肺癌
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35 巻, 6 号
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  • 第2報喀痰細胞診の成績
    松田 実, 鈴木 隆一郎, 中山 典子, 西村 ちひろ, 宝来 威, 祖父江 友孝, 楠 洋子, 菊井 正紀, 福岡 正博
    1995 年 35 巻 6 号 p. 715-725
    発行日: 1995/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    大阪肺癌集検研究班が, 1981-1990年の10年間に行った肺癌検診において, 高危険群所属者22,753人 (受診者の24.5%) に喀痰容器が配布されたが, 回収率は87.3%, 有効検体率は98.7%であった. 精検は76人 (0.4%) で, 精検受診率は98.7%, 精検完了率は96.0%であった.高危険群所属者で, 喀痰細胞診により発見された肺癌は29人 (中心型扁平上皮癌は21人) で, このうち喀痰細胞診のみによる発見は15人 (中心型扁平上皮癌は13人) であった. 中心型扁平上皮癌の, 経年受診7人中6人, その他の受診14人中9人が臨床病期1期であった.喀痰細胞診により発見された肺癌の切除率は48.3%, 絶対的治癒切除率は27.6%であった. 1981-1983年, 1984-1986年, 1987-1990年の3時期にわけて男性中心型扁平上皮癌の標準化発見比を算出した結果, それぞれ1.595, 1.189および0.680となった.
  • 血清NSEと比較して
    児玉 哲郎, 久保田 馨, 大松 広伸, 北條 史彦, 松本 武敏, 柿沼 龍太郎, 関根 郁夫, 横崎 典哉, 西脇 裕, 青柳 克己
    1995 年 35 巻 6 号 p. 727-733
    発行日: 1995/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    肺小細胞癌初回治療10例について治療開始前から治療終了後の19週までの血清proGRPと血清NSEの変動を検討した. 10例いずれも奏効例 (PR: 6例, CR: 4例) であった.治療前血清proGRPは9例, 血清NSEは6例で異常上昇していた. 血清NSEは, 10例中9例において治療開始直後一過性 (2日目~8日目) に上昇した. その後, 血清NSE値は急激にかつ2週以内にそのほとんどが基準値内に復した. 一方, 血清proGRPは治療開始直後の一過性の上昇は10例中3例のみで, 治療開始直後 (2日目) のみであった. 血清pro-GRP値の減少は緩徐でX線画像の消退と比較的よく相関した.2例では, 奏効症例であっても血清proGRP値が基準値以下に低下せず, その後早期に再発がみられた. 以上のごとく, 血清proGRPは, 血清NSEとは異なった動態を示し, 小細胞癌の治療効果を正確に反映する腫瘍マーカーであると考えられた.
  • 田村 哲生, 山下 英敏, 筒井 大八, 町田 健一, 徳岡 裕文, 高島 正, 鈴木 隆一郎, 守谷 欣明
    1995 年 35 巻 6 号 p. 735-747
    発行日: 1995/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    宿毛市では綿密な肺癌登録により肺癌症例がほぼ全例把握されている.過去7年間に宿毛市で発見された肺癌症例106例 (40-79歳) を対象に住民肺癌検診の有用性について検討した.まず発見動機別に検診発見群46例と非検診発見群60例に分けて比較した.検診発見肺癌は, 発見率10万対99.9, 標準化発見比1, 04, 1期肺癌割合74%, 切除率74%, 絶対的治癒切除率57%, 5年生存率55%であり, 検診発見群の予後は非検診発見群に比べて有意に良好であった.しかし, 全症例の検診受診歴を調べてみると, 検診問発見例が20例あり, これらは著しく予後不良であった.そこで, 検診間発見肺癌による1engthbiasを消去するために, 検診受診歴から, 前回検診受診群59例と前回検診未受診群47例に分けて比較した.5年生存率は前回検診受診群で44%, 未受診群で16%で, 生存期間中央値はそれぞれ3年11カ月と1年5カ月であり, 両群の生存期間中央値には有意差を認めた.以上より, 注意の行き届いた肺癌検診を経年受診すれば肺癌の死亡率は低下することが示唆された.
  • 山岡 憲夫, 内山 貴堯, 中村 昭博, 村岡 昌司, 井出 誠一郎, 山下 秀樹, 辻 浩一
    1995 年 35 巻 6 号 p. 749-758
    発行日: 1995/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    原発性肺癌切除の肺内転移例 (以下pm例) について以下の2点を主に検討した.一つは予後を調べ遠隔転移例としての妥当性, 他方はpm例と多発癌との鑑別診断を検討した.pm例は原発性肺癌切除528例中35例 (6.6%) で, その5年生存率は34.6%と比較的良好であった.pm例の予後はNoとN2+N3の間のみ有意差があり, No例の5年生存率は60.0%と良好であった.原発巣と転移巣の核DNA量解析を行った21例中4例 (19%) にDNAheterogenityを認め, うち1例のみが長期生存中で多発癌例と診断した.5年以上の長期生存の5例中4例のpm巣は同一肺葉内で原発巣の周囲か末梢にあり, 血管侵襲陽性であり, 肺動脈を介した局所進展例と思われた.以上より, pm例でもNo例の予後が良好なことや, 局所進展例があることよりpm例のすべてを遠隔転移とすべきでないことが示唆さ, れた.また, 核DNA量解析を用いることで多発癌との鑑別をより正確にすることができたが, pm例の中に多発癌例の混入の頻度は少ないと思われた.
  • 吉村 信行, 片岡 直之, 東條 尚子, 月本 光一, 市岡 正彦, 宮里 逸郎, 谷合 哲, 丸茂 文昭, 吉澤 正文, 千田 守
    1995 年 35 巻 6 号 p. 759-765
    発行日: 1995/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    肺小細胞癌患者13例を対象にCDDP (80mg/m2: day 1) +VP16 (100mg/m2: day1, 2, 3) 療法 (PE療法) におけるrhG-CSFの至適開始時期について検討した.rG-CSF投与 (2μg/kg/day, sc) は, 1クール目は白血球数が2000/μl未満となった日から, 2クール目は化学療法開始後5日目から開始し, nadirの時期を過ぎて白.血球数が10000/μl以上となった時点で中止とした.その結果, 1クール目に比し2クール目では白血球数および好中球最低値, 白血球数2000/μlおよび好中球数1000/μl未満の日数, 白血球数が10000/μlまで回復するのに要した日数が有意に改善し, 白血球減少に伴う発熱, 併発感染症の頻度が減少した.PE療法におけるG-CSFの予防的投与法は, 患者のQOLを向上させるのに有用と考えられた.またこの投与法により化学療法の間隔を短くし, dose intensityの増強がはかれる可能性が示唆された.
  • 吉永 康照, 白日 高歩, 川原 克信, 岩崎 昭憲, 久米 徹, 松添 大助, 平塚 昌文
    1995 年 35 巻 6 号 p. 767-774
    発行日: 1995/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    肺癌脳転移症例の脳転移巣に対して手術を施行した30例を対象に, 臨床像を解析した. 原発巣手術後1カ月以上経過して脳転移を確認した症例 (以下rec群) 9例ならびに, 肺癌診断時あるいは原発巣手術後短期間 (1~2カ月) 内に脳転移巣を確認した症例 (以下, IV群) 21例である.30例中原発巣の肺癌手術を施行した症例は21例であった.予後良好の傾向が見られた因子は, 女性, rec群, 腺癌, 単発転移, 原発巣根治術, 原発巣と転移巣の根治術施行例であった.有意差を認めたものは1) 腺癌は大細胞癌に対して, 2) 原発巣手術後2年以上経過して脳転移巣を確認された症例は, 1年以内に確認された症例に対して, 3) 縦隔リンパ節転移のない症例は有る症例に対して予後良好であった.以上より同時発見の脳転移肺癌症例でもN0, N1症例に限れば, 原発巣及び脳転移巣に対して根治的切除が実施された場合には長期生存も期待できる.
  • 塩谷 清司, 山田 耕三, 尾下 文浩, 野村 郁男, 野田 和正, 山形 達史, 田尻 道彦, 石橋 信, 亀田 陽一
    1995 年 35 巻 6 号 p. 775-782
    発行日: 1995/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    最近約2年間に切除された肺野病変の中で, 病理学的に胸郭外腫瘍からの転移性肺腫瘍の診断を得た孤立性肺野病変9例について, 術前のthin-slice CT画像と病理所見を対比検討した. CT画像は, 術前2週間以内に通常の造影CT画像を撮影した後に, 非造影helical scan CTでひと吸気保持下に病変部を中心に撮影し, 2mm幅, 2mm間隔のthinsliceCT画像を再構成した. 描出条件は統一し, 画像所見と病理所見を対比するために切除肺はCT方向に割を入れた. 画像所見の中で, 内部構造は全例で充実型であり辺縁所見ではspiculaは22%にしか認めなかったが, notchingを67%に, 胸膜の陥入像を89%に認めた. 肺血管と病変との関係では, 全例で複数の肺血管の巻き込み像を認め, 画像的に原発性肺癌との鑑別は困難であった. 即ち, 孤立性の転移性肺腫瘍は, 既往歴や病理所見をあわせた総合的な診断が必要であった.
  • 岸槌 健太郎, 武島 幸男, 西阪 隆, 川野 亮二, 西田 俊博, 井内 康輝
    1995 年 35 巻 6 号 p. 783-788
    発行日: 1995/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    石綿肺に合併した悪性中皮腫の一剖検例を報告した. 症例は49歳, 男性で, 約35年間の造船業従事歴がある. 労作時の呼吸困難で発症し, 胸部X線像, 胸部CT像にて右胸膜悪性中皮腫が疑われ, 急速な経過をとり死亡した. 剖検にて悪性中皮腫, 上皮型と診断でき, 末梢肺には石綿肺の所見を伴った. エネルギー分散型微小X線装置が組み込まれた透過型電子顕微鏡を用いて肺内に沈着するアスベスト繊維を分析した結果, クリソタイルが74%, クロシドライトが24%を占めた. これまで, アスベスト曝露に関連する悪性中皮腫, 肺癌の発生に関してクリソタイルの関与は少ないと考えられてきたが, 本例はクリソタイルの発癌性が重視される稀な一例である.
  • 大野 彰二, 杉山 幸比古, 北村 諭, 斉藤 建
    1995 年 35 巻 6 号 p. 789-794
    発行日: 1995/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    症例は67歳, 男性. 高血圧症治療中に全身の表在リンパ節腫脹, 脾腫, 末梢血リンパ球増多を認め, 慢性リンパ性白血病と診断された. Modified CHOP療法を計6回施行した. その後, 腹部膨満感と呼吸困難を自覚するようになり胸部X線写真にて左肺門部に腫瘤影を認めるようになった. 気管支鏡検査にて, 左上幹に腫瘍の浸潤を認め, 喀痰細胞診と生検で小細胞癌と診断し, T2N3M1 (脳, 肝, 骨転移) stage IVであった. CDDP+VP-16の化学療法を施行したが, 肺炎とDICを合併し死亡した. 慢性リンハ性白血病は悪性腫瘍を合併しやすいとの報告があるが, 本邦での報告例は欧米に比して少なく, 肺癌との合併に関してはさらに少ないため報告する.
  • 森 公介, 岸本 卓巳
    1995 年 35 巻 6 号 p. 795-801
    発行日: 1995/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    症例は75歳女性. 全身倦怠感と下肢の浮腫にて近医を受診した. 心タンポナーデの状態が想定され, 血性心嚢液中に悪性細胞を疑われたため本院入院となった. 1回のCDDP30mgの心嚢内注入により, 心嚢液は消失した. 前医の細胞診を含め心嚢液の細胞診の検討ではclassIIであり, 心膜炎の原因は不明であった. また結核性心嚢炎も否定できないため, 結核の治療を行ったが, 8カ月間の外来通院中に胸部X線上心陰影が拡大し, 胸部MRIにて心外膜の肥厚と腫瘤を認め, Gaシンチで同部位に異常集積像を認めたため心膜悪性中皮腫を疑い, 確定診断および心膜開窓術を目的に手術を行った. その結果組織学的, 電顕所見より心膜原発の悪性中皮腫の確診を得た. また9種類のオンコジン産物とP53の検討を行いK-ras, H-ras, erb-B, p53は陰性であったがN-myc, C-myc, Cneu, Pan-ras, C-fos, C-ablの発現が認められ, これらのオンコジンが悪性中皮腫発症に何らかの関連がある可能性が示唆された.
  • 市橋 匠, 山村 浩然, 小林 弘明
    1995 年 35 巻 6 号 p. 803-808
    発行日: 1995/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    43歳の非喫煙女性が乳癌の根治術後に60Coによる放射線照射を受けた. 62歳時の健診での胸部レントゲン写真にて, 皮膚の毛細血管拡張でわかる照射野内の右上葉に異常影を発見された. その3年後に異常影は約2cmに増大した. CTでは胸膜直下に結節影を認め, 近傍の壁側胸膜の肥厚も認めた. 気管支鏡下擦過細胞診にて肺癌 (cT3N0M0 IIIA) と診断された. 後側方切開で開胸したが胸膜の癒着は認めなかった. 右上葉切除を行い, 病理学的には高分化乳頭状肺腺癌 (pT1N0M0 I) と判明した. 悪性腫瘍に対する放射線治療により誘発されたと考えられる悪性腫瘍の酒井らの条件は, 第1悪性腫瘍と異なる組織像の第2悪性腫瘍が, 放射線の照射野内の別の臓器に発生し, また潜伏期が5年以上にわたるものである. 本症例もほぼこの条件にあてはまるものと我々は考える.
  • 松本 勲, 斉藤 裕, 安井 正英, 増田 信二
    1995 年 35 巻 6 号 p. 809-814
    発行日: 1995/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    症例は35歳時に子宮筋腫を摘出された48歳の女性で, 検診にて胸部X線写真上両側肺野に多発性の腫瘤状陰影を指摘され来院した. 経過観察中, 多量の胸水が貯留・自然消退を繰り返した. 腫瘍は肺内に存在するものや肺外へ有茎性に突出するものがあり, 手術により計5個全てを摘出した. 以前摘出された子宮筋腫には組織学的に核の異型性や異常な核分裂像を認めなかった. 今回摘出した肺の腫瘍は, 組織学的にいずれも以前の子宮筋腫と同様の紡錘型の細胞からなり, 異型性や異常な核分裂像は認めず, 子宮筋腫の肺転移と診断した. このような例はこれまで少数例ではあるが報告されており, 女性の多発性肺腫瘍の場合には子宮筋腫の既往がないか確認することが必要である.
  • 1995 年 35 巻 6 号 p. 815-844
    発行日: 1995/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
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