背景. 特発性血小板減少症 (idiopathic thrombocytopenic purpura: ITP) の原因に, ヘリコバクターピロリ菌 (
Helicobacter pylori, 以下HP菌) の感染があることが注目されている. 我々は肺癌の化学療法中の制御しがたい血小板減少症に対して, HP菌の除菌により改善した症例を経験したので報告する.
症例. 56歳女性. 平成13年7月, 健診で血小板減少を指摘され, 近医を受診した. 胸部X線写真で胸水貯留を認め当科紹介となった. 進行肺癌であり, フィブリン分解産物 (fibrin degradation product: FDP) の上昇から, 汎発性血管内凝固症候群 (disseminated intravascular coagulation: DIC) による血小板減少症と診断された. 通常の治療では, DIC状態は改善せず, 化学療法を併用すると改善がみられたが, 月1回程度の血小板輸血は行われていた. その後も化学療法を続けていたが, 14年5月頃からは, 血小板数は常に2万/μ1以下となり, 頻回の血小板輸血が必要となった. FDPの再上昇はなく, platelet associated immunoglobulin G (PAIgG) も高値でITP合併肺癌と診断された. 6月末, 尿素呼気試験にてHP菌の感染が判明し, 除菌により血小板減少は改善した.
結論. 肺癌治療中の血小板減少の原因として, 癌性のDICや化学療法による骨髄抑制以外に, HP菌感染も考慮する必要がある.
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