肺癌
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39 巻, 7 号
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  • 横山 晶
    1999 年 39 巻 7 号 p. 943-953
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    新規抗癌剤である塩酸ゲムシタビンは核酸の誘導体でdeoxycytidineに拮抗してDNA合成を阻害する代謝拮抗剤である.
    本剤の非小細胞肺癌に対する臨床試験は国内外で実施され, 単独投与では20%以上の高い奏効率が得られた.また, 主な毒性は骨髄抑制であり, 非血液毒性は軽微で忍容性の高い薬剤であることが示された。更に, 非小細胞肺癌に対する化学療法の中心的薬剤であるシスプラチンとの併用療法では更に良好な成績が得られた.
    比較試験では, 本剤は単剤で既存の代表的併用レジメンと同等の効果を有し, 更にシスプラチンとの併用では既存の併用療法を上回ることが示された.
    本剤は, 他の非小細胞肺癌治療薬と異なる作用機序と高い忍容性を有する特徴から他剤との併用により更に有用な新しいレジメンの開発に用いられると考えられる.
    今後, シスプラチンとの併用のみならず他の新薬との併用における本剤の有効性を検討することは意義が高いと考えられる.
  • 竹中 圭, 吉村 明修, 岡野 哲也, 清家 正博, 神尾 孝一郎, 植松 和嗣, 渡辺 秀一, 長谷川 浩一, 渋谷 昌彦, 工藤 翔二
    1999 年 39 巻 7 号 p. 955-962
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    特発性間質性肺炎 (IIP) 合併肺癌症例における肺癌治療によるIIPの急性増悪についての検討を行った.化学療法後23例中2例 (8.7%), 外科療法後14例中2例 (14.3%), 放射線療法後8例中2例 (25%) にIIPの急性増悪が認められた.治療前の検査所見で血清CRP値が, 急性増悪群は5.12±2.27mg/d1, 非増悪群は2.26±2.29mg/d1で急性増悪群が有意に高値であった (P<0.05).一方, ESR, LDH, WBC, PaO2,%VCには有意差は認められなかった.切除肺におけるIIPの活動性の組織学的評価で, 急性増悪例と非増悪例に明らかな差は認められなかったが, 急性増悪例に組織学的に活動性と思われる症例が存在した.肺癌治療後IIPが急性増悪した6例中5例は3ヵ月以内に死亡した.IIP合併肺癌症例の肺癌治療は, 新しいIIPの活動性のマーカーや経気管支肺生検などを用い, IIPの活動性のより正確な評価の上に行うべきと考えられた.
  • 特にIA期, IB期に関して
    杉 和郎, 金田 好和, 本郷 碩, 宮下 洋, 小田 達郎, 江里 健輔
    1999 年 39 巻 7 号 p. 963-968
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    新TNM分類 (1997年) の妥当性を評価し, 問題点を検討することを目的とした.1980年以降, 切除された非小細胞肺癌1034例のうち, TNM因子の評価が可能な908例を対象とした.旧分類による5生率は1期70.7%, 1期45.6%, IIIA期24.6%, IIIB期0%, IV期13.0%であったが, 新分類ではIA期71.6%, IB期68.5%, HA期50.0%, IB期36.8%, IIIA期25.7%, IIIB期4.2%, IV期13.0%であった.新分類では病期が細分化されたが, IIA期とIIB期, IIIA期とIIIB期との間以外に有意差を認めなくなった.症例数が多いIA期とIB期に関しては, IA期のT因子を2cm未満, IB期のT因子を2cm以上とすると, それぞれの5生率は82.7%, 70.3%となり (p=0.04), より予後を反映した分類になる考えられた.
  • 許 順, 小林 哲
    1999 年 39 巻 7 号 p. 969-974
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    [目的] 原発性肺癌患者の血清sFas抗原を測定し, その臨床的意義を検討した.[方法] 未治療原発性肺癌45例, 扁平上皮癌 (sq) 22例, 腺癌 (ad) 17例, 小細胞癌 (sm) 6例を対象とし, 健康成人15例をcontrolとした.静脈分離血清を得て, sandwich法で, sFasを測定した.[結果] 健康controlに比べて, 肺癌全体の血清sFasが有意に上昇していた.各組織別や各病期別においても, 血清sFasが有意に上昇していた.また, IV期の血清sFasが他期に比べて, 有意に上昇していた.[結論] 肺癌患者では, 血清sFsaが健康対照に比べて有意に上昇し, また, その上昇が肺癌の担癌状態によく関わっていると考えられた.特に, IV期 (転移状態) においてその上昇は著しかった.
  • 真庭 謙昌, 安宅 啓二, 大原 忠敬, 清岡 一恵, 神吉 真紀子, 大北 裕, 濱田 洋文, 永田 正男, 横野 浩一
    1999 年 39 巻 7 号 p. 975-980
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    [目的] p53異常のある癌細胞で特異的に増幅するアデノウイルスを用いることで, 肺癌症例に対するターゲッティングによる遺伝子治療の確立を目的として, 基礎的検討を行った。[方法] ターゲッティングにAd5d1XウイルスからE1B55Kを欠失させたAxE1AdBを用いた。ターゲッティングの対象としてヒト肺癌細胞のうちp53変異のない小細胞癌SBG3, p53変異をもつ小細胞癌SBC-5, 腺癌PC-3, 扁平上皮癌EBC-1を用いた.各細胞にAxE1AdBを感染させ, 4日間培養後に細胞死を評価した.[結果] SBC-3ではウイルスの導入の有無で細胞死には変化は認められなかった.SBC-5, PC-3, EBC-1ではMOI5以上で細胞増殖が抑制された.[結論] AxE1AdBがp53異常をもった肺癌細胞に作用し細胞障害をもたらすことが証明された.p53異常をもつ腫瘍細胞に対してのターゲッティングによる遺伝子治療の可能性が示唆された.
  • 藤井 宏, 高倉 俊二, 西村 尚志, 長谷川 幹, 岡崎 美樹, 片上 信之, 石原 享介, 梅田 文一
    1999 年 39 巻 7 号 p. 981-985
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    縦隔腫瘍に対する超音波ガイド下針生検 (UGNB) の有用性を当科入院症例で検討した.対象は1995年4月から1998年4月の間に当科に初回入院した縦隔腫瘍の31例.病変が超音波で確認されたのはうち18例.前縦隔が最も多く15例であった.18例中3例では安全な穿刺が困難と判断し, UGNBを行わなかった.各生検時の穿刺回数は平均3.2回であった.UGNBを施行した15例中, 確定診断が得られた症例は9例 (60.0%) であった.悪性リンパ腫と胸腺癌の各1例では吸引細胞診でもclass Vと診断された.嚢腫の3例と胸腺腫7例中3例では, UGNBによる確定診断は得られなかった.合併症は2例で生じたが, 一過性なものであった.結論として, 嚢腫や胸腺腫の一部では診断がつかない場合もあったが, UGNBは概して安全で容易に施行でき, 有用と考えられた.
  • 土田 正則, 大和 靖, 相馬 孝博, 吉谷 克雄, 青木 正, 渡辺 健寛, 橋本 毅久, 篠原 博彦, 林 純一
    1999 年 39 巻 7 号 p. 987-994
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    間質性肺炎を合併した肺癌切除例の周術期管理の問題点を明らかにするために自験例8例についてレトロスペクティブに検討した.背景では男性の重喫煙者症例が多く, 肺活量, 1秒率は保たれていたが拡散機能の低下を認めた.術前間質性肺炎は明らかな活動期の症例はなかった.手術は標準手術4例, 拡大手術2例, 縮小手術2例で手術侵襲と術後合併症の間に関連を認めなかった.8例中1例で術後間質性肺炎の急性増悪と考えられる症例を経験したがステロイドパルス治療で改善した.間質性肺炎の急性増悪を術前状態, 手術侵襲から予測する事は困難と考えられた.特発性間質性肺炎を合併した肺癌の手術にあたっては 1) 間質性肺炎の活動性評価 2) 症例に応じ適切な術式を選択する 3) 使用酸素濃度, 投与量は最小限にする 4) 術後呼吸状態の変化を早期にとらえることが重要である.以上に留意し積極的に手する事が間質性肺炎を合併した肺癌の治療上重要である.
  • 山崎 正弘, 武島 幸男, 藤井 誠志, 井内 康輝
    1999 年 39 巻 7 号 p. 995-1000
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    外科的切除を行った最大径3cm以下の末梢肺に発生した腺癌107例を対象として, Noguchiらの分類に従って組織学的構築に基づいた分類を行い, 年齢, 性別, 病期, リンパ節転移の有無などの臨床病理学的諸因子ならびにp53蛋白の発現, Ki-67のlabeling index (L. I.) からみた増殖能との関連を探ることを試みた.Noguchiらの分類によるA, B, C, D, E, F型の症例数はそれぞれ4, 19, 46, 19, 8, 11例であった.組織型と年齢に相関はなかったが, 性別ではD型では圧倒的に男性が多いという特徴があった.リンパ節転移は, A, B型には認めず, C型には28%, D, E, F型ではそれぞれ53%, 50%, 45%に認めた.p53蛋白発現の陽性例はA, B, C, D, E, F型でそれぞれ0, 26, 43, 58, 63, 45%であった.Ki-67のL. I.の各組織型別の平均値はA, B, C, D, E, F型でそれぞれ3.4, 5.0, 12.4, 29.4, 22.8, 17.7%であった.
  • 良元 章浩, 辻 博, 高桜 英輔, 渡辺 俊雄, 笠原 寿郎, 藤村 政樹
    1999 年 39 巻 7 号 p. 1001-1005
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    症例は81歳男性で, 湿性咳嗽にて受診し, 胸部レントゲン写真上左上肺野の異常陰影を指摘され入院となった.胸部CT上左S1+2に多房性の腫瘤を認めた.内部に空洞を伴い周囲に複数の小転移巣を伴っていた.小転移巣の1つにも空洞がみられた.喀痰細胞診, 胸水細胞診にてclassV小細胞癌の所見が得られた.経気管支肺生検での病理組織所見では, 小型で濃染性の核を有する細胞が多く, 細胞質は狭小であり, 小細胞癌と診断された.原発性肺癌での空洞形成率は, 2~16%とされていて稀ではないが, ほとんどは扁平上皮癌, 腺癌であり, 小細胞癌という報告はほとんどない.本症例のように, 多房性の腫瘍で, 原発巣及び転移巣に空洞形成を呈した肺小細胞癌は, 貴重な症例と考えられた.
  • 川上 恭右, 美濃 一博, 原 祐郁, 杉山 茂樹, 北川 正信, 三崎 拓郎
    1999 年 39 巻 7 号 p. 1007-1012
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    症例は65歳, 女性.以前より拡張型心筋症・心室頻拍にて治療中であったが, 痰・呼吸困難にて発症, 増悪し入院した.肺炎として治療後左上肺野に径1.5cm大の結節影が残るため精査したところ, 左肺S1+2aより腺癌が検出された.左肺S8にも小結節影がみられたが他の臓器に異常所見がなく, 左肺の原発性肺癌として手術を施行した.術中迅速診にて左肺S8の病変はサルコイド結節と診断され, サルコイドーシスに肺癌の合併したものと考えられたため, 左肺上区域切除術を施行した.
    拡張型心筋症様の病態を示した心臓サルコイドーシス, 肺サルコイドーシス, 肺癌の合併はきわめて稀であり報告した.また, 本症例のような他病変合併の肺癌においては, 縦隔鏡の応用や術中迅速診断の施行によりover stagingを避けるべきであると思われる.
  • 湯浅 洋司
    1999 年 39 巻 7 号 p. 1013-1016
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    症例は50歳男性.前胸部膨隆を主訴に当院を受診した.右前胸部に直径10cmの膨隆があり, 一血液検査では炎症性反応が亢進していた.胸部X線写真で右肺に浸潤影を, CTで肺から胸壁にかけて直径10cmの腫瘤陰影を認めた.胸壁浸潤肺癌が疑われたが, 気管支鏡下擦過細胞診でも, 経皮穿刺吸引, 生検でも癌細胞を認めず, グラム染色で放線菌と思われる菌体を認めた.放線菌症疑いでペニシリンを投与したところ, 約1ヵ月で腫瘤陰影は消失した.胸壁腫瘤の鑑別診断として, 胸壁浸潤肺癌とともに, 放線菌症も考慮に入れるべき疾患である.
  • 高橋 伸宜, 岩神 真一郎, 蓮沼 紀一, 福地 義之助, 宮元 秀昭, 植草 利公
    1999 年 39 巻 7 号 p. 1017-1023
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    症例は24歳, 男性.健診で胸部X線上左中肺野に腫瘤影を指摘された.前縦隔に径8cm大の腫瘍を認め, AFP, LDHが高値を示した事より, 縦隔胚細胞性腫瘍と診断した.当初より著明な血小板減少を伴っており, 治療前に腫瘍の組織学的診断は得られなかった.また骨髄穿刺, 生検を行ったが, その原因は究明し得なかった.CDDP, VP-16, BLMによる化学療法を3クール施行後, AFP, LDH, 血小板数は正常化し, 根治を目的に腫瘍摘出術を施行した.術後, 末梢血中に腫瘍細胞が出現し, 骨髄生検, 末梢血の腫瘍細胞の表面マーカーより急性巨核芽球性白血病 (以後M7と略する) と診断した.化学療法, 骨髄移植を行ったが, 縦隔腫瘍発見後約11ヵ月で死亡した.近年縦隔原発胚細胞性腫瘍と血液悪性腫瘍の合併が独立した疾患概念として提唱されているが, 本邦ではM7との合併例は本例を含め2例と非常に稀であり, 貴重な症例と考えられた.
  • 遠藤 正浩, 宮本 良文, 吉村 雅裕, 高田 佳木, 坪田 紀明, 指方 輝正
    1999 年 39 巻 7 号 p. 1025-1030
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    比較的稀な縦隔原発の脂肪肉腫の1例を経験し, その術前診断にCT及びMRIが有用であったので, 文献的考察を含め報告する.症例は, 胸部異常影と嗄声を主訴に来院した59歳男性.胸部単純X線写真で右縦隔影の拡大と気管の左方への圧排像を認めた.CTでは, 上縦隔から右頚部に進展するほぼ脂肪濃度の腫瘤を認め, 一部鎖骨下の領域が不規則に造影される軟部濃度を呈していた.MRIでは, CTで脂肪濃度を呈していた領域の気管背部の領域は, 正常の脂肪とほぼ同程度の信号強度を呈していたが, 頚部の部分はそれよりT1, T2強調像共に僅かに信号強度が低く, 脂肪含有量が少ないものと考えられた.鎖骨下の領域は, T2強調像が著明な高信号で, CTと合わせて粘液腫状の成分が示唆された.摘出標本は画像所見をよく反映し, 病理組織学的に高分化型と粘液腫状型の混在した脂肪肉腫と診断された.
  • 1999 年 39 巻 7 号 p. 1031-1057
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
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