宝石学会(日本)講演会要旨
平成16年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
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  • シュワルツ ディートマー
    p. 1
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/06
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    エメラルドはベリル族の一種で、主に豊富な元素であるシリコン(Si)、アルミニウム(Al)、酸素(O)で構成されている。4番目の主要な構成元素ベリリウム(Be)は地球の地殻上部では希少であるため、ベリルはあまり一般的な鉱物ではない。
     ベリル族の中で最も価値が高いとされるエメラルドについていえば、生成の条件はかなり特殊である。エメラルドに明るい緑色をもたらしている元素(クロムCrとバナジウムV)は、地球の地殻上部ではなく上部マントルの岩石中に凝集されている。そのため、エメラルドに必要なこれらの元素を全て集めるためには、特別な地質学的及び地質化学的条件が必要となる。通常この条件はプレート・テクトニクスの作用を通して生じる。
     必要な元素が一旦集まると、エメラルドは様々な地質学的環境下で結晶化することができるが、こうした環境は一般的に非常に不安定である。他のベリル(アクワマリンなど)が極度の不安定性無く継続して成長可能な比較的穏やかな環境下で発達するのに対し、エメラルドは急激な変化や力学的応力などに象徴されるような地質環境で形成される。エメラルドの結晶が一般的に小さく(ベリル族の他の変種に比べて)、そしてひび割れや固形の異種鉱物インクルージョンなどの内部欠陥を伴うのはそのためである。エメラルドの結晶は力学的耐久性が低く、河川の運搬による衝撃には耐えられない。したがって、エメラルドは第二次鉱床で発見されることはほとんど無く、経済性のあるエメラルド鉱床は全て第一次的な岩石中に見られる。
     エメラルドの鉱床には様々な起源のタイプがあるが、大きく分けて二つに分類される。(1)ペグマタイトに関連したエメラルドの結晶化と、(2)ペグマタイトに関係しないエメラルドの結晶化、である。ナイジェリア中央部のエメラルド/ベリルの形成にはペグマタイトが関係している。こうしたペグマタイトには片岩シームは見られず、エメラルドは花崗岩のがまやペグマタイトのがまの中から見つかる。ウラル山脈(及びアフリカやブラジルの一部の鉱床)では、片岩シームのあるペグマタイト(及びグライゼン)が見られ、エメラルドはペグマタイトや金雲母の片岩(特に接触部分)から見つかる。
     二つ目のタイプのエメラルド鉱床は、変成岩質片岩(例えばオーストリアのHabachtalや、パキスタンのSwat渓谷、ブラジルのSanta Terezinha de Goias、アフガニスタンのPanjshir渓谷など)や、鉱脈や角礫岩を伴う黒色頁岩(コロンビア)に関係している。
     エメラルドの鉱床は五大陸にあることが知られており、中でも南アメリカは長年にわたり最も重要なエメラルドの産地とされている。エメラルドはほとんど全ての地質年代において生成されてきた。エメラルドの生成は大陸衝突時に最も頻繁となる。このとき大きな山脈や幅広い断層帯、局地的な変成作用の再現などが発生し、ひいては隆起や浸食につながる。こうした全ての出来事はエメラルド鉱床の形成に有利に働く。したがって、エメラルドは地球の地殻の最も古い宝石の一つとなりえるのである。エメラルドの最古の鉱床は南アフリカのトランスバールにある始生代の岩石にある(およそ30億年前)。地球で最も新しいエメラルド鉱床は、パキスタンで見つかっており、Swat渓谷(2300万年前)とKhaltaro(900万年前)である。
     今回の講演では、世界中にある重要なエメラルドの鉱床における状況(経済基盤や、採掘状況、生産状況など)について詳細に見ていく。例えば、南アメリカ(コロンビアとブラジル)、アジア(ウラル山脈、パキスタン、アフガニスタン)、アフリカ(エジプト、ザンビア、ジンバブエ、マダガスカル)など。
     エメラルドの特定の鉱物学的宝石学的特性に関しては以下の点について論じる。
     (1)インクルージョンの特徴、
     (2)化学的な詳細情報、
     (3)吸収スペクトル、
     (4)光学的データ。
     こうした特性に基づいた、エメラルドの起源決定における目標、基準、限界についても取り扱う。
  • 米田 千恵, 間中 裕二
    セッションID: 1
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/06
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    最近、消費者に人気のある、いわゆるアイスブルーダイヤモンドと呼ばれている照射処理ダイヤモンドについて、検査する機会を得た。アイスブルーダイヤモンドは、従来の濃青色照射処理ダイヤモンドとは異なり、色相が淡青色である。濃青色に照射処理されたダイヤモンドは、キューレットやガードルにブルーの色だまりやブラウンの色帯があったが、アイスブルーのダイヤモンドには、原材料がほぼ無色であるため、ブラウンの色帯は見えず、色だまりも見えないものもある。そして、このようなアイスブルーダイヤモンドは、自然界で照射を受けたブルーグリーン系のGR1タイプとよばれる天然ダイヤモンドと色相が似ている。
    可視分光分析で濃青色照射処理ダイヤモンドは、放射能により照射を受けてできた空孔の吸収(GR1;741nm)が顕著にみられ、一方アイスブルーダイヤモンドと天然で照射を受けたダイヤモンドは、可視分光でGR1(741nm)のピークが、濃青色照射処理ダイヤモンドに比べ、わずかに検出される程度である。
    キューレットに色だまりがみえず、またGR1(741nm)が弱く検出されるものは、色の起源が自然界による照射なのか、人為的に照射処理を行われたものなのか、看破が困難な場合もある。
    以前、当所で、ほぼ無色に近いカラーグレードの天然ダイヤモンド数石をソーティングした。今回、それらの石が照射処理をされアイスブルー色に変化し、再度当所に持ち込まれた。そこで、これらの石を、フォトルミネッセンス(PL)で微小領域による分析を試み、また自然界で照射を受けたダイヤモンドとの相違についても考察した。
  • 間中 裕二
    セッションID: 2
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/06
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    CVD(Chemical Vapor Deposition)ダイヤモンドは、従来の高温高圧(HPHT)法による合成石とは違い高圧を必要とせず、気相化学反応で基板上に積層させる手法である。
     ダイヤモンドを半導体産業に利用する研究が進んでいるが、HPHT法では大型の単結晶育成に限界があるため、より大きな面積の単結晶が得られるマイクロ波プラズマCVD(MPCVD)法を用いてのダイヤモンド薄膜製造が装置とともに開発研究されてきた。MPCVD法は装置の構造が比較的単純でかつ不純物が入りづらい特徴を持つため、厚み(高さ方向)が得られれば、カット・研磨できるダイヤモンドとして製造することが可能である。
     Apollo Diamond Inc.(ボストン、マサチューセッツ州)は2004年、特許を取得したCVD法で?aタイプのダイヤモンドの商品化を発表し、初期段階で年間5,000~10,000ctsのファセットカットしたダイヤモンドを供給する予定となっている。
     今回、Apollo Diamond社製 CVDダイヤモンドのファセットカット石(重量:0.226ct, カラー:Light Brownish Grey, クラリティ:I-1)および原石(0.189ct、0.159ct)を鑑別する機会を得た。これらの石について、拡大検査や偏光検査等での所見、ダイヤモンドビューTM(DV)・カソードルミネッセンス(CL)による観察およびフォトルミネッセンス(PL,325nm/514nm/632nmレーザー励起)による分析結果についてその特徴を紹介する。
     鑑別特徴抜粋
      形  状:ファセットカット石は厚みのないフラットな形状を示す
      タ イ プ:?a(UV-VIS・FTIR検査)
      拡大検査:テーブルに平行な褐色の成長線
      偏光検査:異常複屈折
      DV・CL :テーブルに平行な成長線、特異な蛍光
      P L :514nm,632nm→737nmにシリコン(Si)による発光
      514nm→575nm/637nmに強いN-Vセンターの発光
      325nm→多数のピーク出現
  • 茶谷原 昭義, 杢野 由明, 堀野 裕治, 藤森 直治
    セッションID: 3
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/06
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    ダイヤモンド半導体デバイス用ウェハーの開発を目的として気相法(CVD)による大型単結晶ダイヤモンドの合成について研究している。半導体として利用する材料には、特に均一性が要求されるので、合成ダイヤモンドを使用する必要がある。これまで合成ダイヤといえば高温高圧(HTHP)条件下で合成されるものを指していたが、近年、減圧下で気相から合成されるCVDダイヤモンドの高速合成が報告され注目されている。HTHPダイヤモンドは1cm程度の結晶が作製可能であるが、それ以上の大きさに成長させるためには、さらに巨大な高圧装置が必要とされる。それに対して、CVDは、反応容器の大型化が容易であるため、今後大型ダイヤモンド合成方法として発展することが予想される。現時点で報告されている最大のCVDダイヤモンドはYan氏らによるダイヤモンドアンビルである[1-2]。また、APOLLO diamond社では、板状CVDダイヤモンドなどを試作している。
     ダイヤモンド結晶合成において、結晶性・純度などの品質はもちろん重要であるが、低コスト化するためにまず高速成長が要求される。極低速で成長させたCVDダイヤモンドは半導体としても理想的な特性を示すものが既に合成されている。一般に高速(10μm/時)以上で成長させると、成長丘と呼ばれる異常成長が起こり、ダイヤモンドのCVDによる厚膜成長は近年まで困難だった。これを克服するために主に二つの方法がある。一つは(100)面を(111)面に比べて優先的に成長させる成長条件を維持することによって(100)基板上にエピタキシャル成長させる方法である。もう一つは、窒素添加することによって、成長速度を増大させると同時に、(100)面を平坦に成長させる方法である。前者は、通常の成長速度での合成であるのに対して、後者は100μm/時以上の高速成長が可能であるため製造に適している。ただし、窒素を添加しているためにダイヤモンド中に窒素が取り込まれ、ブラウン色を呈することが欠点である。ただし、このブラウン色は、天然ダイヤモンドでも話題となっているHPHT処理によって無色化することができる。
     我々は、一般的なマイクロ波CVD装置を用いてダイヤモンド単結晶の高速合成実験を行った。種結晶(基板)としてHTHP合成ダイヤ(Ib型)を用い、成長条件は原料ガスとしてメタン及び水素流量をそれぞれ60, 500sccm、真空度160Torr、基板温度1150~1200℃とした。高速に成長させるため基板上にプラズマを集中させるようにMo製の基板ホルダーの形状を工夫した。窒素を0~3sccm添加し、その影響を調べた。
     結果として次のことが判った。1)窒素なしで、50μm/時程度の成長速度が得られた。2)窒素を添加すると、2倍程度高速に成長し、最大で120μm/時の成長速度が得られた。3)窒素を微量添加すると成長表面にステップバンチングが顕著に見られた。4)窒素添加すると異常成長に伴う成長丘の発生が抑制された。特に、最後の効果によって長時間成長が可能となり、最大で約1カラットの単結晶ダイヤモンド合成に成功した。
  • 北脇 裕士, 阿依 アヒマディ, 岡野 誠
    セッションID: 4
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/06
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    1990年代に入って、高温高圧法による合成ダイヤモンドが宝石市場に流通するようになった。これらのほとんどは2ct以下の黄色のIbタイプであるが、一部はHPHT処理によりIaタイプの緑黄色にされている。また、少量ではあるがIIaタイプのカラレス、IIbタイプのブルーも存在する。最近では照射と熱処理によりピンク~レッドもしくはパープルにされたものもある。
     従来、宝石用に合成されるダイヤモンドは主にロシアの技術を用いたものであったが、近年はアメリカのGemesisがロシアの技術を独自に改良した方法で量産しており、Chathamはロシアと異なった技術で製造されたものを販売している。
     これらの高温高圧法による合成ダイヤモンドは金属溶媒を用いることから、天然とは異なった晶癖を有している。また、溶媒金属を内包物として含有することがあり、天然との識別の根拠となる。
     したがって、一般鑑別においては、内包物、紫外線蛍光、カラー・ゾーニング、歪み複屈折の観察が重要である。ラボラトリーの技術においては、
     (1)FTIRによる分光分析において窒素の含有量と存在の仕方を知るのが鑑別上重要な指針となる。
     (2)紫外-可視分光分析においてNi-N関連の吸収が見られることがある。
     (3)EDXRFによる元素分析においてFe,Ni,Coなどの金属フラックスを検出できることがある。
     (4)CL法による観察では成長履歴の相違から天然と合成を識別可能である。
     (5)PL分析においてある種の金属フラックスや天然特有の蛍光ピークを捉えることが出来る。
  • 神田 久生, 阿依 アヒマディ, 北脇 裕士
    セッションID: 5
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/06
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    天然ダイヤモンドのHPHT処理の有無をどのように鑑別するかは、近年の大きな問題である。この処理に用いられるダイヤモンドはブラウンに着色している。このブラウンダイヤモンドには塑性変形がみられることから、塑性変形と光学特性の関連の理解を深めることは、ダイヤモンドの鑑別技術の向上にとって極めて重要である。ブラウンダイヤモンドをHPHT処理すると、I型は緑色に変色し、II型は脱色することが知られている。また、カソードルミネッセンススペクトルにおいても変化が観測されることがわかってきた。II型のブラウンダイヤモンドには2BDと呼ばれるルミネッセンスピークが観測され、これは熱処理により消失する。この変化がHPHT処理の有無の鑑別に利用できる可能性がある。この2BD発光ピークも塑性変形に関係すると期待されるが、まだ明らかでない。このようなことから、本研究では、発光の変化に注目し、発光と塑性変形との関連を明らかにするために、ダイヤモンドを塑性変形させ、発光の変化を調べた。用いた試料はII型の高圧合成ダイヤモンドで、これを板状に加工したものである。この板状ダイヤモンドを黒鉛粉末の中に詰め、ダイヤモンド合成用の超高圧発生装置を用いて、高温高圧(6万気圧、1800℃)処理した。このような処理で、ダイヤモンドのエッジには異方的な応力が集中し、塑性変形することが期待される。試料の中で応力集中の場所をさらに増やすため、試料の一部にレーザーで穴をあける処理をした。熱処理した試料について、カソードルミネッセンス測定を行った。この測定は、走査型電子顕微鏡を用いて電子線を試料に照射し、発生する光を分光器をとおしてスペクトルを記録する、というものである。
     熱処理した試料を光学顕微鏡で観察すると、エッジ近くが変形しているのが認められ、熱処理により試料が塑性変形していることが確認された。このような場所を集中的に、カソードルミネッセンス測定した。そして、次の結果が得られた。
     (1)熱処理した高圧合成ダイヤモンドにおいて、2BD(F)と呼ばれる発光ピークの出現がみられた。この結果は、II型の天然ダイヤモンドに見られる2BD発光が塑性変形によることの確認となる。
     (2)熱処理した別のII型高圧合成試料において、260 nmにシャープなピークが観測 された。天然ブラウンダイヤモンドを熱処理した試料において同様なピークが観測されることがある。このことから、260nm発光も塑性変形と関連することが示唆される。
  • 測定値と観察パターンによる判定
    矢野 晴也
    セッションID: 6
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/06
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    円形ブリリアントJットの‘カット'の良否の判定は、その二次元的なプロポーション・パラメータが示す外形形状は勿論のことながら、立体的な構造体であるが故の三次元的なシンメトリーも判定対象にされなければならない。透明体であるダイヤモンドにおいては、ブリリアンシー、ファイアーやシンチレーションなどの三次元構造に由来する光学的効果が重要な評価要素となっているからである。
      然しながら、その計測や表現法がやや困難な事もあり、従来から軽視されて来た嫌いがある。主として、テーブル径、クラウン高さ(角度)、パビリオン深さ(角度)とガードル厚さのみで円形ブリリアントの形状を表現して来たのは端的なこの例であろう。
     プロポーション・パラメータ、即ち構成各面の寸法や角度、は最近の自動計測器、例えばダイアメンションなどで容易に計測可能である。シンメトリーに関しては、これら計測数値を比較勘案のうえ決定されているが、その基準にはやや恣意的な面も見受けられる。 最近のより進んだ三次元的な計測技術により、笹目数値やパビリオン面、スター面などの角度方位のより詳細な計測が可能となってきており、これらの結果を用いれば、より客観的なシンメトリーの判定が出来るのではないかと考え、予備的な考察を行ったので報告する。
     この結果、シンメトリーには構成各面のサイズや角度数値は勿論のことながら、三次元的な構成各面の角度方位を判断基準の一つとすべきであり、寧ろこれをより重視すべきではないかと思われる。
     尚、現在でも依然として市場から要望の多い H&Cパターンについて、上述のようなより詳細な計測結果とこのパターンの出現形状との関連性を求めておけば、この映像からもシンメトリーの判定が可能ではないかと思われ、検討を加えたので付け加えておく。
  • 古屋 正司
    セッションID: 7
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/06
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    2002年11月頃、マダガスカル中央部のAmbatovita近郊のSakavalana花崗岩ペグマタイト中より大変めずらしいセシウム(Cs)とリチウム(Li)含有のピンク・ベリルが発見され、今世紀最初の新種石“ペツォッタイト”として登録された。
     Ambatovitaは宝石の町として有名なAntsirabeとFianarantsoaの中間、西よりの大ペグマタイト鉱床中にあり、この地区からは50箇所以上のペグマタイト鉱床が発見され、今まで他国で類を見ない宝石が産出されている。ペツォッタイトが発見された地区からは、トルマリン、クンツァイト、水晶類、長石類ゥ凾黷驕B
     特に今まで見た事もないようなイエローのダンブライトの産出があった。それはまさにマダガスカルを代表するイエロー・オーソクレーズに良く似た、美しい鮮やかなイエローであった。
     それらの宝石の産出状況や、EDXRF、FT-IR、紫外可視分光光度計ゥ凾閧級A他の産地との比較について発表する。
  • 林 政彦
    セッションID: 8
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/06
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    エメラルドの着色原因がCr3+であることを結晶場理論によってNassau(1980)が説明を行っている.さらに緑色ヒスイ(ジェダイト)についてもエメラルドと同様にCr3+が着色原因になっていることを演者が一昨年示した。
     今回Fe3+によっても緑色宝石になる例を見出したので紹介する.さらに他の遷移金属のVイオンとNiイオンによる着色ついても触れる。
  • 阿依 アヒマディ, 北脇 裕士, 岡野 誠
    セッションID: 9
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/06
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    宝石素材に供される岩石・鉱物の真偽を判断するためにはいくつかのラボラトリーの分析が行われる。すなわち、異なる波長 (UV-Vis-IR)による分光分析、蛍光X線分析 (XRF)、走査型電子顕微鏡に付属するエネルギー分散型X線分析や電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)などである。XRF分析は簡単便利で主元素と微量元素を同時に分析できる手法である。測定対象はバルク状、粉末状など、多様な試料を測定することができ、宝石素材の分析には非常に有効である。更にこれより高感度の超微量分析を行う場合はICP-AES、ICP-MSなどの手法があるが、通常試料を酸で溶解、もしくはアルカリで融解し溶液化する必要があり、宝石素材には使用できない。また、微小領域の分析では元素マッピング機能をもつEPMAを用いるが、前処理が必要なことやPPMオーダーの分析には感度が十分ではないなどの欠点がある。
     このように宝石鉱物の高感度分析には従来の分析手法にはそれぞれの限界がある。そこで当技術研究室ではICP-MSの高感度を維持しつつ固体試料で局所分析が行えるレーザー・アブレーション(LA)―ICP-MS分析法に着目し、宝石鉱物の化学組成及び微量元素~極微量元素分析への応用を開始した。
     宝石の地理的地域の産地鑑別はそれを行うそれぞれの鑑別ラボの意見であり、その宝石の品質や価値を示唆するものではない。このことはCIBJOのルールにおいても基本理念となっている。とはいっても検査するラボごとに異なる見解がでるようでは顧客は混乱することになり宝石鑑別ラボの信用を落とす結果となる。産地鑑別を行う以上はより精度の高い科学的根拠の下に行われるべきである。
     本報告では(LA)―ICP-MS分析法を用いて極微量に含有される不純物元素の分析を行うことにより、サファイアやエメラルドの地理的産地鑑別の可能性について言及する。
  • 川崎 雅之, 長瀬 敏郎, 小沼 一雄, 勝亦 徹, 砂川 一郎
    セッションID: 10
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/06
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    天然水晶のモルフォロジ-は主にr、z、mの三面で構成されており、底面の出現は極めて希である。しかしながら、産地によっては底面を持つ水晶が多く産出する例がある。本報告ではFour Peaks(Arizona, USA)産アメシストを中心に底面出現の原因を解析し、また中国産両錐水晶の形成機構についても述べる。
     Four Peaksは米国アリゾナ州中部のアメシスト産地であり、宝石質のアメシストが産出することで知られている。アメシストは、プレカンブリア期の花崗岩貫入によって生じた断層帯中の角レキ状珪岩上に無色水晶、赤鉄鉱、アパタイトなどと共に産出している。それらは珪岩片を中心に同心円状に配列していることから、複数回の鉱化作用があったことがわかる[1]。
     この地のアメシストには底面を持つものが多く産出する。それらは主に錐面(r, z)と底面(c)で構成され、柱面(m)を伴うものは少数である。結晶面の光沢は低く、錐面に大きなエッチピットが見られることから、成長後に溶解を受けていることがわかる。底面は突起の多い荒れた面で、個々の突起の大きさは数百μmから数mm程度である。その表面は六角台形(数十~100μm)ないし三角錐状(10μm)の小突起で覆われている。これらは溶解によるものと解釈できる。
     カソ-ドルミネッセンス(CL)で内部を観察すると、頂部が丸みを帯びたジグザグ状の境界線が認められた。これは一度できた水晶が溶解作用を受けた後、再成長して現在の形になったことを示している。これから、アメシストの成長履歴において異なる四つの段階(最初の成長、溶解、再成長、最終期の溶解)があったことがわかる。
     同様の過程で底面の出現する例が報告されている[2]。中国四川省及びその他産地の両錐水晶は一方向に成長した水晶が折れた後、その破断面が再成長して新たな錐面を形成している。最終的な形はr, z, m面で囲まれた両錐長柱状で底面は伴われないが、そこに至る過程で底面が出現する。Four Peaks 産アメシストと中国産両錐水晶との違いは、前者は一端が固定されていたため底面を伴う単錐状となり、後者は両端が自由空間中で成長したため両錐状となったことである。
     まとめ
     水晶の底面は構造的に荒れた面(rough interface)であり、本来出現しない結晶面である。しかし、Four Peaks産アメシストや中国産両錐水晶の例から、成長途中で破断・溶解により界面が荒れた状態になれば、その回復過程(recovery process)で底面が出現する場合があることがわかる。
  • 衝突破砕ガラスからの固体形成
    三浦 保範, 高木 亜沙子
    セッションID: 11
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/06
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    1.はじめに:ラブラドライト斜長石は、離溶ラメラ組織の光の干渉により様々な色を示して、ラブラドレッセンスといわれて宝石鉱物として広く知られている(Miura et al., 1975)。そのラメラ組織を示す斜長石の形成は、地球外の試料の研究が進むにつれて、ある問題点が浮上してきた。これまで市場に出回っているイリデッセンスを示すラブラドライト斜長石ラメラ組織の形成は、高温マグマからの均一溶液からの固体状態の離溶反応(スピノーダル分解)で理解されている。問題点は、a)高温マグマが関係した古期岩石は広く分布するがラメラ組織を示す斜長石鉱物の産出が限られている、b)マグマからの直接固体晶出であるが不均質な組織をしている、c)その不均質さが宝石のカット面などの作成に影響している、d)鉄の鉱物が組織内を広く充填している、d)月は高温マグマが形成初期に関与したが衝突で形成された古い月の試料(30億~45億年前の形成)にはラブラドライト斜長石が形成されていない、e)大気がありかって海水のあった火星の石からは探査機画像には発見されていないが、火星起源の隕石からは衝突ガラス(マスケリナイト)が発見されている。これらの問題点を、対比的に解明する糸口を筆者らが考察してみる。
     2.地球上の試料の産出場所の特徴:地球上でイリデッセンスを示すラブラドライト斜長石は、一定の古期岩石の分布する地域(カナダが有名な産地、最近はマダガスカル産・フィンランド産、赤色透明の試料のある米国産など)に産出している。カナダとマダカスカルは、20億から30億年前の岩石から産出している。ほとんどのラブラドライト斜長石でラメラ組織を示すものは、鉄に含む暗黒色の岩石が多い。この岩石の特徴(古期岩石中・黒色・組織の不均質さなど)が問題点を解明する糸口になっている。これまで、これらの岩石の特徴は大陸地殻として形成された後に岩石が地殻変動を受けたためだけであると考えられていた。
     3.対比試料の特徴:古い記憶は地球では消失しているので、地球外の月か火星・隕石で対比してみる。アポロ月面・月隕石試料は灰長石鉱物が多く、中間型斜長石組成の鉱物が形成されていない。月面形成後衝突以外にマグマ火成活動が続かず、ラブラドライト斜長石は産出していないと考えられる。火星には、火星起源隕石中にマスケリナイト(中間型斜長石鉱物)といわれる衝突で不均質にガラス化している斜長石があるが、ラメラ構造は火星の隕石からは発見されていない。火星隕石は2回以上の衝突で形成されて地球に飛来し高温状態での持続時間が短いため、ラメラ組織が形成されなかったと考えられる。しかし、破砕斜長石が高温状態での持続時間が長い今場所(火山構造のオリンポス火山など)周辺に、中間型斜長石鉱物が既存していればラメラ組織が形成されている可能性がある。小惑星起源の隕石中には、衝突分裂・破壊の後高温状態で長い保存される場所がないので、ラメラ組織が形成されていない。
     4.新しい解釈:これら問題点を説明する考えとして、ラメラ組織を持つラブラドライト斜長石の形成を衝突形成岩石の高温マグマ状態からの形成と考える。最初に巨大衝突で地球が破壊されて高地と海の地形が形成されているので衝突に関係して形成されている。また、古期の大陸を復元すると大陸の分裂割れ目に相当する場所と同心円状の大陸地殻地域にラメラ組織を持つラブラドライト斜長石が多く産出するので、衝突形成後地下の高温マグマが発生して長く持続できる場所で既存組織からスピノーダル固体分解反応が進んだと考えられる。
     5.まとめ:次のようにまとめられる。地球が形成された後、十数億年から二十数億年の間に中間型斜長石組成の衝突破砕ガラス形成記録が消失して固体晶出後ラメラ組織が形成されたと考えられる。破砕時の既存の組織がそのまま保存されているので、均質な岩石ではなく、衝突時にできた不均質な破砕組織となったと考えられる。高温のため既存の衝突組織は消失しているが、鉄などの鉱物が再結晶して多く含まれているのが形成を示す特徴である。したがって、市場の宝石試料に不均質な組織が多い。火星には、破砕斜長石が高温状態での持続できる場所周辺に、中間型斜長石鉱物ラメラ組織が形成されている可能性がある。
     最後に、この議論には、米国でのラメラ組織の研究者Dr.G.Nordにも昨年と今年に渡米中に参加して頂き関連データの確認ができたので付記する。
  • 田中 美帆, 小松 博
    セッションID: 12
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/06
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    先ず両貝殻の主たる構造である真珠層構造(“ドブガイ”貝殻)と交差板構造(シャコガイ貝殻)の違いについて論じ、次いで比重、硬度、蛍光、磁性率などの物性の違いについて論じる。
     次いでこれら違いに着目した判別法について、核および真珠それぞれの方法を述べ、その確実性を破壊検査を踏まえて論じる。
      なおシャコガイ貝殻製核の問題性について、ワシントン条約、経年変化、てりに対する影響などから論じる。
  • 金 安善, 矢崎 純子, 小松 博
    セッションID: 13
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    代表的欠陥として(1)薄まき、(2)加工きず、(3)層われの三つを選んだ。
     (1)薄まきについては真珠層の厚さと経年変化の相関を、主として高温・低温の温度サイクルによる加速試験で論じてみた。
     (2)加工きずについてはその真珠層崩壊の実態を、主として内部構造観察から論じた。
     (3)層われについてはその観察法や生成メカニズム、さらには経年変化によるわれの発達について論じた。
  • 着色による分光パターンの変化について
    金田 美竹, 荻村 亨, 佐藤 友恵, 鈴木 千代子
    セッションID: 14
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/06
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    アコヤ、白蝶のゴールド系真珠について、まず代表的色調とその濃淡サンプルを選出し、それらの分光パターンを論じる。次にオレンジ、イエロー系の分散塗料数種を選び、それらの分光パターン明示する。次にゴールド系サンプル真珠をそれらの塗料で着色し、それぞれの分光パターンがどう影響を与え合っているかを論じる。
    さらに着色サンプル真珠のフェードテスト(日光堅牢度試験)結果も論じる。
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