肺癌
Online ISSN : 1348-9992
Print ISSN : 0386-9628
ISSN-L : 0386-9628
53 巻, 4 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
総説
  • 佐川 元保, 中山 富雄, 祖父江 友孝, 江口 研二, 遠藤 千顕, 西井 研治, 近藤 丘
    2013 年 53 巻 4 号 p. 309-313
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/28
    ジャーナル オープンアクセス
    肺がん検診での胸部X線読影の判定基準には,以前からいくつかの問題があることが指摘されていた.その最大のものは,判定Dと判定Eが,地域によって異なる概念で使用されていたことであった.「少しでも肺癌を疑えばE」と判定している地域がある一方,「肺癌の疑いが少しあるものはD」「肺癌の疑いが強いものをE」と判定している地域もあった.このような相違があることは不適切であり,早急に改善される必要があった.最近胸部X線読影の判定基準が改訂され,日本肺癌学会のホームページで公開された.本稿では,D,E判定の問題点に関して,その背景を詳述するとともに「少しでも肺癌を疑えばEと判定すべき」であることを強調した.
  • 佐川 元保, 中山 富雄, 祖父江 友孝, 遠藤 千顕, 小中 千守, 村田 喜代史, 小林 健, 近藤 丘
    2013 年 53 巻 4 号 p. 314-317
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/28
    ジャーナル オープンアクセス
    わが国の肺がん検診での胸部X線読影の判定基準は,肺癌取扱い規約の中の「集団検診の手引き」に収載されているが,最近この判定基準の見直しが行われた.改訂内容は日本肺癌学会ホームページなどで公表されているが,必ずしも全国的に十分周知されてはいない.本稿ではB,C,D判定に関して,診断基準の改訂にかかわる背景および改訂の狙いを詳述した.
原著
  • 山口 哲平, 中西 亨, 磯谷 澄都, 林 正道, 星野 多美, 魚津 桜子, 森下 真梨子, 峯澤 智之, 岡澤 光芝, 今泉 和良
    2013 年 53 巻 4 号 p. 318-323
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/28
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.シスプラチン(CDDP)分割投与によるビノレルビン(VNR)併用術後補助化学療法の安全性および有効性を検討する.対象と方法.2007年5月~2011年12月に大細胞神経内分泌癌を除く非小細胞肺癌,術後病期II~IIIA期症例で,CDDP 40 mg/m2,VNR 25 mg/m2を第1,8病日に投与し21日間隔,4サイクルを術後補助化学療法として行った30例について,毒性,完遂率,無再発生存率,全生存率を後方視的に検討した.結果.G3/4の血液毒性は,好中球減少29例(97%),白血球減少18例(60%),貧血2例(7%),発熱性好中球減少症3例(10%)を認めた.G3/4の非血液毒性は,感染を5例(17%),トランスアミナーゼ上昇,注射部位反応を1例(3%)ずつに認めた.全30例中24例(80%)で4サイクル完遂でき,治療関連死亡例は認めなかった.CDDP,VNRの総投与量中央値はそれぞれ320 mg/m2,178 mg/m2であった.無再発生存率は1年82%,2年63%,3年46%,全生存率は1年93%,2年89%,3年84%であった.結論.CDDP分割投与によるVNR併用術後補助化学療法は,日常臨床で十分に投与可能な忍容性と有効性を有すると考えられた.
  • 小原 さやか, 牛島 友則, 棚井 千春, 田中 良明, 野田 裕道, 堀内 啓, 臼井 一裕
    2013 年 53 巻 4 号 p. 324-328
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/28
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.Erlotinibが有効なEGFR遺伝子変異陰性非小細胞肺癌において,EGFR遺伝子変異偽陰性が存在するかを明らかにする.方法.当院でErlotinib治療を受けたEGFR遺伝子変異陰性非小細胞肺癌のEGFR遺伝子変異をmodified PNA-LNA PCR clamp法で再検査し,Erlotinibの治療効果,予後について検討した.結果.患者数20.年齢中央値:64(44~77)歳.性別:女性13.組織型:腺癌18,分類不能2.臨床病期:IIIB 2,IV 13,術後再発5.PS 0~1/2~:16/4.Erlotinib投与日数中央値:144日.Erlotinib開始後生存期間中央値(OS):357日.Erlotinib開始後無増悪生存期間中央値(PFS):127日.最良効果:PR 6,SD 5,PD 9.奏効率:30.0%.EGFR遺伝子変異再解析が可能であった16例中8例(50.0%)で陽性.奏効率:陰性0%,陽性62.5%.PFS:陰性47日,陽性387日(p=0.0022).OS:陰性218日,陽性836日(p=0.1118).結語.従来法では,EGFR遺伝子変異偽陰性が存在する.
症例
  • 亀田 優美, 黒沼 幸治, 宮島 さつき, 千葉 弘文, 山田 玄, 高橋 弘毅
    2013 年 53 巻 4 号 p. 329-335
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/28
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.骨転移を有する癌の治療中に血清アルカリフォスファターゼ(ALP)の一過性上昇を認めることがあり,ALPフレア現象と呼ばれる.今回,ゲフィチニブが奏効した骨転移合併肺癌2例において,同現象を認めたので報告する.症例.症例1は64歳女性でEGFR遺伝子変異を有しており,治療10日目にALPは治療前の約2倍へ上昇した.症例2は46歳男性でEGFR遺伝子変異を有しており,治療18日目にALPは治療前の約2倍へ上昇した.2例ともALP分画は2・3が1つのピークを形成し,約90%を占めていたが,他の肝胆道系酵素は上昇せず,骨由来と考えた.2例とも,治療1か月後の骨シンチグラフィーで骨転移巣への集積が増強し,骨転移の増悪が疑われた.しかし,CTで他病変は縮小し,腫瘍マーカーも低下していたことから,フレア現象と考えて治療を継続した.以後,骨転移巣への集積は軽減,ALPも低下して治療は奏効した.結論.骨転移合併肺癌において,ゲフィチニブ投与中にALPの上昇を認めた場合は,骨転移の増悪,ゲフィチニブの有害事象に加えて,フレア現象を想定し,臨床所見と諸検査所見から総合的に鑑別する必要がある.
  • 河野 朋哉, 宮田 亮, 高木 順平, 花谷 崇, 田久保 康隆, 野口 哲男
    2013 年 53 巻 4 号 p. 336-340
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/28
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.ベバシズマブ併用化学療法は,肺癌領域でも急速に広まっている.症例.63歳男性.咳嗽,体重減少を主訴に近医を受診したところ,胸部CTにて右肺下葉に直径50 mmの腫瘤影を認めた.気管支鏡検査にて腺癌と診断された.全身精査で肝臓,骨盤骨への転移を認め,cT2bN3M1b stage IVと診断された.カルボプラチン,パクリタキセル,ベバシズマブによる化学療法を開始したところ,day 15に右膿気胸を発症した.胸腔ドレナージを行うが,改善せず.胸部CTにて腫瘍の破裂による難治性の膿気胸と診断されたため,救済目的に開胸による右下葉切除を行った.その後気管支断端瘻を併発し,大網充填術を必要とした.化学療法を続けたが,発見から1年後に癌性髄膜炎となり死亡した.結論.ベバシズマブ併用化学療法は,腫瘍を広範囲に壊死させ,気胸・膿胸の原因となる可能性がある.難治性の気胸・膿胸は胸部CTによる診断を行い,必要であれば,早期の外科的処置にうつるべきである.
feedback
Top