肺癌
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38 巻, 3 号
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  • 別所 俊哉, 三好 新一郎, 前部屋 進自, 鈴間 孝臣, 平井 一成, 谷野 裕一, 吉増 達也, 有本 潤司, 内藤 泰顯, 上松 右二
    1998 年 38 巻 3 号 p. 205-213
    発行日: 1998/06/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    364例の肺癌肺切除例中, 術後に脳転移を来した症例は35例 (9.6%) で単発転移例が20例 (57.1%), 多発転移例が15例 (42.9%) であった.脳転移に対する手術は18例 (51.4%) に行われた.手術群の中間生存期間 (MST) は9.5ヵ月, 5生率は20.0%であった.一方非手術群ではMSTは4ヵ月で, 13ヵ月を越える生存例はなく, 予後不良であった.手術群における予後因子は, 脳以外の他臓器転移の有無であった.脳転移手術例中, 3年以上生存した長期生存例は5例 (27.8%) で, 肺切除後のDFIが平均30.6ヵ月と長く, 脳転移数は単発で, 全例脳以外に転移巣を認めなかった.また, このうち4例に脳転移に対する手術が2回以上行われていた.このような症例に対して積極的に手術を行うことが予後向上につながると考える.
  • 上原 忠司, 矢野 篤次郎, 横山 秀樹, 福山 康朗, 麻生 博史, 兼松 貴則, 寺崎 泰宏, 國仲 慎治, 一瀬 幸人
    1998 年 38 巻 3 号 p. 215-221
    発行日: 1998/06/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    80歳以上高齢者非小細胞性肺癌の自験例をretrospectiveに解析し治療方針について考察した.[対象] 1972年-1996年までの109例.男74, 女35.腺61, 扁35, 他13.臨床病期I30, II13, III34, IV32.[結果] 1期では18例 (58.1%) に手術 (区切3, 葉切15) が施行され, 手術関連死2例 (11.1%) を含めた5生率は48.6%であった.残り12例中6例に放治が行われたが, 5生例はなかった.III期の多くは (20例) 原発巣及び縦隔に対し放治が施行され, うち5例 (25%) は在院中に治療関連死亡した.放治群とその他11例 (化療3例, 対症療法2例, 無治療6例) の中間生存期間 (MST) に有意差は認めなかった.IV期は放治, 化療などの治療を行った群 (19例) と無治療群 (13例) のMSTに有意差はなかった.[結論] 1期は手術関連死を含めても約50%の5生率が得られるので手術が第一選択であるが, III・IV期はQOLを考慮して, 対症療法を主体とした治療を選択すべきである.
  • 宮澤 正久, 羽生田 正行, 小松 彦太郎
    1998 年 38 巻 3 号 p. 223-227
    発行日: 1998/06/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    症例は42歳男性.両下腿の浮腫, 四肢関節痛を主訴に他院を受診した.入院時現症では, 四肢関節痛および運動障害, 下腿の浮腫, 手指のばち状指がみられた.胸部X線上, 左上肺野の腫瘤影を認め, 気管支鏡検査の結果, S1+2原発の肺癌と判明した.骨シンチグラムでは, 両側対称性に下肢長幹骨および中足骨の異常集積を認めた.以上より, 肺癌に随伴した肺性肥大性骨関節症 (Pulmonary hypertrophic osteoarthropathy: PHO) と診断し, 胸腔鏡補助下左肺上葉切除術を施行した.四肢関節痛は術直後より消失, 術後5ヵ月目の骨シンチグラムでも, 術前にみられた異常集積は消失していた.
  • 廣瀬 敬, 富永 慶晤, 森 清志, 町田 優, 古田 雅也, 築山 巌
    1998 年 38 巻 3 号 p. 229-233
    発行日: 1998/06/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    下垂体転移による尿崩症を合併した肺腺癌の一例を報告する.症例は63歳の男性で, 1日4-5lの多飲.多尿を主訴に受診した.尿比重1.003, 尿浸透圧102mOsm/kg, 血清浸透圧298mOsm/kg, 血清ADH0.7pg/mlで, 飲水制限試験にて血清浸透圧313mOsm/kg, 尿浸透圧137mOsm/kgで, 尿浸透圧/血清浸透圧は1以下のままでかつADH値も0.8pg/mlと無反応であることより尿崩症と診断した.下垂体前葉ホルモン値には異常を認めなかった.血清CEA高値で, 胸部異常影を認め精査にて肺腺癌と診断した.頭部単純X線ではトルコ鞍底・鞍背の骨破壊像を認めた.頭部MRI (T1強調像) では下垂体後葉に腫瘤影と骨破壊像を認め, 同部の高信号の消失も認めた.肺腺癌の下垂体転移と診断し, トルコ鞍部に放射線照射後, シスプラチンとイリノテカンの抗癌剤治療を施行したが, 症状の改善および腫瘍の縮小は認められなかった.
  • 平原 浩幸, 相馬 孝博, 岩島 明, 塚田 博
    1998 年 38 巻 3 号 p. 235-240
    発行日: 1998/06/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    血清AFP値が3,871ng/mlと異常高値を示した原発性肺癌の75歳の男性に肺葉切除を行った.術後血清AFP値は正常となったまま, 6ヵ月後に胸部X線および胸部CTにて対側肺内転移を認めた.他に遠隔転移ないため, 再手術を行い転移巣を完全に切除した.病理所見では原発巣, 転移巣ともに低分化型腺癌であった.免疫染色でAFP産生が確認されたが, 転移巣は原発巣に比べAFP陽性細胞の割合が非常に少なかった.患者は再手術より10ヵ月現在再発なく生存中である.AFP産生肺癌であっても本例のように血清AFP値の推移が再発の予測にはならない症例があり, 全身CTによる監視が必要である.
  • 立花 秀一, 川上 万平, 中尾 圭一, 時津 浩輔, 佐々木 進次郎, 大槻 勝紀
    1998 年 38 巻 3 号 p. 241-247
    発行日: 1998/06/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    有効な加温を行い得たNeoadjuvant hyperthermia施行の胸壁浸潤型肺扁平上皮癌例において, 術後の病理組織学的所見からアポトーシスが疑われ, 温熱による抗腫瘍効果とアポトーシスの関連性を検討した. アポトーシスの同定にはTunel法を, アポトーシスの誘導因子としてFas抗原とFas ligandの発現を検討した. 有効な加温が行われた腫瘍中心部において, 壊死巣周辺部ではHE染色で, アポトーシスに特徴的な核クロマチン凝集を伴うNC比の小さい細胞が認められたが, この細胞の核はTunel法に強陽性であり, アポトーシスに陥った細胞と考えられた. 一方, 抗Fas抗体陽性細胞はviableな腫瘍部分に一方, 抗Fas ligand抗体は壊死巣のリンパ球に認められた. このことより, 温熱の殺細胞効果としてFas ligandを介するアポトーシスの関与が示唆された.
  • 羽田 均, 小泉 真
    1998 年 38 巻 3 号 p. 249-253
    発行日: 1998/06/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    症例は65歳, 女性.右肺上葉に3.5cm大の腺癌があり, 多発性の骨, 肺転移を伴っていた. 前頭骨腫大部分を生検し, 病理組織学的に検討した. 検体の骨および周囲の硝子化を示す線維化巣内に, N/C比の高い異型細胞が索状, 管腔状, 浸潤性に増殖しており, 肺腺癌の転移と診断された.免疫組織化学的にPDGF (Platelet Derived Growth Factor), TGFβ (Transforming Growth Factor) の検討を行った.腫瘍細胞の胞体にPDGFの陽性所見が認められたが, TGFβ は陰性であった. PDGFは造骨性細胞の増殖を刺激し, 腫瘍細胞の転移先での増殖を促進する効果があると考えられている. 肺腺癌の造骨性転移にもPDGFが関与している可能性が示唆された.
  • 辻 興, 平野 隆, 河手 典彦, 小中 千守, 海老原 善郎, 加藤 治文
    1998 年 38 巻 3 号 p. 255-260
    発行日: 1998/06/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    52歳男性. X線画像診断, X線透視下擦過細胞診にて右上葉原発小型肺腺癌 (cTIN0M0-Stage I A) と診断され, 手術目的にて外科紹介となる.術前気管支鏡検査にて気管分岐部から右上中間幹分岐部, 左上下幹分岐部にかけて粘膜の発赤, 浮腫状変化を認め, 同部生検の結果, 粘膜下リンパ管内の癌細胞侵襲が認められ, 手術適応無しと判断された。細胞間接着因子E-カドヘリン及び細胞膜裏打ちタンパク (α-カテニン, β-カテニン, プラコグロビン) の発現を免疫組織化学染色にて評価したところ, 本症例がE-カドヘリンを介する細胞間接着能低下症例であることが推測された (裏打ちタンパク全ての発現低下を認めた). 擦過細胞像は孤立細胞が目立ち, 細胞集塊は重積性に乏しく, 細胞間の接着面が狭く, 細胞間結合性に乏しかった。末梢型小型肺腺癌であっても術前気管支内視鏡所見を慎重に検討する必要があると考える.
  • 大西 康司, 平木 章夫, 上岡 博, 安藤 陽夫, 清水 信義, 原田 実根
    1998 年 38 巻 3 号 p. 261-265
    発行日: 1998/06/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    症例は57歳, 男性. 健診にて胸部異常陰影を指摘され近医受診. 胸部CT検査にて右S3に直径2cmの結節影を認めたため, 精査・加療を目的に当院第2外科に入院し, 経気管支肺生検で中等度分化の肺腺癌と診断された。胸部CT検査で縦隔リンパ節腫大を認めたため, 縦隔鏡を施行し7番リンパ節の生検を行ったところ, 小細胞癌と診断され, 同時性肺多発癌の治療のため当科に転科となった。シスプラチン, エトポシドと胸部照射の同時併用療法によって, 縦隔の小細胞癌は91%, 肺野の腺癌は43%の縮小が得られ, 胸腔鏡下でS3の切除と縦隔のリンパ節郭清を行った. 縦隔のリンパ節は組織学的にComplete response (CR) であった. 同時性肺多発癌の中でも治療の対象となるような小細胞癌と非小細胞癌の組み合わせは極めて稀な症例と考えられ, また興味ある治療反応性を示したので報告した.
  • 田中 真人, 大多和 正樹, 蝶名林 直彦, 青島 正大, 関口 建次, 大岩 孝誌
    1998 年 38 巻 3 号 p. 267-273
    発行日: 1998/06/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    過去3年間に, 慢性腎不全 (CRF) 維持透析中のfollowupで発見された原発性肺癌を3例経験した. 症例1は, 60歳時より維持透析中の63歳女性. 右肺腺癌で右上葉切除術が施行された. p-T2NOMO-IBで, 術後3年非担癌生存中である. 症例2は, 47歳時より維持透析中の59歳女性. 右肺腺癌で右上・中葉切除術が施行された. 術後肺瘻のため第1病日に再開胸した. p-T2NOMO-IBで, 術後1年6ヵ月非担癌生存中である. 症例3は, 61歳時より維持透析中の62歳男性. 閉塞性肺炎を合併した左肺扁平上皮癌で, 肺転移もあり, 放射線療法が施行されたが, 半年後に多発肺転移で死亡した. 以上より, 周術期管理を慎重に行えば, 透析患者の手術適応や術式選択は非透析患者と同様にしても構わないと思われた. また, 透析患者に対する化学療法症例蓄積によるprotocolの確立が必須と思われた.
  • 渡部 克也, 林 康史, 前原 孝光, 諸星 隆夫, 今田 敏夫
    1998 年 38 巻 3 号 p. 275-278
    発行日: 1998/06/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    症例は73歳男性. 健康診断の胸部X線写真にて気腫肺の診断で経過観察中であったが, 右上肺野に腫瘤状陰影を指摘された. その後の胸部CTでは右上葉およびS6の多数の嚢胞とともに右肺S2領域に存在する辺縁明瞭な充実性腫瘤を認められた. この胸部CTを以前のものと比較したところ, 2ヵ所の肺嚢胞が新たに充実性腫瘤に置き換わっていた. 腫瘤は嚢胞壁より発生し, 嚢胞の内腔を満たすように発育していったものであると思われた. 比較的急速に腫瘤が発育したことより悪性を疑い開胸手術を施行した. 手術所見は, 嚢胞周囲に炎症性と思われる強固な胸膜癒着を認め, 術中迅速診断にて嚢胞内に壊死物質と扁平上皮癌を認めたため右上葉切除 (R2a) を行った. 肺嚢胞性疾患患者に対しては肺癌の合併を念頭に置き, CTを中心とした画像診断による定期的な経過観察を行い, ひとたび肺癌を疑った場合には開胸肺生検をはじめとした積極的な検索が必要であると思われた.
  • 1998 年 38 巻 3 号 p. 279-293
    発行日: 1998/06/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
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