黄鉄鉱中の微量元素の地熱探査への有効性を調べる目的で,霧島地熱地帯に産する黄鉄鉱をEPMAで分析した。分析した銅,ニッケル,コバルト,砒素のうち,コバルトと砒素が興味ある結果を示した。1)牧園溶岩の下部とえびの層中の黄鉄鉱はコバルトに富んでいるのに対し,その下部に位置する飯野溶岩の黄鉄鉱はほとんどコバルトを含まない。牧園溶岩と飯野溶岩はともに輝石安山岩で岩相がよく似ており,その識別は困難である。しかし,仮に両者の間に存在する泥岩と凝灰岩を主とするえびの層群が欠けていても,黄鉄鉱中のCo量を使うことにより,両溶岩を区別することができる。2)黄鉄鉱中のAs量は,中性の熱水を噴出するKT-7号井からの試料の方が,酸性の熱水を噴出するKT-8号井の試料より一般に高い。これは,熱水が酸化されることによって,そのpHが低下するとともに,黄鉄鉱に分配されるAs量が減少することによる。
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