地理学評論
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75 巻, 6 号
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  • 山下 琢巳
    2002 年 75 巻 6 号 p. 399-420
    発行日: 2002/05/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    本研究は天竜川下流域を事例に,江戸時代末期から明治時代まで,流域住民によって担われてきた水防活動と,堤防,水制工の維持・補修工事や河川改修といった河川工事の実態を検討し,流域住民の治水事業への関わり方の変容を明らかにすることを目的とした.考察に際しては,水防活動,河川工事,共に中心的な役割を果たした水防組合の活動内容に注目した.江戸時代には,水防活動と河川工事の実施主体に明確な区分がなく,いずれも天保水防組に加入する村の村請けによって行われていた.明治初・中期になると,水防活動は水防組合が行い,河川工事は下流域の業者が請け負うものへと変化した.また明治中期より開始された内務省直轄の河川改修により,天竜川下流域では水害そのものが相対的に減少した.その結果,明治末期には流域住民の参加する水防組合の諸事業が機能しなくなっていた.河川法が制定された明治中期以降の天竜川下流域では,内務省や静岡県が治水事業を統括していく過程で水害は減少したが,住民の治水事業への関わりが稀薄となり,水防組合の活動が次第に形骸化していったことが明らかとなった.
  • 森川 洋
    2002 年 75 巻 6 号 p. 421-442
    発行日: 2002/05/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    今日の急激な社会変化に対応して,欧米諸国では地理学者の多くが地域概念に注目している.その場合に,社会科学としての人文地理学には今日の社会存在論に適合した地域概念を構築し,研究に利用することが要求される.本稿ではドイツ語圏における地域に対する考え方とその変化をたどり,今日論議されている問題点を紹介する.WerlenはGiddensに倣って現代社会をポストモダン社会ではなく近代末期として解釈し,近代社会の特徴を脱定着化,時空間を超えた社会システムの広がり,グローバル化としている.しかしその解釈は,伝統的社会と近代的社会の差異を中心に考えたもので,情報技術や交通の発達とグローバル化に基づく現代社会=近代末期社会の特徴を明確に示したものとはいえない.人文地理学で考えられた地域概念の発達史をたどってみると,「実在する全体的地域」から研究者の分析的構築物または思考モデルとみられるようになり,さらに,人間行為によってつくられた社会的構築物と考えられるようになった.ドイツ語圏では地域概念は今日なお玉虫色をなしていて種々の見方があるが,地域はグローバル化と平行して発展する傾向にあると考える人が多い.地域の特徴や形態は変化するとしても,それは将来もなお重要な研究対象として存続するであろう.地域的アイデンティティを加えた地域の重合関係や他地域との結合関係を中心とした地域構造の研究が今後重要であろう.地域の計画面における実用的価値も低下することはない.
  • 中海干拓問題を手掛かりとして
    淺野 敏久
    2002 年 75 巻 6 号 p. 443-456
    発行日: 2002/05/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    本稿では中海干拓問題を事例としてローカルな環境運動をとらえる地理学的な視点について論じた.その際,マスコミの当該問題に関する記述と,反対運動の立場からの問題の記述,筆者のこれまでの研究から得た知見を対比させ,環境運動が当該問題を語る際にどのように位置付けられているのかを明らかにした.結果として,環境運動が当該問題の決着において果たしている役割が社会的に軽視されている実態の一端を示すことができた.その事実を踏まえ,このようなローカルな環境運動への地理学的アプローチに求められる課題を提案した.すなわち,第1に環境運動の政策決定や土地利用に与えた影響を読み取ること,第2に環境運動の性格を多面的に理解すること,特に対象となる自然への運動参加者一人一人の意識まで視野を広げること,第3に環境運動をさまざまなスケールの「地域」の文脈から検討することが必要ということである.
  • 2002 年 75 巻 6 号 p. iii-iii,xii
    発行日: 2002/05/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
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