肺炎様陰影を呈して発症し, その後両肺に広汎に拡がった散布型細気管支肺胞癌の剖検例5例を, 臨床像と剖検所見を対比させて検討した.
臨床的に多量の喀痰を有し, 胸郭外転移がなく, 胸部X線像では, 近接部位から気管支肺炎様に漸次両肺に経気管支的に拡がっていったと考えられる3例は, 剖検肺では丈の高い異型性の少ない円柱細胞よりなり, 粘液産生が多く, 脈管の侵襲がなく, また, 胸郭外臓器の転移も殆んど認められず, 死因は肺炎の合併であった. 他方, 喀痰量が多くなく, 胸郭外転移を早くから来した2例は, 胸部X線像による散布性の陰影も辺縁のボケがあるとはいえ結節性の陰影で, ほぼ同時期に, また, 均等に出現し, 血行性転移を思わせた. この型は異型性のある丈の低い円柱状細胞よりなり, 脈管侵襲があり, 胸郭外の多臓器への転移もあり, 死因は肺の出血・硬塞であった.
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