肺癌
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46 巻, 2 号
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総説
  • 横井 香平
    2006 年 46 巻 2 号 p. 91-99
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/09
    ジャーナル オープンアクセス
    今日でもなお発見される多くが進行肺癌であり,化学療法や放射線療法を主体とした治療がなされているが,その予後は一般に不良である.一方外科切除は肺癌治療において現在もなお唯一信頼性の高い根治療法であり,局所進行肺癌例に対して日常臨床として隣接臓器合併切除が行われている.隣接臓器浸潤はTNM分類上T3またはT4に区分され,一般的に切除可能と思われる臓器への浸潤を示す腫瘍はT3とされ,切除不能と考えられる臓器浸潤を伴う腫瘍がT4とされている.T3病変に対する外科治療は一般化してはいるが,その治療成績は満足できる結果とは言いがたい.一方近年の外科学および麻酔学の進歩や合併療法の発展により,今まで切除不能と考えられていたT4症例にまで根治を目的とした外科治療が行われ始めている.本稿では,これら隣接臓器浸潤例に対する外科治療成績を,胸壁,肺尖部胸壁,横隔膜,気管分岐部,左心房,上大静脈,大動脈,椎体の各臓器毎に,さらにT4に分類される癌性胸膜炎についての外科治療についてもレビューし,局所進行肺癌における外科治療の役割と今後の方向性を考察する.
  • 松野 吉宏, 淺村 尚生, 永井 完治
    2006 年 46 巻 2 号 p. 101-109
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/09
    ジャーナル オープンアクセス
    1999年のWHO分類の発表以来,肺神経内分泌腫瘍は主たる4組織型(定型カルチノイド,非定型カルチノイド,大細胞神経内分泌癌,小細胞癌)に分類されている.大細胞神経内分泌癌が加わったことによる各組織型の臨床病理像は必ずしも明確ではなかったが,わが国の多施設共同研究により明らかにされつつある.本腫瘍群の病理組織学的診断には,特徴ある神経内分泌形態の認知,適切な補助診断法による機能・形質の証明,各組織型の組織学的診断基準や臨床病理学的意義の理解と適用が求められる.その病理診断精度は,定型・非定型カルチノイドからなる低悪性度群と,大細胞神経内分泌癌・小細胞癌からなる高悪性度群の間では良好であるが,高悪性度群に属する二者の分離は必ずしも十分ではない.両者は臨床的・分子生物学的にも共通点が多く,腫瘍分類の枠組み自体今後継続的に議論される可能性がある.一方,大細胞神経内分泌癌の不良な切除予後が明らかにされたことにより,精度の高い術前・術後病理診断に基づいた最適治療の確立が求められるであろう.
原著
  • 平野 聡, 竹田 雄一郎, 泉 信有, 小林 信之, 工藤 宏一郎
    2006 年 46 巻 2 号 p. 111-116
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/09
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.従来,脳転移に対する化学療法は治療効果が乏しく,放射線療法や手術療法が標準治療とされてきた.一方,MRIによる微小脳転移の発見の増加や新規抗癌剤の開発に伴い,脳転移症例に対する化学療法の有効性が期待される.今回我々は,無症候性脳転移を有する非小細胞肺癌に対する化学療法の治療効果を評価した.方法.1998年4月から2004年12月までに当院で初回化学療法として2コース以上の治療を受け,全身,および脳病変の治療効果判定が可能であった無症候性脳転移を有する非小細胞肺癌症例19例を対象として,化学療法単独による脳転移巣,全身病変に対する効果について検討した.また,予後,最終死因についても解析した.結果.脳病変を除く全身での効果判定ではPR 3例,SD 11例,PD 5例であった.脳病変については改善2例,不変14例,悪化3例であった.治療中に脳転移による症状が出現したものはなかった.最終死因が脳転移によると考えられるものは3例で,いずれも癌性髄膜炎を伴っていた.生存期間中央値は10ヶ月であった.結論.無症候性脳転移を有する非小細胞肺癌症例においては全身化学療法が脳局所にも一定の効果を有すると考えられ,初回の治療として化学療法が第一選択となる可能性が示唆された.
  • 新屋 智之, 笠原 寿郎, 藤村 政樹, 丹保 裕一, 田森 俊一, 曽根 崇, 中尾 眞二
    2006 年 46 巻 2 号 p. 117-125
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/09
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肺癌の骨格筋転移は極めて稀とされているが,今回我々は,初診時もしくは経過中に骨格筋転移を来した非小細胞肺癌の3症例を経験した.症例.症例1は46歳男性,肺腺癌の外側翼突筋転移のために開口障害を来した.放射線及び化学療法に対して抵抗性であり,原疾患の悪化により症状発現から約9ヶ月の経過で死亡した.症例2は57歳男性,肺大細胞癌もしくは低分化腺癌の症例で右大腿部の筋転移に加え,他臓器への広範な転移を認めた.治療抵抗性で症状出現より約7ヶ月の経過で死亡した.症例3は64歳男性,腺癌の症例で,右上腕二頭筋に転移を来し,治療抵抗性の経過で筋転移出現より約3ヶ月で死亡した.結論.骨格筋の腫瘤性病変の診断の際には転移性悪性腫瘍,特に肺癌の骨格筋転移を念頭に置き,全身精査と病変部位の生検により速やかな確定診断が必要と考えられた.
  • 浦本 秀隆, 杉尾 賢二, 仲田 庄志, 宗 哲哉, 小野 憲司, 菅谷 将一, 花桐 武志, 本間 穣, 安元 公正
    2006 年 46 巻 2 号 p. 127-131
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/09
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.現在,肺癌におけるFDG-PET検査の臨床的な有用性は確立しているが,偽陽性,偽陰性も少なからず報告されている.そこで,肺孤在性病変の診断に対する良悪性の鑑別,リンパ節転移診断について有用性を検討した.対象.2004年3月~2005年7月までに原発性肺癌を疑い,良悪性の鑑別または病期診断の目的でFDG-PETを施行した後,最終的に手術を施行した37例を対象とした.内訳は,男性27例,女性10例.平均年齢66.7(49~82)歳で,良性疾患が4例(サルコイド反応結節1例,硬化性血管腫1例,過形成を伴う線維化1例,炎症性リンパ節1例),肺癌が33例であった.手術は肺全摘1例,肺葉切除30例,区域切除1例,部分切除5例で,肺癌の組織型は,腺癌18例,扁平上皮癌9例,大細胞癌2例,その他4例であり,病理病期は,IA 11例,IB 8例,IIB 3例,IIIA 4例,IIIB 5例,IV 2例であった.結果.主病巣はPET陽性32例,陰性5例,肺癌では陽性31例,陰性2例,良性疾患では陽性1例,陰性3例,であった.感度は93.9%,特異度は75.0%であり,偽陰性の2例はスリガラス様陰影比率50%以上かつ最大径1 cm以下の腺癌(野口分類B型)であった.肺門リンパ節における感度,特異度はそれぞれ,100%,85.2%で,縦隔リンパ節のおける感度,特異度はそれぞれ66.7%,84.0%であった.結論.原発巣については1 cm以下の腺癌でスリガラス様陰影比率の高いものはPET検出に限界がある.一方,良性疾患の偽陽性も存在する.FDG-PET検査の長所と限界を把握し,肺癌診療に用いるべきである.
症例
  • 小林 花神, 半田 美鈴, 立川 壮一, 堀口 高彦, 廣瀬 正裕
    2006 年 46 巻 2 号 p. 133-136
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/09
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.胸水貯留例に対し細胞診等の胸水検査に加え胸腔鏡検査が有用である.局所麻酔下胸腔鏡検査は内科医でも可能であり,病変の観察や生検を行い,診断率を有意に上昇させる.症例.65歳,女性.20年前に右乳癌手術の既往あり.左胸水貯留にて精査入院.胸水検査を行うも確定診断に至らず,局所麻酔下胸腔鏡検査を施行.乳癌再発による癌性胸膜炎と診断した.結論.局所麻酔下胸腔鏡検査にて診断し得た癌性胸膜炎を経験した.乳癌術後20年を経過して再発した極めて稀な症例であった.
  • 森川 洋匡, 大久保 憲一, 早津 栄一, 小林 正嗣
    2006 年 46 巻 2 号 p. 137-140
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/09
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.ブラは肺癌発生の危険因子とされている.今回我々は左右のブラ壁に異時性に異なる組織型の肺癌を生じた症例を経験したので報告する.症例.50歳,男性.43歳の時,右上葉ブラ壁に発生した肺扁平上皮癌に対して右上葉切除術(pT1N0M0,Stage IA)を受けた.当時より左上葉のブラを指摘されていた.術後の経過観察中に胸部X線写真で左上肺野に腫瘤がみられた.胸部CTでは左上葉ブラ壁に数珠状に連なる腫瘤影があり,少量の液体貯留がみられた.左肺上葉切除術を施行し,病理診断は肺腺癌(pT2N0M0,Stage IB)だった.結論.ブラが存在する症例では肺癌が発症する可能性が高いことを念頭に入れた定期的な経過観察が必要と考えられた.
  • 中島 義明, 柴田 和男
    2006 年 46 巻 2 号 p. 141-144
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/09
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.抗癌剤による薬剤誘起性肺炎の報告は多いが,テガフール・ウラシル配合剤(以下UFT)による肺炎の報告は稀である.我々は肺癌術後のUFT内服中に,急激な経過をたどって死亡した症例を経験したので報告する.症例.72歳,男性.原発性肺扁平上皮癌にて右肺下葉切除を受けた.術後33日目よりUFT 300 mg/日の内服を始めたところ,乾性咳嗽の増加を訴え,開始18日目に発熱を伴う胸部レントゲンのスリガラス陰影を認め,緊急入院となった.入院4日目には低酸素血症が進み人工呼吸器管理となった.ステロイドを含む各種薬物療法を施行したが改善はみられず,入院48日目に死亡した.リンパ球刺激試験(DLST)はUFTのみが陽性で,UFTによる薬剤誘起性肺炎と診断した.結論.有害反応が一般に軽微と思われるUFTにおいても,慎重な観察が必要である.
  • 丹保 裕一, 北 俊之, 木部 佳紀, 笠原 寿郎, 藤村 政樹, 中尾 眞二
    2006 年 46 巻 2 号 p. 145-150
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/09
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.偽中皮腫性肺癌(pseudomesotheliomatous carcinoma of the lung:PMCL)は,臓側胸膜へのびまん性浸潤を特徴とし,組織学的に末梢性肺癌であることが確認されるものと定義される.今回我々はPMCLと診断した1剖検例を経験したので報告する.症例.71歳男性.2003年5月右胸痛,呼吸困難を主訴に外来受診し,胸部単純写真にて右側胸水を認め,入院となった.胸水細胞診にて腺癌細胞が検出され,全身検査の結果,肺腺癌(cT4N3M0 stage IIIB)と診断した.胸腔ドレナージ後,化学療法を繰り返し行ったが,診断から16ヶ月の経過で腫瘍死した.剖検の結果,右肺内には腫瘍性病変を認めなかったが,肺全体を取り囲むように胸膜は肥厚していた.臓側胸膜に沿った部位に癌組織を認め,免疫染色にてCEA, TTF-1陽性,calretinin陰性,であり,PMCLと診断した.結論.肺内の原発巣が不明な悪性胸水の症例においては,PMCLも念頭におき,胸水細胞診のみではなく可能な限り免疫組織学的検査も行うことが必要であると考えられた.
  • 三好 圭, 岡田 守人, 里内 美弥子, 坪田 紀明
    2006 年 46 巻 2 号 p. 151-154
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/09
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.小細胞肺癌の標準的治療は元来,放射線化学療法で,外科的治療の役割は限定的であるとされてきた.症例.44歳男性.主訴は血痰.右下葉に約4 cmの腫瘤と縦隔リンパ節の腫大を認める限局型小細胞肺癌(cT2N2M0,stage 3A)に対し同時化学放射線療法(cisplatin+etoposide+45 Gy)の後,cisplatin+etoposide+irinotecan療法3コースを行い,CRとなった.20カ月後に局所再発を認めたので,cisplatin+irinotecan療法1コース投与し,再びCRを得,さらに1コースを追加した.本例に対し再発までの期間が比較的長いこと,再発部位が限局していることから,右中下葉切除を実施したところ,切除標本にviable cellを確認した.切除後は再発なく4年間生存中である.結論.本例は小細胞肺癌の再発症例に対するサルベージ手術に意義を認めた症例である.
  • 磯部 和順, 梁 英富, 杉野 圭史, 名取 一彦, 木村 一博, 倉石 安庸
    2006 年 46 巻 2 号 p. 155-159
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/09
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura,以下ITP)は腫瘍随伴症候群として見られることがある.症例.60歳,男性.左上葉原発の扁平上皮癌IIIB期と診断されカルボプラチンとドセタキセルの併用療法を3コースと胸部同時放射線療法を行った.最終抗癌剤投与後28日目に鼻出血を認め,血小板数3,000/μlを指摘された.精査を行ったところ,脳転移と多発肺転移が認められた.また,PA-IgGの上昇が認められ骨髄穿刺所見よりITPの合併と診断した.副腎皮質ステロイド薬による治療を行ったが,効果が得られないまま全身衰弱が進行し死亡された.結論.化学療法後にITPを発症した肺癌の1例を経験した.本症例は増悪と同時期にITPを発症したことから腫瘍随伴症候群によるものが考えられた.
  • 阿部 典文, 山田 典子, 石原 照夫, 小檜山 律
    2006 年 46 巻 2 号 p. 161-165
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/09
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.副腎が肺癌転移の好発臓器であることはよく知られており,近年,画像診断の進歩と相まって単発副腎転移に対する切除後の長期生存例の報告も散見される.しかし,術後の局所再発に対する有効な治療法はないのが現状である.今回,不完全な副腎転移切除後の局所再増殖病変がUracil-Tegafur(UFT)の投与により消失し,術後3年6ヶ月無再発生存している症例を経験したので報告する.症例.71歳の男性.原発性肺癌(腺癌)に対し,左下葉切除術・ND2aを施行した.病理病期はpT2N0M0 Stage IBであった.切除後11ヶ月目の腹部CTで径65×50 mm大の右副腎腫瘍が指摘され,右副腎摘出術を施行したが,肝への直接浸潤を認め,肉眼的・組織学的ともに切除断端陽性であった.病理学的に肺癌の副腎転移と診断された.右副腎摘除3ヶ月後のCTで副腎切除断端部の残存腫瘍の再増殖が指摘され,術後5ヶ月には更なる増大傾向と肝への著明な浸潤が認められたため,UFT(300 mg/日)の投与を開始した.同治療開始後,病変は急速に縮小し,投与8ヶ月後のCTで完全に消失した.以後,UFT投与を継続しているが,副腎転移術後3年6ヶ月経過した現在も無再発生存中である.結論.今回の経験から肺癌の副腎転移に対するUFTの有効性が示唆されたので報告する.
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