした。この資料には,徴兵検査の合・不合格の判定はもとより,不合格理由としての疾病,住所,身長,母国語など個人の属性が載せられている。
    この隣接する二つの地域は,中世以来,南チロルにドイツ系がそしてトレンチーノにイタリア系の住民がそれそれ居住してきたために,両地域の性格には明瞭な差異が観察される。この違いは住民の健康状態にも反映されている。たとえば徴兵検査の結果である合否の割合を見ると,南チロルに比べてトレンチーノでは不合格者の割合が高い傾向にある。また,疾病の種類にも地域的な違いが認められる。とりわけ注目されるのが,トレンチーノの農村,山地地域に目立って発生する皮膚病と甲状腺疾患である。この二つの疾病は, 1910年当時,トレンチーノに蔓延していたペラグラと甲状腺腫を意味するものと言える。そこで,この二つの疾病に関与する地域の諸要素を総合的に捉えることによって,疾病に着目したトレンチーノの地域性を描写することができた。
  • エックスパンション法を使用した実証分析
    田中 恭子, カセッティ E.
    1992 年 65 巻 1 号 p. 15-31
    発行日: 1992/06/30
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    人口転換理論の最終段階における出生率の低下は,周期的な変動をすることに特徴が見られる。欧米先進諸国と同様に,日本でも周期的変動がみられたが,空間的側面の変動にっいては余り研究が行われていない。本研究は1950年から1985年の間における日本の出生率の空間的変動,及びその都市化レベルとの関係の変遷にっいて分析を行った。分析方法はエックスパンション法に基づき,パラメーターの変化を検証した。その結果,第二次ベビーブームは,伝統的な都市・農村問の出生率較差の逆転をまねく,、特異な空間的パターンを出現させ,また上昇・下昇のサイクルは特に都市において激しかったことが明らかとなった。
  • シュルンツェ・ ロルフD.
    1992 年 65 巻 1 号 p. 32-56
    発行日: 1992/06/30
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    本稿は旧西ドイツにおける日本企業の空間的拡散を,経済の重心の北から南への移動を背景たして説明する試みである。従来の研究は日本企業のデュッセルドルフへの集中を指摘しているが,この指摘は動態的な視点からみると現状に合わない。既に日本企業の分布は拡散段階に入ったと考えられる。
    階層的拡散プロセスのイPノベーション中心はハンブルク,フランクルフト,シユツトガルトとミュンヘンであり,各中心からその周辺地域に向かう波状的拡散はそれぞれ異なった時期に生じた。商業・サービス業部門では階層的拡散が,生産部門では波状的拡散がみられ,拡散は主に南方に向かった。
    上記の拡散プロセスを説明するたあに,いくっかの仮設を非線形重力型重回帰モデルを用いて検討した結果,三っの要因が拡散メカニズムの決定に関して有意性を示した。第一の要因は日本企業の情報ネットワーク(特に日本商工会議所の会員である企業),第二はデュッセルドルフからの距離,第三め要因は中心性である。
    日本企業の立地行動は,一方では旧西ドイッの都市システムの変化に影響され,他方では日本企業自体の構造変化の影響を受けている。商業・サービス・生産の各部門はそれぞれ特徴的な立地パターンを示す。以上の結果より,拡散の進んだ段階においては外国企業の立地行動が都市システムの変化の簡便な指標となりうることが示唆された。
  • 朴(小野) 恵淑
    1992 年 65 巻 1 号 p. 57-65
    発行日: 1992/06/30
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    テキサス州南東部のヒューストン大学海岸センター (UHCC) 周辺におはる降水,地表水と浅層地下水中の酸素同位体比 (δ18O)の変動に関する研究を行った。
    大気環境に起因する同位体比の急激な変動が1985年1月以来収集した降水に現われている。一1985年1月から1989年12月までの降水の酸素同位体比の荷重平均は約4.48‰である。降水の酸素同位体比の変動は非常に大きい。特に, 1989年6月下旬(熱帯低気圧“All-ison”) と8月上旬(台風“Chantal”)の多量の降水 は非常に低い酸素同位体比を示し,その値は各々-9.5‰, -13.6‰であった。
    地下水の酸素同位体比を調べるために1989年1月以来モニターされた。地下水の酸素同位体比の荷重平均は約-4.0‰である。降水の影響は地下水に現われなかった。
    地下水とは対照的に,地表水の酸素同位体比は大きく変動する。これはおそらく地表水は各々の多量の降水の後に降水一流出を受けるためと思われるが,一方地下水は長期間に蓄積された数多い降水が含まれているからかあるいは,新しい降水がまだ浅いシルト粘土層に達していないためと思われる。
  • ブタ,ヤギ,ウシ
    高橋 春成, ティズデル C.A.
    1992 年 65 巻 1 号 p. 66-72
    発行日: 1992/06/30
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    わが国には再野生化または半再野生化動物はまれであるが,西表島には再野生化あるいは半再野生化したブタ(イノブタを含む),ヤギ,ウシが生息している。
    ブタについては,これまでにも在来のブタの離脱とそれらとリュウキュウイノシシの混血が指摘されてきた。近年でも,内離島や外離島でイノブタ(リュウキュウイノシシ×ランドレース)が再野生化状態にあり,一部は本島に侵入している。また,本島でもイノブタの離脱が生じた。近年のイノブタの離脱の要因は,粗放的な飼育方法や管理の不行届きに求められる。これらのイノブタもまた,リュウキュウイノシシと混血しているものと推測される。西表島で,再野生化したブタの集団が形成されないのは,在来のイノシシ集団に何らかのかたちで吸収されているためと考えられる。ブタやイノブタの離脱によるリュウキュウイノシシとの混血は,リュウキュウイノシシの遺伝子を撹乱するため,在来動物の保護の点から問題がある。
    ヤギとウシの場合は,同島にそれらの原種が生息しないため,混血や原種集団へのとけこみが生じることがない。現在みられるヤギの再野生化は,近年の森林伐採作業用キャンプ地の撤去に伴なう遺棄や台風による小屋の破損などのために生じた。近年,ウシもまた一部が内離島,外離島,本島西部で再野生化状態となっている。これらは,管理の不行届きが原因である。当地では,再野生化したヤギやウシによる在来の植生への影響が生じているものと推測される。
    西表島では,行政当局によるこれらのイノブタ,ヤギ,ウシに対する関心は高くない。それは,これらの頭数が多くないこと,在来の動植物への被害状況が不鮮明であること,農業被害がほとんどみられないことなどによる。しかし,西表島は大部分が国立公園に指定されていることから,特に在来の生態系への影響に注意する必要がある。
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