本稿では、過疎地域であるA町を研究対象とし、A町の地域データを収集・分析することを通して、過疎地域におけるソーシャルワークについて考察した。地域共生社会の実現に向け、ソーシャルワーカーは「包括的な相談支援体制の構築」と「住民が主体的に地域活動把握して解決を試みる体制づくり」を推進するためにソーシャルワーク機能を発揮することが期待されている。人口減少高齢化が進展し、条件不利性が指摘される過疎地域において、住民が主体的に地域課題を把握し、課題を解決することはどれだけ現実的なことなのか。そのなかでソーシャルワーカーには何が求められているのであろうか。
A町の地域データの収集・分析には、量的・質的データ、そして行政からの提供データと研究者らが調査等で収集したデータを複合的に使用した。また分析の単位を住民に身近な小地域(集落や行政区)単位も含めて行った。結果、A町における中心部とそれ以外では大きく状況が異なること、住民の生活上の不安は必ずしも福祉課題ばかりではなく、住民だけでは解決できない課題であること、住民同士のつきあいは過疎地域においても希薄化しており、また集落単位での共同への作業への参加が困難になっていることなどが明らかになった。考察では、厳しい過疎地域においてソーシャルワーカーがチームとして重層的に地域アセスメントし、継続的に地域と関わることが肝要ではないかとまとめた。
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