目的と対象. 原発性肺癌手術例のうち, 臨床病理学的に完全切除例と診断された同一肺葉内転移 (pm 1) の27例と他肺葉内転移 (pm 2) の7例の計34例について, 種々の臨床病理学的因子別にみた再発ならびに予後についての検討を行い, 肺内転移例に対する外科的治療の有用性について考察した.
結果. 肺内転移陽性肺癌全体の5年生存率は44.4%で, このうち, pm 1例が54.8%と良好であったが, pm 2例では5年生存は認めず, 3年生存で28.6%と有意に予後不良であった (p=0.009). 一方, 5年無再発生存率 (DFS) は肺内転移例全体では28.9%, pm 1例が33.3%であったのに対し, pm 2例では2年DFSで14.3%であった. pm 1例の臨床病理学的因子別 (組織型, 転移個数, 脈管侵襲度, 肺内転移因子を除いたT因子, N因子) にみた5年生存率ならびに多変量解析結果では, N因子が予後に最も影響し, N陰性例 (12例) の5年生存率が74.1%であったのに対して, N陽性例 (15例: N1: 2例, N2: 9例, N3: 4例) は38.9%と有意に予後不良であった (P=0.005). 5年DFSのN因子別検討では, N陰性例の66.7%に対し, N陽性例では3年DFSが3.7%ときわめて低かった (p=0.0002). 術後再発は, pm 1の27例中17例 (62.9%) に生じ, 初再発臓器は肺が最も多かった. N因子別にみた再発率は, N陰性例が12例中4例 (33.3%) であったのに対し, N陽性例は15例中13例 (86.6%) ときわめて高い結果を示した.
結論. 以上の結果から, 肺内転移症例のうち, 外科的治療が最も奏功し, 根治が得られる可能性が高いのは, pm1例のリンパ節転移陰性例であった. リンパ節転移陽性例では, 臨床病理学的に完全切除と判断されても高い術後再発率を示し, 外科的治療による局所制御効果は少ないことが示唆された.
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