肺癌
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46 巻, 6 号
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原著
  • 谷川 吉政, 谷口 博之, 西山 理, 青山 昌広, 日比野 佳孝, 水谷 武史, 近藤 康博, 木村 智樹, 加藤 景介, 鈴木 隆二郎
    2006 年 46 巻 6 号 p. 705-710
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/21
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.根治的手術適応のない進行非小細胞肺癌に対するCarboplatin+Weekly Paclitaxel+COX-2阻害薬(Meloxicam)併用療法の有効性および安全性について検討する.対象.IIIB期またはIV期,もしくは手術後再発した根治的手術適応がない進行非小細胞肺癌で,化学療法の先行なく年齢20歳から80歳未満,PS 0~2,各主要臓器機能が保持された症例.方法.PTXはDay 1,8,15に,CBDCAはDay 1に28日間隔で投与を行った.PTX投与量は70 mg/m2,CBDCAはAUC=6.0 mg/mL・minとし,PTX,CBDCAの投与順とした.Meloxicamは治療開始第1病日から10 mgを1日1回連日経口投与とした.結果.計26症例を登録し検討した.内訳は,男/女:20例/6例,平均年齢63歳(45歳~78歳),PS 0/1/2:15例/6例/5例,IIIB期/IV期:11例/15例,腺癌/扁平上皮癌:22例/4例であった.抗腫瘍効果は,CR 1例,PR 10例,SD 13例,PD 2例で,全体の奏効率は42%(11例/26例)であった.有害事象は,Grade 3/4の好中球数減少を6例(23%)に認め,Grade 3の血小板減少を2例(8%),Grade 4の貧血を1例(4%)に認めた.非血液毒性は,Grade 2の感染およびGrade 3の発熱を2例(8%),Grade 3の嘔吐および食欲不振を2例(8%),Grade 2の末梢神経障害を2例(8%)に認めた.全体を通して,重篤な有害事象は認めなかった.結語.進行NSCLCに対する本治療法の抗腫瘍効果は良好で,有害事象も軽度であり,そのFeasibilityが示された.
  • 片山 達也, 渡 正伸
    2006 年 46 巻 6 号 p. 711-714
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/21
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.胸腔ポートの植え込みにより,悪性胸水のコントロールと抗癌剤の胸腔内反復投与を外来通院にて行い,本法の安全性および外来通院期間について検討した.対象と方法.胸腔ドレナージ術を行うも胸水コントロールが困難であった,病理組織学的に悪性胸水と診断された7症例を対象とした.肺腺癌3例,大腸癌2例,直腸癌1例,胸膜悪性中皮腫1例であった.局麻下に胸腔ポート植え込み術を行い,その後は外来にて胸水の増加に対しては排液を行い,2週間に1度carboplatin(CBDCA)50 mg,fluorouracil(5-FU)250 mgを胸腔内に投与した.結果.全症例,合併症なく植え込み術を行い,外来通院治療が可能となり,胸水コントロールも容易に行えた.胸腔内への抗癌剤反復投与に伴う関連死亡は認めず,腎不全,骨髄抑制,感染等の重篤な副作用は認めなかった.7症例の生存期間中央値は,468日であった.また平均通院期間は,181.1日であった.結論.患者のQOLを損なうことなく悪性胸水の通院治療を可能とする本法は安全で有用であり,比較的長期の生存も期待できる.
  • 前田 元, 深井 志摩夫, 小松 彦太郎, 石川 清司, 河原 正明, 国立病院機構肺がん研究会
    2006 年 46 巻 6 号 p. 715-721
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/21
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.女性肺癌の予後が良好なことが指摘されているが,性差と喫煙が非小細胞肺癌患者の予後にどのような影響を及ぼすかについて検討した.対象および方法.1975年から1997年の間に切除された非小細胞肺癌患者12,703例を対象とした.症例を以下の4つのグループに分けて,その臨床像を解析した.第1群:男性喫煙者(MS)8,103例,第2群:男性非喫煙者(MN)877例,第3群:女性喫煙者(FS)797例,第4群:女性非喫煙者(FN)2,926例の4群である.結果.第1群では扁平上皮癌の割合が52.2%と高いのに対し,第4群では腺癌の割合が89.4%と高かった.IA期の占める割合は第1群24.1%,第2群30.2%,第3群30.4%,第4群39.5%と,後者ほど高かった.各群の5年生存率は,第4群が52.9%ともっとも良く,第3群が50.8%,第2群が43.2%,第1群が42.5%と次第に低下した.解析項目として,この性差と喫煙による群分け以外に,年齢,組織型,手術術式,病理病期を加えて多変量解析を行った.hazard ratio(HR)は第4群に対して,第1群で1.369,第2群で1.319と有意に大きな値を示した(p<0.0001).第3群のHRは1.048であった(n. s.).年齢,組織型,手術術式,病理病期もそれぞれ独立した有意な予後因子であった.結論.性差と喫煙による群分けは独立した有意な予後因子であった.
症例
  • Keisuke Nakayama, Daisuke Okada, Kiyoshi Koizumi, Kazuo Shimizu
    2006 年 46 巻 6 号 p. 723-726
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/21
    ジャーナル オープンアクセス
    Background. Extramedullary plasmacytoma is a tumoral lesion not associated with osseous lesions of plasma cells in the final stage of B-lymphocyte differentiation. Extramedullary plasmacytoma generally occurs in the region of the upper aerodigestive tract; but rarely occurs in hilar lymph nodes. Case. A 52-year-old man presented with a productive cough. Chest CT scan revealed a 40×30 mm tumor in the left pulmonary hilum. Tumor markers were within normal ranges, and there were no abnormal findings on bronchoscopy. The tuberculin skin test was positive. Because a malignant tumor could not be ruled out by preoperative examinations, the patient underwent thoracoscopic examination and biopsy. The biopsy specimen revealed extramedullary plasmacytoma with IgG and κ-chain monoclonality on immunohistochemical staining. Conclusion. We report a very rare case of extramedullary plasmacytoma.
  • 坂巻 靖, 城戸 哲夫, 安川 元章, 小牟田 清, 長谷川 誠紀, 中野 孝司
    2006 年 46 巻 6 号 p. 727-731
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/21
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.胸膜中皮腫において縦隔リンパ節転移が最初の可視病変で,かつその生検から確定診断に至る例は稀である.症例.患者は71歳女性.69歳時,腎癌術後2年経過時点での胸部CTで傍上行大動脈リンパ節の腫大を認められ,胸腔鏡下生検の結果中皮腫と診断されたが他に可視病変を認めず経過観察となった.2年後労作時息切れと左胸水貯留を認められ転医のうえ精査となり,胸腔鏡下胸膜生検によりびまん性胸膜中皮腫との診断に至った.現在化学療法継続中で十分な病勢のコントロールと良好なperformance statusを維持している.結論.孤立性のリンパ節転移が唯一の初期可視病変である中皮腫では,胸膜病変の顕性化の早期発見と,胸腔鏡下生検により遅滞なく確定診断を得ることが重要である.N2 diseaseの中皮腫の治療では,患者の状態に応じた化学療法の選択により良好な状態の維持が可能である.
  • 大成 亮次, 阪田 裕二郎, 金原 正志, 向井 勝紀, 井内 康輝
    2006 年 46 巻 6 号 p. 733-739
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/21
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.原発性肺軟骨肉腫は本邦における報告例が15例の稀な疾患である.今回われわれは,臨床病理学的に確定診断しえた1例を経験したので報告する.症例.76歳,男性.定期検診の胸部X線で右上肺野に2.5 cm大の結節影を指摘された.胸部CTで腫瘍性病変を疑い,胸腔鏡補助下に肺部分切除術を施行した.病理組織学的に組織型不明の肉腫と診断された.全身精査で他臓器に異常はなかった.術後11ヶ月,胸部X線で右上葉の無気肺を認め,胸部CTで上葉に切除断端を含む腫瘍性病変を認め,右肺上葉切除術を行った.病理組織学的に軟骨肉腫と診断され,局所再発と考えられた.初回手術より3年10ヶ月経過し,他臓器に異常を認めず,臨床的に原発性肺軟骨肉腫と診断した.結論.原発性肺軟骨肉腫は報告例が少なく,生物学的特徴を含め詳細な検討がいまだになされていない.治療は手術が第一選択であるが,術式は確立されていない.本症例は腫瘍を含む肺部分切除術後に短期間で同一肺葉内に局所再発をきたしており,局所制御を目的とした肺葉切除術の必要性が示唆された.
  • 新屋 智之, 笠原 寿郎, 藤村 政樹, 曽根 崇, 良元 章浩, 中尾 眞二
    2006 年 46 巻 6 号 p. 741-746
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/21
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.悪性腫瘍随伴網膜症(cancer-associated retinopathy:CAR)は腫瘍随伴神経症の一つで上皮由来の悪性腫瘍,特に肺小細胞癌への合併が多く報告されている.我々は肺小細胞癌に合併し,血清抗recoverin抗体は陰性であったが,腫瘍組織においてrecoverin抗原を証明した稀なCARの1例を経験した.症例.77歳,男性.2003年6月より視力障害を認め,網膜電図による網膜電位の低下と,多局所網膜機能解析による網膜全般にわたる著しい電位低下を認めたため,CARが疑われた.全身検索によって右肺下葉の腫瘤影と縦隔リンパ節腫脹が認められ,縦隔リンパ節生検により限局期小細胞肺癌と診断された.血清抗recoverin抗体は陰性であったが,縦隔リンパ節腫瘍組織の免疫染色によってrecoverin抗原が証明された.その後,carboplatin+etoposideによる化学療法および遂時胸部照射を施行し,完全寛解を得たが,視力の改善は認めなかった.結論.CARが疑われ,血清抗recoverin抗体が陰性の場合には,肺癌組織の免疫組織化学的検討によるrecoverin抗原の証明がCAR診断の一助となると考えられた.
  • 木村 岳史, 山崎 誓一, 小泉 知展, 久保 惠嗣, 兵庫谷 章, 吉田 和夫
    2006 年 46 巻 6 号 p. 747-751
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/21
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.特発性肺線維症に,肺癌が合併することは決してまれではない.今回,気胸を契機に両側性の多発肺癌を合併した症例を経験したので報告する.症例.70歳,男性.1994年より臨床的に特発性肺線維症と診断され,経過観察されていた.2005年右気胸を生じ,難治性のため手術を施行した.その際に右上葉胸膜側に約2.5 cm大の結節を認め,その組織所見にて肺扁平上皮癌と診断された.全身検索を行ったところ,左上葉胸膜側にも2 cm大の結節陰影を認め,手術にて同様に肺扁平上皮癌と診断された.両病変とも気管上皮内への浸潤を認め,肺門・縦隔のリンパ節転移および遠隔転移を認めないことから,同時多発の肺癌と考えられた.結論.特発性肺線維症の経過においては,このように多発肺癌の合併にも注意を要すると考え,報告する.
  • 小林 哲, 澤端 章好, 苅部 陽子, 吉井 直子, 本間 浩一, 三好 新一郎
    2006 年 46 巻 6 号 p. 753-758
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/21
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.胸壁発生の胸腔内進展脂肪肉腫は自験例も含めて23例の報告を認めるのみで,非常に稀な疾患である.我々は本疾患の1切除例を経験した.症例.患者は39歳女性.腰痛,右下肢痛にて近医を受診し,左胸壁腫瘍,腰部腫瘍,左腎腫瘍を指摘され紹介となった.胸部CTで左胸腔内に突出する胸壁腫瘍を認めた.胸壁の針生検で脂肪肉腫と診断した.胸壁腫瘍は急速に増大し,呼吸状態も悪化したため手術を施行した.病理組織検査で円形細胞型と混在した粘液型脂肪肉腫と診断した.胸壁と腰部にcisplatinを併用した同時化学放射線療法を施行し独歩可能となり退院した.4ヶ月後,肺・肝・大腿部筋組織・骨盤に転移を認め再入院.放射線治療と化学療法を施行し各転移巣の急速な増大は抑えられ,特に同時化学放射線療法を施行した大腿部は画像上増大を認めなかった.しかしながら術後1年2ヶ月目に腫瘍死した.剖検では胸壁の局所再発は認めなかった.結論.脂肪肉腫に対して外科切除後に同時化学放射線療法を行い,局所再発を認めなかった.同時化学放射線療法は転移巣に対し有効と思われた.
  • 小林 美奈穂, 磯部 和順, 清水 邦彦, 木村 一博, 長谷川 千花子, 本間 栄
    2006 年 46 巻 6 号 p. 759-764
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/21
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肺癌の胃転移を生前早期に診断することは稀である.症例.71歳,男性.右肺下葉原発の小細胞癌の病期診断目的でFDG-PETを施行し,原発巣と縦隔リンパ節の集積以外に上腹部正中位に異常集積を認めた.胃内視鏡検査で胃体部に中心陥凹を伴う孤立性の隆起性病変を認め,生検により肺小細胞癌の胃転移と診断した.その他の部位には遠隔転移を認めず,進展型小細胞癌(cT3N2M1)と診断し,CBDCA/CPT-11による化学療法を4コース行いCRを得た.結論.近年普及したFDG-PET検査は従来の病期診断法では診断困難であった消化管転移の発見にも有用であり,正確な病期診断と適切な治療が可能であった.
  • 中村 治彦, 川崎 徳仁, 田口 雅彦, 北村 創
    2006 年 46 巻 6 号 p. 765-768
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/21
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.胸腺癌は比較的稀な疾患であり,非切除例に対する化学療法の有効性は確立されていない.症例.70歳の女性.呼吸困難を主訴として来院し,上大静脈と両肺に浸潤する前縦隔腫瘍が指摘された.穿刺針生検で胸腺未分化癌の診断を得たが,根治切除不能と判断し,cisplatinとetoposideによる化学療法を3サイクル行い,診査生検を行ったところ,切除組織の病理検索で腫瘍生細胞は完全に消失していた.放射線治療を追加し,化学療法終了後10か月経過した現在,局所再発や遠隔転移は認めていない.結論.胸腺未分化癌に対しcisplatinとetoposideによる化学療法が著効を呈した1例を経験した.胸腺癌の組織亜型に基づく化学療法感受性のデータ集積は重要と考えられる.
  • 服部 健史, 河津 隆文, 横内 浩, 山崎 浩一, 西村 正治
    2006 年 46 巻 6 号 p. 769-773
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/21
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.小細胞肺癌に合併する亜急性感覚神経障害(SSN)はまれである.症例.71歳,女性.1年前から歩行時のふらつきと異常知覚が徐々に増悪したため,当院神経内科を受診した.感覚神経障害に加え,pro-GRPの高値と胸部CTで左肺門に腫瘤性病変を認めた.胸腔鏡下腫瘍生検を施行し,限局型小細胞肺癌と診断した.抗Hu抗体,抗Yo抗体,抗Ri抗体は陰性であった.感覚神経障害を呈する明らかな原因疾患が他に認められず,小細胞肺癌に合併したSSNと判断した.放射線化学同時併用療法を施行し,腫瘍の縮小を認めたが,神経症状は不変である.結論.SSNを合併する小細胞肺癌ではしばしば神経症状が先行する.このため,原因が明らかでない感覚神経障害を認めた場合,小細胞肺癌を含めた悪性腫瘍の存在を念頭に置くことが重要であると考えられた.
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