目的.悪性胸膜中皮腫にて対症療法にとどまった症例の予後ならびに予後因子について,レトロスペクティブな検討を行った.
方法.2007年1月から2012年4月に兵庫県立尼崎病院呼吸器センターに入院し,悪性胸膜中皮腫と診断され対症療法にとどまった症例32例について検討した.
結果.男性19例,女性13例,年齢中央値79.5歳.病理組織型は上皮型16例,肉腫型4例,二相型8例,線維形成性(desmoplastic)2例,不明が2例であった.臨床病期はI期10例,II期8例,III期6例,IV期7例,不明1例であり,performance statusは0から2が84%を占めた.生存期間中央値は303日,1年生存率は35.8%であった.予後因子について,単変量解析では,臨床病期III期以上,非上皮型中皮腫で有意に予後不良となった(p<0.05).多変量解析では,臨床病期III期以上で有意に予後不良であり(p<0.05),非上皮型中皮腫は統計学的に有意ではないものの予後不良な傾向がみられた.
結論.対症療法にとどまった悪性胸膜中皮腫32例について,予後ならびに予後因子に関して検討した.生存期間中央値は約10カ月であり,臨床病期分類III期以上,非上皮型中皮腫が予後不良因子として有用である可能性が示唆された.
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