本研究は、軽度認知機能障害(以後MCI とする)のリスクを有する者と健常な者の物忘れに対す
る不安感を比較し、物忘れに対する不安感に影響を与える要因を明らかにし、早期受診・早期対応
への示唆を得ることを目的とした。認知症の診断や要介護認定を受けていない65 歳以上の通所型
介護予防事業に参加している方282 名を対象に病気関連不安認知尺度などを用いた無記名自
記式質問紙調査およびMCI の状態を簡便に判定する日本語版Montreal Cognitive
Assessment(以後MoCA-J とする)による面接調査を実施した。その結果、有効回答数は201 人
(71.3%)、平均年齢は83.73 才であった。MoCA-J を用い健常群50 人、MCI リスク群(以後MCI
リスク群とする)151 人の2 群に分け、各関連項目との差を検討した。平均不安点数(M±SD)は、健
常群が11.4±8.02 点、MCI リスク群が10.8±7.60 点で有意差は認められなかった。「認知症の専
門医を受診することに抵抗がある。」(p<0.05)と答えた割合が、健常群が10 人(20.0%)、MCI リス
ク群が54 人(35.8%)でMCI リスク群の方が有意に高かった。MCI リスク群の方が物忘れ症状を
高い割合で経験する傾向にあるが、健常群とMCI リスク群の平均不安点数に有意な差がなかった
ことから、MCI リスク群の物忘れ症状は物忘れに対する不安感には影響しないと考えられる。
本研究では、認知症の早期受診への促進因子として不安感は作用しないことが明らかになった
一方で、不安点数の増加は「認知症の専門医を受診することに抵抗がある。」という認知症専門医
の受診に関する抵抗感を助長する可能性もあり、支援の際には留意する必要があることが示唆された。
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