1985年以来,新エネルギー・産業技術総合開発機構は,山形県肘折地域で高温岩体からの熱抽出技術に関する研究開発を進めてきた。 この実験では,高温岩体内に人工的に造成した貯留層から熱水と蒸気を連続的に生産することに成功している。また,この人工貯留層を評価するために坑井検層と生産テストを実施している。 それらのテストから得られた情報によれば,人工貯留層は,岩石マトリクス・フラクチャー(天然フラクチャーと人工フラクチャーの組み合わせ)・システムからなると推定されている。生産時における人工貯留層の挙動を理解するために,マトリクス・フラクチャー・システム内の流体の流れと熱エネルギー輸送に関して理論的研究が必要である。 従来より,フラクチャー岩体内の流体と熱の流れのモデル化に関してはいくつかの研究がある(Bodvarsson,1972;Bodvarsson他,1982;千田他,1990;Gringartin他,1975;増田他,1991;Pruess,1985)。従来のモデルは,単一のフラクチャーまたは平行な複数のフラクチャーを有する岩体内の流体及び熱の流れを解析するために開発されたものであり,それらを岩石マトリクス・フラクチャー・システムに適用することは困難である。 本報は,マトリクス・ブロック/フラクチャー・ネットワーク・システム内の熱エネルギー輸送の数値シミュレーションに関して研究している。特に,提案したエネルギー輸送シミュレーション・モデルの計算アルゴリズムの有効性について,細分割多孔質モデルとの比較により検討した。
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