肺癌
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53 巻, 3 号
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原著
  • 伊木 れい佳, 四宮 真利子, 竹村 知容, 上松 浩子, 嶋田 雅俊, 片岡 裕貴, 二階堂 純一, 遠藤 和夫, 糸井 和美, 平林 正 ...
    2013 年 53 巻 3 号 p. 209-214
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.悪性胸膜中皮腫にて対症療法にとどまった症例の予後ならびに予後因子について,レトロスペクティブな検討を行った.方法.2007年1月から2012年4月に兵庫県立尼崎病院呼吸器センターに入院し,悪性胸膜中皮腫と診断され対症療法にとどまった症例32例について検討した.結果.男性19例,女性13例,年齢中央値79.5歳.病理組織型は上皮型16例,肉腫型4例,二相型8例,線維形成性(desmoplastic)2例,不明が2例であった.臨床病期はI期10例,II期8例,III期6例,IV期7例,不明1例であり,performance statusは0から2が84%を占めた.生存期間中央値は303日,1年生存率は35.8%であった.予後因子について,単変量解析では,臨床病期III期以上,非上皮型中皮腫で有意に予後不良となった(p<0.05).多変量解析では,臨床病期III期以上で有意に予後不良であり(p<0.05),非上皮型中皮腫は統計学的に有意ではないものの予後不良な傾向がみられた.結論.対症療法にとどまった悪性胸膜中皮腫32例について,予後ならびに予後因子に関して検討した.生存期間中央値は約10カ月であり,臨床病期分類III期以上,非上皮型中皮腫が予後不良因子として有用である可能性が示唆された.
  • 二木 俊江, 奥山 貴子, 内田 純二, 西野 和美, 熊谷 融, 今村 文生
    2013 年 53 巻 3 号 p. 215-219
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.本邦の肺癌診療ガイドラインで,ベバシズマブ(BEV)は,扁平上皮癌を除く非小細胞肺癌に対する1次治療として,プラチナベースの化学療法と併用が推奨され,奏効率の上昇と無増悪生存期間(PFS)の延長が認められている.方法.当院でBEV併用化学療法を施行した,扁平上皮癌を除く非小細胞肺癌78例における安全性と有効性を,特に複数の治療ラインでBEV併用化学療法を施行した32例(マルチライン症例)に注目して検討した.BEVを初めて併用した化学療法を1st BEV,2回目に併用した化学療法を2nd BEV(以下同様)と命名した.結果.78例における1st BEVの奏効率は58%,PFSは178日,Grade 3(G3)以上の血液毒性は50%,非血液毒性が32%で,日常臨床でBEV併用化学療法の有効性と安全性が確認できた.マルチライン症例でのG3以上の有害事象は血液毒性が81%,非血液毒性が28%で,奏効率とPFSは,それぞれ1st BEVで50%,145日,2nd BEVで28%,99日であった.結論.BEV併用化学療法は2回目以降の使用においても,忍容性と一定の有効性が示唆された.

  • 柳川 直樹, 塩野 知志, 安孫子 正美, 阿部 光展, 渡邉 清子, 渡邊 いづみ, 植松 美由紀, 緒形 真也, 佐藤 徹, 田村 元
    2013 年 53 巻 3 号 p. 220-226
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.原発性肺癌における気管支鏡下擦過細胞診の組織型正診率を明らかにする.対象と方法.気管支鏡下擦過細胞診で原発性肺癌と診断され,その後摘出標本の最終病理組織診断がなされた189例について,細胞診の推定組織型の正診率を検討した.結果.最終診断が腺癌であった105例中90例は細胞診でも腺癌と診断されていたが,7例は扁平上皮癌,8例は非小細胞肺癌と診断されていた.最終診断が扁平上皮癌であった74例中72例は細胞診でも扁平上皮癌と診断されていたが,1例は腺癌,1例は非小細胞肺癌と診断されていた.最終診断が大細胞癌であった3例中2例は細胞診でも大細胞癌と診断されていたが,1例は腺癌と診断されていた.最終診断が小細胞肺癌であった3例はいずれも細胞診にて小細胞肺癌と診断されていた.12例が不一致であり,非小細胞肺癌と診断されていた10例も不一致とすると,完全一致率は88.4%(167/189)であった.不一致例または術前非小細胞肺癌例では,その多くで粘液産生充実型腺癌成分が含まれていた.結論.細胞診で充実性集塊が観察された時は,組織型の推定は慎重にすべきだと考えられた.
症例
  • 河井 康孝, 須甲 憲明, 福元 伸一, 竹内 裕, 大泉 聡史, 原田 真雄
    2013 年 53 巻 3 号 p. 227-233
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.原発性肺癌の自然退縮は非常に稀な現象である.症例.55歳,男性.右頚部腫瘤を自覚し,前医にて頚部リンパ節生検を施行されたが壊死が強く確定診断はできなかった.右肺尖腫瘤もあり,当科にて経気管支肺生検を行ったところ,組織像は瘢痕像のみでやはり確定診断は得られなかった.その後,肺腫瘤および頚部リンパ節はともに無治療で縮小を続けたが,8か月後に別の右頚部リンパ節腫大が新たに出現し生検にて分化度の低い癌細胞を認めた.さらに右肺上葉切除術を施行した結果,肺大細胞癌と確定診断された.肺原発巣および頚部リンパ節ともにHLA class Iの強い発現とCD8リンパ球浸潤を認めた.また経過中,病状悪化時には白血球数および血清G-CSFも高値であり,腫瘍細胞も免疫組織学的にG-CSF陽性であったため,G-CSF産生腫瘍と考えた.結論.悪性腫瘍の自然退縮はいまだその機序は解明されていないが,HLA class I発現やCD8リンパ球浸潤など腫瘍免疫が深く関与していると考えられる.本症例はG-CSF産生肺大細胞癌が自然退縮を示したと推察される興味深い症例と考え報告した.
  • 尾形 朋之, 柴田 翔, 松岡 英亮, 中山 敬史, 吉田 純司, 鵜浦 康司
    2013 年 53 巻 3 号 p. 234-239
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.葉酸代謝拮抗薬であるメトトレキサートは,慢性関節リウマチに対する第一選択薬として使用されているが,副作用としてリンパ増殖性疾患を発症することが知られている.症例.73歳女性.慢性関節リウマチに対して14か月前からメトトレキサートを内服.胸部CTで両肺の多発結節影を指摘された.経気管支肺生検,CTガイド下肺生検,エコーガイド下肝生検を施行するも診断に至らず,胸腔鏡下肺生検を施行した.リンパ腫様肉芽腫症(grade 2)の病理診断に至り,メトトレキサートの中止で経過をみたところ陰影は速やかに縮小した.結論.メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患においてリンパ腫様肉芽腫症の報告は稀であり,報告した.
  • 眞鍋 周太郎, 新明 卓夫, 安藤 幸二, 望月 篤, 高木 正之, 中村 治彦
    2013 年 53 巻 3 号 p. 240-244
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肺の定型的カルチノイドでリンパ節転移を示す例は少ない.血清adrenocorticotropic hormone(ACTH),progastrin-releasing peptide(pro-GRP)高値で,縦隔リンパ節転移陽性の1例を経験したので報告する.症例.41歳,女性.ふらつきを主訴に当院内科を受診し,内分泌学的検索からCushing症候群と診断された.中葉に最大径11 mmの腫瘤を認め,異所性ACTH産生腫瘍が疑われ,確定診断目的で当科へ紹介された.術中迅速病理診断はカルチノイドで,リンパ節郭清(ND2a-1)を伴う中葉切除を施行した.最終病理診断は定型的カルチノイドで,右下部気管傍リンパ節(#4R)転移陽性,pT1aN2M0,p-stage IIIAであった.上昇していたACTH,pro-GRPは,術後に正常域となった.化学療法を追加し,術後20か月を経た現在,再発を認めていない.結論.肺定型的カルチノイドであってもリンパ転移陽性例があることを念頭に置く必要がある.
  • 高田 宗尚, 斉藤 裕, 矢鋪 憲功
    2013 年 53 巻 3 号 p. 245-249
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.アスベスト曝露に起因した悪性腫瘍の研究により,遺伝子異常を介した発癌機序が示された.限局性悪性胸膜中皮腫を切除後に,肺癌を発症した1例を経験したので報告する.症例.アスベスト曝露歴のある71歳男性.右前胸部腫瘤の加療目的に当科へ紹介された.画像所見では右前側胸壁に肋骨や肺へ浸潤する腫瘤影を認め,腫瘍生検では消化管からの転移性腫瘍を疑われたが,明らかな原発巣は同定し得ず診断と治療を目的に手術を施行した.腫瘍切除,胸壁合併切除(第III,IV肋骨切除),肺部分切除を行った.腫瘍は最大径6.4 cmの二相型限局性悪性胸膜中皮腫であった.手術1年後の胸部CTで右肺下葉胸膜直下に新たな1.5 cm大の肺病変を認め,診断と治療を目的に右肺下葉部分切除術を施行し,気管支肺胞上皮置換性増殖型の原発性肺腺癌であった.結論.限局性悪性胸膜中皮腫切除後に原発性肺癌を発症した1例を経験した.アスベストは多重癌の発癌因子であり,第2癌の出現に注意すべきである.
  • 長島 聖二, 福田 実, 北崎 健, 御手洗 和範, 森 雅一, 河野 茂
    2013 年 53 巻 3 号 p. 250-254
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.上大静脈症候群は緊急的な合併症である.しかしながら本邦における静脈内ステント留置術は保険適応対象外診療であるので,あまり行われていない.症例.67歳の男性.悪性胸膜中皮腫に対して化学療法を行っていたが,診断より2年2ヶ月後呼吸困難が強くなり入院した.胸部CT検査では右胸膜病変が増大し,上大静脈,右主肺動脈,右主気管支を狭窄していた.顔面を含む上半身の浮腫,頚静脈怒張を認め,上大静脈症候群と診断した.SpO2は保たれているのに強い呼吸困難を訴え,放射線治療を開始して効果が出るまで待てない切迫した状況になった.患者家族の説明同意を得て,上大静脈狭窄部にステント留置術を行った.治療直後より症状は改善し,合併症はなかった.3ヶ月後に在宅診療へ移行するまで上大静脈症候群の再発は認めなかった.結論.静脈内ステント留置術は,悪性胸膜中皮腫による上大静脈症候群に対して有用で安全な治療であった.上大静脈症候群に対する血管内治療の保険適応拡大が期待される.
  • 吉村 克洋, 横村 光司, 大前 美奈子, 野末 剛史, 須田 隆文, 千田 金吾
    2013 年 53 巻 3 号 p. 255-258
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.過去に乳び胸水を合併した肺癌の報告はみられるが,乳び腹水の報告は極めて稀である.症例.56歳男性.小細胞肺癌で放射線同時併用化学療法を行い完全寛解(CR)が得られていたが,2011年6月に小脳や肝臓,副腎,腹部リンパ節に転移が認められ再発と診断した.carboplatinとetoposideによる化学療法を再開し不変(SD)で経過していたが,11月下旬に呼吸困難と発熱が出現し,肺炎の診断で入院となった.抗菌薬で肺炎は改善したが,12月より上腹部痛と腹部膨満がみられ,大量腹水が出現した.腹水穿刺で乳白色の腹水を認め,血清に比して中性脂肪が著増しており乳び腹水と診断した.リンパ管の漏出部位の特定は困難であったが,造影CTからは大動脈周囲リンパ節の腫大によるリンパ流障害が原因と推測された.その後,食事療法とamrubicinでの化学療法を行ったところ,腹水は軽減した.結論.腹部リンパ節転移による乳び腹水を合併した小細胞肺癌の1例を経験した.
  • 梶原 浩太郎, 濱田 千鶴, 仙波 真由子, 濱口 直彦, 兼松 貴則, 水野 洋輔
    2013 年 53 巻 3 号 p. 259-263
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.印環細胞癌は胃癌に特徴的な組織型で,他臓器には稀である.症例.78歳男性.左頚部リンパ節腫脹で前医を受診し,生検で印環細胞癌,免疫染色でCK7(+),CEA(+),MUC5AC(+),PSA(-),TTF-1(-),CK20(-),CD10(-)と診断された.PET-CTで胃へのびまん性集積と右下葉結節への集積,縦隔リンパ節腫大を認め,上部消化管内視鏡で胃高分化腺癌を認め,下部消化管内視鏡では悪性所見は認めなかった.当院紹介受診され,気管支鏡で悪性所見を認めず,原発不明癌としてカルボプラチン+ドセタキセルによる化学療法を開始したが,5サイクル施行したところで,肝転移,肺内転移,縦隔転移を認め中止.セカンドラインでS-1を開始したが腎機能悪化のため1サイクルで中止.癌性胸水で呼吸不全となり全経過は9ヶ月で死亡.剖検で肺結節は良性結節であり,肺間質,前縦隔,心嚢水,胸水に印環細胞癌を認めたが,胃,肺実質に原発巣の所見を認めず,胃高分化腺癌も認めなかった.結論.我々は剖検でも原発不明であり,化学療法により原発巣・胃の高分化腺癌が消失した可能性がある1例を経験した.
  • 奥村 隼也, 滝 俊一, 三田 亮, 大田 亜希子, 高木 康之, 杉野 安輝
    2013 年 53 巻 3 号 p. 264-269
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.高齢化社会の進行に伴い,performance status(PS)不良肺癌症例の増加が今後予想される.肺癌化学療法は進歩しているが,PS 3以上の進行肺癌に対する標準化学療法は確立していない.症例.65歳,男性.2008年12月,息切れと胸部圧迫感を主訴に当科受診.胸部CTにて左舌区腫瘤影,縦隔・両側肺門リンパ節腫大を認めた.CTガイド下経皮的縦隔リンパ節生検を施行し,肺扁平上皮癌(cT4N3M1,stage IV)と診断した.PS 3と不良であったが,2週投与1週休薬を1コースとするS-1単剤療法を施行した.2コース後には腫瘍の著明な縮小が認められ,症状は消失した.Grade 2以上の血液毒性や非血液毒性は認められず,全13コース施行できた.総合効果としてcomplete response(CR)が得られ,2012年9月現在も再発なく経過している.結論.PS不良の進行肺扁平上皮癌に対してS-1単剤療法が奏効し長期生存に至った症例を経験した.S-1単剤治療は忍容性が高く,PS不良の肺扁平上皮癌に対する1次治療の選択肢として考慮する余地があると考えられた.
  • 星野 英久, 石川 亜紀, 天野 雅子, 松島 秀和, 安達 章子, 門山 周文
    2013 年 53 巻 3 号 p. 270-276
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.非小細胞肺癌に対するサルベージ手術に明確なガイドラインはない.今回,手術適応のない局所進行肺腺癌に対し全身化学療法後にサルベージ手術を行なった1例を経験したので,報告する.症例.71歳,女性.左上葉肺腺癌cT1bN3M0(IIIB)に対しシスプラチン+ドセタキセルによる全身化学療法を6コース,カルボプラチン+ペメトレキセドによる全身化学療法を6コース施行し,partial responseが得られた.その後,原発巣が再増大し,ペメトレキセド単剤による全身化学療法が6コース施行されたが奏効せず,PET検査では原発巣に異常集積を認めるのみであったため,ycT1aN0M0(IA)の診断で肺動脈形成を伴う左上葉切除術を行なった.術後病理でypT1aN2M0(IIIA)と診断されたため,放射線治療(50 Gy)を追加した.術後1年経過したが無再発生存中である.結論.本症例に関しては,今後の厳重な経過観察が必要と考える.手術適応のない局所進行肺癌においてもサルベージ手術により,局所制御が得られる可能性が示唆された.ただし,その適応については,根治性と手術侵襲のバランスから個々に判断する必要がある.
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