宝石学会(日本)講演会要旨
平成25年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
平成25年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
  • 天然記念物緊急調査報告書より
    林 政彦, 安井 万奈, 山崎 淳司
    セッションID: 1
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/26
    会議録・要旨集 フリー
     埼玉県内で産出する鉱物種は,現在まで199種であり,ひすい輝石(ジェイダイト)も産出しているが,比較的大きな鉱物としては,方解石,スピネル,灰鉄石榴石などがある.方解石は透明な結晶が光学用として使われたという.現在では,セメントなどの材料として石灰岩(主として方解石)の採掘を,(株)ニッチツ秩父事業所(旧秩父鉱山)が採掘している.スピネルと灰鉄石榴石は,それぞれ青色と黄色の色調を示し,透明であれば宝石に十分使えそうである.これらは,堆積岩(秩父帯の石灰岩)にマグマが貫入して生成したスカルン鉱床中に見られる.現在の採掘の対象は結晶質石灰岩(大理石)であるが,かつては金,亜鉛,鉄などを目的にしていた.
     一方,江戸時代には,平賀源内が“石綿”を発見して燃えない布「火浣布」として製作したことが知られている.
     今回は,演者の一人である林が1999年~2001年に埼玉県教育委員会より委嘱された委員として実施した,天然記念物緊急調査の報告書を元に,宝石としての価値について報告する.なお,この調査は文化庁が全国の都道府県で実施したものであった.
     今回紹介する鉱物・宝石の産地は、日本ジオッパークの一つ、秩父ジオパークとなっている。このジオパーク構想はユネスコ(国際連合教育科学文化機関)が始めたものである。
  • 渥美 郁男, 西村 文子
    セッションID: 2
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/26
    会議録・要旨集 フリー
     トラピッチェ(Trapiche)とはスペイン語でサトウキビの搾り機の意味である.その歯車に似た6方向に広がる放射状結晶の呼称に用いられ,トラピッチェ・エメラルドが特に有名である.しかし近年,ミネラルショーなどで「トラピッチェ」と呼ばれる3方向に放射状模様を示す薄片状のダイヤモンドが販売されており話題を呼んでいる.ダイヤモンドは等軸晶系に,エメラルドは六方晶系に属すことが知られており,その結晶系の違いから明らかに外観や構造が異なる.これらのことからダイヤモンドがトラピッチェと呼ばれることの是非についても議論を呼ぶところである.今回はこれらの模様が見られるダイヤモンドについて拡大検査や幾つかの分析を行ったので簡略に報告する.また最近観察された珍しいダイヤモンドについても言及する.
  • 久永 美生, 北脇 裕士, 山本 正博, 岡野 誠, 江森 健太郎
    セッションID: 3
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/26
    会議録・要旨集 フリー
     2012年半ばアントワープの国際的なダイヤモンドグレーディングラボラトリーから非開示で持ち込まれたCVD合成ダイヤモンドの報告があり,ダイヤモンド業界を賑わせた(Even-Zohar, 2012).それ以降,インドや中国の検査機関からも相次いでCVD合成ダイヤモンドに関する報告がなされている(Song et al., 2012).2012 年12月,当研究所では6個の1ct upのCVD合成ダイヤモンドを鑑別した.これらは,宝石検査機関に非開示で持ち込まれたCVD合成ダイヤモンドとしては最大級のサイズである.
     検査した6個ともラウンド・ブリリアント・カットが施されたルースで,重量は小さい方から1.001, 1.009, 1.010, 1.011, 1.032, 1.119ctであった.カラーグレードはすべてLight Yellowish Grayで,灰色味が強く通常のケープスケールでは評価できなかった.クラリティグレードは4個がVS1,2個がVS2にグレードされた.カットグレードは4個がExcellent,2個がVery goodであった.
     検査したすべてのサンプルに少数のピンポイントが観察され,これらがVVS以下のクラリティの要因となっている.これらを拡大すると黒褐色の不定形で,非ダイヤモンド構造炭素と考えられる.一部の試料のガードル部に黒色のグラファイト化が認められた.この特徴はHPHT処理が施されたダイヤモンドに見られるものと同様のもので,CVD合成後にHPHT処理が施されたことを強く示唆している.6個の試料すべてに特徴的な筋模様の歪複屈折(低次の白黒の干渉色)が観察された.これらは結晶の成長方向に平行に伸長したもので,結晶成長時の線状欠陥(ディスロケーション)に起因すると考えられる.長波紫外線下においてはすべての試料は不活性で,短波紫外線下では一部の試料に弱い帯緑黄色の発光が見られた.
     FTIRによる分析において,すべての試料はⅡ型に分類された.色調にわずかな黄色味を有するにもかかわらず,置換型単原子窒素に由来する1344㎝-1の吸収は認められなかった. 液体窒素温度で種々の励起波長で分析を行ったフォトルミネッセンススペクトルの結果,637nm(NV-), 575nm(NV0),503.2nm(H3)ピークおよび737nm(736.4/736.8nmのダブレット)ピークがすべてに検出された.488nmレーザーによるPLスペクトルでは6個中5個に帰属不明の528nmピークが検出された.325nmレーザーによるPLスペクトルにおいて462nmと499nmに帰属が不明のピークが検出された.また,2個の試料に非常に弱い415.2nm(N3)のピークが検出された.
     DiamondViewによる検査において,すべての試料には帯緑青白色の発光色が見られ,青色の燐光が観察された.これらの発光はダイヤモンドの色を無色化るために意図的に添加されたホウ素に起因すると考えられる.また,検査したすべてにCVDダイヤモンドに特有の積層構造のイメージが観察された.このようなCVD特有のUVルミネッセンス像はテーブル側からよりもパビリオン側からの観察でより明瞭となった.しかし,一部には天然ダイヤモンドに一般的な直線状の成長縞やスリップラインのような直線的な構造も見られたため,試料全体(特にパビリオン側)を慎重に観察することが重要と思われる.
     参考文献:
    1. Even-Zohar C. (2012) Synthetic specifically “made to defraud”. Diamond Intelligence Briefs, vol.27, No.709, pp7281–7290
    2. Song Z., Lu T., Lan Y., Shen M., Ke J., Liu J and Zhang Y. (2012) The identification features of undisclosed loose and mounted CVD synthetic diamonds which have appeared recently in the NGTC laboratory, Journal of Gemmology, vol33, No.1-4, pp45-48
  • 江森 健太郎, 北脇 裕士, 岡野 誠
    セッションID: 4
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/26
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     ベリリウム拡散加熱処理(以下Be処理)は,2001年後半から突如として宝石市場に現れた新しい手法で,高温下の加熱により外部からベリリウム(Be)を拡散させる処理である(Emmett et al, 2003).このような Beを検出するためにはLA-ICP-MS等の軽元素の分析が可能な従来の宝石鑑別の範疇を超えた分析が必要となった.
     Be処理が発覚した当初は,天然で未処理のサファイアおよびルビーにはBeは内在しないと考えられていたため,LA-ICP-MSでBeが検出されればBe処理であると考えられてきた. しかし,近年,Be処理が行われていないサファイアにもBeが検出される事例が複数報告されるようになり(Shen et al, 2007),Be処理の鑑別をより複雑化している.
     本研究では,CGLにおいて昨年一年間でLA-ICP-MS分析を行った1000pcs以上のサファイアおよびルビーの分析結果を系統的にまとめ,Be処理サファイアの鑑別の現状について報告する.また,未処理でBeが検出されたサファイアの特徴についても紹介する.
     LA-ICP-MS分析の結果,Be処理されたコランダムの平均的なBe濃度は色調や測定部位にかかわらず平均10ppm程度であることがわかった.
     LA-ICP-MS分析においてBeが検出されるが,色の分布や他の検査において天然起源と判断されたサファイアについては,Be含有量の個体差が大きく,部位による濃度差も大きい.また,Beに伴ってブルー系ではニオブ(Nb),タンタル(Ta),トリウム(Th)等が,イエロー系ではジルコニウム(Zr),ハフニウム(Hf),タングステン(W)等が検出されることが多く,同様な事例が報告されている(Shen et al, 2009).
     このような天然起源のBeに伴う他の微量元素はクラウド中の微小包有物に由来すると考えられているが,必ずしも視覚的な包有物が見られない箇所からも検出されている.また,CGLにおける原産地鑑別のプロジェクトで集積した産地別の試料中,Huai-Sai(ラオス),Pailin(カンボジア)およびMabira(ナイジェリア)などの玄武岩起源のサファイアからBeに伴ってZr,Nb,Hf,TaおよびWが検出されている.これらの元素は固体のマントルが部分溶融する際に液相に濃集しやすいいわゆるHFSE(High Field Strength Element)と呼ばれており,マグマ起源のコランダムの成因に大きく関わっていると考えられる.
     これらとは別にしばしば他の微量元素を伴わずに1~2ppm以下の微量のBeが検出される場合がある.これらの事例はBe処理に用いたるつぼの再使用等による二次的な汚染ではないかと推測される.
     以上のように,LA-ICP-MS分析においてサファイアおよびルビーにBeが検出された際,安直にBe処理と判断するのではなく,含有量や分布状況を詳細にトレースし,他の微量元素についても同様に複数箇所の分析を行い,天然起源や二次汚染による混入の可能性も考慮に入れて慎重に判断する必要がある.
     参考文献:
    1. Emmet, J.L., Scarratt, K., McClure, S.F., Moses, T., Douthit, T.R., Hughes, R., Novak, S., Shigley, J.E., Wang, W., Bordelon, O. and Kane, R.E., 2003. Beryllium diffusion of Ruby and Sapphire, Gems & Gemology, 39(2), 84-135
    2. McClure, S.F., Breeding, C. M., Scarratt K., Wang W., Smith C. and Shigley J., 2007. Beryllium in Corundum: The Consequences for Blue Sapphire, GIA Insider, Vol.9, Issue2(January 26, 2007)
    3. McClure, S.F., Scarratt, K., 2009. Beryllium in Pink and Yellow Sapphires, News from Research(April 3, 2009).
  • 森 孝仁
    セッションID: 5
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/26
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     ミャンマー連邦共和国では,北部Nam-Yaと中部のMogokが,無処理で美しいルビーが産出されます.現地でのルビー産出の状況および,モザンビーク産など他の産地のモノが混在するルビーの国内流通の現状とこれからの展望,また今後,ルビーの産出が期待される新しい鉱区の情報など,モゴック鉱山から東北東に位置するピャンゴン地区などの(ペリドットが産出されていた鉱区)採掘調査現場の模様を踏まえながらレポートします.
     また,モリスミャンマー(現地法人FC12)では,10年前から鉱区より直接届く原石を毎日20~30pc,カット研磨し,その場で内包物の顕微鏡拡大写真を撮影し,原石の詳細と共にファイリングしております.今回の発表では,そのインクルージョンの写真を見ながら,Nam-Ya産とMogok産の違いを報告します.
     今回の発表では,ルビー内包物の産地により,シルクインクルージョン,結晶インクルージョン,スピネル,ガーネット,アパタイト,ダイアスポアなど)糖蜜状組織をレポートする.そして,それぞれの特徴的なインクルージョンの出現率をランダム選んだ1000pcから明らかにする.
  • 李 宝炫, 崔 賢珉, 金 永出
    セッションID: 6
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/26
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     ブルーサファイアの色を向上させる処理としては染色処理,単純加熱処理,拡散加熱処理が取り上げれる.その中で単純加熱処理は,コランダムに一般的に行われるエンハンスメントとして認識されているため,美しいブルー色を引き出すための技術開発や努力は現在まで続いている.
     加熱処理によるブルーサファイアの色の改良は19世紀後半から始まり,20世紀に本格化された[1].加熱処理にはガスによる還元•酸化雰囲気が必要であり,色が淡いブルーサファイアを濃いブルー色に変えたり,濃すぎるブルー色を明るくしたり,内包物を除去して透明度を高くするなどの方法が適用される[2].そして,サファイアは産地によって特性が異なるため色相や不純物,内包物などの特徴に合う処理方法が必要である[3].このようにブルーサファイアの色を向上させるには様々な処理経験による処理条件と処理技術が要求される.
     韓国でも付加価値の創出が可能である宝石の処理技術への関心が高まっている.韓国のある企業はロシアから導入したダイヤモンド用のHPHT(高温高圧)装置をコランダムに応用して試してみた.数々のサファイアを数千回の条件で試した結果,色が淡いサファイアを透明度の良いブルーに変えることに成功した.その企業の取締役の話によるとロシアから購入した高温高圧装置をサファイア処理用として改造するだけではなく,サファイアの処理に必要なモールド(型)も開発したと説明した.装置構造から処理の条件として考えられる温度と圧力に関する情報は得られていないが,鑑別可能な特徴として赤外線分光分析で特有の吸収が認められる.処理前∙後を拡大検査で比べてみると内包物の変化は観察されるが,単純加熱処理による特徴と類似であるため,新しい処理であることを認知せずに観察するとその特徴は看破し難い.韓国で開発されたこの処理は単純加熱処理では色の向上ができないサファイアまで処理が可能ということが注目するべきである.今後,新しく処理されたブルーサファイアの詳細な研究が必要である.
     【参考文献】
    1. T. Ted, The heat treatment of ruby and sapphire,Gemlab Inc., USA (1992) p.xi-xvi.
    2. K. Nassau, Gemstone enhancement: History, Science and State of the Art-2Rev.ed, Butterworth Heinemann (1994) p.122-131.
    3. T. Ted, The heat treatment of ruby and sapphire,Gemlab Inc., USA (1992) p.141-218.
  • 中島 彩乃, 古屋 正貴
    セッションID: 7
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/26
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     近年スピネルの人気が高まっていることは周知の事実である.レッドスピネルはルビーと比べ加熱処理されたものが非常に少ないこと,またミャンマーからの産出は減少傾向にあるにも関わらず,ミャンマー産の宝石全般への人気が高まっていることが,その人気に拍車をかけている.ブルースピネルにおいてはベトナムから産出されるコバルトスピネルが,非加熱のサファイアよりも高い値段が付けられている現況からその人気が察せられる.
     このような状況下で,宝石の鑑別にも合成スピネルや加熱されたスピネルが持ち込まれるようになった.そこで天然石と合成石,および非加熱と加熱されたものの違いを調べるため,それらの基本的な宝石学的な特徴とともに,フォトルミネッセンスとラマン分光を調べた.
     その結果,合成石ではその製造方法がベルヌイ法やフラックス法にかかわらず,色も赤・青にかかわらず,フォトルミネッセンスに違いが見られた.また蛍光が強く,計測出来るものは限られたが,ラマン分光にもピークのシフトが見られた.
     非加熱と加熱された石の比較では,加熱石ではラマンのピークに半値幅が大きくなり,ピークの強度が弱くなる特徴が確認された.
     フォトルミネッセンスやラマン分光は,その計測方法から一面だけ露出していれば検査を行うことが出来る.そのためジュエリーにセットされ,インクルージョンでの判断が難しい宝石でも検査を行うことができ,宝石鑑別において有効であると考えられる.
  • 古屋 正貴, エリアス チャールズ M.
    セッションID: 8
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/26
    会議録・要旨集 フリー
     パラサイトに含まれるオリビンを宝石としてカットできるようになってから,市場でもパラサイト起源のペリドットが見られるようになった.これらはすでにいくつかの研究がされているが,この度,アメリカのAdmire隕石からカットされたペリドットを検査する機会を得たので,改めて通常の地球起源のペリドットとの比較,検証を行った.
     検査としては拡大検査,屈折率,比重などの通常の鑑別検査と共に,蛍光X線での成分分析,FT-IRや紫外可視分光光度計などの分析機器を用いた検査を行い,その他にも磁石を用いての磁性の検査などを行った.
     パラサイト起源のペリドットに地球起源のものとの違いが見られた点としては,拡大検査のインクルージョンでは1) 周りの鉄質隕石が含まれたもの,2) 独特な針状インクルージョン,3) 地球起源のものではあまり見られない強いクリベージなどが認められた.また,屈折率と比重との関係において,パラサイト起源のものの方に比重が高くなる傾向がみられた.そのほか成分分析からは,パラサイト起源のものにニッケル分が低い特徴が見られた.またカット石では母岩と成る鉄質隕石をインクルージョンと含むものでは強い磁性も違いとして認められた.
     数は少ないもののAdmire隕石以外の隕石との比較ではあまり有効な違いは見られなかった.これはそのペリドットの生成が,火星と木星のアステロイドベルトの小惑星同士の衝突によるもので,それが地球のどこに隕石として落ちたかの違いであり,由来自体には違いがないためと推測される.
     上記のような違いがパラサイト起源のペリドットと地球起源のペリドットには認められ,それらを宝石鑑別上でも区別することが可能であることが分かった.
     【参考文献】
    1. Leelawathanasuk, T., et al. “Pallasitic peridot: The gemstone from Outer Space” IGC 2011 Interlaken, Switherland
    2. Shen, A., et al. “Identification of extraterrestrial peridot by trace elements” Gem and Gemology, Fall 2011, United States
    3. Wikipedia, “Pallasite” Internet homepage
  • 勝亦 徹, 相沢 宏明, 小室 修二, 佐久間 崇
    セッションID: 9
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/26
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     CrやMnを不純物として添加したルビー(Cr:Al2O3),スピネル(MgAl2O4)やフォルステライト(Mg2SiO4)は強い蛍光を発する蛍光材料であり,照明用蛍光材料,レーザー光線,蛍光温度センサとして応用が期待される.我々は,これまでに,センサ応用を目的とした種々の蛍光体結晶の結晶育成と結晶評価を通じて,ルビー,スピネルやフォルステライト結晶からのさまざまな発光現象を観察してきた.たとえば,ルビーおよびCr添加スピネルが,切断や研磨などの結晶加工の際に発光することや,Mn添加スピネル結晶やMn添加フォルステライト結晶がX線照射で発光することなどが観察できた.これらの発光現象の内,結晶加工時の発光は,切断・研磨の際の結晶の破壊によって起きる現象,いわゆる破壊発光の一種と考えられ,応力センサや加工センサとしての応用が期待できる.また,X線励起によるMn添加スピネルの発光は,X線検出器への応用からも興味深いものである.今回は,ルビー,スピネルやフォルステライト結晶の蛍光以外の発光現象(結晶加工時の発光とX線励起による発光)について報告する.
     CrまたはMnを不純物として添加して,ルビー,スピネル,フォルステライトなどの蛍光体結晶をFZ法で育成し,結晶の加工(切断・研磨)およびX線照射に伴う発光の有無と発光スペクトルを評価した.市販のベルヌイ法で育成したルビーも試料として用いた.結晶試料を用いて,蛍光スペクトル,X線粉末回折パターンを測定し,結晶の加工(切断・研磨)の際の発光およびX線励起による発光を観察し,発光スペクトルを測定した.
     ダイヤモンド切断機やダイヤモンド研磨盤を用いてルビーを加工する際に,赤色の発光が観察できた.Cr添加スピネル結晶からも同様の赤色発光が観察できた.この発光は,研磨している結晶からだけでなく,結晶から削り取られて研磨盤に付着した結晶粉からも観察できることがわかった.この発光は,ルビーおよびCr添加スピネルの(紫外~緑色光で励起した)蛍光スペクトルと同様のスペクトル形状であった.一方,Mnを添加したスピネルとフォルステライト結晶からは,X線励起(CuKα)による発光が観察できた.Mn添加フォルステライト結晶からは赤色の発光が,Mn添加スピネル結晶からは緑色の発光が観察できた.X線励起発光は,それぞれの結晶からの蛍光スペクトルと良く一致した.
  • 福田 千紘, 宮﨑 智彦, 亀井 淳志, 赤坂 正秀
    セッションID: 10
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/26
    会議録・要旨集 フリー
     2012年には南極大陸セールロンダーネ山地産のアマゾナイトの特徴を主に記載し報告した.また他の大陸,国で産出するアマゾナイトを入手し産地ごとの微量元素の差に着目して差異の有無を検討した.その結果,着色に影響しているとされるFe,Pbの他に着色にあまり影響しないと考えられるRb,Sr,Cs,Baの含有を確認しそれぞれ産地ごとの特徴との関係を検討した.
     本年は昨年薄片としていた南極産のアマゾナイト以外の試料の一部もすべて薄片にしてEPMAを用いた定量分析,面分析を行った.
     薄片になった状態で観察した結果,各産地ごとにラメラの分布や規則性に差が見られた.不定形な脈状~レンズ状のラメラを持つものが多いが直線で構成されたラメラを持つ試料があった.また幅も様々でこれは元々高温で形成された時点でのNa成分の含有量の差異によるものと考えられる.結晶内部には石英を包有している試料がいくつか見られた.薄片になった状態での色の濃度は原石またはカット石の状態で色を比較した時の濃度とは異なった.
     定量分析の結果,微小領域での組成は純粋な正長石と灰長石成分をわずかに含むほぼ純粋な曹長石のラメラからなっていることを確認した.また数ミクロンのビーム径で分析できる領域からは昨年蛍光X線分析で差異を見出した微量元素であるFe, Pb, Rb, Sr, Cs, Baは検出限界を下回るケースが見られた.そのため不均一性の特徴と傾向を調べるため面分析を行った.その結果微量元素の存在度は正長石成分の部分と曹長石成分の部分ではわずかな差が認められたが概ね均一であると判断される.
     これらの結果と昨年発表した結果を照らし合わせてより簡便な方法で識別が可能かどうかを検証した結果を報告する.
  • 下村 道子
    セッションID: 11
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/26
    会議録・要旨集 フリー
     聖書には数多くの宝石が記載されている.それらは希少で,美しく,貴重なもの,そして聖なるもののシンボルとして語られている.たとえば,旧約聖書の「出エジプト記」の中では,祭司の聖なる祭服に威厳と美しさを添えるために,12個の宝石を裁きの胸当てに留めつけることと,胸当ての素材の色や大きさ,宝石の名前や配列が記述されている.しかし,この宝石の名前と順序は聖書の版によって異同がある.一例をあげると,16世紀に英訳された『ジュネーブ版聖書』と,17世紀の英国王ジェームズ1世の『欽定訳聖書』と,現在の英語の『ニュー・インターナショナル版聖書』では,たとえば12個のうちの最初の宝石は,それぞれ,ルビー,サルディウス,ルビーとなっており,その他いくつかが異なる.さらに,日本語訳の聖書においても,大正時代の版と,戦後に翻訳された『口語約聖書』,そして1987年に完成した最も新しい『新共同訳聖書』では,最初の宝石は,それぞれ,赤玉,紅玉髄,ルビーであり,多くの違いがある.宝石の名称に関しては,現在は用いられていないものや,現在とは異なる宝石を指していたと考えられるものもある.
     こうした聖書中の宝石を取り上げた研究は,G.F.クンツ博士をはじめとして,少なくはない.本発表は,聖書の英語及び日本語の翻訳の歴史をたどりながら,旧約聖書の「出エジプト記」の中の祭司の胸当ての宝石と,新約聖書の「ヨハネの黙示録」の中の新しいエルサレムの城壁の土台石などを考察してゆく.
  • 山本 亮, 南條 沙也香, 齋藤 友恵
    セッションID: 12
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/26
    会議録・要旨集 フリー
     分光スペクトル測定は様々な宝石の鑑別において利用されている.真珠では反射分光による測定が主であり,積分球を通して測定が行われるのが一般的である.主に行われる鑑別はクロチョウ真珠やゴールド系真珠の着色の判別である.この中でゴールド系真珠の鑑別では,一部の真珠において反射分光スペクトルから着色の有無が判別できない特徴を示すものがある.このような真珠は干渉色が強く現れる特徴があり,この干渉色が分光スペクトルに影響していると考えられる.
     以前,宝石学会で発表したように真珠には“透過”と“反射”の2種類の干渉色が存在する.この中で,反射干渉色は実体色の影響を受けにくく,結晶層の厚みが同じであれば色に関係なく出現パターンが同じとなる.このような反射干渉色の同じパターンの真珠は,分光測定で特定の波長に共通のピークが確認できる.
     着色の有無の鑑別では,分光測定によりどの波長の光を吸収するかを調べることで,真珠の実体色が色素と染料のどちらに由来するものか判別している.先に述べたように,実体色の影響を受けにくい反射干渉色が反射分光スペクトルに現れるのであれば,鑑別の際にはその点を考慮する必要がある.
     今回の発表では真珠の大きな特徴である“干渉を起こす”,“球体である”という2つの視点から,真珠の分光反射スペクトルの示す意味と反射干渉色の与える影響について改めて検証した.その方法として,干渉を起こす物体と起こさない物体それぞれについて平面と球体のものを用意し,染料による着色が反射分光パターンにどのように出現するかを比較した.また,干渉色の影響を受けない分光測定の新たな方法について模索した.
  • 矢崎 純子, 小松 博
    セッションID: 13
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/26
    会議録・要旨集 フリー
     雲母にチタンをコーティングして作られた真珠箔を樹脂に混ぜてガラスプレートに塗布した試料に上方45度の角度から白色光を当てると,貝殻真珠層薄片と同じように反射干渉光と透過干渉光に分かれ各々補色の色が観察できる.
     一方,テリの良い真珠を暗室で拡散光源に近付けると,光源に接している半球には各入射角度に応じた反射干渉色の同心円状の縞模様が,反対側の半球にはその補色の透過干渉色の同心円状の縞模様が観察できる.しかし,核に真珠箔を塗布した模造真珠では,光源に接した半球と反対側の半球の補色は確認できるが,はっきりとした縞模様は確認できない.
     真珠,模造真珠を拡散光源に近付けた際の色の現れ方の違いは何故起こるのか,その構造,結晶軸の方向等からその要因を考察した.
  • 庄司 文香, 牧野 翠, 小松 博
    セッションID: 14
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/26
    会議録・要旨集 フリー
     アコヤ真珠の一部に赤紫色を有する真珠層が存在し,それが反射分光スペクトル上370nm,500nmに固有の吸収を持つことは1990年の当学会総会で発表した.その後同種の現象が一部のシロチョウ真珠にもみられることを全国宝石学協会機関紙「GEMMOLOGY」(2004年8月号)で紹介した.今回一部のクロチョウ真珠にも同種の現象があることを見い出した.
     これらの現象が貝殻外層の稜柱層含有色素が起因であり,成分はポルフィリン類が関与していること,真珠袋を構成する外面上皮細胞の何らかの分泌異常が関与していることを推定した.また蛍光分光測定法や紫外線ライトによる蛍光検査などでもこの色素が確認でき,簡易鑑別法として利用できることが確認できた.
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