肺癌
Online ISSN : 1348-9992
Print ISSN : 0386-9628
ISSN-L : 0386-9628
46 巻, 1 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
総説
  • 松本 康男, 横山 晶, 塚田 裕子, 斎藤 眞理
    2006 年 46 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/09
    ジャーナル オープンアクセス
    肺癌に対する気管支腔内照射は扱いやすい高線量率イリジウム線源の照射装置の普及,アプリケータの開発などによって簡便にそしてより安全に施行されるようになってきた.欧米での適応とは異なり,わが国では喀痰細胞診による肺癌検診で発見される肺門部早期肺癌への根治的治療に利用されることが多い.根治照射の場合,晩期有害事象を減らすため過線量領域を可能な限り回避しなくてはならない.肺門部早期癌は外照射の併用,ウイング付アプリケータの利用,気管支径に応じた線量評価点の変更,などの工夫により手術療法に匹敵する治療成績が得られており,また重篤な有害事象もみられていない.本稿にて,文献的考察を加え気管支腔内照射の適応とその位置づけ,我々の行っている手技について解説した.
  • 山田 耕三
    2006 年 46 巻 1 号 p. 7-14
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/09
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.我々は以前より径20 mm以下の肺野型肺癌を対象として, Thin-section CT(TS-CT)画像における視覚評価(TS-CT画像の肺野条件と縦隔条件での病巣面積の比)での形態分類(含気型・充実型)が, その病理所見や予後に相関し, この分類が肺野型の早期癌の診断基準になる可能性を報告してきた.しかしCT画像の視覚評価のみでは, その形態分類の判別に苦慮する症例が存在し, より定量的な基準作りが必要であると考えられた.対象・方法.対象は最近8年間に当院の外科で切除された径20 mm以下の肺腺癌292例である.Retrospectiveに病変の縦隔条件の長径と肺野条件の長径の比からその消失率を算出し, cut off値を30%, 40%, 50%に設定し, 各々の画像所見と病理所見の対比検討を行った.また, 従来法である視覚評価との比較も行った.結果.消失率30%以下の症例は従来法での充実型に相当し, 予後の悪い一群であった.消失率50%以上の症例は従来法での含気型に相当し, 病理組織学的に予後のよい一群であった.消失率40%前後の症例が, 従来法での分類に苦慮した一群であったが, cut off値を50%に設定することにより, 病理所見や予後が異なる二群に明瞭に大別することが可能となった.結論.今回の定量評価は, 簡便に病理所見や予後と相関した画像分類が可能となり, 肺野型早期癌のCT画像診断における重要な診断基準の一つとなる可能性が示唆された.
  • 渡辺 俊一
    2006 年 46 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/09
    ジャーナル オープンアクセス
    1960年Cahanが,肺門および縦隔の所属リンパ節郭清を伴った肺葉切除をradical lobectomyとして報告して以来,この術式は40年以上を経た現在も肺癌根治手術の基本である.当院での現在の標準開胸法は前鋸筋を温存した11~13 cmの皮切長での後側方開胸である.この開胸法が手術の安全性,quality,手術時間,侵襲度,術後在院日数等の要素を総合的に判断した結果,他の開胸法と比較し最もバランスがとれ優れた方法であると考えている.また,どんな状況下(全面癒着,気管支・血管形成,胸壁浸潤,術中大出血等)においても容易に対応しうる.肺動脈は血管壁を完全に露出する層で血管鞘を剥離し各分枝を切離する.肺静脈は血管鞘を剥離したのち自動縫合器にて切離する.気管支は気管支表面の毛細血管層を薄く残す層で剥離し自動縫合器にて閉鎖する.これらの緻密な切開・剥離操作を電気メスのブレード先端をうまく使いながら行うことで,出血の少ないきれいな術野の手術が短時間で施行可能である.縦隔郭清は解剖学的構造物をskeletonizeしながら,compartmentごとに摘出することを心がける.
原著
  • 川口 晃司, 谷田部 恭, 岡阪 敏樹, 遠藤 秀紀, 雪上 晴弘, 森 正一, 波戸岡 俊三, 篠田 雅幸, 光冨 徹哉
    2006 年 46 巻 1 号 p. 23-26
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/09
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.非小細胞肺癌におけるリンパ節転移巣の大きさや形態と予後との関係について検討した.方法.1996年1月から1998年12月までに一肺葉以上切除と縦隔リンパ節郭清を行った201例のリンパ節標本について,転移巣の最大径と形態を評価した.形態については,sinus permeation(SP)/stromal change(SC)/extracapsular invasion(ECI)の有無について検討した.結果.pN0は145例,pN1は20例,pN2は36例であった.2 mm以下の微小リンパ節転移(micrometastasis;mi)は,pN1で5例とpN2で4例認められ,2 mmを超える転移群(macrometastasis;ma)と生存比較したが,pN1mi vs pN1maではp=0.439,pN2mi vs pN2maではp=0.319と有意差は認めなかった.しかしmi 9例中,SP/SC/ECIを認めなかった4例はすべて4年以上無再発生存した.結論.非小細胞肺癌における微小リンパ節転移や形態を組み込んだ病期分類の細分化を行うことにより,より明瞭な予後の指標を示すことができると考える.
  • 笹野 進, 鳥居 陽子, 大貫 恭正
    2006 年 46 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/09
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.肺がん検診における経年受診の有効性について検討した.対象と方法.1998年度から2004年度までの7年間に,当施設で実施した胸部X線検査と喀痰細胞診併用による肺がん検診を受診した40歳以上79歳以下の男女延べ48630名を対象とした.受診者を肺がん検診受診歴に基づき初回受診群,経年受診群に分類し,検診結果,肺がん発見例の臨床的特徴を比較した.結果.初回受診群16222名,経年受診群23669名であった.年齢・性別分布は両群間に有意差はなかった.要精検率は初回受診群6.3%,経年受診群2.6%で有意差を認めた.人口10万対発見率は初回受診群111.0,経年受診群80.3で有意差はないが経年受診群において低かった.肺がん発見例の平均腫瘍径は初回受診群3.5±1.9 cm,経年受診群2.4±1.5 cmで有意差を認めた.臨床病期IA期の割合は初回受診群27.8%,経年受診群68.4%で有意差を認めた.切除率,完全切除率は共に有意差はないが経年受診群において高かった.結論.胸部X線検査と喀痰細胞診併用による肺がん検診において,経年受診は肺がん発見率を上昇させないが,早期の肺がんの発見に有効と考えられた.
症例
  • 平松 美也子, 奥村 栄, 大柳 文義, 西尾 誠人, 石川 雄一, 中川 健
    2006 年 46 巻 1 号 p. 33-39
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/09
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.PNETとEwing肉腫(ES)はかつて別の疾患として論じられていたが,現在では同一の疾患と理解されており,特異的な染色体転座と融合遺伝子の証明がこの疾患の確定診断において非常に重要である.この腫瘍は比較的若年者の骨軟部に発生する悪性度の高い肉腫で,1980年代以降行われた多くの臨床試験の結果,強力な化学療法と局所治療の組み合わせが予後の改善に不可欠であることが知られている.しかし,肺原発のPNETは非常に稀で報告数も少なく,他の肺内腫瘍との鑑別が重要である.症例.31歳男性.検診胸部単純X線写真にて右肺門の腫瘤影を認め,前医受診し精査したところ肺原発PNETが疑われ当院を紹介受診.CTガイド下経皮針生検の病理組織学的検査にてPNETと診断.染色体検査・遺伝子検査にて相互転座t(11;22)(q24;q12),融合遺伝子EWS-FLI 1(Exon 7/Exon 5)を検出.全身検索にて肺外病変認めず,肺原発PNETとして術前化学療法施行後,右上葉切除術を施行.その後全47週にわたる化学療法を完遂し,現在術後12ヵ月無再発生存中である.
  • 井上 匡美, 南 正人, 塩野 裕之, 澤端 章好, 奥村 明之進
    2006 年 46 巻 1 号 p. 41-44
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/09
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肺癌に対するセカンドライン治療におけるTS-1の有効性は未だ明らかにされていない.我々はゲフィチニブに耐性となった高齢肺腺癌再発例に対するTS-1投与の臨床経験を報告する.症例.症例は78歳,女性.肺腺癌術後の右下葉部分切除断端再発に対しゲフィチニブが非常に奏効していた.ゲフィチニブ投与1年後に耐性となり断端再々発を認めたためTS-1 100 mg/日(75 mg/m2/日)を28日間投与,14日間休薬で3コースの外来化学療法を施行した.CT検査にて縮小率61%のPRを認め,血清CEA値は16 ng/mlから8 ng/mlに低下した.副作用はGrade 1の食思不振と血清T. Bilの上昇を認めたのみで,QOLは良好に保たれている.結論.TS-1は再発非小細胞肺癌に対するセカンドライン治療のひとつとなる可能性がある.
  • 谷口 浩和, 猪又 峰彦, 阿保 斉, 宮田 佐門, 能登 啓文, 泉 三郎
    2006 年 46 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/09
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肺癌の陰茎転移は稀である.症例.症例は57歳男性で,陰茎の持続性の勃起及び疼痛が出現したが放置していた.その後,左下肢痛が出現したため当院整形外科を受診し,左頸骨生検を行った結果,扁平上皮癌が認められた.全身検索の結果,肺扁平上皮癌IV期であった.陰茎についても,陰茎海綿体生検にて扁平上皮癌が証明されたため,陰茎転移であると診断した.治療としてカルボプラチンとパクリタキセルにより化学療法を行った結果,原発巣は有効(PR),陰茎の転移巣は縮小効果を認め,陰茎の疼痛は消失した.結論.本症例は,化学療法にて陰茎転移の症状を改善することができた.
第31回画像診断セミナー
  • 伊藤 春海
    2006 年 46 巻 1 号 p. 49-57
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/09
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.医学部学生を対象とした呼吸器画像診断学教育において,Radiologic-Pathologic Correlationの観点に立った異常所見の説明は効果的な教育技術であることは間違いない.しかし,それを生かすには正常像についても同じ観点での充分な教育が必要である.正常像からの逸脱を発見させることが,病態への理解につながるからである.そこで重要なのは異常像と同様,正常像もパターンでなく,既存構造のエックス線学的表現であることの理解である.そこで,過去6年間の福井大学での教育経験から,教える側も正常像に対してさらに進化した読影技術を持つ必要があると考え,以下の研究を行った.方法と対象.胸部エックス線写真,CTに見られる注目すべき幾つかの正常所見について,標本と画像の比較検討を行った.検討内容は,(1)上部胸椎と肋骨,(2)気管支壁影,(3)Left Hilar Lucent Zone,(4)奇静脈弓と大動脈弓,(5)奇静脈葉,(6)肺底における副葉間裂,肺区域間・肺区域内隔壁である.通常の標本肉眼像の他に,標本を用いたエックス線像やCTを用いた.結果と結論.いずれの内容も標本との比較・検討が有用であった.検討内容を医学部学生,放射線技師,放射線科医師,呼吸器系内科医を対象に適切な臨床例を含めて指導する機会を持った.最も多い感想は,標本観察の有用性と正常像が持つ奥深さの再認識であった.
  • 楠本 昌彦
    2006 年 46 巻 1 号 p. 59-63
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/09
    ジャーナル オープンアクセス
    胸部単純X線による肺癌診断に際して,病変の見落としやすい要因としては,1)病変が既存構造に重なっている,2)無気肺を合併している,3)病変そのものが小さくて淡い,などの理由がある.特にCTですりガラス影を伴う小さい肺癌は,病理学上は肺胞上皮置換部分を有する高分化腺癌で,単純X線では境界不鮮明な淡くて小さい斑状影としてみられる.このような高分化腺癌の高分解能CTの特徴的な所見は,病変辺縁部のすりガラス影,結節内部は充実性で,その充実部にはエアブロンコグラムがみられる.胸部単純X線の読影に際しては,以上の点に留意することが肝要である.
  • 原 眞咲, 白木 法雄, 北瀬 正則, 大島 秀一, 辻 浩子, 久米 真由美, 芝本 雄太, 玉木 恒男, 西尾 正美
    2006 年 46 巻 1 号 p. 65-74
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/09
    ジャーナル オープンアクセス
    PET装置の導入が近年急速に進んでおり,今後,2-[fluorine-18] fluoro-2-deoxy-D-glucose(FDG)を用いたpositron emission tomography(PET)の重要性が臨床の現場で増大することが予想される.装置自体も改良が進んでおり,2004年より,PETとCTとを融合させたPET/CT装置の発売が本邦においても開始された.搭載されるCTは当初4列型のmulti-detector CT(MDCT)あるいはmulti-slice CT(MSCT)であったが,CT撮影装置の改良に伴って現在では,16列型,8列型も選択可能となっている.FDG-PETは導入当初は非常に高く評価されていたが,報告が進むにつれて,有用性と問題点が明らかになってきた.良悪性診断は,病巣が大きく,高集積な病変では判断が比較的容易と考えられるが,多くの場合,活動性の良性病変との鑑別が問題となる.小病巣においては,部分容積現象の影響が大きくなるため,FDG-PETでは本来高集積の病巣においても,中等度の集積を呈する場合が多くなり鑑別がより困難となる.N因子診断は,メタアナリシス研究では,これまでのCTによる形態診断よりは優れているとされている.一方,手術症例においての精度は,当初から問題視されていた偽陽性のみならず,偽陰性の存在からも,適応決定の際の縦隔鏡を省略することは困難という評価が定まりつつある.M因子評価に際して,FDG-PETは様々な検査を統合し簡素化できる可能性があり,肺癌診療においても有用性が高いと考えられる.本稿においてはFDG-PETの特徴と有用性,問題点についての現況を解説する.
  • 中山 富雄, 鈴木 隆一郎, 竹中 明美, 南雲 サチ子, 内田 純二, 今村 文生
    2006 年 46 巻 1 号 p. 75-78
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/09
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.末梢性肺野病変に対する呼吸器細胞診の意義を明らかにする.方法.医療判断学の立場から,末梢性肺野病変の治療方針決定の流れの中での,画像診断と,術前病理細胞診断の意義を検討した.結果.高分解能CTで,スリガラス状陰影を呈する場合,がんである事前確率は高いため,術前病理細胞診断が陽性に出ても,事後確率はあまり上昇しない.また病巣への命中の確認が非客観的であるため陰性という結果も信頼性が乏しく,臨床医は術前細胞組織診断の正否に関わらず,患者への切除を勧めている.一方高分解能CTで充実性病変を呈する場合は,がんである事前確率が低いため,術前診断での陽性結果は,事後確率を大幅に向上させる.結論.スリガラス状陰影を呈する病変への,術前細胞組織診断の意義は乏しい.臨床医は画像診断や臨床情報を適切に判断しながら診断のステップを選択すべきであり,また内視鏡医は少なくとも細胞診や組織診の適切な標本作製の手技を理解する必要がある.
支部会推薦症例
feedback
Top