宝石学会(日本)講演会要旨
平成30年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
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平成30年度 宝石学会(日本) 特別講演要旨
  • 清水 正明
    p. 4-5
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/24
    会議録・要旨集 フリー

    富山県に産出する代表的な鉱物及びその産地について,産状別にまとめ,報告する。合わせて,「越中七金山」について,紹介する。

    I. 産状別にまとめた富山県の代表的鉱物産地

    (1) スカルン鉱床

    (1-1) Pb-Zn-Cu 型

    1. 富山市池ノ山 神岡鉱山清五郎谷坑,播磨谷,銅平谷

    アダム鉱,異極鉱,灰鉄輝石,灰礬ざくろ石,孔雀石,珪灰鉄鉱,青鉛鉱,チタン石,デクルワゾー石,透輝石,バーネス鉱,白鉛鉱,ブロシャン鉱,硫カドミウム鉱,緑鉛鉱,緑閃石,緑簾石など

    2. 富山市亀谷(かめがい) 亀谷鉱山 アダム鉱,霰石,異極鉱,灰鉄輝石,水亜鉛鉱,水亜鉛銅鉱,透輝石, 菱亜鉛鉱,ロードン石など

    3. 富山市長棟(ながと) 長棟鉱山 黄鉄鉱,黄銅鉱,絹雲母,閃亜鉛鉱,白鉛鉱,方鉛鉱など

    (1-2) Fe 型

    4. 富山市水晶岳 黒岳鉱山 磁鉄鉱,灰鉄ざくろ石,水晶,鉄バスタム石など

    5. 上新川郡加賀沢村 加賀沢鉱山 磁鉄鉱,磁硫鉄鉱,珪灰石,ざくろ石など

    (2) 鉱脈鉱床

    (2-1) Au-Ag-Cu 型

    6. 魚津市松倉(虎谷) 松倉鉱山 黄銅鉱,輝銅鉱,エレクトラム,石英,閃亜鉛鉱,方鉛鉱,

    7. 魚津市鉢金山(かなやま) 鉢鉱山 輝銅鉱,石英,閃亜鉛鉱,方鉛鉱,エレクトラム

    8. 魚津市河原波(かわらなみ) 河原波金山 輝銅鉱,石英,閃亜鉛鉱,方鉛鉱,エレクトラム

    9. 中新川郡上市町下田(げた) 下田鉱山(白萩鉱山) 黄鉄鉱,黄銅鉱,エレクトラム,石英,閃亜鉛鉱,方鉛鉱

    10. 富山市庵谷 庵谷鉱山,片掛鉱山, 吉野鉱山 黄鉄鉱,含銀四面鉄鉱,輝銀鉱,閃亜鉛鉱,磁硫鉄鉱

    (2-2) Mo 型

    11. 黒部市宇奈月町池の平山東斜面 小黒部鉱山 輝水鉛鉱,水鉛華,石英,ポウエル石

    12. 富山市岩苔小谷 大東鉱山 輝水鉛鉱,鉄水鉛華

    (2-3) その他

    13. 南砺市福光刀利下小屋(とうりしもごや) 刀利鉱山 黄鉄鉱,輝銀鉱,石英,方鉛鉱,硫砒鉄鉱

    14. 黒部市宇奈月町餓鬼谷 大黒鉱山 銅鉱

    (3) その他

    15. 富山市小原(おはら) 千野谷鉱山 石墨,絹雲母,ぶどう石,方解石,緑泥石

    16. 富山市蟹寺 蟹寺鉱山 石墨

    17. 中新川郡立山町室堂 地獄谷鍛冶屋地獄(かじやじごく) 硫黄

    18. 下新川郡朝日町宮崎—境 ひすい海岸 ひすい輝石,オンファス輝石,コランダム,透閃石

    19. 黒部市宇奈月町明日(あけび)谷,深谷(ふかたん), イシワ谷など 十字石

    20. 南砺市利賀村高沼(たかぬま) コランダム, 珪線石,石墨

    21. 南砺市祖山(そやま) 祖山珪石 褐簾石,サマルスキー石,ジルコン,石英,正長石,微斜長石,ポリクレース,ユークセン石

    22. 中新川郡立山町 新湯温泉 魚卵状珪石,貴蛋白石(珪華、蛋白石)

    23. 南砺市福光 玉随,碧玉,めのう

    24. 中新川郡上市町白萩村 鉄隕石(白萩 1 号:明治 23.4. 発見,白萩 2 号)

    II. 「越中七金山(ななつかねやま)」

    越中は,かつてエル・ドラード(黄金郷)であった。富山藩分藩の際,加賀藩が手放さなかった(富山藩領地内に加賀藩の飛び地があった。)。一時期佐渡金山より産金量が多かったという記録があり, 17 世紀後半まで加賀藩の財政の要を担ったドル箱的存在であった。ゴールドラッシュに沸き返ったこれら「加袮山」は,戦国時代から江戸時代初期を中心に,「越中七加袮山」と呼ばれ,松倉,河原波,下田,虎谷,吉野,亀谷,長棟の 7 つの鉱山のことであった。

  • 大藤 茂
    p. 6-8
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/24
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    はじめに 日本の中・古生界は,古くから層位・古生物学的に研究されてきたにも関わらず,堆積盆と大陸との位置関係(後背地問題)については諸説ある.近年,後背地問題の解決に有効な手法となっているのが,砕屑性ジルコン年代測定である.砕屑性ジルコンとは,砂岩中に砂粒として含まれるジルコンで,後背地の火成岩体中に晶出した結晶が,侵食・運搬されて砂岩中の砕屑粒子となったものである.ジルコンは,晶出時に少量の U を含み Pb を含まないため,U の放射壊変を利用した U–Pb 年代測定が可能である.砂岩試料から砕屑性ジルコンを多数分離して年代分布を見ると,後背地の火成岩体の年代と量比を推定できる.また,今世紀になってから,レーザー照射型誘導結合プラズマ質量分析計(LA-ICPMS)により,短時間で多く(~300 粒/日)のジルコン年代を求めることが可能となった(例えば 椛島ほか,2003:地学雑誌,112,1–).本講演では,砕屑性ジルコン年代分布に基づく ①南部北上帯シルル~下部白亜系と,②西南日本の下部白亜系手取層群(内帯)及び物部川層群(外帯)との後背地解析結果を紹介し,テクトニクスに関する考察を加える.

    南部北上帯の研究 ①試料:東北日本の南部北上帯では,浅海成シルル~下部白亜系が連続的な層序をなす(例えば Kawamura et al., 1990: Pre-Cretaceous terranes of Japan, Nippon Insatsu Shuppan Co., Ltd., 249–).これは,日本を含む東アジアを構成する地質体の中古生代の地史・テクトニクスを考える上で重要な,3 億 5,000 万年分の標準層序である.南部北上帯全体のシルル~下部白亜系から砂岩 16 試料を採取し,砕屑性ジルコン年代分布を求めた.②結果:シルル~石炭系はいずれも 3000 Ma に至る様々な年代のジルコンを含み,%Pc(先カンブリア時代ジルコンの個数%)は 47–19 と若いほど減少する.特に,1500–500 Ma のジルコンが特徴的である.ペルム~下部ジュラ系は,いずれもジルコン年代が 263–195 Ma に集中し,%Pc≒ 0 の単峰型年代分布となる.中部ジュラ ~下部白亜系は,170–125 Ma と 2500–1600 Ma 付近に集中する二峰型年代分布を示す.%Pc は 5–40 と幅がある.

    西南日本内外帯の下部白亜系の研究 ①試料:手取層群は,主に北陸地方の西南日本内帯に分布する中部ジュラ~下部白亜系である.本層群の下部白亜系は下位より,福井県石徹白地域では石徹白・赤岩亜層群(前田,1961:千葉大文埋紀要,3,369–)と,富山県有峰地域では長棟川・跡津川層(河合・野沢,1959:1:50,000 地質図幅「東茂住」説明書,地質調査所)とそれぞれ呼ばれる.いずれも陸成層を主体とし,石徹白地域では汽水~浅海成層を挟在する.福井県石徹白川流域の石徹白亜層群山原層・伊月層及び赤岩亜層群後野層と,富山県有峰地域の長棟川層庵谷峠部層・猪谷部層及び跡津川層南俣谷部層・和佐府部層との砂岩試料を採取し,砕屑性ジルコン年代分布を求めた.一方,物部川層群は,高知県物部川中流域を模式地とする西南日本外帯北部秩父帯の下部白亜系浅海成層で,下位より領石・物部・柚ノ木・日比原層に区分される(田中ほか,1984:高知大学術研報 自然,32,215–).模式地の物部川層群 4 層 5 層準の砂岩試料を採取した.②結果:福井県の手取層群は,3 試料とも古原生代ジルコンの割合が 75% 以上となった.また,富山県の手取層群は,4 試料とも %Pc が 6 以下で,古生代ジルコンを 7–40% 含んだ.一方物部川層群は,領石層を除いて,韓国の火成活動静穏期(158–138 Ma; Lee et al., 2010: Island Arc, 19, 647–)を含む 147–102 Ma のジルコンを有した.

    考察 ①南部北上帯:シルル~デボン系の%Pc(47–35)は,その堆積場が先カンブリア時代の基盤岩類をもつ大陸縁であったことを示唆する.いずれの試料も,小ピーク(粒子数 <5)が多数見られる年代分布を示す.これは,中央アジア造山帯,モンゴルの下部古生界の砕屑性ジルコン分布に 類似する ( Fujimoto et al., 2012: Resource Geol., 62, 408–).また,中期古生代にゴンドワナ北東部に位置した,オーストラリア南東部の火成岩の年代分布と共通性が高い.従って,南部北上帯のシルル~デボン系は,ゴンドワナ北東縁の陸弧-海溝系で堆積したと見られる.これは,床板サンゴ等の古生物地理とも調和的である.次に,ペルム~上部ジュラ系のピーク形態は,単峰型となった.この砕屑性ジルコン年代分布は,古原生代ジルコンを 80 %も含む韓国のペルム~三畳系砂岩(Lee et al., 201 2: Jour. Geol. Soc. Korea, 48, 93–)のそれと対照的である.どの試料も火山岩片を相当量含む砂岩であることから,先カンブリア時代の基盤岩類をもつ大陸から離れた島弧-海溝系で堆積したと推測される.南部北上帯の石炭系には,リフティングを示唆するバイモーダル火山活動が知られている(Kawamura et al., 1990)ため,この時期に南部北上古陸(Ehiro and Kanisawa, 1999)がゴンドワナ北東縁から分離したと考えられる.中部ジュラ~下部白亜系のピーク形態は,170–125 Ma と2500–1600 Ma に年代値が集中する多峰型の年代分布を示す.2500–1700 Ma は,北中国地塊癒合前後の火成作用の年代であり,170–125 Ma は韓国の火成活動静穏期(158–110 Ma; Sagong et al., 2005)と年代が重なる.以上より,大陸から離れた島弧であった南部北上古陸は,中期ジュラ紀に南・北両中国地塊からジルコンが供給される大陸縁に接合したと見られる.南部北上帯中古生層の堆積場は,コンドワナ北東縁→大陸から離れた島弧縁辺→南・北中国地塊縁辺と変化したらしい.②西南日本内外帯の下部白亜系:日本海形成前(25 Ma 以前)の北陸地方は,東朝鮮湾付近に復元される(山北・大藤,2000:地質学論集,56,23–).朝鮮半島は 2000–1800 Ma に形成された北中国地塊の延長で,古原生代の火成岩に富む(Zhao et al., 2005: Precam. Res., 136, 177–).一方,その北東方の吉林・黒竜江省は中央アジア造山帯に位置し,古原生代の岩石に乏しくペルム~中期ジュラ紀の火成岩に富む.以上より,古原生代のジルコンに富む(≥ 75%)福井県の手取層群砂岩は朝鮮半島から,富山県の手取層群砂岩はその北方の中国東北部・吉林~黒竜江省から,それぞれ河川により供給されたと見られる(付図).一方,領石層を除く物部川層群は147–102 Ma の火成岩を後背地にもつと推定される.アジア東縁でこの時期の火成岩が全て分布するのは南中国の浙江・広東省(Cui et al., 2013: J. Asian Earth Sci., 62, 237–) で,物部川層群の後背地はここに求めざるを得ない.以上の結論は,東アジアの前期白亜紀古植物地理(例えば 大花・木村,1995:地質雑,101,54–)と調和的であり,西南日本外帯が内帯とアジア大陸東縁に対して相対的に北上したことを示す.

平成30年度 宝石学会(日本) 一般講演要旨
  • 上杉 初, 齊藤 宏, 小滝 達也
    p. 9
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/24
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    多くの HPHT 処理無色ダイアモンドの H3 半値幅が、天然無色ダイアモンドの値よりも広い傾向があり、これは HPHT 処理される前の天然ブラウンダイアモンドの H3 半値幅が広いことが原因であると示唆されている [1]。天然ダイアモンドが有する低温での加熱により消失するフォトルミネッセンスピークを利用することは、天然無色ダイアモンドを検出する非常に信頼性の高い検査方法である。しかし、 HPHT 処理が施された場合は当然であるが、稀に天然であってもそれらのピークが検出できない場合がある。 H3 は多くの天然無色および HPHT 処理無色ダイアモンドに存在するため、 H3 半値幅による評価は断定的ではないが、無色に関しては、実用的な検査方法の一つであると考えられる。

    前回、 HPHT 処理ピンクダイアモンドについて検討するため、天然ピンクダイアモンドと天然ブラウンダイアモンドの H3 半値幅を比較した。両者の H3 半値幅は、分布に僅かな差が認められたが、出現領域はほとんどオーバーラップし、無色とブラウンダイアモンドで見られた様な明瞭な差は認められなかった。

    そこで今回は、 535.8m のピーク強度を検討した。 535.8nm ピークは、天然のピンクおよびブラウンダイアモンドのフォトルミネッセンススペクトルで検出されることが多いピークの一つである。高温の加熱処理では消失してしまうが、比較的低温の HPHT 処理ダイアモンドには存在する可能性がある [2]。弊社で検査した HPHT 処理ピンクダイアモンドでも 535.8nm ピークは認められることが多い。

    535.8nm の強度は 596nm のラマンピーク強度を基準とした。 NV センターが強いサンプルは除外した。 535.8nm 強度比が 1.5 未満のピンクダイアモンドは 30 石中 20 石、他方ブラウンダイアモンドは8石であり半数以上は強度比が 2.0 以上であった。さらに、そのうち H3 半値幅 0.6nm 未満のピンクダイアモンドは 15 石、一方ブラウンダイアモンドは4石が該当する結果が得られた。

  • 北脇 裕士, 江森 健太郎, 久永 美生, 山本 正博, 岡野 誠
    p. 10
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/24
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    ピンク色の CVD 合成ダイヤモンドは 2010 年頃から宝石市場で見られるようになったが、これらのピンク色は CVD 合成後に HPHT 処理が施され、その後に電子線照射とアニーリングが組み合わされた複合的な処理(マルチ・プロセス)により生み出されている。これとは別に結晶成長後に LPHT 処理のみが施されたピンク CVD 合成石の報告もあるが、これまで市場で見かけることはほとんどなかった。

    最近、中央宝石研究所(CGL)東京支店にグレーディング依頼で 1 個のピンク色の石が供された。この石は 0.192ct のマーキーズ・ブリリアントカットが施されたルースで、検査の結果、 LPHT 処理が施された CVD 合成ダイヤモンドであることが判った。

    このダイヤモンドは視覚的には同系色の天然ダイヤモンドと識別できないが、赤外分光分析による 3200 cm-1~2800cm-1 の C-H 由来の吸収ピーク、 PL 分析による 737nm ピークの検出および DiamondViewTM による積層成長の痕跡は CVD 合成を示唆するものである。しかし、一般的なマルチプロセスのピンク色 CVD 合成に見られる 1450 cm-1 (H1a)、 741.1nm (GR1)、 594.3nm、 393.5nm (ND1)などの照射に関連したピークは検出されなかった。赤外吸収スペクトルに見られた 3123 cm-1 ピークは NVH0 に起因すると考えられており、通常の HPHT 処理後に消失する。また、 2901、 2870、 2812 cm-1 のピークは熱処理の温度が高くなるほど高波数側にシフトすることが知られており 、 我々が独自に行った CVD 合成ダイヤモンドの HPHT 処理実験においても 1600℃の処理で 2902、 2871cm-1 に検出されたピークは 2300℃の処理において 2907、 2873cm-1 にシフトした。また、 2901、 2870、 2812 cm-1 のピークシフトは熱処理時の圧力にも関係しており、処理温度が同じ 1600℃においても圧力が 7GPa の高圧力下では 2902、 2871、 2819 cm-1 であったが、周囲圧力下では 2900、 2868、 2813 cm-1 であった。さらに赤外領域に 7917、 7804 、 1374 cm-1 と可視領域に 667nm と 684nm の吸収ピークが検出され、これらは LPHT 処理された特徴と一致している。これらに加えてフォトルミネッセンス(PL)分析で検出された H3、 NV センタなどの光学中心の強度比などの組み合わせから、この検査石は、結晶成長後に 1500-1700℃程度の LPHT 処理が施されたことが推定される。

    近年、 CVD 合成ダイヤモンドは、結晶育成技術の向上と成長後の処理により、様々な色が作り出されている。これまで色の改善には主に HPHT 処理が利用されていたが、技術開発とともに LPHT 処理が普及する可能性がある。鑑別技術者にとっては LPHT 処理されたダイヤモンドの光学欠陥に対する理解が新たに必要となろう。

  • 勝亦 徹, 相沢 宏明, 小室 修二
    p. 11
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/24
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    はじめに

    Cr3+イオンを少量添加したルビー(Cr: Al2O3)、スピネル(Cr: MgAl2O4)、イットリウムアルミニウムガーネット(Cr: Y3Al5O12, YAG)やイットリウムオルソアルミネート(Cr: YAlO3)結晶は、赤色の蛍光材料である。これらの結晶から発する赤色の蛍光の蛍光寿命や蛍光強度は温度によって変化するため、温度計のセンサとして使用することができる 1,2。ここでは、これらの結晶を蛍光温度センサとして使用する際の特徴について報告する。

    実験と結果

    図1にCr 3+イオンを添加したルビー、スピネル、YAGおよびYALO結晶の蛍光の励起スペクトルと励起光源(LED)の発光ピークの関係を示した。蛍光材料によってCr 3+イオンの励起ピーク(光吸収ピーク)の波長が異なるが、紫外から赤色までのLEDを選択することによって効率良く蛍光の励起が可能であることがわかる。これらの結晶を直径 3 mm~5 mm に加工し、セラミックスチューブの先端に設置した。透明な石英ロッドを用いてLEDからの励起光を蛍光体センサに照射し、蛍光を同じ石英ロッドを通じて光ファイバに導いた。

    センサからの蛍光は分光器を使ってスペクトル測定を行った。センサをパルス励起することによって、蛍光寿命の測定をあわせて行った。蛍光体センサ部分の温度を変えて測定を行うことにより蛍光の温度特性を評価した。

  • 荻原 成騎
    p. 12
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/24
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    紫水晶やシトリンの色についての研究は、数百年も遡ることができる人類の古い興味である。これら鉱物の着色が微量の鉄に起因することはよく知られる所であるが、具体的な鉄イオン濃度と色の関係についてのデータは、現在でも明らかにされていない。そもそも、着色に関与している鉄濃度は、どの程度濃度なのか。諸説あるが、研究ごとに桁違いの値が提唱されている。また、鉄のイオン化状態の差異についての議論は定性的な議論であり、各鉄イオン量の定量的な議論はなされていない。各鉱物の色についての記載は、濃い/淡いなどという感覚的表現で分類されている研究が多く、分光分析によって波長とその強度の評価を定量的に行う必要がある。

    本研究の目的は、紫水晶とシトリンについて、色の起源と考えられている全鉄、各鉄イオンの種類と濃度の関係を明らかにすることである。今回の発表では、研究の第一歩として、各鉱物の色情報を分光スペクトルの curve fitting(ピーク分離)によって求め、種々の処理によって色を変化させた処理石との比較を行った。すなわち、色付水晶の色変化の記載を分光スペクトルのピーク分離によって行った。

    分析には、ブラジル産紫水晶、ザンビア産シトリン、ボリビア産アメトリン及びブラジル産プラシオライトを用いた。試料は、 c-軸垂直方向に厚さ 2.2mm で切り出し、両面研磨を行った。 EPMA 分析で微量元素組成を測定した後、紫外線照射(ピーク波長 352nm)、加熱処理、 γ 線照射によって色を変化させた試料について分光分析を行ない、解析結果を比較した。紫外線照射 100 時間、 200 時間 400 時間、加熱温度 350℃、 400℃、 450℃、 500℃で処理した。

    分光分析には、 JASCO 社製 V-650 紫外可視光分光高度計を改造し、両面研磨薄片試料の微小領域(直径2mmの円)について分光分析を行った。分光分析の結果についてピーク分離処理を行い、着色に寄与している波長とその強度を決定する。

    分光スペクトルの解析方法について。以下にブラジル産紫水晶の分光分析結果(例)を示す。分光スペクトルの curve fitting により、スペクトルを構成するピークを洗い出した。主要吸収ピークは 350nm、 408nm、 533nm の三本と長波長側に数本のピークが見られる。紫水晶の吸収スペクトルは、主要三本のピーク面積で特徴付けることができる。各処理前後の色変化を、三本のピークそれぞれの面積比変化で表し、処理による変化を比較検討する。

  • 林 政彦, 安井 万奈, 山崎 淳司
    p. 13
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/24
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    はじめに: 2017 年、カンボジアの店でブルー・ジルコンとして販売されていた宝石がベルヌイ法による合成ブルー・サファイアであったので報告する.この石は,演者の一人が購入したもので,指輪にはめられていたものであったが,そのデザインが気に入らなかったので,その場でルースにした(Fig.1).ルースにする時に取り換えられた可能性も否定できないが,現地の店で合成ブルー・サファイアが流通していることから,注意を促すためにも今回報告することにした.

    特 徴:内包物はほとんどなく,屈折率(RI)は 1.770-1.762,紫外線(短波)では緑濁を示した.次にジョードメタン(ヨウ化メチレン)で浸液して観察するとベルヌイ法の合成石特有のカーブラインがはっきりと確認できた(Fig.2).店で指輪などに装飾されたものは,一見綺麗な天然石と間違えるかも知れない.

    宝石鑑別にあたり:野外でルーペだけで判断するのは難しいかもしれないが,通常の宝石鑑別の手順を踏めば,天然石と間違えるようなことはないであろう.

  • 小川 日出丸
    p. 14
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/24
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    宝石質ブルーサファイアの産地はいくつかあるが、もっとも重要な産地のひとつとしてインドシナ地域がある。

    タイ、カンボジアそしてベトナムでは 12~6Ma と 3~0.5Ma をピークに玄武岩活動が活発化したとされている。前期には多量のソレアイト玄武岩の噴出が広域でおこり、溶岩台地が形成された。後期ではアルカリ玄武岩の噴出が限定的小規模な地域でみられた。重要なことに、このアルカリ玄武岩によってルビーサファイアが地表に運ばれたことである。

    その後、長年にわたって玄武岩の風化・漂流作用により、山地、平野部や河川に玄武岩に包まれていたルビーサファイアが残留・漂砂・体積されていった。現在、インドシナ各地にルビーサファイアの宝石鉱床の存在が報告されている。

    カンボジアではルビーサファイアの宝石産地として首都プノンペン西方のチャムノップ、北方のパムテメイ、プノンチョンなどがあるが、最も著名な産地としてパイリンがあげられる。

    パイリンは、プノンペンの北西約 400kmほどの距離にあるタイ国境の地域である。街中心からタイ国境までは 10kmあまりで、国境地帯は山地地帯となっている。

    20 世紀末の内戦時は、宝石という財源をおさえるため、ポルポト派が最後まで存在していた地域のひとつである。そして国境をまたいで、タイの宝石産地であるチャンタブリ~トラートに隣接している。パイリンでは宝石の採掘場として以下の形態がみられた。

    ①国境地帯の山地

    ②火山岩が露頭する独立丘陵

    ③平野部の田園地帯

    ④南部の山地より流れ出る大小の河川

    一部の鉱区では動力機器を使用した採掘も存在するが、多くはスコップや棒を使用した人力に頼った小規模なものが多い。手工業採掘は深度5m以浅の採掘のみ許可という規則があるため、深い縦穴は見られなかった。

    パイリン産ブルーサファイアの濃色石には通常、加熱処理による色の改善(明るい色調へ)がおこなわれている。そこで今回、現地で入手した試料に加熱処理を施して色の変化と、紫外可視、赤外部の分光スペクトルの変化について観察した。

    青色は Fe2+-Ti4+によるが、パイリン産は Fe-rich のため Fe3+、 Fe2+-Fe3+、 Fe3+-Fe3+による吸収が大きく、これらが暗色の原因といえる。また通常光と異常光方向の色調の差が大きいのが特徴である。加熱処理による淡色化に伴い、透過率や吸収ピークに変化がみられた。赤外領域では、 OH 吸収がほぼ消失した。

    それらの結果と、パイリンの採掘状況について報告する。

  • 江森 健太郎, 北脇 裕士, 三宅 亮
    p. 15
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/24
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    2001 年 9 月頃より Be 拡散加熱処理がほどこされたコランダムの流通が始まった。 Be が軽元素であり、拡散している濃度も極めて低いため、従来鑑別ラボで使用されていた蛍光 X 線元素分析装置では検出できず、 SIMS やLA-ICP-MS といった高感度の質量分析装置が必要となった。 Be 処理が発覚した当初は未処理のコランダムには Be が内在しないと考えられていたため、 LA-ICP-MS 分析で Be が検出されれば外部起源拡散処理であると考えられてきた。しかし、その後、 Be 処理が行われていないコランダムにも Be が検出される事例が複数報告され(Shen et al, 2007)、分析結果の解釈を困難にしている。

    Shen ら(2012)はマダガスカル、イラカカ産の天然ブルーサファイア中のクラウド部分に Be を含むことを見出した。さらに透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、クラウド部分を観察した結果、 長さ 20-40nm 幅 5-10nm サイズのナノインクルージョンを発見し、それは Ti-rich なフェーズでα-PbO2(scrutinyite)構造をした TiO2 であることを明らかにしたが、 Be とその結晶についての関連性は議論されていない。

    本研究の目的は天然起源の Be を含有するサファイア中のナノインクルージョンと Be の関連性を調べることである。

    本研究では、マダガスカル、ディエゴ産未処理のブルーサファイアを 30 個使用した。 Be や Be と同時に検出される微量元素を測定するために LA-ICP-MS を用いた。 LA-ICPMS は LA 装置として ESI UP-213、 ICP-MS として Agilent 7500a を用いた。また、 TEM 観察を行うため、 FEI 社 Helios NanoLabo G3CX を用いて FIB 加工を行い、 JEOL 社 JEM 2100F を用いて TEM 観察を行った。

    実験に用いたサンプル 30 個のうち 27 個から Be が検出され、一番多い箇所で 26.0ppm であった。 Be の他、 Mg、 Ti、 V、 Fe、 Nb、 Sn、 Ta、 W、 Th が検出されたが、 Be と相関がみられたのは Nb、 Ta であった。

    Be を含有するサファイアの TEM 試料を作成し、 TEM 観察を行った結果、長さ 20-40nm 幅 5-10nm のナノインクルージョンが検出された。このインクルージョンを EDS 分析した結果、 Al, Ti, Fe, Nb, Ta が検出されたが、バルクからは Al, Fe しか検出されなかった。検出器が C 以上の質量数を持つ元素を測定可能なものであったため、 Be は測定できてはいない。またこのインクルージョンはコランダムと別の相であることが判明したが、相の同定はできなかった。

    Be を含有するマダガスカル・ディエゴ産天然ブルーサファイアに含まれるナノインクルージョンは、 Ti、 Nb、 Ta を含み、 Be がナノインクルージョンと関係があることが示された。しかしそのナノインクルージョンの相は確定しておらず、今後の課題としたい。

  • 桂田 祐介
    p. 16
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/24
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    ナイジェリアでは、今世紀初頭に南東部マンビラ高地より濃色のブルーサファイアが、さらに 2014 年ごろから新たに淡色で高品質なブルーサファイアが産出し、主にバンコクの宝石市場で注目されてきた(Pardieu et al. 2014)。 2017 年以降、同国中部のジョス高地および北東部アダマワ高地のものとされる、極めて高品質なブルーサファイアとイエローサファイアが、新たに日本やバンコクを中心に流通している (私信 2017)。

    マンビラ高地、ジョス高地およびアダマワ高地は、先カンブリア時代の超変成岩、角閃岩、結晶片岩および片麻岩で構成される基盤岩から成り、ジョス高地の基盤には中生代に貫入した花崗岩類も分布する。ジョスおよびマンビラ両高地の間には、白亜紀および第三紀の堆積岩から成るベヌエ・トラフが位置している。いずれの高地にもカメルーン火山列を構成する火山として第三紀以降に噴出したアルカリ玄武岩が分布しており、同地産のサファイアはいずれもこれらのアルカリ玄武岩に由来すると考えられる。

    玄武岩起源のコランダムは、捕獲結晶としてマグマに取り込まれたコランダム結晶がマグマの影響を受けるため、交代作用のほか包有物の変化や再結晶化などの変質が起きる。そのため、包有物や微量元素の特徴が似通っており、産地の鑑別は極めて困難である。しかしながら、同時期に噴出した一連のアルカリ玄武岩に産するコランダムであっても、マグマに取り込まれる以前の特徴が微量元素に反映されている可能性がある。ナイジェリアのサファイアは、それらが由来する玄武岩が貫入する基盤岩がわずかに異なっている点において、上記仮説を検証できる理想的な試料であると期待できる。

    本研究では、こうした観点から玄武岩起源サファイアの産地鑑別の精度を向上させることを目的に、ジョス高地に位置するカドゥナ州アンタン(以下アンタン)、アダマワ高地に位置するゴンベ州フトゥクおよびクラニ(以下ゴンベ)より産出したとされるブルー、グリーン、イエローのサファイアについて、レーザーアブレーション・誘導結合プラズマ質量分析(LA-ICP-MS)によって得られた微量元素の濃度を比較した。その結果、アンタンは鉄が低くバナジウムが高いグループに、ゴンベは鉄が高くバナジウムが低いグループに分類できた。なお、マンビラ高地のサファイアはより広い微量元素の分布を示すもののバナジウムが低い傾向にある。

    今後は、玄武岩周辺の地質調査も含めてサファイアの微量元素との関連を精査する必要がある。

  • 三浦 真, 桂田 祐介, 猿渡 和子
    p. 17
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/24
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    金色のシーン・エフェクトを特徴的に示すサファイアは、ゴールドシーンサファイアと商業的に呼ばれている(例えば Bui et al. (2015))。ケニア北東部が産地とされているが、流通量が限られているために研究例が非常に少なく、その詳しい産地およびその成因については不明な点が多い。そこで産地鑑別のための化学組成データベースの充実、およびその成因について探るため、 GIA 東京ラボでは 23 石のゴールドシーンサファイアについて一般的な宝石学的検査に加えレーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析装置(LA-ICP-MS)による微量元素の定量分析を実施した。

    試料は特徴的に赤鉄鉱・チタン鉄鉱の針状内包物を多数含み、それにより光が反射されることで独特のシーンエフェクトが生み出される。またジルコンや雲母、赤鉄鉱、磁鉄鉱、ダイアスポア、炭酸塩鉱物といった多様な自形~半自形内包物を含む。色あいは青色と黄色が混在するもの、黄色単色のもの、多数の内包物・亀裂により色合いが不明瞭なものがあり、透明度も亜透明から不透明と多様である。

    青色および黄色に着色されている部分は化学組成上ではあまり違いが見られなく、試料は全体的に鉄含有量およびガリウム/マグネシウム比が高い傾向にある。先行研究で報告されている他のゴールドシーンサファイアと組成および内包物が類似しており、本研究の試料はそれらと同じ産地を由来としている可能性が高い。ゴールドシーンサファイアの産地とされるケニアにはアルカリ玄武岩起源(Lake Turkana)もしくはサヤナイト起源(Garba Tula)の2つの鉱床が知られている。ゴールドシーンサファイアは化学組成上では Garba Tula のものに近い傾向がある。

  • 川崎 雅之, 長瀬 敏郎
    p. 18
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/24
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    結晶中に見られる砂糖きび絞り機の歯車(trapicho)に似た模様はトラピッチェ・パターンと呼ばれ、エメラルド、コランダム(ルビー、サファイア)、ガーネット、トルマリン、スピネルで報告されている。また、同様の組織は水晶、紅柱石(空晶石)にも見られる。

    トラピッチェ・パターンは概ね 2 つのタイプ、 (a)セクター境界に沿って、異種鉱物が樹枝状に配列しているもの、 (b)柱面から垂線方向に結晶自身が成長、または異種鉱物・欠陥が集中して柱状模様を示すもの、に大別できる。このうち、前者の組織については、高過飽和条件下での樹枝状成長とそれに続く低過飽和条件下での多面体成長の二段階を経ていると説明されているが、後者については十分な検討がされていない。

    現在、我々は様々な鉱物に見られるトラピッチェ・パターンの形成過程を検討中であり、これまでに得られた結果について報告する。

    以下の図はトラピッチェ・エメラルドのc-カットの組成像である。中央のコア領域の周囲には多数のインクルージョンが取り込まれており、それらがセクター境界の方向に配列している(図1)。また、柱面のセクター中にはインクルージョンに起源を発し、成長方向に伸長した細かい模様が存在している(図2、3)。

    セクター境界は結晶外形で見られる稜の軌跡であるから、トラピッチェ・パターンは稜に析出した異種鉱物の継続的な取り込みとそれらに起因した界面の instability による一方向成長で説明できる。

  • 中嶋 彩乃, 古屋 正貴
    p. 19
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/24
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    様々な変色性を示すガーネットがあり、それらの分光特性と化学組成の分析を行った。

    1998 年にマダガスカル南部の Bekely から発見されたガーネットは、変種としてはパイロープ-スペサルティン・ガーネット(マラヤ)に分類され、 D65 光源下で帯緑青色~青緑を示し、 A 光源下では赤色になる。その色は含有される V3+によるものである。右図の 1)は Bekely 産の青緑色(D65)と赤色(A)を示すもので 1.3%(以下すべて蛍光 X 線分析による酸化物としての重量比)の V を含み、 Cr を 0.16%しか含まないものである。一方、 2)はスリランカ産の紫色(D65)と赤色(A)と弱い変色性を示すもので、ガーネットの固溶体比率はほぼ同じだが、 V を 0.10%とほとんど含まず、 Cr を 0.53%と多く含むものである。ともに 570nm 付近をピークとする吸収を持つために変色性が起こり、 1)の方が青~緑色域の透過が多く、赤色域の透過が少ないために色が違っている。

    3)は南アフリカやスリランカなどを代表的な産地とする帯緑褐色(D65)と赤色(A)を示すもので 1)のタイプと同じく、 0.3%の少ない V3+によって 570nm に弱い吸収のあり、それによって弱い変色性を示す。ガーネットの変種は、同じくパイロープ-スペサルティン・ガーネットであり、 V の含有量が少ないために緑色域の吸収も弱く、 D65 では褐色になっている。また、 460,483nm の Mn2+による吸収も見られる。

    4)はタンザニアやケニア Umba 渓谷などから産出するロードライト・ガーネットで、アメリカ、ヨーロッパなどでピーチカラー(黄桃)と呼ばれる褐色(D65)からピンク (A)に変わる極めて弱い変色性を示すものである。これらは V を 0.2%以下とほとんど含まないが、 Fe2+による 570nm を始め 506、 526、 696nm の吸収が見られる。しかし、 Mn2+による青色域の吸収も弱く、青色域の透過が多いため、 570~506nm 付近が吸収の谷となり、わずかな変色性が見られるものである。

    これらはすべて 570nm 付近の吸収が透過の谷となり、変色性の原因となっている。

    また、 Bekely タイプの中には V を多く含むことで吸収帯が広がり、 5)のように紫~青色域のみが透過するスペクトルになり、 D65 光源では帯緑青色を示すものもあり、これらは以前にはないとされていた青色のガーネットとなる。

  • 藤原 知子, 岩松 利香, 難波 里恵
    p. 20
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/24
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    3月の誕生石でもあるアクワマリンはラテン語で海の水を意味する青色の色調の宝石である。エメラルドと同じ仲間のベリルに属するが、エメラルドに比べ安価で、日々の鑑別業務でもよく見かける宝石である。エメラルドやアクワマリンを含むベリルは、 Be3Al2Si6O18 の化学式で表されるベリリウムとアルミニウムケイ酸塩鉱物である。また 6 つの SiO4 四面体サイトがリング状に結合したサイクロケイ酸塩で、 C 軸方向に伸びたチャンネルには H2O や陽イオンが入り電荷バランスをとっている。アクワマリンの色因は鉄で、大半は加熱処理により、緑みや黄みを取り除いて青色にしていると言われている。しかし、この加熱処理はコランダムのような高温ではなく、 300〜500℃くらいの低温で加熱されているとされ、今のところ処理の看破は難しいとされている宝石のひとつである。そのため、 AGL(宝石鑑別団体協議会)においても「通常、加熱処理が行われています」の開示コメントが使われている。

    そこで今回の実験では 5 つの産地の原石を集め加熱処理をした。まず、 C 軸に平行方向の面と C 軸に垂直方向面になるように石をカットし、研磨した。それらの石を約 400~480℃の間で何回かに分け、一時間加熱した。その結果を報告する。紫外可視分光と赤外分光では加熱による Fe3+→Fe2+の変化や H2O を比較した。

    また、ラマン分光やフォトルミネセンス分光を使用し、軸の方向に注意し測定した。今回は特に C 軸に平行な方向、チャンネル方向に焦点をあて報告をする。

  • 福田 千紘
    p. 21
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/24
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    ガラスは古代より装飾品として使用されており各所の遺跡の出土品からも様々な形態の装飾品が報告されている。現在は天然素材を用いた宝飾品が高く評価されるためガラスを用いた装飾品は主にアクセサリーとして流通している場合が多い。 19 世紀頃からは装飾品にするために様々な工夫を凝らした特殊なガラスが製造されていた。本研究では主に 19 世紀から 20 世紀中ごろまでに製造されたいくつかの特殊な外観を呈するガラスについて主に化学組成と特徴を報告する。

    今回入手した試料はそれぞれサフィレット、アイリスグラス、ドラゴンブレスと呼ばれ流通しているガラスである。

    サフィレットは19世紀にチェコで製造され、その後製法が途絶えてしまったが 20 世紀に入ってから旧西ドイツで復刻生産されたと報告されている。主に青色透明で背面に反射膜を有するものと無い物が存在する。強い自然光や人工光下で褐色に見え一見すると変色性のような特徴を持つ。アイリスグラスはアイリスクォーツを模して造られたガラスで無色のガラスに赤、青、緑系の各色ガラスが混入されている。背面には反射膜を有する物と無い物が存在する。ドラゴンブレスは主に赤~オレンジ色を呈するガラス中に不規則な青色の干渉色を呈する事を特徴とし背面には反射膜を有する。

    EDXRF にて組成を分析した結果、主要成分はいずれも Pb、 Si、 K に富み B に乏しく、一般的に”クリスタルガラス ”と 呼ばれるガラスであった。また着色原因と考えられる元素としてサフィレットからは Fe、 Cu、アイリスグラスからは Cu、ドラゴンブレスからは Se がそれぞれ微量検出された。アイリスグラスの赤色部は紫がかった色調から金コロイドによる着色が考えられるが Au はXRFでは検出出来なかった。そこで可視分光分析を行い現在生産されている金コロイドの赤色鉛ガラスと比較した。また、サフィレットはその外観から何らかの金属コロイドの存在が考えられこれの検出を試みた。ドラゴンブレスは 2 層の異なる組成のガラスから構成されておりガラス組成の差と境界面の構造から青色の干渉の原因を考察した。

  • 嶽本 あゆみ, 田邊 俊朗
    p. 22
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/24
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    【緒言】

    真珠は生物由来物質の中で宝石として扱われる代表的なものであり、沖縄県においては石垣島で黒蝶真珠の養殖が行われている。沖縄工業高等専門学校生物資源工学科は、沖縄の生物資源すなわち生物由来物の産業化を目標の一つに掲げているが、現在のところその中心となるものは食品等の機能性物質や、有用微生物の探索等が中心であり、美しさを主眼とした生物資源に関する研究は後れを取っている。そこで本研究では、美ら海や、やんばるの「美しいもの」を生物資源として活用する研究・教育の足がかりとして、高専本科一年の実験授業において真珠の取扱を試みた。

    【方法】

    沖縄工業高等専門学校生物資源工学科本科一年生の専門必修科目である「バイオテクノロジー基礎実験」において、生物スケッチの基礎を学ぶ実験として市販の真珠缶(真珠採取キット)を利用し、解剖の途中で学生に真珠を発見させた。事前に真珠に関しての情報提供は行っていない。なお、平成 29 年度は淡水真珠が得られるカラスガイ(真珠採取キット)を用いた。

    【結果】

    実験後提出されたレポートにおいて、スケッチに明確に真珠を記していた学生は 40 名中 15 名、結果において真珠の存在に触れていたのは 12 名、真珠について文献調査などを行っていたのは 22 名であった。

    平成 30 年度はアコヤガイの真珠採取キットを用いて同様の解剖実験を行う予定であり、これらの比較についても報告する。

  • 渥美 郁男
    p. 23
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/24
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    近年、アコヤガイから産出する有核アコヤ養殖真珠は珠のサイズが多様化している。

    もともとアコヤ養殖真珠は明治時代に三重県の英虞湾で始まった。それは体内に入った異物を貝殻と同じ成分で閉じ込める習性を利用した。当初は3~5㎜の真円真珠を養殖することから始まった。

    一般社団法人日本真珠振興会では、日本で養殖されている有核のアコヤ養殖真珠のサイズは 2 ㎜から 11 ㎜と公表している。

    近年、マーケットに流通している海水産及び淡水産の養殖真珠はサイズによる判別が困難になりつつある。そこで現状流通している有核のアコヤ養殖真珠の最小と最大のサイズとその養殖地について考察した。

  • 南條 沙也香, 鈴木 千代子, 小松 博
    p. 24
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/24
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    真珠のテリは輝度と干渉色の2つの要素から構成されている。真珠の干渉色は透過の干渉色と反射の干渉色が同時に発現し、暗室で真珠に直接拡散光源を接触させると、上半球に透過の干渉色が、下半球に反射の干渉色が現れる。そしてこの干渉色の色相の多色性、鮮やかさ、明るさとテリとは相関しているということがこれまでに報告されている(阿倍ら;宝石学会,2012、小松ら;宝石学会.2014)。

    しかしながら近年、目視ではテリが良いとされるが干渉色の発現が弱い真珠が見つかった。そこで干渉色と輝度との相関性について調べることを目的とし、これらの現象について考察を行った。

    入手したアコヤ真珠のネックレス全ての珠について輝度分析値と干渉色分析値の測定を行った。その結果輝度分析値は高い値を示すが、干渉色分析値は低い値を示す珠が見られた。

    これらの珠について電子顕微鏡により結晶構造観察を行った。真珠のテリに影響を与えると考えられている表層から 100μm までを観察したところ、結晶層に大きな乱れや異質層の存在は観察されなかった。しかしながら、 10μm ごとに結晶の厚さの平均値を調べると、 ①結晶層の厚さが均一ではないこと、 ②0.3μm 未満の結晶層が含まれていること、 ③0.5μm 以上の結晶層が積層しているという 3 つの特徴が見られた。

    結晶層の厚さから発現する干渉色の波長を求めると、結晶層の厚さが不均一な場合様々な色の干渉色の波長が求められ、赤と緑を同時に発現しているサンプルも確認できた。また 0.3□m 未満の結晶層からは可視光外の波長が求められた。干渉色は同じ波長の光が互いに強めあって発現するため、このように異なる色や可視光外のものが重なりあうことで干渉色が強調されず見えづらくなっているという可能性が考えられる。特に赤と緑は補色同士でありこれらの光の色が重なると白色の光となるため干渉色として確認できないことが考えられる。また、 0.5□m 以上の結晶層が積層すると赤外部の波長を示し、可視光内の波長に収まるためには次数が高くなる。干渉色において次数が高くなるとテリが悪くなるとの報告もされており(和田;真珠の科学,1999)、このことが干渉色の発現を弱めている可能性が考えられる。

    今回の実験から干渉色が強く発現するためには①結晶層の厚さが均一に積層すること、 ②次数が 2 以下で発現する厚さで積層することが重要であるということが分かった。

  • 大巻 裕一, 矢﨑 純子, 小松 博
    p. 25
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/24
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    ゴールド系シロチョウ真珠は、近年流通量が増加している。シロチョウガイの生息地域はフィリピン以南のインド太平洋であるが※1、その真珠養殖は、オーストラリア、インドネシア、フィリピン、ミャンマーそして沖縄、奄美大島でも行われている。今回、各産地の貝殻、真珠の稜柱層、真珠層とその境界部を観察分析し、その構造が真珠に与える影響を考察したので報告する。

    各産地のゴールドリップ系シロチョウガイを表面と断面から観察すると、貝が最も成長する方向の真珠層・稜柱層の境界部には混在層が存在している※2が、蝶番に近い箇所では混在層がほとんど見られなかった。最も成長する方向に貝殻を切断し断面を観察すると、稜柱層は幅 50~100μm 以上の大きな柱状構造があり、真珠層との境界部には幅 10μm 程度の小さな柱状構造、真珠層との混在層が見られた。各産地のゴールド系シロチョウ真珠の断面では、各産地のシロチョウガイの色素分布の特徴が現れていた。また、これらの真珠の耐光試験では、ブルースケール 5 級で変化無かった。しかし、一部のゴールド系真珠は褪色すると言われている。これらの真珠の断面を観察すると、稜柱層が大きく成長していることがわかった。その構造は貝殻と同じく、稜柱層大、小、混在層、真珠層からなり、混在層は黒褐色であった。また、混在層と真珠層の境界付近には大きな亀裂があり、さらに稜柱層、混在層には、大小の亀裂が数多く発生していた。この亀裂は光の散乱を起こすため、褪色の原因が亀裂であることが推定された。

    ゴールドリップ系シロチョウガイの養殖では、外套膜片(ピース)を切り取る際、ゴールドのより濃い外側を切るため、混在層あるいは稜柱層を分泌する箇所を含んでしまう可能性がある。外套膜片切り取り部位と生成真珠の相関については、今後も研究が必要であるが、品質の良い真珠を得るためにピース切り取りには細心の注意が必要であろう。

  • 猿渡 和子
    p. 26
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/24
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    サンゴパールは、ピンクサンゴを核にして養殖されたアコヤ真珠で、愛媛県宇和島市の松本真珠で養殖されています。ピンクサンゴ核は、高知県産 Corallium elatius と推測されます(1)。ドリル穴が開いたサンゴパール、 10 試料のドリル穴と表面の観察を行いましたが、色溜まりなどは観察されませんでした。ドリル穴部で、真珠層の厚みを測定したところ、 0.12-0.4 ミリメートルと見積もられました。この結果は、透過 X 線観察により真珠層の厚さ変化と一致しました。当然ながら、真珠層が厚いと真珠全体のピンク色が淡く、真珠層が薄いとピンク色が濃く観察されました。そこで、反射型紫外可視分光光度計を用いて反射率を調べました。その結果、真珠層が薄い試料の反射率はピンクサンゴ核の反射率に近くなり、低めの反射率を示したのに対して、真珠層が厚い試料の反射率はより高くなる傾向を示しました。以上の結果、サンゴパールのピンク色は、ピンクサンゴ核の色を反映している可能性が高いことが示されました。

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