宝石学会(日本)講演会要旨
平成13年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
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  • 砂川 一郎
    p. 1
    発行日: 2001年
    公開日: 2003/04/23
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    天然ダイヤモンドの大部分は、丸味を帯びた八面体や十二面体の結晶として産する。このため、ラウンドブリリアントカットが主たるカットスタイルとなる。一方、不規則、あるいは平板状の形で産するものも少数あり、原石選別の段階でこれらは一つのグループとしてわけられる。形で選別した上でUV透過率、IR分光法でチェックすると、これらは全てType IIであることが明らかになり、以後Type IIの選別には形を基準とすることになった。なぜType IIが不規則、平板状の形をとるかについては、いくつかの意見があり、Wilks and Wilks(1991)は次の4つのメカニズムを紹介している。(1)a)地下で破断された、b)採掘中に破断された、(2)マグマ中での熔解速度が方向により異なるため、(3)共存する固体鉱物粒子の隙間で成長したため、(4)不純物窒素の吸着でType Iは八面体になるのに対し、窒素を含まないType IIは自由成長して不定形となる。Type IIの示す不規則、平板状の形の原因についてはまだ定説に達していないというのが現状である。2000年にダイヤモンド会議に出席したおり、MaidenheadのDiamond Research Center、およびLondonのSorting Roomを訪問し、Type IIとして選別された原石多数、およびX線トポグラフ多数をチェックする機会にめぐまれた。不規則、ないし平板状を示す原石には平らな結晶面はまったくみられず、表面は鈍くかつ湾曲している。不規則な形ができて以後微弱な溶解作用を経験していることがわかる。X線トポグラフはType Iのそれと大幅に異なり、ゆるく湾曲したドメインで構成されている。そのため、回折像を示す領域と、まったく示さない領域で構成されているのが特長である。Type Iに特徴的にみられる転位束や成長縞はみられない。これは塑性変形に起因する格子欠陥がsuperimposeしているためである。Type IIは偏光下で歪み複屈折、tatami-matパターンなど塑性変形に特徴的なパターンを示す。Type Iが炭素と窒素の合金に対応するのに対し, Type IIは純炭素に対応する。同じ応力を受けたとき、合金のほうが塑性変形しない。塑性変形がさらにすすむと、破壊がおこる。地下深部から運びあげられる過程で、Type I, II両者が同じ応力を受けても、Type IIだけが塑性変形し、さらに破壊されると、もともとおなじ形をしていた結晶も、一方は成長時の形を維持したままで生き残るが、他方は破壊されて不規則、ないし平板状の形をとるようになる。この形になって以後もマグマ中に存在すると、溶解を受ける。Type IIの特徴的な形はこのようにして生まれたものである。(Ib)、(2)、(3)、(4)などによるものではない。GE POLダイヤモンドの80%以上がファンシーカットされる理由も原石の形の特徴による。なお、マイクロダイヤモンドでは、両タイプとも八面体を示し、両者でas grownの形には差がないことが、Tolansky & KomatsuのUV写真には明瞭に示されている。
  • 神田 久生
    p. 2
    発行日: 2001年
    公開日: 2003/04/23
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    ダイヤモンドに電子線や紫外線を照射すると蛍光を発する。発光の測定は、不純物や欠陥を知るための一つの方法であり、微小領域を高感度で簡便に測定できるという利点がある。しかしながら、測定で得られるスペクトルの情報から直接に、不純物の同定や、定量分析を行うことは困難である。発光測定を分析手段として、より強力にするには、発光スペクトルと不純物·欠陥との関連についての知識を集積するのが一つの方法である。本研究では、Ib型の合成結晶を熱処理したものについて、カソードルミネッセンス、フォトルミネッセンス測定を行った。その結果、N3, H3, 575nm発光ピーク強度に窒素濃度との相関が認められた。この結晶では、窒素濃度にセクター依存性あり、{111}セクターで50ppm, {113}セクターで10ppm以下であった。N3発光ピークは窒素濃度の高い{111}セクターで強く、H3, 575nmピークは窒素濃度の低い{113}セクターで強いという傾向があった。この傾向が一般的なものであれば、N3, H3の発光強度から窒素濃度が高いか低いかを知ることができよう。天然ダイヤモンド結晶では結晶断面に、成長縞に対応する発光の不均一がみられることが多い。一つの天然結晶の断面について発光分布を観察したところ、熱処理によって発光分布に大きな変化がみられた。熱処理前は発光の弱かった場所が、熱処理後には、H3の発光が強くなった。上のH3発光強度と窒素濃度との相関を適用すると、このH3発光が強くなった場所は、窒素濃度が低いといえる。本研究での熱処理は、ダイヤモンド高圧合成用の高圧発生装置を用いて、6万気圧、1800°Cの条件で行った。結晶は黒鉛粉末の中に埋めて加熱した。この温度では、空孔や単原子窒素は結晶内を拡散できる。また、結晶自身、塑性変形する。発光特性の変化はこのような挙動の影響の結果である。
  • アヒマデイジャン アブドレイム, 北村 雅夫
    p. 3
    発行日: 2001年
    公開日: 2003/04/23
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    はじめに:
    南アフリカ産のスピネル双晶した天然ダイヤモンドの形態及び内部組織の観察を行った。三角平板状結晶の双晶境界部に分布している成長層によってできた凹入角部の形態から双晶の形態を分類した。これらの形態は二個体単結晶が互いに接触して両個体の間に出来る凹入角部と凸出部での優先成長によるものと考えられるが、本研究では凸出部効果による優先成長をはじめて考察し、形態変化による過飽和度条件の変動を推定した。
    双晶の形態:
    外形の観察からスピネル双晶の形態は三角平板状の成長形を示すが、凹入角の形態を四つのタイプに分類できる。(I)三つの凹入角はほとんど平らな{111}面で構成されている、(II)凹入角の二つの{111}面上にいくつかの厚成長層が広がり、双晶境界部の中心に分布する、(III)本来の凹入角部は高指数を持つ四つの面より構成されたピラミッド状となり、先端に小さい凹入角が残っている、(IV)凹入角が完全に埋められて尖っている形態となる。この凹入角の形態的な特徴によって双晶形態をA, B, C, Dの四つのグループに分けられる。これらの形態の違いを説明するには、外形だけでなく、内部組織を調べ、成長履歴を明らかにする必要がある。そこで、本研究ではグループBの結晶を、一つの凹入角部を通り、接合面に垂直に切断し、切断面を研磨しながら走査型電子顕微鏡の陰極線ルミネセンス(CL)でその累体構造を観察した。また、成長中心が見えるまで研磨と観察を繰り返し、X線分析顕微鏡で双晶境界を観察した。
    累体構造:
    グループBの結晶の累体構造は三つの領域に分けられる。結晶中心部に丸みを帯びた双晶の形態と、曲面及びジグザグの結晶面で囲まれた形態が認められ、溶解過程及び急速な成長が成長初期にあったと考えられる。成長中期を表す中部では、成長形は平板状となり、凹入角部での成長が早くなり、凹入角の形態はタイプIからタイプIVへ変化する。結晶周縁部は、再び凹入角部を持つ形態となり、比較的高い過飽和条件下で形成されたと考えられる。また、溶解作用を示す不整合な累体構造は中部と周縁部の間に観察された。結晶中心部と周縁部での累体構造は複雑であるため、中央部での累体構造の成長バンドの幅を測定し、成長段階における各面の法線成長速度の比を見積もった。凹入角部に接しない{111}面の法線成長速度を基準にし、凹入角部にある{111}面の法線成長速度と凸出部にある{111}面の法線成長速度を割った比を、幾何学的な考察から得られた結果と対応し、凹入角効果と凸出部効果を確かめた。また、この比から、結晶中央部での過飽和度は一旦減少し、その後上昇していること事が明らかとなった。単純に閉鎖系での成長過程からこの過飽和度の上昇したことを解釈できない。したがって、温度、圧力の著しい変化あるいは成長系での炭素の増加によって過飽和度に変化が生じたと考えられる。
  • 川崎 雅之
    p. 4
    発行日: 2001年
    公開日: 2003/04/23
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    X線の回折現象を利用して結晶中の不均質組織を観察する方法がX線トポグラフィ(X線回折顕微法)である。この方法によりセクター構造、成長縞、転位、双晶境界面等が観察できる。X線により結晶中の組織や欠陥が観察できるのは次の理由による。結晶格子が完全な場所では消衰効果により回折X線の強度が減少するが、格子が不完全な場所では回折強度は減少しない。そのため、相対的に欠陥からの回折強度が増加し、コントラストが生じる。実例として、水晶ブランク中の脈理と天然水晶(ブラジル、コリント産)について述べる。
    (1)水晶ブランク中の脈理(光学的不均質像)
    結晶中の欠陥が光学的な不均質像(脈理)としてしばしば観察される。用いた試料で脈理として観察された転位はコブル構造中の溝部に位置し、その像は他の転位より強いコントラストを持つ。この転位は反射方向により単独、または二本の対に見えることから、転位対と判断できる。転位対の反射強度は大きいが、その方向依存性が小さい。これは転位自身の歪みは大きいが、その異方性が小さいことを示している。また、いくつかの反射で転位の周囲に等歪勾配縞が観察された。縞の広がりの反射依存性からこの転位対の最大歪方向は転位線に直交していると見なせる。一般に人工水晶ではZ面の成長に伴い、コブル構造が発達して、転位はコブル構造の溝に集中して行く。観察された転位対は転位の集積の過程で形成されたと考えられる。
    (2)ブラジル、コリント産水晶
    この地域に産出する多くの水晶において、z面とm面の間にΨ面が出現する。Ψ面は起伏の多いラフな面である。結晶内部にはr、z、Ψ、mの各面が成長してできたセクター構造が見られる。また、インクルージョンからの転位の発生、セクター境界での転位の屈曲等が明瞭に観察された。Ψ面では成長末期にインクルージョンが取り込まれたが、発生した転位の一部は明らかに湾曲しており、ラフな界面で成長が進行したことを示している。
  • 高橋 泰, 今井 裕之, 保坂 正博, 砂川 一郎
    p. 5
    発行日: 2001年
    公開日: 2003/04/23
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    セプター·クォーツ(松茸状水晶)は基部よりも頂部が大きく成長し、傘状になった水晶の総称である。世界中から産出が報告されているが、その成因についての研究は非常に少ない。発表者等はここ数年、成因を探るために天然の水晶の観察と合成実験を試みてきた。その結果、セプター·クォーツ発生の要因はマスキングと結晶成長の条件変化であることを見出した。そこで形状等により、天然のセプター·クォーツをタイプ分けし、それぞれの成因についてモデル化を試みた。対象としたのは、マダガスカル、ブラジル、メキシコ、中国、国内では岐阜県神岡鉱山、長野県川上村、麻績村産の実物といくつかの写真資料である。セプター·クォーツの多くに見られる共通の特徴は、次の通りである。
    a.傘状部分の両錐結晶と基部の結晶は方向が同じであり、合せて一つの単結晶である。
    b.基部はインクルージョンが多い不透明な結晶か、ミルキー·クォーツである。
    c.傘状部分はインクルージョンが少ないクリアーな結晶で、時にアメシストやスモーキー·クォーツとなっている。
    d.傘状部分の柱面には条線がほとんど見られない。
    e.群晶中で傘状部分の有無がある場合、無い水晶はセプター·クォーツよりも小さいものが多い。
    セプター·クォーツは大きく分けて次の5タイプがあり、それらがさらに複合して千変万化する。
    1. 傘状部分が錐面と柱面を覆う短柱状の両錐結晶であるもの。
    2. 傘状部分が錐面と柱面を覆う長柱状の両錐結晶であるもの。
    3. 傘状部分が錐面の一部分を覆う短柱状の両錐結晶であるもの。
    4. 傘状部分が柱面を覆う長柱状の両錐結晶であるもの。
    5. 傘状部分が柱面を覆う短柱状の両錐結晶であるもの。
    1∼4のタイプは全てマスキング部位の変化と各結晶面の成長速度変化により説明がつく。マスキング部位の移動は傘状部分の形状や大きさ、発生場所を変化させていると思われる。マスキング部位が様々である理由は産状にも由来する。長野県麻績村では砂岩中の石英脈に群晶として産し、中でも大きく成長する結晶の多くは狭い脈状の空隙に対し、垂直方向ではなく低角度をなして成長している。このことがマスキング部位のパターンを複雑にし、母結晶に対し傘状部分は様々なパターンを見せる。各結晶面の成長速度は傘状部分で大きく変化し、マダガスカル産サンプル例では、柱面方向とc軸方向の成長速度比は1:2.5であり、天然水晶の1:4∼9(実測値)よりも合成水晶の1:2∼5(実測値)に近いものである。5のタイプはマスキング部位と選択的なエピタキシャル成長による影響が大きいものである。中でも、岐阜県神岡鉱山産のサンプルには柱面がほとんどない両錐の傘状部分が、結晶全面を被覆するように発生しており、特に頂部と柱面同士のエッジに大きな傘状部分が発生し、しかも群晶中ではほとんどが一方向側に発達している。この選択的な成長は傘状部分成長時に溶液の流れがあり、成分の供給に偏りがあったことを示している。
  • 田端 英世, 中村 和雄, 川上 省二, 坂口 修司
    p. 6
    発行日: 2001年
    公開日: 2003/04/23
    会議録・要旨集 フリー
    ベリリウム·トリアルミネイト(BeO·3Al2O3)系において、クリソベリルBeO·3Al2O3と共に、安定に存在する化合物であって、レーザー発振用結晶としての応用に関心が持たれている。この化合物の結晶を、LiMoO4-MoO3系フラックスを用いて合成した。フラックスの組成(LiMoO4/MoO3比)を変えることによって生成する結晶(ベリリウム·トリアルミネイト、コランダム、クリソベリル、その他)の種類と量が変化した。ベリリウム·トリアルミネイト結晶は斜方晶系に属し、格子定数はa=9.553Å、b=13.816Å、c=8.929Åである。熱伝導率を除く各種の物性値(比重、屈折率、熱膨張率)はクリソベリルの値と非常に類似している。マイクロビッカース法で測定したこの結晶の硬度(Hv=1740)は、同様にフラックスから合成したクリソベリル(Hv=1720)とほぼ同じ値を示すため、宝石学的に見れば、両結晶の差はほとんど認められないことになる。以上のことから推論すると、これまでクリソベリルとして分類されてきた結晶の中には、ベリリウム·トリアルミネイトの結晶が含まれている可能性がある。
  • 砂川 一郎
    p. 7
    発行日: 2001年
    公開日: 2003/04/23
    会議録・要旨集 フリー
    ダイヤモンドの類似石としてモアッサナイトの名前で炭化珪素SiCが売り出されたのは最近のことである。モアッサナイトのカット石には、中空の孔が普遍的に見られ、鑑別上の特徴の一つとされている。この種の中空孔がなぜ、モアッサナイトに見られるのかについて議論する。モアッサナイトは種結晶を使った、改良型レーリー法で合成される。これは、気相からの結晶育成法である。アチェソン法、レーリー法のいずれの合成法でも、炭化珪素の結晶が渦巻き成長機構により成長することは、古くから知られている。その発生源である転位はしばしば樹枝状結晶の樹枝の閉じこめ不整に由来し、大きなBurgers vectorをもつ。この種の転位の歪み場は大きく、転位芯に自由表面をつくらなければ歪みを解放できない。転位にともなわれる歪み場は渦巻き成長層の前進速度に影響を与え、ある臨海値以上では、前進速度の逆転が起こる。こうして、渦巻き成長層の中心部に中空の孔がうまれる。これにより、自由表面が創設され、歪みが解消されるからである。気相から成長した炭化珪素の結晶面上には、古くから渦巻き成長層の中心に凹みが観察されており、その成因がこのように理解されていた。モアッサナイトに普遍的に観察される中空孔もまったく同じ成因と考えてよい。発表では、炭化珪素(0001)面上に観察される渦巻き成長層と中心の孔に関する観察結果を紹介しながら、モアッサナイトの中空孔の成因について説明する。
  • 田端 英世, 中村 和雄, 川上 省二
    p. 8
    発行日: 2001年
    公開日: 2003/04/23
    会議録・要旨集 フリー
    ターフェアイトは発見された当初(1940年代)、クリソベリル(BeAl2O4)とスピネル(MgAl2O4)が、等モル比で化合した鉱物と考えられていた。その後、多くの標本について化学分析が行われた結果、ターフェアイトとは異なる組成の鉱物が確認されマスグレイバイトと命名されている。現在までのところ、これらの鉱物の理想組成はターフェアイトがBeO·3MgO·4Al2O3、マスグレイバイトがBeO·2MgO·3Al2O3と考えられてきた。しかしながら、これらの天然鉱物には、かなりの量の遷移元素などが固溶しているため、それぞれの鉱物の理想組成については疑問が残る。そこで、これらの鉱物の組成を確定するための実験を行った。クリソベリルとスピネルの粉末を種々のモル比で混合して調製した焼結棒をシードとして、フローティングゾーン(FZ)法で結晶育成を行い、得られた結晶棒を輪切りにして偏光顕微鏡で観察するとともに、X線回折によって存在する結晶相の同定を行った。また、クリソベリルとスピネルの粉末をペレット状に成形した試料を1300∼1700°Cの温度で固相反応させ、得られた結晶相をX線回折によって同定した。FZ法では、BeAl2O4/MgAl2O4が1/1のとき、クリソベリルとマスグレイバイト(9R相)が共存し、7/9の場合には9R相と極微量のターフェアイト(4H相)が認められた。3/5の場合には、ほとんど単一での4H相となり、1/3ではスピネルと4H相が共存していた。固相反応の結果は、いずれの組成においても4H相は検出されなかったため、純粋なターフェアイト(4H相)は1700°C以下の温度では安定に存在しないと考えられる。3/5の組成の場合においても9Rとスピネル相のみが検出された。7/9の組成では、ほとんどが9R相であって、極微量のスピネルが認められた。以上の実験結果をまとめると、BeAl2O4-MgAl2O4疑二成分系において図に示すような相図が得られる。また、ターフェアイト(4H相)とマスグレイバイト(9R相)の不純物を含まない状態での組成は、それぞれ3BeO·5MgO·8Al2O3および4BeO·5MgO·9Al2O3であることが明らかとなった。
  • 平田 辰夫
    p. 9
    発行日: 2001年
    公開日: 2003/04/23
    会議録・要旨集 フリー
    合成及び高温高圧処理ダイヤモンドに関する発表が、毎年多く報告されていることから鑑別分野で非常に関心が高く、判定が困難になって来ているのが現状であり、カラーレスからニアカラーレスの合成ダイヤモンドなどは拡大検査·分光検査だけでは判断出来ない石が数多い。そこで今回は当社に持ちこまれた合成及び処理ダイヤモンドの実情について報告する。
  • 北脇 裕士
    p. 10
    発行日: 2001年
    公開日: 2003/04/23
    会議録・要旨集 フリー
    ここ数年、新しい類似石の登場、合成石の品質向上、新タイプの処理技術の開発など、ダイアモンドを取り巻く話題には事欠かない。21世紀を迎えた今、ダイアモンド鑑別の現状について報告する。
    ◆ダイアモンドかどうか
    “類似石の鑑別”
    最近、話題になった類似石に合成モアッサナイトがある。熱慣性を応用した判別器具ではダイアモンドと識別できないということで話題になった。特性を理解した上で鑑別を行えば問題はないが、新たにコーティングされたものやグリーンなど他のカラーも出現している。また、小粒石の脇石利用や等軸晶系型のモアッサナイトの開発には無関心ではいられない。
    ◆天然かどうか
    “合成ダイアモンドの鑑別”
    現在、市販されている研磨済み宝石質ダイアモンドには各種の色やタイプがある。最も一般的なものはIbタイプのイエロー系であるが、その色調や蛍光色は変化に富む。また、HPHT処理や放射線照射を利用したピンク∼レッド、カラー·チェンジ·タイプ、IIbタイプのブルーも製造されている。
    ◆処理されていないかどうか
    “処理の看破”
    ダイアモンドは見かけのカラーやクラリティを向上させる処理が施されることがある。これらは商業上すべてトリートメントとして情報開示されなければならない。近年ではカラーの改善のためHPHT処理の技術が応用され始め、世界中の鑑別ラボに新たな問題を提議した。さらにクラリティの改善を目的としたKMプロセスも登場し、ダイアモンド·グレーディングの作業効率を著しく阻害している。
  • 岡野 誠, 北脇 裕士
    p. 11
    発行日: 2001年
    公開日: 2003/04/23
    会議録・要旨集 フリー
    ラマン分光法とは、ラマン効果(単色光を物質に当てて散乱させる時、散乱光のうちに、その物質に特有な量だけ波長が変化した光が混ざってくる現象)を利用して物質の同定や分子構造の研究を行う手法である。レーザー技術の発達により、今日的な分析法として工業的な品質管理や物性物理学の分野で広く用いられている。宝石学の分野では特にレーザーのもつ高い空間的分解能を利用した宝石内部のインクルージョンの研究に関して今後の応用が期待されている。顕微ラマン分光法ではレーザー·ビーム径を数μmに絞ることができ、ピンポイントでの分析を非破壊で行うことが可能である。また、分析に用いる試料形態の自由度が高く、他の分析手法では測定できないようなメレサイズの脇石や覆輪留めなどにも適用できる。インクルージョンの同定が宝石鑑別に与えるアドバンテージはきわめて大きく、特に母結晶の生成起源を知るうえで貴重な情報を得ることができる。例えば、一見、天然の結晶インクルージョンに酷似する合成石中の固体インクルージョン(例えばドーロス·ルビー、カシャン·ルビー中のフラックス·インクルージョンなど)も特徴的なスペクトルを示し、合成起源が明らかとなる。また、ジルコン結晶は加熱によりスペクトルが変化することが知られており、コランダム中のジルコン結晶を分析することにより、加熱エンハンスメントに関する情報を得ることが可能である。その他、ジェダイト中に含有されるアルバイトなどの他種鉱物の分析も容易に行うことが可能である。また、顕微ラマン装置はフォトルミネッセンス分光を行うことが可能である。液体窒素で冷却して測定することにより、ダイアモンドのカラー·センタを精度高く検出することができる。これにより、合成ダイアモンドや照射処理に特有の欠陥を検出できることがある。さらにはGE POLやNovaプロセスなどのHPHT処理の看破に応用できる。
  • —マルチ分光測色計C5940応用の一例として—
    矢野 晴也
    p. 12
    発行日: 2001年
    公開日: 2003/04/23
    会議録・要旨集 フリー
    宝石類が示す色の鑑定鑑別は、マスター·ストンやマンセル色票との比較で行うのが一般である。然しながら、これらの方法では恣意的な判断の入り込む余地が大きく、このためより客観的な結果を期待して、従来から様々な色を測定する機器が開発考案されて来た。最近の例としては、ダイアモンド用のカラリメーターなどがある。最近日本の某メーカーが開発販売している、マルチ分光測色計が導入され、この応用例の一つとして、H-richダイアモンドの変色性とその経時変化を測定したので報告する。このマルチ分光測色計C5940は、反射率、色度図座標値、三刺激値、色彩値、マンセル値を自動的に計測計算し表示するが、測色から表示までに要する時間は極めて短く10秒以下であることも、この測色計の特徴の一つである。このことを利用し上記の変色性とその経時変化の計測を行った訳である。水素は、窒素やボロンに加えて天然a型ダイアモンドの一般的な不純分と認められている。この水素の含有は、赤外領域でのシャープな吸収、1405cm-1と3107cm-1により検出可能である。これらH-richダイアモンドは、一般には灰色がかった青色や黄色を示すが、時には紫がかった灰色や灰色がかった紫色を示すこともあるとされ、所謂カメレオンダイアモンドもこの類であるとされている。これら処理されていないH-richダイアモンドは、長波紫外線により、強い黄色蛍光を発し、燐光を伴う事が多く、その強さと持続時間は石毎に異なると言はれている。取り敢えず2個のH-richダイアモンドと判定される石につき、長波紫外線を1, 2分照射し、その示す色の経時変化を測定した。計測した石の一つは、0.430ctのマーキス·カットで照射前の色はFancy(violetish)Grayと鑑定されていた。照射後Fancy Light Brownish Grayと変化し、6分後に元に戻った。二つ目の石は0.143ctのブリリアント·カットでLightBlueish GrayがFancy Light Yellowish Grayに変化し、30分後に元に戻った事が確認された。途中経過その他の詳細についてさらに報告する。今回はこのC5940測色計の応用例の一つを紹介したが、このように本測色計は宝石の分野でも大きな可能性を持つものと予測される。更に研究を進める事と致したい。
  • 藤田 直也
    p. 13
    発行日: 2001年
    公開日: 2003/04/23
    会議録・要旨集 フリー
    琥珀は中生代から新生代の第三期にかけて生息した松柏類の樹脂が化石化したものであるが、この宝石には実に様々なインクルージョンが有り実に興味深い。太古の生物や無機物などその種類は実に多様であるが、気泡もまたそのようなインクルージョンのなかのひとつである。気泡が多量に含まれると琥珀は曇ったような、白濁した印象を受けることになる。今回入手したサンプルは三年間ディスプレイの中で照明を当てつづけた結果、琥珀の外観がより白く見えるようになったものであった。このように外観が変化した琥珀について、その原因を検証する。加えて、今回鑑別に持ち込まれたブラックムーンストーンについて、外観が類似しているシーン効果を持つオブシディアンとの相違点も考慮しながら、その特徴を様々な機器を用いて観察した結果を報告する。
  • 間中 裕二
    p. 14
    発行日: 2001年
    公開日: 2003/04/23
    会議録・要旨集 フリー
    多種多様なカラー·ストーンが流通する今日、さらに新しい宝石素材を求める動きが業界内に見られる。そのような現状を反映するかのように、日常の鑑別業務においても珍しい宝石を見かける機会が多くなっている。これらのうちいくつかにスポットをあてその特性と鑑別特徴について報告する。
    ◆黄緑色半∼不透明石
    ·ガスペアイト
    カルサイト·グループに属するニッケルを主成分とする炭酸塩鉱物である。通常、同じカルサイト·グループのマグネサイトと固溶体を形成している。
    ·レモンクリソプレーズ
    クオーツとマグネサイトが混晶したもので純粋なカルセドニーではない。
    ·トルコ石
    通常の空青色と異なり、鉄あるいはニッケルが関与した黄緑色のトルコ石である。一般的なものと同様に樹脂などの含浸が行われている。
    ◆ピンク色(半)透明石
    ·ロードナイトとパイロクスマンジャイト
    両者は準輝石と呼ばれるグループの鉱物でSiO3鎖の周期が5である。パイロクスマンジャイトはこの鎖の周期が7である。両者の識別は一般鑑別では困難であるが、この構造の相違からラマン分光法により非破壊で識別可能である。
    ·バスタマイト
    準輝石の仲間でSiO3鎖の周期は3である。やや屈折率が低いこと、赤色蛍光を発することが、ロードナイトとの識別の手がかりとなる。精密には組成分析やラマン分光分析が必要である。FT-IRによる無色透明石及び無色透明物質の測定結果について
  • 砂川 一郎, 高橋 泰, 木村 郁子, 寒河江 登志朗
    p. 15
    発行日: 2001年
    公開日: 2003/04/23
    会議録・要旨集 フリー
    緒締めとは印篭と根付けをつなぐ紐をとうして紐締めとしてつかわれる小型の装飾品で、根付け同様多くの愛好家がいる。根付けに比べると、小型であることから、素材の制限は少なく、珊瑚、象牙、琥珀、牛の角、ツゲ、七宝、金属、陶器、ガラス、孔雀石、などさまざまな素材が使われている。中でも、鶴天と呼ばれる朱色のまだら模様をもつ緒締めは、鶴の冠と信じられ、格別に高く評価されていた。可能性として、絶滅種の犀鳥の持つ象牙質の冠が想定されていたためであろう。木村が所有する鶴天について比重、屈折率を測定した結果、既知のいずれの象牙質材料のデータとも一致せず、また染色されていることが明らかになった。染色されている組織とされていない組織があり、染色されている組織は多孔質、されていない部分は光学顕微鏡レベルで無組織であった。そこで、両組織の顕微鏡観察とマイクロFT-IR分光分析を行った。その結果、染色されている部分は動物の歯の象牙質の部分に、染色されていない部分はエナメル質の部分に相当することが明らかになった。象牙質、エナメル質部分の分布で生まれる歯の組織の特徴は草食性、肉食性動物で異なり、試料は草食性動物の歯の特徴を示している。しかし、動物種を同定するためには、薄片で組織の特徴を調べる必要があり、これは実行できなかったが、草食性動物の歯を球形に整形し、染色したものであると結論された。
  • 徐 廣源, 小松 博
    p. 16
    発行日: 2001年
    公開日: 2003/04/23
    会議録・要旨集 フリー
    バラのつぼみ(Rose bud)なる呼称を持つ、特異な形(突起が四方より突き出ている)の天然真珠について、その内容構造分析より成因を考察した。
  • 金 貴姫, 鈴木 千代子, 渥美 郁男
    p. 17
    発行日: 2001年
    公開日: 2003/04/23
    会議録・要旨集 フリー
    中国産淡水真珠固有の含有色素である赤褐色、紫褐色は熱や光で褪色しやすいと言われている。この現象について、クロチョウ真珠のそれらと比較しながら、各種条件下で褪色の程度を計測化してみた。また褪色防止の手段についても探索してみた。
  • 伊藤 映子, 福島 秀明
    p. 18
    発行日: 2001年
    公開日: 2003/04/23
    会議録・要旨集 フリー
    ゴールド系真珠の人気に伴い、着色処理された真珠が広く流通している。これらの多くは無孔のまま着色されており、従来の穿孔後着色された真珠に比べ非破壊での看破が困難である。しかし、分光特性ならびに紫外線蛍光検査等により、いくつかのパターンに分類される。次に、真珠表面の元素分析においてMnあるいはSrの検出は海水産真珠と淡水産真珠との判別に有効な手段として用いられている。また、母貝鑑別にも同法を利用した報告があった。近年ではアコヤ真珠の生産量低迷を背景に、白蝶真珠の低サイズ化·有核淡水真珠の台頭等、外観上酷似した真珠の母貝鑑別が性急な問題として浮上した。そこで、蛍光X線分析の真珠母貝特定への可能性を模索したので報告する。また、さんごをフッ素で表面強化する技術を真珠に応用した「PS加工」が話題となっている。そこで、未加工のものとの鑑別上の差異を比較検討した。
  • 諸鍜冶 玲子, 矢崎 純子
    p. 19
    発行日: 2001年
    公開日: 2003/04/23
    会議録・要旨集 フリー
    一部小売店で話題になっている“PS加工”について、その実態を調査し、その特許公報に基づいた再現を試み、その科学的検証を行った。
  • 禹 昇延, 佐藤 友恵, 江口 留美子
    p. 20
    発行日: 2001年
    公開日: 2003/04/23
    会議録・要旨集 フリー
    人工真珠の耐久性について真珠との比較の下に、各種環境下での物性変化を測定した。また「第三の真珠」なる商品名のそれについて、その特異な製法、構造を分析すると共に耐久性をも検討した。
  • 茅原 一也, 青海町自然史博物館
    p. 21
    発行日: 2001年
    公開日: 2003/04/23
    会議録・要旨集 フリー
    青海町橋立の河床に分布するヒスイ岩塊のうち特に大型のものが3個ある。これを上流からA, B, Cとする。
    A岩塊は現状のままであり、ラベンダーヒスイを含む層状構造を有している。
    B岩塊は盗難を避けるため、止むなく青海町自然史博物館の前庭に移された。このヒスイ岩塊は重さ約42トンで、層状構造が顕重であり、中に巾2∼3mmの青色鉱物脈が数本入っている。
    C岩塊は同様な理由でピアパークに移された。この岩塊は重量102トンで、ラベンダー·緑色·白色の層状構造が著しい。一部に青色の小脈がある。
    青色鉱物脈
    分析電顕を用いた分析結果を次に示す。これはWater freeとした成分である。一方、青海川下流河口付近の転石から宮島ほか(1998)は青色の新鉱物を報告し、糸魚川石(SrAl2Si2O9(OH)2H2O)と命名した。これらを比較すると、橋立の河床の巨大ヒスイ岩塊中に存在する青色脈をなす鉱物は同様な新鉱物である。
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