肺癌
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33 巻, 6 号
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  • 早川 和重, 斉藤 吉弘, 片野 進, 古田 雅也, Michitaka Yamakawa, 三橋 紀夫, 新部 英男
    1993 年 33 巻 6 号 p. 833-838
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    肺尖部胸壁浸潤型肺癌の放射線治療成績について検討した.対象は, 当科で1976年-1989年の間に放射線を主体に根治的治療を行った非小細胞肺癌424例のうち, 遠隔転移, 胸水貯溜を伴わない肺尖部胸壁浸潤型肺癌32例である.照射は10MVX線を用いた単純分割照射法で行った.全体の2年, 5年生存率はそれぞれ25%, 13%(中央値14.5カ月) で, 肺尖部以外の部位に発症したT3, T4非小細胞肺癌の生存率と同様であった.局所制御率は腫瘍の大きさと組織型に依存し, その結果, 予後は局所制御, 腫瘍径, 組織型と相関した.組織型別では, 類表皮癌に4例 (16%) の5年生存者が認められたのに対して, 非類表皮癌患者では5年生存者は認められなかった.また, 照射後, 全例に疼痛や上大静脈症候の改善が認められた.肺尖部胸壁浸潤型肺癌に対する放射線治療は, 対症的治療として有効であるばかりでなく, 根治的照射により長期生存も期待できる.
  • 千葉 渉, 澤井 聡, 塙 健, 松井 輝夫, 渡部 智, 畠中 陸郎, 松原 義人, 池田 貞雄, 木下 盛敏, 池井 暢浩
    1993 年 33 巻 6 号 p. 839-845
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    切除肺癌143例を材料として, c-erb B-2遺伝子の増幅をスロットプロット法で解析した.c-erb B-2遺伝子の増幅を認めた症例は22例で, 増幅率は最低2.00倍, 最高12.50倍, 平均3.37倍であった.増幅例の病期はI期6例 (13%), II期2例 (17%), IIIA期6例 (12%), IIIB期6例 (27%), IV期2例 (17%) であり, 増幅と病期に関連はみられなかった.組織型別では腺癌15例 (腺癌の20%), 扁平上皮癌4例 (8%), 小細胞癌3例 (40%) で増幅を認めた.増幅例は腺癌と小細胞癌に多く扁平上皮癌では少なかった.c-erb B-2増幅例では治癒切除群 (5生率40%) も非治癒切除群 (5生率38%) も予後に有意差は無かったが, 非増幅例では治癒切除群 (5生率53%) と非治癒切除群 (5生率27%) の予後に有意差を認めた (p<0.01).以上から切除肺癌ではc-erb B-2遺伝子の増幅は手術根治度と無関係の予後因子である可能性が考えられた.
  • 病理組織所見との対比から
    山田 耕三, 吉岡 照晃, 野村 郁男, 松村 正典, 野田 和正, 細田 裕, 林 康史, 石橋 信, 亀田 陽一
    1993 年 33 巻 6 号 p. 847-855
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    肺野小型病変の質的診断を向上させるために, 2mm幅の高分解能条件を用いた薄層スライスCT (thin-slice CT) で解析した病変の辺縁の性状所見が, どの程度質的診断に寄与するかどうかを再検討した. 対象は最近6カ月間にthin-slice CTが撮影された症例の中で, 病理学的な確定診断がついた径30mm以下の肺野小型病変41例である. 内訳は肺癌20例, 非癌性病変21例であり, CT画像の描出条件はWL-600, WW1900に統一した. 肺野小型病変において, CT画像は充実型と低濃度型の2型に大別が可能であり, 充実型の肺癌におけるspiculaは非癌性病変に比較して特徴的な所見で, notchingなどの他の所見と合わせて診断することにより, 肺癌と非癌性病変の鑑別が可能であった. 一方, 低濃度型ではspiculaは肺癌および非癌性病変のいずれにも認められ, 肺癌の特徴的な所見とはいえなかった. 以上より, 肺野小型病変の質的診断のなかで, thin-slice CT画像を用いた辺縁の性状の解析が, 肺癌例と非癌性病変との鑑別の一助となることが示唆された. 今後さらに肺野小型病変のCT画像での質的診断の確立のためには, 症例の集積と切除例でのprospectiveな検討が必要であると考えられた.
  • 多田 敦彦, 河原 伸, 岡田 千春, 木畑 正義
    1993 年 33 巻 6 号 p. 857-863
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    過去10年間に当院で経験した肺癌と活動性肺抗酸菌症の合併例15例について臨床的検討を行った. 肺癌の組織型は, 扁平上皮癌9例, 腺癌4例, 小細胞癌2例, 抗酸菌種は, M. tuberculosis12例, M. avium complex3例であった. 9例は同一肺葉に肺癌病巣と抗酸菌病巣が認められた. 肺癌の経過中に肺抗酸菌症が発症した症例は6例であった. 肺抗酸菌症が先に発見され, その治療中に肺癌が診断された症例は9例であった. その9例について, 過去のレントゲン写真の検討を行ったが, 9例全例, 肺抗酸菌症治療の入院時には肺癌は存在しており, そのうち6例は, 肺癌の発生は肺抗酸菌症の発症よりも先行していたものと考えられた. 以上より, 肺抗酸菌症に肺癌が潜在している可能性を念頭に置いて診療に当たる重要性が示唆された.
  • 玄馬 顕一, 大熨 泰亮, 上岡 博, 木浦 勝行, 田端 雅弘, 柴山 卓夫, 松村 正, 近森 正和, 木村 郁郎, 平木 俊吉
    1993 年 33 巻 6 号 p. 865-869
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    1976年から1991年の16年間に当科に入院し, その全経過をほぼ観察し得たIII, IV期肺癌468例のうち21例 (4.5%) に皮膚転移を認めた. 組織型別にみると, 腺癌179例中12例 (6.7%), 小細胞癌159例中6例 (3.8%), 扁平上皮癌86例中3例 (3.5%) であった. 皮膚転移巣の形態としては, 結節型が単発性3例, 多発性14例の計17例を占め, 丹毒様癌・鎧状癌がそれぞれ2例に認められた. また, 8例では皮膚転移を初診時に認めたが, 同時に全例に他臓器への転移を認めており, 皮膚転移は全身への転移の-症状と考えられた. 皮膚転移出現後の生存期間は, 0.8カ月から14.9カ月, 中央値3.6カ月と予後不良であった.
  • 佐藤 功, 小林 琢哉, 川瀬 良郎, 松野 慎介, 細川 敦之, 高島 均, 田邉 正忠, 中元 賢武, 前田 昌純, 中村 憲二
    1993 年 33 巻 6 号 p. 871-877
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    臨床画像を理解するために, 画像と切除標本とを対比検討することは重要である. そのため, 近年Heitzmanの成書に記載された伸展固定肺を利用した解析法が用いられることが多いが, その方法による材料を光顕用に染色すると染色性が極めて不良となることが本法の欠点であった. 我々はその改良法を基礎的研究で克服し, 今回肺癌の葉切除例での応用を検討した. 方法は切除肺の気管支断端よりホルマリンを注入しホルマリンに浸漬, その後Heitzmanの原法にしたがってポリエチレングリコール400などを混和した固定液に置換させ, 固定液を排除させて伸展固定肺を作成した. 病理所見はホルマリン固定時間1時間から4日間の症例で良好であり, 一方伸展程度はホルマリン固定2日間までの症例では良好であったが, それ以上の症例では伸展不良な場合も認められた. 歩ルマリン固定は1ないし2時間から1日間程度が適当と思われた.
  • 大熨 泰亮, 上岡 博, 河原 伸, 木浦 勝行, 田端 雅弘, 木村 郁郎, 平木 祥夫
    1993 年 33 巻 6 号 p. 879-886
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    肺小細胞癌112例を対象にCOMP (cyclophosphamide, vincristine, methotrexate, procarbazine)-VAN (etoposide, adriamycin, nimustine) 交替療法を行った. またlimited disease (LD) 症例には40Gyの胸部照射, 完全寛解 (CR) 例には40Gyの予防的脳照射 (PCI) の有用性に関する無作為化比較試験を並行して実施した. CR率はLD56%, extensivedisease (ED) 32%であり, 全奏効率はいずれも89%であった. 生存期間中央値はLD14.5カ月, ED11.1カ月で, 3年, 5年, 10年の生存率はそれぞれLDでは17.9%, 14.3%, 9.4%, EDでは3.6%, 0%, 0%であった. 胸部照射, PCIはいずれも照射局所の再発を有意に抑制したが, 生存期間の有意の延長効果は認められなかった. 胸部照射による副作用として29%の症例に放射性肺臓炎が出現し, そのうち2例が死亡したが, その他の毒性は一般に軽微であり, 重篤な合併症は経験されなかった.
  • 平野 隆, 池田 徳彦, 日吉 利光, 奥沢 健, 勝海 東一郎, 梶原 直央, 岩淵 裕, 河手 典彦, 小中 千守, 加藤 治文
    1993 年 33 巻 6 号 p. 887-895
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    東京医科大学病院において1977年1月から1991年3月までの約14年間に原発性多発肺癌と診断されたのは39例 (全原発性肺癌の2.02%) であった. このうち第1癌, 第2癌ともに早期~stage Iと診断された症例 (以下stage I多発肺癌) が18例 (全原発性肺癌の0.93%) あった. 胸部X線検査とともに喀痰細胞診を取り入れた肺癌検診との協力および肺癌患者を常に第2癌発生のハイリスクグループととらえ定期的に精査を行ったことで比較的早期の原発性多発肺癌症例を発見できたと考える. 全原発性多発肺癌の5年生存率は同時性で45.1%, 異時性では第1癌発見時からでは70.6%, 第2癌発見時からでは46.9%であった. またstage I多発肺癌の5年生存率はそれぞれ80.0%; 71.4%, 66.7%であり, いずれの数値も原発性肺癌stage I症例の5年生存率と有意差は認められなかった. 早期~Stage Iに発見され適切な治療が施された原発性多発肺癌の予後は悪くないと考える.
  • 手術標本および経気管支生検標本での染色パターン
    折橋 典大
    1993 年 33 巻 6 号 p. 897-905
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    肺扁平上皮癌のパラフィン包埋された手術標本52例, およびこれらの術前の経気管支生検標本30例について, 抗PCNA抗体を用いた免疫組織染色を行い, 各種臨床情報と対比した. 手術標本52例に対しては腫瘍細胞中の陽性細胞率 (Labeling Index) とp TN因子, 予後を比較したが明らかな相関関係は認められなかった. 次に染色パターンに着目し, 集簇した腫瘍の辺縁層に強い染色像を示すものはP, び慢性の染色像を示すものはD, 混合型はMパターンとして分類したところ, 高分化癌ほどPパターンを示す傾向が認められた. 手術標本と経気管支生検標本とでは80%の症例でバターンの一致があり (P or M+D), 相応性が示された. 生検標本の検討では末梢型扁平上皮癌や女性症例にDパターンが多く, 腫瘍の性格を反映するものと考えられた. 同染色法は簡便で再現性があり, 過去の症例も検討可能である点など, その臨床的有用性が示唆された.
  • 扁平上皮癌および腺癌について
    大和田 英美, 石橋 正彦, 廣島 健三, 林 豊
    1993 年 33 巻 6 号 p. 907-916
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    肺癌原発巣の同一結節内における中心部と辺縁部との癌細胞の細胞活性を比較するために, 29例の原発性肺癌の手術材料を用いて, Ag NORs数の計測とPCNA陽性率とを算出した. 29例の原発性肺癌手術例のうち扁平上皮癌は9例, 乳頭型腺癌および腺管型腺癌はそれぞれ10例であった.
    その結果,(1) 組織型や分化度にかかわりなく, 中心部の癌細胞1個当たりのAg NORs数は辺縁部のそれよりも多く認められた. (2) 癌細胞1個当たりのAg NORs数は分化度が高くなるに従って減少した. (3) 低分化扁平上皮癌以外の症例では結節辺縁部に存在する癌細胞のPCNA陽性率は中心部のそれよりも高率であった. 以上の所見は, 癌細胞の平均AgNORs数とPCNA陽性率との間には明らかな関連性が認められないことを示し, またAg NORs数は癌細胞の分化に関与していることを示唆している.
  • 吉井 千春, 森本 泰夫, 二階堂 義彦, 田尾 義昭, 津田 徹, 永田 忍彦, 城戸 優光
    1993 年 33 巻 6 号 p. 917-923
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    rG-CSFは, 白血球数最低値を底上げし, 白血球数減少期間の短縮が期待される薬剤として, 肺癌化学療法での併用が定着しつつある. しかし, どの時点からの投与開始が最適であるかの検討は十分にされていない. 今回我々は, 3つの化学療法レジメン (3日間) で, 投与開始時期により4群 (A群: rG-CSF非投与, B群: 白血球数2000/mm3以下からの開始, C群: day2からの開始, D群: day5からの開始) に分け, r G-CSFを2μg/kg皮下注して, 各群の白血球数最低値と白血球減少期間を比較した. この結果, D群は全例で白血球数最低値が2000/mm3以上になり, A群と比べ有意に最低値が底上げされた. またB, C群は同一症例で同一レジメンの比較で白血球数減少期間の短縮傾向を認めた. この結果から, 今回行った化学療法レジメンでは白血球数最低値を確実に底上げする目的ならば, day5からの投与開始が最も有用と思われた.
  • 中村 博幸, 柏原 光介, 深井 祐治, 千場 博, 蔵野 良一
    1993 年 33 巻 6 号 p. 925-928
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    症例は57歳男性. 昭和55年に全身性エリテマトーデス (SLE) と診断されプレドニゾロン17.5mg/日経口投与にて維持されていた. 昭和62年10月初旬より咳嗽出現し胸部X線写真上, 右肺門部に径9×10cmの腫瘤が認められた. 喀痰細胞診で小細胞癌細胞が認められた. 気管支鏡検査では右中間気管支幹には全周性に顆粒状変化が認められ, 同部位の擦過細胞診及び組織生検で肺小細胞癌 (C-T3N2M0, L. D.) と診断された. CDDP, VP正16による多剤併用化学療法によりCRとなり, その後放射線療法50Gyが施行された. CR後5年以上経過の現在まで再発なく生存中である. SLEに合併した肺小細胞癌の報告例はみられず, 更に5年以上CRで長期生存が得られており, 若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 杉原 里恵, 鬼塚 徹, 重永 武彦, 金子 明子, 津田 富康
    1993 年 33 巻 6 号 p. 929-934
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    80歳の女性で, 胸部X線上孤立性腫瘤影と同側肺門部リンパ節の腫脹を呈し, 内視鏡的に気管支内腔に腫瘍として観察された非ポジキン悪性リンパ腫の1例を報告した. 肉眼的には肺原発の小細胞癌に類似した所見を呈していた. 気管支鏡下に生検を施行し, 免疫組織学的検索を行った結果, B細胞型悪性リンパ腫びまん性中細胞型と診断された. 本例では腹水と後腹膜の腫瘤を伴っており, 腹水の細胞診からも悪性リンパ腫との結果を得た. 肺野に孤立性の腫瘤および, 肺門にかけて連続性にリンパ節の腫大を認め, 気管支内に限局性の腫瘍として観察されたことから考えると, 肺野のリンパ腫は後腹膜からの転移とは考えにくく, 肺内リンパ節あるいはBALTから発生しリンパ行性に肺門へ, また気管支内に直接浸潤したと推定される. 非ポジキンリンパ腫が気管内に突出し, 腫瘍として認められた症例は稀であり, 若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 田中 康一, 三浦 隆, 葉玉 哲生, 内田 雄三, 横山 繁生, 田代 隆良
    1993 年 33 巻 6 号 p. 935-939
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    び漫性胸膜中皮腫に対し胸膜肺全摘術を行い, 長期生存が得られた稀な1例を報告する. 症例は48才女性. 昭和57年11月, 検診で胸水を指摘されたが確診が得られないまま結核性胸膜炎として抗結核剤の投与を受けていた. 昭和60年2月, 胸水がやや増加し, 胸水細胞診で中皮腫が強く疑われたため昭和60年4月に手術を施行した. 開胸すると, 少量の胸水と壁側, 臓側胸膜にカビ様斑点が散在し, 一部は癒合し腫瘍状の盛り上がりも認めた. 生検で悪性中皮腫の確診が得られ胸膜肺全摘術を施行した. しかし, 心膜, 横隔膜面の腫瘍の完全切除は出来ず, 絶対的非治癒切除に終わった. 病理組織所見は, 膠原線維を間質として, 乳頭状, 腺管状に増殖した異型の少ない腫瘍細胞よりなり, び漫性上皮性中皮腫と診断した. リンパ節転移はなかった. 術後は約5年間フトラフール600mg/日の投与を行ったが, 8年経過した現在も再発の徴候なく健在である.
  • 青木 洋介, 末岡 尚子, 中原 快明, 黒木 茂高, 加藤 収, 山田 穂積
    1993 年 33 巻 6 号 p. 941-945
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    症例は75歳の男性で乾性咳嗽を主訴とし, 胸部X線写真で左下肺野に浸潤影を認めた. 気管支鏡で左B9入口部を閉塞するポリープ状腫瘤が認められ, 表面には一部壊死物質が付着していた. また, 対側の右B9入口部にも同様のポリープ状腫瘤を認め, 共に低分化型腺癌と診断された. 他臓器悪性腫瘍からの気管支内腔転移を疑い全身的検索を施行したが, 肺外諸臓器には異常を認めなかった. 胸部CTでは左B9ポリープ状腫瘤に隣接する原発巣と考えられる径3cmの充実性腫瘤と, 両側に肺内転移巣を示唆する複数の小結節影が認められた. 右B9入口部の腫瘤は, CT所見では気管支内腔病変のみであり, 気管支壁外には異常を指摘できなかった. 以上の結果より, 本症例は左B9原発の低分化型腺癌で一部がポリープ状発育を呈し, さらに対側肺に気管支内腔転移を来たしたものと考えられた.
  • 庄司 晃, 江口 正信, 中村 雅夫
    1993 年 33 巻 6 号 p. 947-952
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    症例は61才女性. 咳噺・労作時呼吸困難を主訴に当院受診し, 胸部X線写真で左胸水を認めた. 胸水細胞診はclass V (adenocarcinoma) で, 画像所見等より肺腺癌による癌性胸膜炎と診断, 抗癌剤の胸腔内投与および全身投与を行ったが, 入院第100病日に死亡した. 入院時末梢血白血球数は8000/mm3であったが, 経過中明らかな感染が無いにもかかわらず白血球数は上昇し, 死亡前日には106000/mm3となり, その97%は成熟好中球であった. 血清中G-CSF濃度が高値を示し, 抗G-CSFモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学法で腫瘍細胞が陽性を示したことより, 本症例はG-CSF産生肺腺癌と診断した. また, 入院時 (白血球数正常) の癌細胞においても, 抗G-CSFモノクローナル抗体は陽性を示したことより, 経過途中からの白血球増多はG-CSF産生能の有無ではなく, G-CSFの量の問題と思われた.
  • 稲冨 恵子, 大塚 俊通, 室田 欣宏, 早川 欽哉
    1993 年 33 巻 6 号 p. 953-957
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    症例は52歳男性. 普段から咳と痰がでるが4ヵ月前の胸部X線写真では異常陰影はなかった. 正月頃から症状が増悪した為人間ドック入院となった. 胸部X線写真で左下肺野に辺縁やや不鮮明の8mm大の陰影が認められ, 胸部CTでは左S5の胸膜直下の円形の腫瘤を認めた. 胸膜陥入像, spiculationは認められなかった. 血沈の充進, 軽度の貧血はあったが, 白血球の増多はなく, 痰の培養でH. haemolyticus+~++, 抗酸菌陰性, 細胞診class II~IIIa, 気管支肺洗浄液でclass IIであった. 重喫煙者でもあり, 気管支炎治療後も陰影は不変で, 肺癌も否定しきれない為開胸術をおこなった. 結果は炭粉沈着の著明な肺内リンパ節であった. 報告例は少なく本邦報告例をまとめた. 成人病検査, 人間ドックなどで遭遇する機会があり, 鑑別診断の1つに肺内リンパ節を考慮する必要があり報告した.
  • 竹中 雅彦, 中野 孝司, 岩橋 徳明, 波田 寿一, 東野 一彌, 植松 邦夫
    1993 年 33 巻 6 号 p. 959-964
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    症例は47歳の男性. 4, 36, 37, 39歳時において4回の肺炎に罹患し, さらに, 39歳時に初めて右上肺野に気腫性嚢胞を指摘されている. 昭和63年9月に気腫性嚢胞と反対側に肺炎を発症し, 抗生剤投与にて軽快したが, その3カ月後, 発熱と胸部X線写真上異常陰影が出現し, その精査加療目的で入院となった. 胸部X線上, 気腫性嚢胞は8年前と比較して, 多発性に増大しており, 更に嚢胞に接して径4.6cmの腫瘤陰影を認めた. 腫瘤陰影は経皮的肺生検によって低分化型腺癌と診断し, 平成1年3月当院胸部外科にて右肺上葉切除術を施行した. 上葉肺前面に巨大な腫瘤と背面から肺尖部にかけて気腫性嚢胞があり, それらには若干の索状癒着があった. 術後8カ月目に非定型抗酸菌症が生じ, 某院に転院となった
  • 山下 良平, 森田 克哉, 小杉 光世, 小林 長, 安念 有声
    1993 年 33 巻 6 号 p. 965-969
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    症例は55歳, 女性. 検診で胸部の異常陰影を指摘された. 胸部X線上, 左S3に径2cmの比較的辺縁明瞭な腫瘤陰影を認めた. 経気管支鏡的擦過細胞診で印環細胞型の腺癌細胞が得られた. 胃癌をはじめとする他臓器癌からの転移性肺腫瘍を疑い, 全身の詳細な検索を行ったが, 肺以外にはまったく異常を認めず, 最終的に原発性肺癌との診断で手術を行った. 切除標本の病理組織学的検索では, 印環細胞型の腫瘍細胞が, 髄様に増殖し, 腫瘍全体がこの印環細胞で構成されていた. 気管支上皮が腫瘍へと連続性に移行する部分を認め, 細気管支上皮に原発した印環細胞癌と診断された. 印環細胞癌は一般に消化器系臓器に発生することが多いが, まれに本症例の如く純粋な組織型として肺に原発することがある. 肺腫瘍に対する細胞診や組織診で, 印環細胞が得られた場合は, 肺原発の可能性も考慮し, その診断および治療上, 慎重な検索と経過観察が必要である.
  • 礒部 威, 津谷 隆史, 二井谷 研二, 由田 康弘, 長谷川 健司, 山木戸 道郎
    1993 年 33 巻 6 号 p. 971-976
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    症例は63歳の女性. 53歳時に検診で, BHLおよび肺野病変を認め, 鎖骨上窩リンパ節生検によりサルコイドーシスと診断された. 胸部X線によって経過観察中に, BHLは次第に改善傾向にあったが, 肺野病変は徐々に肺線維症へと進行してきた. またサルコイドーシスの診断の約10年後に肺癌の合併を認め, 左上葉切除を施行した. 摘出腫瘍は病理組織学的には, 中等度分化型腺癌で, 切除肺のリンパ節転移は認めず, pT2N0M0, stage Iの治癒切除となった. 摘出肺の一部では, 腫瘍に混在して多数の壊死を伴わない肉芽腫性病変を認めた. また, 摘出されたリンパ節にも同様の所見を認め, サルコイドーシスによる変化と考えた. 術後5年以上経過したが肺癌の再発は認めず, またサルコイドーシスの再燃も認めていない. サルコイドーシスの経過中に肺癌を合併することはまれであり, 文献的考察を加えて報告した.
  • 1993 年 33 巻 6 号 p. 977-990
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2011/08/10
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