肺癌
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34 巻, 6 号
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  • 田村 厚久, 松原 修, 小松 彦太郎, 毛利 昌史, 片山 透
    1994 年 34 巻 6 号 p. 843-852
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    肺癌患者における非細菌性血栓性心内膜炎 (nonbacterial thrombotic endocarditis: NBTE) の特徴と意義を調べるため, 肺癌剖検142例の臨床病理学的検討を行った. 11例 (7.7%) にNBTEを認め, 組織型別には腺癌62例中8例 (13%), 扁平上皮癌35例中3例 (8.6%) の順で, 小細胞癌 (34例) にはNBTEの合併はみられなかった. 一方142例中11例に病理学的に播種性血管内血液凝固 (disseminated intravascular coagulation: DIC) がみられた. このうち4例 (36%) はNBTE症例で, DICとNBTEとの間には有意の相関を認めた (P<0.01). NBTE11例中7例に全身の血栓塞栓症を認め, その部位は脾 (7例), 脳 (5例), 腎 (4例), 心 (3例), 腸間膜 (2例) であった. 多発性出血性脳梗塞 (4例) はいずれも致命的で, 心筋梗塞や腸間膜動脈塞栓症による腹膜炎も死因となっていた. NBTEは肺癌に稀ならず合併し, それによる血栓塞栓症は予後を左右する事もあるため, 臨床医はNBTEの特徴と意義を熟知する必要がある.
  • 山地 康文, 山鳥 一郎, 藤田 俊和, 藤田 次郎, 高原 二郎, 前田 昌純, 高島 均, 田邊 正忠
    1994 年 34 巻 6 号 p. 853-859
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    肺小細胞癌 (SCLC) は中枢側気管支より発生する例が多いが, 肺末梢部に発生することもある. さらに肺野型結節性腫瘤を形成し, リンパ節転移のない例 (SPN-SCLC) は少ないながら, その臨床・生物学的特異性に興味がもたれている. そこで1983~1992年に香川医科大学付属病院に入院しSCLCと診断された80例を対象に, SPN-SCLC群を非SPNSCLC群, 特にそのうちの末梢発生・限局型群と臨床病理学的に比較検討した. SPNSCLCは10例で男/女9/1, 平均年齢77才で, 高齢者と重喫煙者に多かった. 組織亜型は燕麦細胞型3例, 中間細胞型7例であった. 6例で化学療法の奏効度が判定でき, CR1例PR5例と化学療法に対する反応性は良好であった. 6例に手術療法が, 1例に放射線療法が行われた. 中間生存期間は20カ月で非SPN-SCLC群に比し長い傾向にあったが, これは主に腫瘍量が少ないことに起因すると考えられ, 細胞生物学的な違いがある事実を指摘することはできなかった.
  • 五味渕 誠, 菅野 重人, 原口 秀司, 真崎 義隆, 田中 茂夫, 庄司 佑, 田村 浩一, 山本 光伸, 出雲 俊之
    1994 年 34 巻 6 号 p. 861-866
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    肺癌I期症例の予後とAgNORs, fibronectin (FN) の関連を検討した. 対象は術後5年以上の生存を確認できた36例 (A群; 腺癌18例, 扁平上皮癌16例, 大細胞癌2例) と5年以内の癌死を確認できた36例 (B群; 組織型は生存群と同数) の計72例. AgNORs3.0未満を2点, 3.0~5.0を1点, 5.0以上を0点とし, FN染色程度 (++) (+) (-) を各々2, 1, 0点とした. (1) 生存期間はAgNORsとFNの合計点が0と1, 0と2の間に有意差があった (P=0.025, 0.0076). (2) A, B群で比較すると (a) AgNORsとFNともに有意差があり (p=0.029, 0.022),(b) 合計点でも有意差を認めた (p=0.0057). (3) 組織型別にみると腺癌の生存期間では合計点0と2に, 群別では合計点で有意差を認めた (p=0.0060, 0.0082). (4) 症例ごとに検討すると0点の8例は全てB群で, 3点の6例中5例はA群であった. 以上からAgNORsとFNを検討することにより, より正確に予後を予測することが可能であると考えられた.
  • 中山 秀章, 横山 晶, 木滑 孝一, 栗田 雄三
    1994 年 34 巻 6 号 p. 867-874
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    1982年10月以降の小細胞肺癌207例を対象に, 治療法別予後と長期生存例についてretrospectiveに検討した. 対象症例は, LD121例, ED86例で, 手術例が19%, 化学療法 (CT) と放射線療法 (RT) の併用が44%であった. 術前CT (ICT) 25例と術後CT (ACT) 12例の比較では, 生存期間中央値 (MST; 36vs29ヵ月), 3生率 (57vs45%) であった. LDのRT併用の時期では, concurrent法7例, sequential法22例で, 3生率 (14vs18%) に差はなかった. EDのCDDP+ADM+VP-16療法をG-CSF併用の有無で比較すると, 併用群のMSTが22ヵ月, 3生率が21%と良好であった. 3年以上の長期生存は24例で, LDが21例, 手術が13例であった. CTとRTの併用10例の抗腫瘍効果は, CR6例, PR4例であった. 5年以上のdisease free生存例は5例である. 第2癌が1例に認められた. 手術例に対するICTと, ED症例に対するdose intensive CTで生存率の長い傾向がみられたが, 有意差はなく, さらに症例を重ね検討する必要がある.
  • 薄田 勝男, 斎藤 泰紀, 相川 広一, 桜田 晃, 陳 炎, 遠藤 千顕, 菅間 敬治, 佐藤 雅美, 佐川 元保, 藤村 重文
    1994 年 34 巻 6 号 p. 875-881
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の寄せ集めといった人為的影響を極力排除するため, 一定地域で一定期間内で, tumor doubling time (DT) の検討可能な原発性肺癌例をいかなるselectionも行わないで収集し, それらを対象としてDTの分布および臨床病理学的特性を検討した.
    1) DTの対数変換後の分布は, 歪度が0.7204, 尖度が-0.0643と小さくなり, DTは対数正規分布に従がった.
    2) 症例のDTは最小30日, 最大1077日であり, DTの算術平均は163.7±177.5日, 幾何平均は113.3日であった.
    3) DTの平均値は, 男性例が女性例に比較し, 喫煙例が非喫煙例に比較し, 有症状例が無症状例に比較し有意に短かった. またDTの平均値は, 扁平上皮癌および未分化癌が腺癌に比較し, T2, T3およびT4例がT1例に比較し, III期例がI期例に比較し有意に短かった. DTは密接に他の予後因子と関係していた.
  • OK-432によるrandomized controlled study
    石井 昇, 宮本 良文, 岡田 昌義, 坪田 紀明, 吉村 雅裕, 大薮 久則, 八田 健, 住野 公昭
    1994 年 34 巻 6 号 p. 883-889
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    非小細胞肺癌切除例を対象に, 免疫療法剤OK-432による術後免疫化学療法の確立化比較対照試験 (Randomized Controlled Study) を多施設の共同研究下に行った. 各施設別に組織型および手術根治度を前層別因子とする封筒法により, 各施設毎にA群 (OK-432併用化学療法群), B群 (化学療法単独群) の2群に対象症例を割り付けた. 登録された症例の総数は138例であったが, プロトコールにより不適格とされた15例を除いた適格例123例を評価の対象とした. 適格全症例の5年生存率はA群66.3%, B群51.0%で生存期間の延長がみられたが, 統計学的有意差は認められなかった. しかし, 治癒切除例についてみると, A群がB群に比べて有意に良好な結果が得られた (A: 70.9% B: 50.8% p<0.05). さらに, 治癒切除例の腺癌症例や1期症例のA群はB群に比べて有意に生存期間の延長が認められた (p<0.05).
    以上より, 非小細胞肺癌に対するOK-432を併用した術後免疫化学療法の有用性が示唆された. また, OK-432の併用に当たっては手術根治度, 組織型および病期などを考慮する必要があると考えられた.
  • 松本 常男, 粟屋 ひとみ, 中村 洋, 三浦 剛史, 有吉 功, 由水 多津子, 野村 敏, 中西 敬
    1994 年 34 巻 6 号 p. 891-901
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    高分解能thin-slice CT (HRCT) による肺野孤立性結節性陰影 (SPN) の診断能向上の指標を得ることを目的に, 8人の読影医による読影実験を行った. 対象は, 石灰化のない3cm以下のSPN 26例で, 従来の断層像 (TOMO) とHRCTとで, 鑑別診断を行った. HRCTによるSPNの鑑別診断は, 主に, 悪性SPNに対する確信度が向上することにより, TOMOのそれよりも明らかに良好であった. しかし, 良性SPNの診断能の向上は充分でなかった. その理由として, HRCTにおいてのみ識別できる所見の意義が充分認識されていないこと, また, 良性SPNに特異性の高い所見が充分認識されていないため, 所見を過度に悪性所見として用いていることがあげられた. HRCT診断の向上には, HRCTに対応した所見に細分化し, それらが個人間でばらつかないで統一されるような方法を考案し, 多数例の蓄積による個々の所見の意義づけが望まれる.
  • 桜庭 晶子, 饗庭 三代治
    1994 年 34 巻 6 号 p. 903-910
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    1979年から1988年までの10年間に当院に入院した癌症例6,145例を対象に, 原発巣が横隔膜より頭側臓器にある症例 (SD群) と横隔膜より尾側臓器にある症例 (ID群) に分けて, 癌性胸膜炎・癌性腹膜炎の合併頻度をretrospectiveに検討した. SD群では癌性胸膜炎合併は12.3%, ID群の癌性腹膜炎合併は9.9%であった. SD群が腹膜炎を, ID群が胸膜炎を単独で発症する率は各々0.3, 0.7%であった. 両合併例は, SD群1.1%, ID群2.0%で, SD群の胸膜炎合併例中では8.8%, ID群の腹膜炎合併例で20.0%であった. SD群の胸膜炎腹膜炎併発例よりID群の腹膜炎胸膜炎併発例が多かった (P<0.01). 剖検例190例では, SD群の癌性腹膜炎合併例は癌性胸膜炎のみの症例より, またID群の癌性胸膜炎合併例は癌性腹膜炎のみの症例より, おのおの横隔膜の対側へのリンパ行性転移が高頻度にみられた (38.7%vs73.3%: P<0.05, 37.3%vs78.3%: P<0.01). 以上の結果, 横隔膜は胸腔から腹腔へ, 腹腔から胸腔への癌の波及を隔壁として抑制すること, リンパ系の癌の進展でこの抑制は破綻すること, さらに, ID群の頭側への進展は, SD群の尾側への進展に比べれば容易であることが示唆された.
  • 有用性の再評価: CT, conventional MRI, STR併用MRIの比較
    藤本 公則, 目野 茂宣, 安陪 等思, 枝光 理, 西村 浩, 早渕 尚文, 高森 信三, 林 明宏, 力丸 徹, 市川 洋一郎
    1994 年 34 巻 6 号 p. 911-922
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    術前2週間以内にCT, MRIが施行された原発性肺癌61例を対象としてCT, 通常のMRI (conventional MRI以下C-MRI), STIR併用MRI (STIR-MRI) に分け, それぞれ診断基準を設定して縦隔リンパ節転移診断をretrospectiveに検討した結果, accuracyはCT80%, C-MRI 79%, STIR-MRI 87%でSTIR-MRIの成績が最も良好であった. そこで, その後の91例に同様の診断基準を用いて, prospectiveに検討した結果, accuracyはCT81%, C-MRI 81%, STIR-MRI 87%でretrospective studyの結果と同等で再評価でもその有用性が示された. STIR-MRIにおけるfalse positive例の原因は主に反応性リンパ節腫大であり, false negative例の原因は主に腺癌のmicrometastasisであったが, これらは現時点では画像診断の限界と思われた. STIR-MRIは, 原発性肺癌の縦隔リンパ節転移診断においてC-MRIよりも成績が良好であり, リンパ節の信号強度を診断基準に加えることでCT診断に有用な情報を提供すると思われた.
  • 久保田 真毅, 坪田 紀明, 吉村 雅裕, 室谷 陽裕, 阪本 俊彦
    1994 年 34 巻 6 号 p. 923-929
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    症例は左側巨大ブラを合併した53歳男性. 急速に増大するGaシンチ陽性の右胸部異常陰影を認め, 血清Alpha-Fetoprotein (以下AFP) 値は296ng/mlと高値を示した. 腫瘍は13cm×10cmと巨大であったが, 上中葉切除及びS6の部分切除術にて腫瘍の全切除を行い得た. 術後. 血清AFP値は正常に復した. 術後22ヵ月の現在再発の兆候なく職場復帰している. 病理診断では低分化型腺癌, T2N0M0, stage I, AFP染色は陽性と診断された. レクチン吸着交差免疫電気泳動法を用いた血清AFP分画では通常の肝癌のパターンとは異なった, インゲンマメレクチンに対する強い親和性を呈した. 以上より本症例はAFP産生原発性肺癌と診断した.
  • 清水 雅史, 芦名 謙介, 土肥 美和子, 松井 律夫, 末吉 公三, 楢林 勇
    1994 年 34 巻 6 号 p. 931-936
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    極めて稀な合併症である生検針刺入経路への転移を来した転移性肺癌の1例を経験したので報告した. 症例は, 66歳女性で, 右腎癌の腸骨転移を認め, 動脈塞栓術, 化学療法及び放射線療法による集学的治療後に外来にて経過観察中, 左中肺野末梢に径1cmの結節影が出現した. CTガイド下に, 22G Westcott針を用いて吸引針生検を施行した. 穿刺回数は1回であった. 組織学的に腺癌と診断され, 腎癌の肺転移と考えられた. 針生検から5ヵ月後に穿刺部位に一致して, 皮下腫瘤が出現した. 胸部造影CTでは, 左側胸部の皮下から前鋸筋にかけて, リング状に造影される4個の結節がほぼ一直線状に並んで認められた. 皮下腫瘤の生検組織像で, 腎細胞癌の転移巣と診断された.
  • 病理学的鑑別診断について
    阿部 良行, 大田 英一郎, 大鹿 芳郎, 須藤 隆二, 井上 宏司, 中村 雅登
    1994 年 34 巻 6 号 p. 937-942
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    症例は17歳男性で背部痛を主訴に受診した. 胸部X線写真では, 右下肺野に最大径10cmの辺縁不明瞭な淡い腫瘤影を認めた. 術前CT, MRI検査で肋骨原発の胸壁腫瘍が疑われ, 胸壁合併腫瘍切除, 右肺下葉部分切除術を施行した. 腫瘍は右第9肋骨を中心に存在し, 100×80×60mm大で黄白色, 被膜を有し境界鮮明で肉眼的に肺への浸潤は認められなかった. 組織学的に, 小型円形細胞が結合織を伴いながら密に増殖していた. 腫瘍細胞は細胞質が乏しく辺縁不明瞭で, 小型の核を有し, 核分裂像が散見された. 鍍銀では腫瘍細胞間に好銀線維を認めず, PAS染色と電顕にて腫瘍細胞に少量のグリコーゲンを認めた. p53の免疫染色では, ほとんどの腫瘍細胞の核内に陽性所見を認めた. 以上より肋骨原発のEwing肉腫と診断した. 化学療法と放射線治療を行い, 術後7ヵ月の現在再発なく生存中である. 本腫瘍が肋骨に発生することは稀で, p53の免疫染色が診断に有用であった.
  • 柴田 和男, 松田 良平, 太田 宏子, 森 俊之, 水谷 優, 安藤 啓一
    1994 年 34 巻 6 号 p. 943-947
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    症例は74歳の男性. 検診で発見された前縦隔腫瘍と, 術前CTで偶然発見された左肺腫瘍に対し一期的に切除術を行った. 切除標本の病理検査で, 縦隔腫瘍は被膜外浸潤を伴う紡錘細胞型胸腺腫, 肺腫瘍は原発性肺扁平上皮癌と診断した. 術前検査の末梢血リンパ球サブセットで, OKT4の著明な低下とOKT8の上昇, B-cell populationの欠損を認め, 胸腺腫に免疫不全症を合併したGood症侯群と考えられたが, 胸腺腫切除後も免疫不全の改善はみられなかった.
  • 草島 義徳, 広野 禎介, 杉原 政美, 島崎 栄一, 高柳 尹立
    1994 年 34 巻 6 号 p. 949-954
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    原発性肺悪性黒色腫の一切除例を報告した. 症例は73歳の男性, 右中肺野の結節影にて入院精査施行. 右S6に腫瘤影を認め, MRI-T1強調像にてhyperintense, T2強調像にてhypointenseを呈し, 経皮的肺針生検で悪性黒色腫と術前診断した. 右下葉切除, S2合併切除術R2を施行し, P-T3N0M0であった. 腫瘍は大きさ4.6×3.5×4.0cmで, 黒色で右S6中心で一部S2への浸潤を認めた. 病理組織学的検索で腫瘍に接する気管支粘膜基底層に, junctional changesが証明され, 原発性肺悪性黒色腫と診断された. 本疾患は, 本邦では10例に満たない報告数で, 極めてまれな腫瘍である.
  • 小久保 光治, 石川 健二, 立山 健一郎, 杉山 彰, 片山 元之, 高見 剛
    1994 年 34 巻 6 号 p. 955-958
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    52歳の男性が検診で白血球増多 (15000/mm3) を指摘され, 本院内科を受診し胸部異常陰影を発見された.腫瘍は右S1, 2にあり擦過細胞診でClassVであったので, 肺癌cT2N0M0の診断で右肺上葉切除術を施行した.術前体温は38.6℃ と上昇し四肢の関節痛があり, 白血球数は16500/mm3, CRP 6.4mg/dlと高値で血沈も1時間値144mmと促進していた.感染を示唆する所見のないことよりG-CSF産生肺癌を疑い, 検査したG-CSF値は60pg/mlと高値であった.病理組織所見では大細胞癌で巨細胞癌が混在していた.免疫組織学的所見では抗G-CSFモノクローナル抗体を用いた免疫染色で腫瘍細胞がG-CSF陽性に染まりG-CSF産生肺癌と診断した.術後, 体温は正常になり四肢痛も消失し, 血液検査所見は正常値になった.検診時の白血球増多により発見されたG-CSF産生肺癌は初めての症例であり報告する.
  • 古川 次男, 小柳 孝太郎, 副島 嘉修, 杉原 充, 吉田 猛朗
    1994 年 34 巻 6 号 p. 959-964
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    癌病巣のみられた同時性肺多発癌の1例を経験した. 患者は50才, 男性で血痰を主訴として来院. 気管支鏡検査を施行したところ, 右B1, 右B3, 右下葉支入口部および左B1+2にそれぞれ連続性のない4ヵ所に腫瘍を認め, 生検の結果はすべて扁平上皮癌であった. 肺機能上すべて外科的に切除することは不可能であり治療の選択にあたっては外科的切除との組み合わせも考慮したが, 最終的にはレーザーおよび放射線治療を行い, さらにCDDP, CBDCA, VP-16による化学療法を追加した. 退院後3ヵ月おきに気管支鏡にてFollowを行っているが, 治療開始後2年を経過した現在再発を認めていない.
  • 小宮 武文, 松島 敏春, 木村 丹, 小山 育甫
    1994 年 34 巻 6 号 p. 965-969
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    症例は52歳の女性で喀血を主訴に来院した. 胸部正面像で左S3aに空洞を伴う結節影があり, 正面断層, CTにて空洞内に不整形な菌球様物質を認めた. その後結節影は次第に縮小し, 同時に菌球様物質もほぼ消失した. TBLBにて類表皮癌と診断し手術を施行した. 切除標本では空洞内には少量の凝血塊が認められるのみで, アスペルギルスなどの真菌類は認められなかった. 喀血の存在, X線像の経過, 切除標本の所見から, 癌性空洞内に出血をきたして凝血塊を形成したため菌球様の陰影を呈したものと推定された.
  • 1994 年 34 巻 6 号 p. 971-989
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
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