Geographical review of Japan, Series B
Online ISSN : 2185-1700
Print ISSN : 0289-6001
ISSN-L : 0289-6001
68 巻 , 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 森川 洋
    1995 年 68 巻 1 号 p. 1-22
    発行日: 1995/06/30
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    本稿では,広島県を事例として,最近20~30年間における地域的都市システムの構造変化を考察した。その際にはとくに,中小都市間の水平的結合の存在とともに,低次中心地の機能変化に注目した。その結果,過去20~30年間に広島大都市圏が著しく成長し,他地域との地域間格差が拡大してきたことが判明した。しかも広島は,高次中心地,特に福山との機能的結合を強化してきた。しかしながら,広島の急激な成長と狭小な県域のため,県内中小都市相互の水平的結合はそれほど発達しなかった。欧米諸国では低次中心地は農村地域の豊かなアメニティのもとで成長しているといわれるが,広島県では低次中心地の大部分は不利な生活条件のもとで,今日まで衰退またはせいぜい停滞してきた。しかし,低次中心地のなかにも,吉田や上下などのように,小規模ながらも自己の通勤圏をもつものがあり,これらの中心地が成長することは過疎地域の生活条件の改善に大きく貢献するものと考えられる。
  • 石川県輪島市における漆器業の事例
    須山 聡
    1995 年 68 巻 1 号 p. 23-45
    発行日: 1995/06/30
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,在来工業の企業内における職業教育が,熟練労働力の養成を通じてもたらす,労働力の地域的移動パターンを明らかにすることである。
    在来工業地域に関する研究は,従来新しい生産技術の導入を契機とした地域の変化を主な研究対象としてきた。しかし在来工業地域の過半数は現在でも伝統的生産技術に依存している。本研究では在来技術への依存度が高い輪島漆器業を事例とした。
    輪島漆器業においては,現在でも徒弟制による熟練労働力の再生産が行われている。徒弟制は輪島漆器業の企業内技能教育制度である。本来の徒弟制は,漆器関連事業所の子弟が技能を「相続」することを第1の機能とし,熟練技能者の単純再生産に終始していた。しかし, 1960年代後半における輪島漆器の生産増加に伴い,漆器業に無関係な家庭に育った子弟の新規参入が増加した。その結果,徒弟制の機能は熟練技能者の拡大再生産に変質した。
    加飾職人に対するアンケートをライフパスの概念を用いて時空間的に分析した結果,徒弟制による熟練技能者の養成過程における職人の移動パター・ンが3つ抽出された。第1は旧輪島町内で出生した家業継承者による「滞留」型である。このパターンは変質以前の徒弟制の機能である,技能の「相続」に伴うもので,旧輪島町における漆器関連事業所の集積を継続させている。
    第2・第3の移動パターンは「求心-離心」および「離心」型である。このうち,第2のパターンは周辺・外縁地域,第3のパターンは旧輪島町で出生した新規参入者がたどる軌跡である。徒弟制による技能訓練を受けるためには漆器関連事業所が集積する旧輪島町に移動する必要がある。弟子入り時に旧輪島町で生まれた職人そのまま滞留するが,それ以外の者は旧輪島町方向に求心移動を行う。技能を修得した後,彼らは独立した職人となるが,自ら作業場となる場所を確保する必要がある。良好な作業・生活環境を有する土地を確保するために,彼らは周辺・外縁地域に離心的に移動する。これら2つの移動パターンは,漆器関連事業所の分布拡大をもたらした。
  • リュツェラー R
    1995 年 68 巻 1 号 p. 46-62
    発行日: 1995/06/30
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    一般に日本の社会経済地理的特徴は大都市圏の過密と農村地域の過疎との対照にあるといわれている。しかし本研究では,少なくともいくつかの最も重要な社会問題については,その実態がはるかに複雑であることを明らかにしようと試みた。
    相関分折と多重分類分折の結果,失業率,女性の離婚率,母子世帯数,生活保護受給者数といった社会指標の分布に対しては,地域別の職業構造が最も強く影響していることが明らかとなった。この点では,専門的・管理的職業の割合の低い大阪や福岡のような都市地域や,製造業部門の雇用が相対的に不足する農村地域(主に西南日本)は「問題地域」であるということができる。他方,都市対農村の対照による影響は小さく,物価調整後の平均雇用者所得や年齢調整後の学歴別構成などの分布に影響しているにとどまる。さらに,被差別部落民や高齢単身世帯の割合に関しては,その分布は歴史的・文化的背景に関連している。
  • ピアス D.G.
    1995 年 68 巻 1 号 p. 63-74
    発行日: 1995/06/30
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    本稿は,イギリス,フランス,旧西ドイツ,オランダ,イタリアそしてオーストリアにおける日本人旅行者の目的地,滞在期間などを分析し,ヨーロッパにおける日本人観光客流動の空間的拡がりを知ろうとするものである。
    この地域への日本人の旅行は,日本人のすべての海外旅行状況のなかで考えられるべきであり,また日本人観光客の主要な訪問地の割合からは,ヨーロッパにおけるかれらの選好国が知られる。それぞれの国々における国内での目的地の選好については,ロレンツ曲線を使い,日本人観光客とすべての国際観光客について,宿泊日数と地域的分布パターンの関係から分析した。その結果,日本人観光客は,その国の大都市圏にとくに集中する傾向があり,また都市域への集中の度合いは,すべての国際観光客のなかでとくに高いことが,明らかになった。
  • 風衝斜面と残雪凹地の比較
    苅谷 愛彦
    1995 年 68 巻 1 号 p. 75-85
    発行日: 1995/06/30
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    周氷河環境下において,地温は物理風化やマスムーブメントの様式と強度を規定するもっとも重要な要因の一つである。したがって,そこでの地形プロセスを量的に論じようとする際には,年間の地温データが必要となる。日本の高山では風衝斜面で長期の地温観測が試みられてきたが,残雪凹地における観測例はきわめてまれである。このため,残雪凹地における凍結融解作用の発生状況とその季節分布,凍土層の有無といった基本的な問題さえ十分に確かめられていない。本研究では月山の亜高山帯の風衝砂礫地と残雪砂礫地のそれぞれ1地点において,地温の通年自動観測を行った。風衝砂礫地の最大積雪深は0.3m以下であるが,残雪砂礫地では30m以上に達する。
    風衝砂礫地では主として日周期性の変化をもっ凍結融解サイクルが秋にひんぱんに生じた(地表で24回, 10cm深で2回)。その後,各深度で地温は低下し,深度50cm以上に達すると考えられる季節凍土層が11月から翌年5月まで形成された。季節凍土層の形成初期における凍結前線の地中への降下速度はきわめて速かった。 5月の季節凍土融解期にはひんぱんな凍結融解サイクルが再び生じた。結局,風衝砂礫地における年間の凍結融解サイクル数は地表で51回, 10cm深で13回に達した。これは他の日本の高山の風衝砂礫地で観測された凍結融解サイクル数と調和的である。
    一方,残雪砂礫地においても,残雪が消失し,地表面が積雪におおわれるまでの10月~1.1月にかけて数回の凍結融解サイクルが生じたが,それは地表に限られた。同じ時期,5cm以深では凍結融解サイクルが全く発生しなかった。 11月上旬に根雪となって以降,翌年の消雪直前 (8月下旬)まで各深度の地温は0.1~-0.1°Cの間で安定し,深度約20cmに達する季節凍土層が形成された。季節凍土層の形成時に見られた凍結前線の降下速度はきわめて緩慢であった。残雪が完全に融解した直後に地温は急昇し,その後は凍結融解が全く発生しなかった。結局,残雪砂礫地における年間の凍結融解サイクル数は地表で20回に達したものの, 5cmと15cm深ではそれぞれ1回だけであった。このように,風衝斜面にくらべて残雪凹地では凍結融解作用の発現頻度が著しく少ない。これは冬季の土壌凍結の進行を妨げる積雪の厚さと残雪の滞留期間の長さに起因すると考えられる。
  • 石崎 研二
    1995 年 68 巻 1 号 p. 86-93
    発行日: 1995/06/30
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    本稿では,東京都23区におけるファーストフード店の空間的競合の分析を行ない,その立地戦略との関係について考察した。最近隣尺度および最近隣随伴尺度を用いて, 1987年と1994年における店舗の分布を判定した結果,次のようなことがわかった。 (1) 最近隣尺度は1987年と1994年でさほど変わりがなく,マクドナルドと森永ラブには特徴的な集積パターンがみられる。 (2) 最近隣随伴尺度によれば,各チェーン間の組み合わせによってばらつきがあり,特にマクドナルドとロッテリアの空間的競合,モスバーガーと他のチェーンとの回避が顕著である。 (3) 特にモスバーガーは, 1994年では,他のチェーンと集積する傾向にあり,店舗の立地変化が確認できる。次に,ファーストフードが対象とする,年齢15~34歳の昼間人口密度と夜間人口密度で地域を分割して,各チェーンがいかなる市場をターゲットとしているかを検討した。その結果, 1987年では,マクドナルドおよびロッテリアは昼間人口を指向し,モスバーガーは夜間人口を指向するが, 1994年においては,モスバーガーは他のチェーン店がターゲットとする昼間人口密度が卓越した市場へも進出を始めている。このような各チェーンにおけるターゲット市場の相違は,競争上の地位や企業の目標などの違いに起因する立地戦略の差異を反映している。また,モスバーガーにみられるように,ターゲット市場の変更や資金の増大に伴い,立地戦略を変更する企業もある。先に検証した様々な空間的競合は,ターゲット市場の選定に代表される立地戦略の相違を表わしているといえよう。
feedback
Top