日本歯科理工学会学術講演会要旨集
最新号
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特別講演
  • 小野塚 實
    セッションID: SL-1
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/07
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    まもなく超高齢社会を迎えるわが国において、介護支援を必要とする認知症の高齢者は、今後10年間で約100万人増加すると推計されており(厚生労働省調査)、今や認知症対策は最も喫緊に解決すべき課題になっています。  近年、全身健康に果たす口(とくに咀嚼)の役割が科学的に分析されるようになり、咀嚼の働きが栄養摂取だけでなく、認知という脳の最も高次な機能に関わっていることが明らかになってきました。例えば、入院中の高齢者の栄養摂取において、経口から経管や点滴に切り替えると認知症の出現率が高まるといわれています。一方、軽度な認知症状のある寝たきり高齢者の義歯の調節などの口腔環境を改善し、介護の手を借りて経口摂食を積極的に行うことにより、QOLの向上や認知症状の軽減が認められる例が多数報告されています。 一般に高齢になると、眼、耳などの感度が落ち、動きも鈍くなり、意欲がなくなり、若い頃に比べると外部情報量が減少します。これは記憶の中心である海馬や大脳の前頭前野への情報入力が減衰することを意味し、この情報量の減少が著しくなると認知症になり易くなります。高齢になると使われない脳の神経は錆び付き状態になり、最終的には回復不能な萎縮を招きます。 いかに外部情報量を低下させないかが重要でありますが、その鍵の一つは五感のすべてを同時に働かせる口(食事を咀嚼すること)であり、本講演では、この噛むという行為がいかに脳の認知機能と密接に関連し、脳内の神経ネットワーク(特に海馬と前頭前野)を活性化するのかについて、動画をふんだんに使用し分かりやすく解説します。そして講演の最後に、「間違い探しゲーム」を行い、認知機能におけるチューイングの効能を実感していただきます。
公開シンポジウムおよびDental Materials Adviser/Senior Adviser特別セミナー
2003年から2009年に於けるビスフェノールAの生物学的安全性-特に世代を超えた作用と歯科用医療機器との関連-
  • 川口 稔, 今井 弘一
    セッションID: OS-1
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/07
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     ビスフェノールA(BPA)は1990年代後半から内分泌系および生殖系への影響が懸念され,その影響について多くの研究結果が報告されている.これまでの研究の中で,BPAの暴露によってヒトの生殖や発生に影響があったという直接的な報告はないが,げっ歯類を用いた動物実験では,妊娠または授乳中に高用量のBPAの暴露を受けると仔動物に成長抑制や生存率の低下,思春期の遅延などの影響を与えることが報告されている.  わが国および欧米諸国のBPAの無毒性量(NOAEL)は5~50 mg/kg体重/日と設定され,ヒトに対する耐容一日摂取量(TDI)は0.05 mg/kg体重/日とされている.しかしながら,これまでの毒性試験の結果から影響がないとされていたこれらの量よりも低用量のBPAに暴露することによって,臓器(乳腺や前立腺)への影響,神経発達や成長に伴う行動への影響,思春期の早発や遅発などへの影響が報告されるようになった.この低用量BPA暴露による影響に関する報告の多くは動物実験によるものであるが,使用する動物種や,用量範囲,投与期間や評価方法が統一されていないのが現状である.また低用量実験では,実験系にかかわる環境中のBPA量(飼料や給水ボトル,ケージ内の床敷きなどに含まれるBPA量)のコントロールも重要な因子となることから,実験結果の評価を困難なものとしている. ヒトに対する低用量BPA暴露の影響も報告されているが,動物実験の結果を外挿するには,体内動態や感受性がヒトとげっ歯類とでは異なることから限界があり,安全性に関する知見をそのままヒトに外挿できないのが現状である. このような現状を鑑みると,早期に国際的な実験系の統一を図るとともに,疫学研究を含めた基礎的データの蓄積が必要であろう.
  • 平林 茂
    セッションID: OS-2
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/07
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    歯科器材調査研究委員会のビスフェノールA(BPA)に関する調査は,今回で3回目である.シーラント材からのBPAの溶出に関する報告により一時的に歯科界は混乱を来たしたが,現在では沈静化している.しかし,BPAの低用量問題はいまだ明確な解答が得られておらず,歯科材料からの溶出に関する研究は継続的に行われている.ここでは,2002年の報告書以降の研究について紹介する. 溶出が考えられる歯科材料としては,BPAを出発原料として合成されるBis-GMA, Bis-EMAなどのモノマーを含有するシーラント材,歯科用接着材,コンポジットレジンなど,また,ポリカーボネートレジンを加圧成形して作製される暫間被覆冠,矯正用ブラケット,床用レジンなどが挙げられる.これらの材料からのBPAの溶出に関する報告が15報あった.そのうち,13報がin vitro の報告であり,試料のサイズや浸漬液などが異なっており,それらのデータの直接的な比較は困難であった.しかし,モノマーに起因するBPAの溶出量は経時的に減少していくのに対し,ポリカーボネートレジンからの溶出量は経過時間によらずほぼ一定であり,水中でのポリカーボネートの加水分解が指摘されている. 残り2報は,シーラント材あるいはコンポジットレジンを実際に被験者の口腔内に処置し,その修復物からのBPAの唾液中への溶出を測定したものである.溶出量は処置直後に比較してぬるま湯でうがいした後ではかなり減少したことから,BPA暴露のリスク軽減にうがいの有効性が指摘されている. また,コンポジトレジンからの溶出物のエストロゲン様活性をin vitroの試験で評価した報告が3報,マウスを使用した動物実験で評価した報告が2報あった.その中で,溶出物の分析を同時に行って比較した研究では,24製品中6製品で認められた溶出物のエストロゲン様活性の原因がBPAではなく,光重合開始剤あるいは紫外線吸収剤に起因している可能性が示唆されている.また,マウスを使用した動物実験では,雌で卵巣の比重量(mg/10g体重)の増加や妊娠率の減少が,雄で精嚢の比重量,1日精子産生数の減少などが報告されている.これに関連して,BPAよりも多量に溶出するBis-GMAやTEGDMAモノマーを同種マウスに投与した生殖毒性試験も行われている.その結果,活性を示すいくつかの影響が認められた.この影響をどのように見たらよいのか,追試が必要に思われる.
  • 本郷 敏雄, 日景 盛
    セッションID: OS-3
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/07
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    20世紀末から21世紀初頭にかけて,全世界を賑わした内分泌かく乱化学物質のなかで現在も低用量による毒性の懸念が指摘されている化学物質としてビスフェノール A(BPA)がある.BPAの低用量による作用の懸念は現在でも明確な結論が得られていないが,近年,低用量によるBPAの作用に関する報告が増加し,特に世代を超えた作用に関心が高まっている.そのような情勢下で2007~2009年にかけて,BPAのヒトへの発達・生殖毒性について各国機関の専門家会議で活発に議論されており,その成果報告書が公表されつつある.その典型的な代表例は2008年4月18日にカナダでは予防的措置としてポリカーボネート(PC)製ほ乳瓶などの輸入・販売などを禁止することを公表したことである.乳幼児が使用するPC製品の予防的禁止措置が発令されたことからBPA毒性に関する社会的な関心が世界的に高まっている.このように現在,各国で問題になっているのは低用量BPAによる齧歯類での発達(脳・行動)・生殖毒性とBPA曝露量が乳幼児で高いことに対する懸念である.  胎児,乳幼児に対するBPA毒性の懸念に対してはカナダ政府と米国国家毒性プログラム(NTP)が「some concerns」とし,米国食品医薬品局(FDA)も平成22年1月15日に暫定措置として「some concerns」しているが,成人に対する毒性はNTPや欧州化学品局(ECB),欧州食品安全機関(EFSA),オーストラリア・ニュージーランド食品基準局(FSANZ),英国食品基準庁(FSA),我が国の食品安全委員会など各国・各機関の見解として現時点では成人に対して問題ないことを公表している.  今までは齧歯類での発達・生殖毒性に対する懸念であったが,2008年以後,霊長類の脳に影響を及ぼす報告や尿中のBPA量と心疾患,糖尿病,肝障害などとの疫学的な関連性が報告も散見され,ヒトに対する毒性の懸念が従前よりも高まってきている.低用量のBPAによる毒性に対する各国の対応状況並びに(歯科用)医療機器に対する対応状況について紹介する.
口頭発表
ポスター発表
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