肺癌
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43 巻, 6 号
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  • 三好 新一郎
    2003 年 43 巻 6 号 p. 675-685
    発行日: 2003/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    1994年の本邦における肺癌手術死亡は手術例7099例中1.3%で, うち呼吸器系合併症によるものが51.6%と大半を占めていたことから, 呼吸器系合併症を予測するための心肺機能評価についてこれまでの研究をreviewした. 1950~1970年代はスパイログラフィーを用いた研究が多数なされ, FEV1, MWなど閉塞性肺機能障害を表すパラメーターが有用とされた. また, 同じ頃一側肺動脈閉塞試験が導入され肺全摘術の適応基準が設定された. 1970~1980年代に入ると肺換気血流シンチグラフィーや区域数・亜区域数を用いて術後の肺機能諸量を計算にて求めて術後実測値との相関性が検討され, 全摘術後, 肺葉切除後ともに高い相関性が示された. 予測術後FEV1は術後呼吸器系合併症の予測に極めて有用であったが術後死亡の予測は困難であった. 1980年代には運動負荷試験中のVO2を測定する方法が導入され, VO2maxやempirical anaerobic thresholdが術後死亡の予測に有用であることが示された. 今後は術前心肺リハビリの導入により呼吸器系合併症, 合併症死の予防を試みる必要があると思われた.
  • 塩野 知志, 永井 完治, 西村 光世, 吉田 純司, 高持 一矢, 船井 和仁, 萩原 優, 似鳥 純一, 石井 源一郎, 西脇 裕
    2003 年 43 巻 6 号 p. 687-690
    発行日: 2003/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    目的. 画像診断を含めた諸検査から, 術前の胸膜播種の予測因子を分析した. 方法. 過去10年間に当院で手術を行われた原発性肺癌のうち胸部CTおよび検査データの評価可能な1469例を対象とした. これらのうち胸膜播種と診断されたのは48例 (3%) であった. 1469例の患者背景, 術前CEA値, 手術所見, 病理組織所見等について検1討した. 結果. 胸膜播種例は女性 (P=0.009), 腺癌 (P=0.004), c N1, 2 (P>0.001), CEA 10ng/ml以上 (P=0.016) の症例に有意に多く認められた. また, 胸膜播種例は全例, 術前のCT所見, 術中所見では腫瘍はP1-3であった. 結論. 胸膜播種例は全例P1-3で, 画像上胸膜から離れた肺癌では胸膜播種を認めた症例はなかった.
  • 川野 亮二, 深井 隆太, 横田 俊也, 池田 晋悟, 羽田 園城
    2003 年 43 巻 6 号 p. 691-697
    発行日: 2003/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    目的と対象. 原発性肺癌手術例のうち, 臨床病理学的に完全切除例と診断された同一肺葉内転移 (pm 1) の27例と他肺葉内転移 (pm 2) の7例の計34例について, 種々の臨床病理学的因子別にみた再発ならびに予後についての検討を行い, 肺内転移例に対する外科的治療の有用性について考察した. 結果. 肺内転移陽性肺癌全体の5年生存率は44.4%で, このうち, pm 1例が54.8%と良好であったが, pm 2例では5年生存は認めず, 3年生存で28.6%と有意に予後不良であった (p=0.009). 一方, 5年無再発生存率 (DFS) は肺内転移例全体では28.9%, pm 1例が33.3%であったのに対し, pm 2例では2年DFSで14.3%であった. pm 1例の臨床病理学的因子別 (組織型, 転移個数, 脈管侵襲度, 肺内転移因子を除いたT因子, N因子) にみた5年生存率ならびに多変量解析結果では, N因子が予後に最も影響し, N陰性例 (12例) の5年生存率が74.1%であったのに対して, N陽性例 (15例: N1: 2例, N2: 9例, N3: 4例) は38.9%と有意に予後不良であった (P=0.005). 5年DFSのN因子別検討では, N陰性例の66.7%に対し, N陽性例では3年DFSが3.7%ときわめて低かった (p=0.0002). 術後再発は, pm 1の27例中17例 (62.9%) に生じ, 初再発臓器は肺が最も多かった. N因子別にみた再発率は, N陰性例が12例中4例 (33.3%) であったのに対し, N陽性例は15例中13例 (86.6%) ときわめて高い結果を示した. 結論. 以上の結果から, 肺内転移症例のうち, 外科的治療が最も奏功し, 根治が得られる可能性が高いのは, pm1例のリンパ節転移陰性例であった. リンパ節転移陽性例では, 臨床病理学的に完全切除と判断されても高い術後再発率を示し, 外科的治療による局所制御効果は少ないことが示唆された.
  • 桜井 裕幸, 鈴木 健司, 渡辺 俊一, 浅村 尚生, 土屋 了介
    2003 年 43 巻 6 号 p. 699-703
    発行日: 2003/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    目的. 片肺全摘術後に対側肺切除術が施行された症例につき, 対側肺切除の妥当性を検討した. 方法. 1987年から2002年までに施行された片肺全摘術383例中, その術後経過中に対側肺切除が施行された4症例 (1%) を対象とし, 腫瘍の組織型・病期, 対側肺腫瘍切除前後の呼吸機能, 全摘術後対側肺腫瘍出現までの期間, 対側肺切除術式, 術後合併症, 再発・予後につき調査した. 結果. 片肺全摘術時の腫瘍の組織型は腺癌2例, 扁平上皮癌1例, 腺様嚢胞癌1例で, 病期はIA期1例, IIB期2例, rv期1例であった. 片肺全摘後対側肺腫瘍出現までの期間は7~53ヶ月, 平均25.5ヶ月であった. 対側肺腫瘍は全例肺野末梢に存在し, 術式は全例肺部分切除であった. 術後合併症を2例に認め, いずれも呼吸器系合併症で, 1例は術後5ヶ月で呼吸不全死した. 再発は2例に認め, 1例は気管再発に対し, ステント留置および放射線治療にて術後78ヶ月担癌生存中である. 他の1例は術後63ヶ月で癌死した. 結論. 片肺全摘術後の対側肺切除は, 異時性原発が疑われる腫瘍が末梢に存在し, かつ小型腫瘤で, 肺部分切除で呼吸機能の低下を示さず, 治癒切除が望める場合に治療の選択肢の1つとみなされた.
  • トレッドミル運動負荷試験による検討
    原田 洋明, 西尾 渉, 岡田 守人, 阪本 俊彦, 内野 和哉, 坪島 顕司, 松岡 英仁, 坪田 紀明
    2003 年 43 巻 6 号 p. 705-710
    発行日: 2003/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    目的. われわれは1992年以来, 肺葉切除耐術者における末梢の小型非小細胞肺癌 (径2cm以下) に対して積極的な縮小手術 (拡大区域切除) を実施し, 本術式が標準手術 (葉切除) に比して予後を損なわないこと, 肺機能低下の軽微なことを報告してきた. しかしながら呼吸機能温存の評価には安静時における肺気量のみでは不十分と考え, 運動負荷時の酸素摂取量を指標とした耐運動能を検討した. 対象と方法. 縮小手術が施行された拡大区域切除術群の46例と, 肺葉切除術群の156例を対象とし, 術前と術後2か月目にトレッドミル運動負荷試験による耐運動能の変化を比較した. 結果. 拡大区域切除術は術後, 術前値の872±0.2%を維持したのに対し, 肺葉切除は78.8±0.1%に低下した (p<0.0001). 担癌肺葉別の検討でも拡大区域切除術は有意に良好な術後耐運動能を保持した. 結論. 拡大区域切除術は術後の耐運動能に与える影響が葉切除にくらべて軽微な術式であることが判明した.
  • 秋山 博彦, 岡田 大輔, 榎本 豊, 西村 仁志
    2003 年 43 巻 6 号 p. 711-714
    発行日: 2003/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    背景. 肺癌手術時に発見された部分肺静脈還流異常の報告例はまれである. 症例. 症例は76歳の女性で前医にて胸部異常影を発見され, 肺腺癌と肺結核症の診断で当センターに紹介された. 術前検査ではシャント性疾患を疑う所見はなかった. 右肺上葉切除術と縦隔リンパ節郭清 (ND2a) を計画して手術を行ったが, 手術中に上葉肺静脈と中葉静脈の一部 (V4) が奇静脈に還流する部分肺静脈還流異常を発見した. 術式は予定通り安全に施行でき, また, 手術後の経過も特に問題はなかった. 術後に施行した肺動脈造影検査では, 心房中隔欠損症や対側の肺静脈還流異常は認めなかった. 結論. 肺癌手術時に発見される部分肺静脈還流異常はまれであるが, このような肺血管の還流異常, 走行異常等を念頭に置くことが, 肺切除に関する術式の決定, 安全な手術および術後管理に重要である.
  • 宇野 友康, 望月 博史, 岡田 恒人, 吉澤 弘久, 鈴木 栄一, 下条 文武
    2003 年 43 巻 6 号 p. 715-719
    発行日: 2003/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    背景. アミラーゼ高値を示す悪性腫瘍は, 肺癌, 悪性リンパ腫, 子宮癌などでみられる. 肺癌においては, アミラーゼを産生する肺癌は比較的頻度が低いとされている. 症例. 症例は, 76歳男性. 腹痛, 背部痛を主訴に受診し, 胸部単純写真で両肺野に異常陰影を認め, 血清アミラーゼ高値のため精査目的で入院. 急性膵炎が疑われたが, 膵, 唾液腺疾患を示唆する所見はみられなかった. 気管支鏡下擦過細胞診で, adenocarcinomaを検出し, 更に抗ヒト唾液腺アミラーゼ抗体で染色したところ陽性であった. 化学療法を行ったが奏効せず, 3ヶ月の経過で死亡した. 剖検を行い, 中分化乳頭状腺癌と診断し, 免疫組織化学染色でアミラーゼの局在を再確認した. 結論. 血清アミラーゼ値の上昇をみた際には, アミラーゼ産生肺癌も鑑別診断として考慮する必要があると考えられた
  • 金光 真治, 高尾 仁二, 日置 巌雄, 矢田 公, 安井 浩樹
    2003 年 43 巻 6 号 p. 721-724
    発行日: 2003/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    背景. 髄外性形質細胞腫は形質細胞由来の比較的希な腫瘍性疾患であり, 好発部位は口腔および上気道に集中しており, 縦隔に発生するものは極めて希なものである. 今回我々は縦隔に発生した髄外性形質細胞腫の1切除例を経験したので報告する. 症例. 65歳, 男性. 健診にて胸部レントゲンの異常陰影を指摘され, 胸部CTにて腫大した縦隔リンパ節を認めた. 気管支鏡下の生検では確定診断がつかず, 腫瘍摘出術を施行した. 腫瘍は40×45mm大で奇静脈を圧排していた. 病理組織では形質細胞のびまん性増生を認め, 免疫染色でIgG, kappa型の単クローン性を示し, Cyclin D1が陽性であり, 髄外性形質細胞腫と診断した. 結論. 縦隔に発生した髄外性形質細胞腫は文献的にみても数少なく極めて希な症例であると考えられた. 切除術後9ヶ月の現在, 再発及び多発性骨髄腫への転化は認めていない.
  • 阪本 仁, 岡本 俊宏, 水野 浩
    2003 年 43 巻 6 号 p. 725-728
    発行日: 2003/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    背景. 腎細胞癌の肺転移の頻度は高いが, 腎摘出術後10年以上を経過してからの遅発性肺転移例の報告は少ない. 症例. 63歳, 男性.50歳時に腎細胞癌に対する右腎摘出術を施行した.13年後に胸部X線写真, CTにて両肺胸郭内に多発陰影を認めた. 二期的手術にて両側胸膜, 肺内転移巣 (7つ) をすべて切除しえた. 切除標本にて腎細胞癌と診断された. 結論. 本症例は腎細胞癌摘出後に遅発性に肺転移が発生した希少な症例と考えられた.
  • 永島 明, 川崎 雅之, 綿屋 洋, 吉松 隆, 大崎 敏弘
    2003 年 43 巻 6 号 p. 729-733
    発行日: 2003/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    背景. いわゆるbenign metastasizing leiomyoma (BML) は稀な疾患であり, また散見される症例報告もその長期の経過を明らかにしたものは少ない. 診断後長期に経過を観察し得た症例を経験したので報告する. 症例. 症例は39歳女性. 37歳で子宮筋腫のため単純子宮全摘術を受け, 2年後胸部レントゲン写真で肺の多発結節影を指摘された. 胸腔鏡下にその一部を摘出し, BMLと診断された. 術後6ヵ月間gonadotropin releasing hormone (GnRH) アゴニストである酢酸ブセレリンを投与したが効果なく, 肺腫瘍はわずかに増大した. その後無治療で経過観察していたが, ゆっくりではあるが徐々に増大し, 新たな腫瘍の発現も認めた. 5年後にGnRHアゴニストである酢酸リュープロレリンを6回投与し, 肺腫瘍は明らかに縮小を認めた. その後再びわずかに増大傾向を示しているが, 診断後6年6ヵ月現在症状なく, 無治療にて経過観察中である. 結論. 閉経前の患者ではGnRHアゴニストはBMLの治療選択肢の1つと思われた.
  • 森川 洋匡, 平井 隆, 山中 晃, 小西 二三男
    2003 年 43 巻 6 号 p. 735-738
    発行日: 2003/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    背景. 40歳未満の若年者原発性肺癌は稀である. その頻度は全肺癌の3%前後に過ぎないとされている. 今回我々は18歳女性の肺癌症例を経験したので報告する. 症例. 18歳女性. 検診で胸部X線上右肺野に異常陰影を指摘された. 気管支鏡検査で確定診断が得られなかったため, 診断, 治療目的に手術を施行した. 術中迅速診断で肺癌の診断が得られたため右上葉切除術を施行することとなった. 肺胞壁を置換性に進展する高分化型乳頭状腺癌の所見が得られた. 病理病期はpT1N0M0 Stage IAであった. 術後1年経過した現在再発は認められない. 結論. 若年者であっても疑わしい症例では積極的に検査を行い, 診断がつかない場合は開胸生検を施行する必要があると考えられた.
  • 沢田 茂樹, 森山 重治, 渡辺 洋一, 久保 雅俊, 市原 周治, 青景 圭樹
    2003 年 43 巻 6 号 p. 739-744
    発行日: 2003/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    背景. 衝突癌は2種類の無関係に発生した腫瘍が互いに接して, あるいは一部互いに浸潤して衝突したものと定義されている. 我々は, 比較的まれと考えられる肺原発衝突癌の3例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する. 症例. 症例1は67歳男性. 検診発見で右S10に境界不明瞭な2cm大の腫瘤を認め, 擦過細胞診により扁平上皮癌の診断で右下葉切除を行い腺癌と扁平上皮癌の衝突癌と診断された. 症例2は77歳男性. 検診発見で右S6にだるま型の腫瘍を認め右下葉切除施行し腺癌と扁平上皮癌の衝突癌と診断された. 症例3は75歳女性. 検診発見で右S2に2.7cm大の腫瘤を認め気管支鏡生検で扁平上皮癌の診断であった. 右上葉切除を行い, 腺癌と扁平上皮癌の衝突癌と診断された. 3例とも腺癌と扁平上皮癌の衝突であった. 結論.我々は比較的まれな肺原発衝突癌の3例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 谷口 浩和, 阿保 斉, 宮沢 秀樹, 能登 啓文, 泉 三郎
    2003 年 43 巻 6 号 p. 745-749
    発行日: 2003/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    背景. 類上皮血管内皮腫は, 血管内皮由来の比較的稀な腫瘍である. 今回我々は, 肺肝類上皮血管内皮腫の1例を経験したので報告する. 症例. 29歳の男性. 検診の胸部レントゲン及び胸部CTにて両側肺に多発性の小結節影を認められ, 開胸肺生検を施行し, 生検組織より類上皮血管内皮腫と診断した. また, 肝にも多発結節影が認められ, 腹腔鏡下肝生検術を行い, 肝に認められた多発結節影も同じ病変であることが確認された. 初診から6年4か月後に上腹部痛が出現し, 当科を受診. 肺病変は初診時に比し若干の増大しか認めなかったが, 腹部CTにて肝左葉の腫瘤が増大しているのが認められ, それによる圧迫もしくは浸潤によると考えられる門脈左枝の閉塞を認めた. 肝病変に対して経皮肝動脈塞栓術を施行したが, あまり良い効果は得られなかった. その後, 腫瘍の増大により黄疸が出現して全身状態が悪化し, 初診から6年8か月後に死亡した. 結論.肺肝類上皮血管内皮腫と診断後, 肺病変はあまり変化しなかったが, 肝病変が急速に悪化し死に至った興味深い症例と考えられた.
  • 2003 年 43 巻 6 号 p. 750-774
    発行日: 2003/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
  • 加藤 治文, 西條 長宏, 工藤 翔二, 福岡 正博, 根来 俊一, 坪井 正博, 多田 弘人, 浅村 尚生, 早川 和重
    2003 年 43 巻 6 号 p. 780-784
    発行日: 2003/10/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
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