Wistar系雄ラットを用い, 石綿のN-bis (2 hydroxy propyl) nitrosarnine (DHPN) による肺および胸膜での腫瘍発生に対する影響について観察した.石綿はカナダ産のchrysotileで, 長径約5μmのもの30mgを気管内または胸腔内へ投与し, DHPNは100ppmおよび500ppmの濃度で連日経口投与または3g/kgの量を腹腔内へ1回投与した.その結果, 石綿とDHPN併用群にのみ中皮腫の発生をみた.又, 石綿を投与した群に胸膜のmesothelial cell hyperplasia, pleural proliferationなどの変化が認められ, 特に併用群に高頻度に認められた.石綿の胸腔内投与では, 対側の胸膜にも同様の変化をみた.石綿は, DHPNによる肺腫瘍発生頻度に影響を示さなかったが, DHPN腹腔内投与群にては石綿投与により腺癌のほかに扁平上皮癌と混合癌の発生をみた.
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