肺癌
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44 巻, 3 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 大浦 裕之, 相川 広一, 石木 幹人, 冨地 信和, 羽隅 透, 橋本 邦久
    2004 年 44 巻 3 号 p. 153-157
    発行日: 2004/06/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    背景. 今回, 術後約8年間の長期経過を観察し得た稀な縦隔発生paraganglioma (以下PG) の1例を経験したので報告する. 症例. 48歳, 男性. 平成7年6月の検診にて左縦隔に異常影を指摘された. 胸部X線写真上では, 左第2弓付近より肺野に突出する境界明瞭な腫瘤影を認めた. 胸部CTでは腫瘤はaorticopulmonary window (APW) に存在し大動脈弓と左主肺動脈に接していたが浸潤の有無は明瞭でなかった. 術前各種血漿カテコラミンとその尿中代謝産物は正常値であった. 手術: 腫瘤は鶏卵大でAPWに存在し, 周囲組織への浸潤傾向を認めた. 心膜合併切除および左主肺動脈形成術を行い腫瘍を全摘出した. 病理組織学的および免疫染色所見により縦隔発生のPGと診断された. また腫瘍細胞に明らかな悪性像はなかった. 術後約8年経過した現在再発兆候なく健在である. 結論. PGにおいては病理組織学的に良性と診断されても, その後の経過で遠隔転移など悪性の態度を示すものもあり, その良悪性の鑑別は必ずしも容易ではない. 術後数年以上経過した後に遠隔転移した例も報告されており, 今後も継続的な経過観察が必要と考えられた.
  • 竹内 幸康, 明石 章則, 大隈 和英, 小田 知文, 松田 良信, 山口 宏茂
    2004 年 44 巻 3 号 p. 159-162
    発行日: 2004/06/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    背景. 腫瘤陰影を呈さない肺癌は, 注意深い観察にもかかわらず早期発見が困難なことがある. 症例. 患者は68歳の男性で, 1年前からの右肺下葉の蜂窩肺像と新たに出現した血疾を主訴に当院を受診した. 胸部単純X線写真で右下肺野に淡いスリガラス影を認め, また胸部CTでは右下葉背側に蜂窩肺像を認めた. 喀疾細胞診および同部の経気管支肺生検で腺癌と診断し, 右肺下葉切除術を施行した. 肉眼的には下葉に蜂窩肺領域を認めたが, 明瞭な腫瘤は形成していなかった. 組織像では, 癌細胞が間質性肺炎内の小嚢胞壁に沿って増殖し, さらに嚢胞内腔に乳頭状に突出しており, 乳頭型腺癌と診断した. 結論. 蜂窩肺症例では, 腫瘤陰影を形成しなくとも肺癌が存在することがあり, その早期診断には十分留意する必要がある.
  • 鈴木 仁之, 徳井 俊也, 今井 直幸, 阿部 知司, 原 徹, 渡邉 篤
    2004 年 44 巻 3 号 p. 163-166
    発行日: 2004/06/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    背景. 胃癌, 大腸癌術後に異時性肺転移を来し, 原発性肺癌との鑑別が困難であった症例を経験したので報告する. 症例. 62歳女性, 胃癌, 大腸癌に対して胃亜全摘術+右半結腸切除術+胆嚢摘出術が施行されていた. 術前の胸部CT所見において右S2に径5mmの結節影を認めていたが, そのまま経過観察となっていた. 術後1年半の胸部CT所見において右S2の結節影には変化がなかったが, 新たに左S1+2に陰影を認めた. 右S2の結節影は炎症性変化と判断し, 左S1+2の陰影に対して手術を施行した. 術中迅速にて原発性肺癌を否定できず, 左上葉切除術+両側リンパ節郭清を施行した. 永久標本では組織型は腸型高分化型腺癌で, 大腸癌の肺転移と診断された. 外来フォロー中のCT所見にて右S2の結節影の増大と, 新たに右肺門部に1cm大の結節を認めたため, 右上葉切除術+リンパ節郭清を施行した. 永久標本にて胃癌の肺転移と診断された. 結論. 胃癌, 大腸癌の重複癌術後に, 異時性に反対側の肺転移を来した症例を経験した.
  • 陳 啓盛, 青山 克彦, 松島 秀和, 村井 克己, 河端 美則, 星 永進
    2004 年 44 巻 3 号 p. 167-171
    発行日: 2004/06/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    背景. 肺癌手術組織標本を詳細に検討することは, 肺癌の組織型, 悪性度, 進行度のみでなく, 特発性肺線維症の存在など背景肺病変の検索にも重要である. 今回, 我々は背景肺病変の検索を契機に診断しえた薬剤性肺炎を経験した. 症例. 症例は72歳の男性. 右肺癌cT1NOMO, stage IAと診断し, 右中葉切除術を施行した. 術後第4病日に呼吸困難が出現, 胸部X線上右下肺野に術直後には認めなかった新陰影が出現, 抗生剤を投与するも急速に増悪した. 胸部CTでは両肺野に広範なスリガラス陰影を認めた. 肺癌切除肺の組織学的検索で急性好酸球性肺炎の所見が得られ, 気管支肺胞洗浄液でも好酸球比率の増加を認めたため, 陰影は急性好酸球性肺炎によるものと推察した. 詳細な問診の結果, 患者は入院前からアガリクス, メシマコブを含む健康食品を服用していたことが判明した. 健康食品の服用中止のみで自覚症状, 胸部X線所見が改善したため, 本症例を薬剤性肺炎と診断した. 結論. 肺癌切除肺における背景肺の組織学的検索が契機となり, 薬剤性肺炎を診断しえた. また, アガリクスなどの健康食品による薬剤性肺炎の報告例は少ないが, 今後も注意すべきである.
  • 畠山 茂毅, 佐尾山 信夫, 三好 孝典, 露口 勝, 渡辺 滋夫
    2004 年 44 巻 3 号 p. 173-177
    発行日: 2004/06/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    背景. 特発性血小板減少症 (idiopathic thrombocytopenic purpura: ITP) の原因に, ヘリコバクターピロリ菌 (Helicobacter pylori, 以下HP菌) の感染があることが注目されている. 我々は肺癌の化学療法中の制御しがたい血小板減少症に対して, HP菌の除菌により改善した症例を経験したので報告する. 症例. 56歳女性. 平成13年7月, 健診で血小板減少を指摘され, 近医を受診した. 胸部X線写真で胸水貯留を認め当科紹介となった. 進行肺癌であり, フィブリン分解産物 (fibrin degradation product: FDP) の上昇から, 汎発性血管内凝固症候群 (disseminated intravascular coagulation: DIC) による血小板減少症と診断された. 通常の治療では, DIC状態は改善せず, 化学療法を併用すると改善がみられたが, 月1回程度の血小板輸血は行われていた. その後も化学療法を続けていたが, 14年5月頃からは, 血小板数は常に2万/μ1以下となり, 頻回の血小板輸血が必要となった. FDPの再上昇はなく, platelet associated immunoglobulin G (PAIgG) も高値でITP合併肺癌と診断された. 6月末, 尿素呼気試験にてHP菌の感染が判明し, 除菌により血小板減少は改善した. 結論. 肺癌治療中の血小板減少の原因として, 癌性のDICや化学療法による骨髄抑制以外に, HP菌感染も考慮する必要がある.
  • 谷口 浩和, 阿保 斉, 宮田 佐門, 宮沢 秀樹, 能登 啓文, 泉 三郎
    2004 年 44 巻 3 号 p. 179-182
    発行日: 2004/06/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    背景. 肺癌の脊髄や視交叉への転移は稀である. 症例. 65歳の男性で, 当科にて右上葉原発の肺小細胞癌限局型TIN2M0と診断された. 全身化学療法と同時胸部放射線照射を行われ, 著効 (CR) と判定された. 初診より7か月後に, 脳MRIにて多発脳転移が認められ, 全脳照射 (41.2Gy/20回/29日間) を行った. その後, 下肢に不全麻痺と両耳側半盲が出現した. 胸腰髄MRIにて胸腰髄に多発転移を認め, 髄液からClass Vの肺小細胞癌細胞が検出されたため, 癌性髄膜炎と診断した. 胸腰髄に放射線照射 (57.5 Gy/15回/19日間) 後, 両下肢の不全麻痺はやや改善した. 視力障害は徐々に増悪し, 視神経周囲MRIにて, 視交叉部に転移と考えられる腫瘤影が出現したため, 同部に放射線を照射したが, 視力は回復せず増悪を続けた. 放射線照射によりやや改善を認めた両下肢の不全麻痺も再増悪を認め, 徐々に四肢・体幹の麻痺が進行し, 全身状態が悪化して, 初診より1年6か月後に死亡した. 結論. 脊髄と視交叉への転移をきたした肺小細胞癌の1例を報告した.
  • 武井 秀史, 西井 鉄平, 前原 孝光, 角田 幸雄
    2004 年 44 巻 3 号 p. 183-187
    発行日: 2004/06/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    背景. 小細胞肺癌や肺カルチノイドが異所性ACTH産生によりCushing症候群を引き起こすことはよく知られている. しかしながらCushing症候群を呈した胸腺カルチノイドは報告が少なくまれである. 症例. 58歳女性. 満月様顔貌下腿浮腫, 低K血症の精査のため入院. 血中ACTH, cortisolの高値を認めCushing症候群と診断された. 画像上前縦隔に2cm大の腫瘍を認めた. 異所性ACTH産生縦隔腫瘍の疑いで胸腔鏡下腫瘍切除術を行った. 病理検索で胸腺spindle cell carcinoidと診断した. 免疫染色でACTH陽性であった. 術後速やかに血中ACTH値は低下し臨床症状も改善した. 結論. 非常にまれなCushing症候群に関連した胸腺spindle cell carcinoidを報告した.
  • 庄村 心, 高尾 仁二, 藤永 上弥, 矢田 公
    2004 年 44 巻 3 号 p. 189-192
    発行日: 2004/06/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    背景. 小児縦隔腫瘍の中で, 胸腺腫は稀と言われているが, 7歳女児に発生した小児胸腺腫を経験したので報告する. 症例. 7歳女児. 左下葉の肺炎を加療中に胸部レントゲン, CT, MRIを行い, 横隔膜に接し左胸腔内に突出する6cm大の腫瘤を指摘された. 縦隔腫瘍の診断で左側方切開下に腫瘍切除術を施行した. 病理組織検査で断端は陰性であったが, 被膜浸潤を伴う胸腺腫 (正岡分類; stage II, WHO分類; type B1) と診断された. 術後2ヶ月後より放射線50Gyの外照射を施行した. 結論. 小児胸腺腫に対して外科的切除, 外照射を施行した1例を経験した. 小児期での胸腺腫は稀であり, 今後の長期経過観察を必要とすると考えられた.
  • 2004 年 44 巻 3 号 p. 193-197
    発行日: 2004/06/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
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